2013年4月号
SOLE
SOLE
米国防総省:調達システム改革の変遷
SOLE 日本支部フォーラムの報告
The International Society of Logistics
APRIL 2013 90
米国防総省の動きは、わが国にも
多大な影響を与えている。
とりわけ 同省の装備品調達システムは非常に 完成度が高く、システムエンジニアリ ングの世界をリードする存在となって いる。
その改革の変遷を以下に概観 する。
(斎藤一弥) 調達システムの概要 図1は米国防総省( D o D : Department of Defense)の予算の 推移である。
一九六二年から二〇一 二年までの米国国家予算と国防総省 予算の推移および米国の主要イベント を示している。
また図2は米国総予 算額に対する国防費の割合である。
これによると米国の国防予算はベト ナム戦争の開始時期に多少増加した が、それ以降は減り続け、ベトナム戦 争終了時には国家予算の二五%程度 まで下がっている。
その後、冷戦状 態に入っていったん増加したが、冷戦 の終結とともに再び減少に転じ、一 時は一五%程度まで下がった。
そして二〇〇〇年以降は、医療関 係を含めた健康関連の予算の割合が 次第に増加する傾向にある。
国防費 に対する抑制圧力となっているのは明 らかである。
その鍵を握る米国防総省の調達シ ステムは、軍事能力を開発するため のバックボーンとして位置付けられて いる。
それは次の三つの要素、「共同能 力統合と 開発システム(JCID S )」、「計画・プログラミング・予 算&実行 (PPBE)プロセス」、お よび「国防調達システム」から構成 されている(図3)。
それぞれJC IDSは統合参謀本部、PPBE は予算局、国防調達システムはAT & L(Acquisition Technology & Logistics:調達・技術・後方支援) 局が監督部署である。
このうち国防調達システムは国防 総省の装備品調達システムの根幹を 成すもので、国防総省指令(DoD Directive)「DoDD5000.1 」によって その方針が定められ、それに付随す る国防総省命令(DoD Instruction) 「DoDI5000.2」によってそのプロセス が規定されている。
DoDI5000.2は、装備品のライフサ イクルを定義し、それぞれのプロセス をフェーズに分け、各フェーズの終了 と次のフェーズへ進むべきかどうかの 意思決定点を定めている。
意思決定 点としては、フェーズの区切りとなる 「マイルストーン」のほか、フェーズ中 にも重要項目についてのレビューが実 施される。
図4は、DoD5000シリーズ が最初に発行された一九七一年にお ける調達フレームワークと、抜本的に 見直しが実施された九一〜九六年代 のフレームワーク、そして現状(二〇 〇八年)のフレームワークを比較した ものである。
また表1はSOLE日本支部の研 究会で米国防総省の歴代の調達シス テムを調査し、フェーズの構成や意思 決定点を整理して、その特徴をまと めたものである。
5000シリーズは、米国がベト ナム戦争の最中にあった一九六九年 に就任したリチャード・ニクソン大統 領と、メルビン・レアード国防長官、 デビッド・パッカード副国防長官に よって検討が始まった。
当初からその 目的は国防総省の調達コストの削減 米国防総省:調達システム改革の変遷 図1 米国国防費の推移(MS) 3,500,000 3,000,000 2,500,000 2,000,000 1,500,000 1,000,000 500,000 0 1962 1967 1972 1977 1982 1987 1992 1997 2002 2007 2012 国防費 健康 安全保障(予算) 安全保障(予算外) 国家予算 同時多発テロ(01) 湾岸戦争(91) 東西ドイツ統合 (90) ベトナム戦争(65-75) 図2 米国国防費の比率推移(%) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1962 1967 1972 1977 1982 1987 1992 1997 2002 2007 2012 国防比率(%) 健康比率(%) 安全保障(予算)比率(%) 安全保障(予算外)比率(%) 91 APRIL 2013 その後、5000シリーズの二〇 〇〇年版では、ユーザーニーズの確 定を、ライフサイクルの最初だけでな く、各マイルストーンにおいても導入 可能にした。
これは最新技術の早期 導入により、装備品の性能向上を狙 ったものと思われる。
二〇〇〇年版におけるマイルスト ーンは三つ、フェーズは四つ、意思 決定点は五つであった。
これが二〇 〇三年版では、マイルストーン三つ、 フェーズ五つ、意思決定点六つに変 更された。
二〇〇八年版は、現在運用されて いるフレームワークであり、三つのマ イルストーン、五つのフェーズ、六つ の意思決定点が定義されている。
五 つのフェーズとは、「装備品ソリュー ション分析」、「技術開発」、「工学& 製造開発」、「生産&配備」、「運用& 支援」であり、これは民間企業にお ける製品ライフサイクルの表現と合致 している。
最近の装備品のデータによると、 このライフサイクル全体の費用のうち 「運用&支援フェーズ」で発生するも のが六〇%程度を占めている。
その ため国防総省では、多くの装備品に ついて延命化対策を取っている。
〇八年版の一つ前の版であった〇三 年版では、ユーザーニーズの確定がそ れぞれのマイルストーンごとに設定さ ストーン、意思決定点、フェーズの 数をそれぞれ五つに減らした。
また 調達フェーズに入る前の準備段階にお いて、ユーザーニーズを確定すること を積極的に意識するようになった。
さらに一九九六年版では、ライフ サイクルの最終フェーズとなる廃棄フ ェーズを意識する ようになった。
最 初のユーザーニーズ の確定から最後の 廃棄フェーズに至る ライフサイクル全体 への意識が強くな り、マイルストー ン、フェーズ、意 思決定点の数はそ れぞれ四つに減った。
また九六年には この他に規制文書 「DoD5000.2-R」が 新たに発行されて いる。
調達に関す るプロセスを仔細 に記述したものだ が、後にこれは規 制からガイドに位 置付けを変え、二 〇〇二年に初版が 発行される「国防 調達ガイド」のベー スとなった。
であった。
その最初のバージョンとなった一九 七一年の調達フレームワークでは、三 つのフェーズと三つのマイルストーン が定義された。
その後、九一〜九六年代に調達 システムの抜本的見直しが行われた。
暦年で六年足らずの間にDoDD5000.1 の発刊が二回行われ、その内容が大 きく変更された。
5000シリーズ の変革期であったと言える。
七一年の発行以来、5000シリ ーズには細かな変更が加えられ、フェ ーズの細分化やマイルストーン数が増 加していた。
詳細なレビューのために、 意思決定に数多くの文書が作成され るようになった。
その結果、八六年にはマイルスト ーンと意思決定点はそれぞれ六つに増 えていた。
これでは細分化し過ぎと いうことから、九一年の改訂でマイル 図3 国防総省の意思決定支援システム CJCS 3170.01 シリーズ MID 913 PPBSからPPBEへ DoD 5000 シリーズ 共同能力統合と 開発システム (JCIDS) 国防 調達 システム 計画、プログラミング、 予算&実行 (PPBE)プロセス DEPSECDEF 監督 マイルストーン 意思決定機関 (MDA) 監督 VCJCS / JROC 監督 図4 調達のフレームワーク 1971 コンセプト拡充 要求の 決定 フェーズ0 コンセプトの拡充/ 定義 フェーズ? デモと検証 フェーズ? 工学&生産の 開発 フェーズ? 製造&配備 フェーズ? 運用&支援 フルスケール開発生産/配備 2008 費用 1991-96 方針の原点 方針の大改革 スパイラル方式の禁止 非軍事化& 廃棄 0 A B C ? ? ? ? 装備品 ソリューション 分析技術開発工学&製造 開発 生産&配備 運用&支援 MDD Post CDRA FRP Decision Review 20% 20% 60% 顧客の要求 技術機会と資源 マイルストーン 意思決定点 れていた。
これを〇八年版では最初 の一回だけに改訂している。
即時性 を重視したためである。
また〇八年 版では設計と試作を繰り返すスパイラ ル方式の開発を禁止し、ウオータフォ ール型(V字型モデル)による開発の みを許すようになった。
しかし、〇八年度版においても意 思決定点は従来と同様に六つ設定さ れており、そこで必要とされる文書 類は、装備品の調達金額によって対 象を分類してはいるものの、増大す るばかりとなっている。
そのため最 近では、原点に戻れとの批判の声も 聞かれる。
国防総省の規格の変遷 米国防総省では、古くから軍独自 の規格を作成し、規格に基づく装備 品の性能保持に努めてきた。
しかし、 軍予算が縮小される中で、規格にこ だわることが装備品のオーバースペッ クを招いているとの批判を受け、一 九九四年、就任直後のウィリアム・ ペリー国防長官は「規格の見直しを 実施する」との通達を出した。
いわ ゆる?ペリーメモ?である。
この通達によって、九四年七月時 点で四万五五五〇もあった規格が二 〇〇一年一月には約二万六〇〇〇ま で減った。
そして国防総省は、廃止 された規格の代替として民間規格を 利用するようになった。
この間に民間の規格団体である「A NSI(米国国家規格協会)」や「E IA(米国電子工業会)」、「ISO (国際標準化機構)」等は、軍規格を 参考にして新たな規格を作成してい た。
それを今度は軍が利用するよう になったのである。
以下にシステムエンジニアリングに 関連するいくつかの規格について、そ の移行過程を追ってみる。
作業構造図 (Work Breakdown Structure) WBSはWork Breakdown Structure の略で、作業構造図などと訳されて いる。
軍とは別に民間のプロジェクト 管理の分野においてもWBSの検討 は進められてきた。
どちらかという と、軍は成果物を分解していくのに 対し、プロジェクト管理では、プロセ スを分解していくことに力点を置く 傾向があるようだ。
軍で最初にWBSの規格が発表さ れたのは、一九六八年の「MIL STD 881」である。
一九九三年には、W B Sの第三版に当たる「MIL STD 881B」が発刊された。
その後、九四年の?ペリーメモ?の 影響により、九八年にWBSは規格 から外れ、ハンドブックとなり、二〇 〇二年に「MIL HDBK 881」が発刊 APRIL 2013 92 表1 調達方針の変遷 年次 マイルストーン 数 フェーズ数 重要施設5000.1 の 原点 新マイル ストーンの 追加 サイクル タイムの 導入と モデルの 詳細化 外圧に 対する 見直し パッカード 委員会の 実践 方針の 大幅な 見直し 調達改革 の 本格開始 ガイド ブックの 発行 スパイラル 方式の 禁止 新 命令 (D)ページ数 主要装備品 購買全体 予算基準 年次 (D+?) ページ数 意思決定点 数 1971 − − 4 4 3 4 6 5 4 3 3 3 3 3 3 4 4 4 4 4 5 +1 (開始前) 4 +2 (開始前後) 4 4 5 5 3 3 4 4 4 4 6 5 4 5 6 6 6 7 8 15 24 16 15 35 15 15 139 10 10 50M 50M 75M 100M 200M 200M 200M 300M 300M 365M 365M 365M 200M 200M 300M 500M 1B 1B 1B 1.8B 1.8B 2.19B 2.19B 2.19B 1971 1972 1972 1980 1980 1980 1980 1990 1990 2000 2000 2000 27 82 48 41 577 146 74 139 90 90 1975 1977 1980 1982 1985 1987 1991 1996 2000 2002 2003 2008 された。
さらに〇五年には第二版と して「MIL HDBK 881A」が発刊さ れている。
しかし近年、調達の契約管理の観 点から、軍はWBSの重要性を改め て認識するようになり、再びWBS をハンドブックから規格に戻して、二 〇一一年に「MIL STD 881C」を発 刊している。
システム工学 (Systems Engineering) 軍がシステム理論を系統的にまとめ た一九六九年発刊の「MIL STD 499」 は、今日のシステム工学の 基礎となった資料である。
その後、九三年には第三版 として「MIL STD 499B」 が発刊されている。
システム工学の規格は、 民間企業でも有用である。
そのため民間団体による 規格化の動きも活発になり、 ISO、EIA、INC OSEからそれぞれ規格が 発表されている。
これらの 規格は「MIL STD 499」を 拡張したものが多い。
前述のようにペリーメモ 以降、軍では、システム工 学の規格に民間規格を採用 するようになり、軍独自の 規格は発刊しないようにし ていたが、一部の部署では 軍需品の特徴を表現するよ うな民間の規格がないこと から、軍独自の規格(MIL STD499C)を採用している ところもある。
ソフトウエア工学 (Software Engineering) ソフトウエア工学は、その対象がソフ トウエアに限定されているので、全体 的にまとめやすいこともあり、規格の 歴史も古い。
軍の最初の規格は、一九 八五年の「MIL STD 2167」であろう。
その後、九四年には「MIL STD 498」が発刊された。
これはソフトウ エア工学の原点として、ISOなど多 くの民間団体の規格に引用されている。
一方、九八年から軍は民間規格であ る「IEEE/EIA 12207」を採用してい る。
また軍は二〇〇五年にドイツで開 発されたV字型モデルも採用している。
構成管理 (Configuration Management) 構成管理とは、狭義には、ソフト ウエアの構成を管理することである。
ここでの構成とは一般には、システム (プロジェクトもシステムの一つと考え る)の構成(物理的構成や文書類も 含む)を管理することで、変更管理 をスムースに行うための基礎となるも のである。
ソフトウエアのサブルーチ ン構成やソフトウエアの版管理等はそ の一つである。
構成管理を考えるときには、何が 対象物で、そのライフサイクルのどの フェーズが対象なのか等を、あらかじ め定義しておくことが重要である。
軍では九二年に「MIL STD 973」を 発刊しているが、これを二〇〇九年 までに随時、民間規格の「EIA 649」 に移行させている。
また九七年に発 刊した「MIL HDBK 61」も、二〇〇 二年の「MIL HDBK 61B」の発刊後 に、随時、民間規格である「ANSI/ EIA 649」に移行している。
出来高管理 (Earned Value Management) 軍は古くからコストを尺度にしたプ ロジェクト管理を意識していた。
その 端緒は一九五九年の「PERT/C OST」にあると言われているが、本 格的な「出来高管理(Earned Value Management:EVM)」のはじまり は一九六七年の「C/SCSC」で ある。
その後、変遷を経て、現在ではE MVが軍の調達システムのプロジェク ト管理手法に採用され、各プロジェク トの進捗状況等を日常的にダッシュボ ードで閲覧可能となっている。
その ために、毎年「DID(Data Item Description)」を発刊し、最新の状況 を保証するようにしている。
なお現在 軍が採用している民間規格は「AN SI/EIA784」である。
以上に述べた軍規格の変遷を表2 にまとめた。
93 APRIL 2013 表2 規格の変遷 初期規格 WBS ’ 68 MIL-STD-881 ’ 11 MIL-STD-881C ’ 95 民間規格へ (ISO15288、EIA632A等) ’ 95 MIL-STD-499C ’ 98 民間規格へ (IEEE/EIA 12207)、Model ’ 09 民間規格へ (EIA649、ANSI/EIA649) ’ 09 民間規格へ (ANSI748) (’ 75)881A、(’ 93)881B (’ 98)HDBK881、(’ 05)HDBK881A (’ 09)STD973(Notice5) (’ 01)HDBK61A、(’ 02)HDBK61B (’ 67)DoDD、DoDI7000.2、 (’ 91)DoDI5000.2、(’ 96)DoD 5000.2-R (’ 74)STD499A、(’ 93)STD499B (’ 88)2167A、(’ 94)STD498 ’ 69 MIL-STD-499 ’ 85 MIL-STD-2167 ’ 92 MIL-STD-973 ’ 59 EVM PERT/COST システム工学 ソフトウエア 工学 構成管理 改訂現在(2012)
とりわけ 同省の装備品調達システムは非常に 完成度が高く、システムエンジニアリ ングの世界をリードする存在となって いる。
その改革の変遷を以下に概観 する。
(斎藤一弥) 調達システムの概要 図1は米国防総省( D o D : Department of Defense)の予算の 推移である。
一九六二年から二〇一 二年までの米国国家予算と国防総省 予算の推移および米国の主要イベント を示している。
また図2は米国総予 算額に対する国防費の割合である。
これによると米国の国防予算はベト ナム戦争の開始時期に多少増加した が、それ以降は減り続け、ベトナム戦 争終了時には国家予算の二五%程度 まで下がっている。
その後、冷戦状 態に入っていったん増加したが、冷戦 の終結とともに再び減少に転じ、一 時は一五%程度まで下がった。
そして二〇〇〇年以降は、医療関 係を含めた健康関連の予算の割合が 次第に増加する傾向にある。
国防費 に対する抑制圧力となっているのは明 らかである。
その鍵を握る米国防総省の調達シ ステムは、軍事能力を開発するため のバックボーンとして位置付けられて いる。
それは次の三つの要素、「共同能 力統合と 開発システム(JCID S )」、「計画・プログラミング・予 算&実行 (PPBE)プロセス」、お よび「国防調達システム」から構成 されている(図3)。
それぞれJC IDSは統合参謀本部、PPBE は予算局、国防調達システムはAT & L(Acquisition Technology & Logistics:調達・技術・後方支援) 局が監督部署である。
このうち国防調達システムは国防 総省の装備品調達システムの根幹を 成すもので、国防総省指令(DoD Directive)「DoDD5000.1 」によって その方針が定められ、それに付随す る国防総省命令(DoD Instruction) 「DoDI5000.2」によってそのプロセス が規定されている。
DoDI5000.2は、装備品のライフサ イクルを定義し、それぞれのプロセス をフェーズに分け、各フェーズの終了 と次のフェーズへ進むべきかどうかの 意思決定点を定めている。
意思決定 点としては、フェーズの区切りとなる 「マイルストーン」のほか、フェーズ中 にも重要項目についてのレビューが実 施される。
図4は、DoD5000シリーズ が最初に発行された一九七一年にお ける調達フレームワークと、抜本的に 見直しが実施された九一〜九六年代 のフレームワーク、そして現状(二〇 〇八年)のフレームワークを比較した ものである。
また表1はSOLE日本支部の研 究会で米国防総省の歴代の調達シス テムを調査し、フェーズの構成や意思 決定点を整理して、その特徴をまと めたものである。
5000シリーズは、米国がベト ナム戦争の最中にあった一九六九年 に就任したリチャード・ニクソン大統 領と、メルビン・レアード国防長官、 デビッド・パッカード副国防長官に よって検討が始まった。
当初からその 目的は国防総省の調達コストの削減 米国防総省:調達システム改革の変遷 図1 米国国防費の推移(MS) 3,500,000 3,000,000 2,500,000 2,000,000 1,500,000 1,000,000 500,000 0 1962 1967 1972 1977 1982 1987 1992 1997 2002 2007 2012 国防費 健康 安全保障(予算) 安全保障(予算外) 国家予算 同時多発テロ(01) 湾岸戦争(91) 東西ドイツ統合 (90) ベトナム戦争(65-75) 図2 米国国防費の比率推移(%) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 1962 1967 1972 1977 1982 1987 1992 1997 2002 2007 2012 国防比率(%) 健康比率(%) 安全保障(予算)比率(%) 安全保障(予算外)比率(%) 91 APRIL 2013 その後、5000シリーズの二〇 〇〇年版では、ユーザーニーズの確 定を、ライフサイクルの最初だけでな く、各マイルストーンにおいても導入 可能にした。
これは最新技術の早期 導入により、装備品の性能向上を狙 ったものと思われる。
二〇〇〇年版におけるマイルスト ーンは三つ、フェーズは四つ、意思 決定点は五つであった。
これが二〇 〇三年版では、マイルストーン三つ、 フェーズ五つ、意思決定点六つに変 更された。
二〇〇八年版は、現在運用されて いるフレームワークであり、三つのマ イルストーン、五つのフェーズ、六つ の意思決定点が定義されている。
五 つのフェーズとは、「装備品ソリュー ション分析」、「技術開発」、「工学& 製造開発」、「生産&配備」、「運用& 支援」であり、これは民間企業にお ける製品ライフサイクルの表現と合致 している。
最近の装備品のデータによると、 このライフサイクル全体の費用のうち 「運用&支援フェーズ」で発生するも のが六〇%程度を占めている。
その ため国防総省では、多くの装備品に ついて延命化対策を取っている。
〇八年版の一つ前の版であった〇三 年版では、ユーザーニーズの確定がそ れぞれのマイルストーンごとに設定さ ストーン、意思決定点、フェーズの 数をそれぞれ五つに減らした。
また 調達フェーズに入る前の準備段階にお いて、ユーザーニーズを確定すること を積極的に意識するようになった。
さらに一九九六年版では、ライフ サイクルの最終フェーズとなる廃棄フ ェーズを意識する ようになった。
最 初のユーザーニーズ の確定から最後の 廃棄フェーズに至る ライフサイクル全体 への意識が強くな り、マイルストー ン、フェーズ、意 思決定点の数はそ れぞれ四つに減った。
また九六年には この他に規制文書 「DoD5000.2-R」が 新たに発行されて いる。
調達に関す るプロセスを仔細 に記述したものだ が、後にこれは規 制からガイドに位 置付けを変え、二 〇〇二年に初版が 発行される「国防 調達ガイド」のベー スとなった。
であった。
その最初のバージョンとなった一九 七一年の調達フレームワークでは、三 つのフェーズと三つのマイルストーン が定義された。
その後、九一〜九六年代に調達 システムの抜本的見直しが行われた。
暦年で六年足らずの間にDoDD5000.1 の発刊が二回行われ、その内容が大 きく変更された。
5000シリーズ の変革期であったと言える。
七一年の発行以来、5000シリ ーズには細かな変更が加えられ、フェ ーズの細分化やマイルストーン数が増 加していた。
詳細なレビューのために、 意思決定に数多くの文書が作成され るようになった。
その結果、八六年にはマイルスト ーンと意思決定点はそれぞれ六つに増 えていた。
これでは細分化し過ぎと いうことから、九一年の改訂でマイル 図3 国防総省の意思決定支援システム CJCS 3170.01 シリーズ MID 913 PPBSからPPBEへ DoD 5000 シリーズ 共同能力統合と 開発システム (JCIDS) 国防 調達 システム 計画、プログラミング、 予算&実行 (PPBE)プロセス DEPSECDEF 監督 マイルストーン 意思決定機関 (MDA) 監督 VCJCS / JROC 監督 図4 調達のフレームワーク 1971 コンセプト拡充 要求の 決定 フェーズ0 コンセプトの拡充/ 定義 フェーズ? デモと検証 フェーズ? 工学&生産の 開発 フェーズ? 製造&配備 フェーズ? 運用&支援 フルスケール開発生産/配備 2008 費用 1991-96 方針の原点 方針の大改革 スパイラル方式の禁止 非軍事化& 廃棄 0 A B C ? ? ? ? 装備品 ソリューション 分析技術開発工学&製造 開発 生産&配備 運用&支援 MDD Post CDRA FRP Decision Review 20% 20% 60% 顧客の要求 技術機会と資源 マイルストーン 意思決定点 れていた。
これを〇八年版では最初 の一回だけに改訂している。
即時性 を重視したためである。
また〇八年 版では設計と試作を繰り返すスパイラ ル方式の開発を禁止し、ウオータフォ ール型(V字型モデル)による開発の みを許すようになった。
しかし、〇八年度版においても意 思決定点は従来と同様に六つ設定さ れており、そこで必要とされる文書 類は、装備品の調達金額によって対 象を分類してはいるものの、増大す るばかりとなっている。
そのため最 近では、原点に戻れとの批判の声も 聞かれる。
国防総省の規格の変遷 米国防総省では、古くから軍独自 の規格を作成し、規格に基づく装備 品の性能保持に努めてきた。
しかし、 軍予算が縮小される中で、規格にこ だわることが装備品のオーバースペッ クを招いているとの批判を受け、一 九九四年、就任直後のウィリアム・ ペリー国防長官は「規格の見直しを 実施する」との通達を出した。
いわ ゆる?ペリーメモ?である。
この通達によって、九四年七月時 点で四万五五五〇もあった規格が二 〇〇一年一月には約二万六〇〇〇ま で減った。
そして国防総省は、廃止 された規格の代替として民間規格を 利用するようになった。
この間に民間の規格団体である「A NSI(米国国家規格協会)」や「E IA(米国電子工業会)」、「ISO (国際標準化機構)」等は、軍規格を 参考にして新たな規格を作成してい た。
それを今度は軍が利用するよう になったのである。
以下にシステムエンジニアリングに 関連するいくつかの規格について、そ の移行過程を追ってみる。
作業構造図 (Work Breakdown Structure) WBSはWork Breakdown Structure の略で、作業構造図などと訳されて いる。
軍とは別に民間のプロジェクト 管理の分野においてもWBSの検討 は進められてきた。
どちらかという と、軍は成果物を分解していくのに 対し、プロジェクト管理では、プロセ スを分解していくことに力点を置く 傾向があるようだ。
軍で最初にWBSの規格が発表さ れたのは、一九六八年の「MIL STD 881」である。
一九九三年には、W B Sの第三版に当たる「MIL STD 881B」が発刊された。
その後、九四年の?ペリーメモ?の 影響により、九八年にWBSは規格 から外れ、ハンドブックとなり、二〇 〇二年に「MIL HDBK 881」が発刊 APRIL 2013 92 表1 調達方針の変遷 年次 マイルストーン 数 フェーズ数 重要施設5000.1 の 原点 新マイル ストーンの 追加 サイクル タイムの 導入と モデルの 詳細化 外圧に 対する 見直し パッカード 委員会の 実践 方針の 大幅な 見直し 調達改革 の 本格開始 ガイド ブックの 発行 スパイラル 方式の 禁止 新 命令 (D)ページ数 主要装備品 購買全体 予算基準 年次 (D+?) ページ数 意思決定点 数 1971 − − 4 4 3 4 6 5 4 3 3 3 3 3 3 4 4 4 4 4 5 +1 (開始前) 4 +2 (開始前後) 4 4 5 5 3 3 4 4 4 4 6 5 4 5 6 6 6 7 8 15 24 16 15 35 15 15 139 10 10 50M 50M 75M 100M 200M 200M 200M 300M 300M 365M 365M 365M 200M 200M 300M 500M 1B 1B 1B 1.8B 1.8B 2.19B 2.19B 2.19B 1971 1972 1972 1980 1980 1980 1980 1990 1990 2000 2000 2000 27 82 48 41 577 146 74 139 90 90 1975 1977 1980 1982 1985 1987 1991 1996 2000 2002 2003 2008 された。
さらに〇五年には第二版と して「MIL HDBK 881A」が発刊さ れている。
しかし近年、調達の契約管理の観 点から、軍はWBSの重要性を改め て認識するようになり、再びWBS をハンドブックから規格に戻して、二 〇一一年に「MIL STD 881C」を発 刊している。
システム工学 (Systems Engineering) 軍がシステム理論を系統的にまとめ た一九六九年発刊の「MIL STD 499」 は、今日のシステム工学の 基礎となった資料である。
その後、九三年には第三版 として「MIL STD 499B」 が発刊されている。
システム工学の規格は、 民間企業でも有用である。
そのため民間団体による 規格化の動きも活発になり、 ISO、EIA、INC OSEからそれぞれ規格が 発表されている。
これらの 規格は「MIL STD 499」を 拡張したものが多い。
前述のようにペリーメモ 以降、軍では、システム工 学の規格に民間規格を採用 するようになり、軍独自の 規格は発刊しないようにし ていたが、一部の部署では 軍需品の特徴を表現するよ うな民間の規格がないこと から、軍独自の規格(MIL STD499C)を採用している ところもある。
ソフトウエア工学 (Software Engineering) ソフトウエア工学は、その対象がソフ トウエアに限定されているので、全体 的にまとめやすいこともあり、規格の 歴史も古い。
軍の最初の規格は、一九 八五年の「MIL STD 2167」であろう。
その後、九四年には「MIL STD 498」が発刊された。
これはソフトウ エア工学の原点として、ISOなど多 くの民間団体の規格に引用されている。
一方、九八年から軍は民間規格であ る「IEEE/EIA 12207」を採用してい る。
また軍は二〇〇五年にドイツで開 発されたV字型モデルも採用している。
構成管理 (Configuration Management) 構成管理とは、狭義には、ソフト ウエアの構成を管理することである。
ここでの構成とは一般には、システム (プロジェクトもシステムの一つと考え る)の構成(物理的構成や文書類も 含む)を管理することで、変更管理 をスムースに行うための基礎となるも のである。
ソフトウエアのサブルーチ ン構成やソフトウエアの版管理等はそ の一つである。
構成管理を考えるときには、何が 対象物で、そのライフサイクルのどの フェーズが対象なのか等を、あらかじ め定義しておくことが重要である。
軍では九二年に「MIL STD 973」を 発刊しているが、これを二〇〇九年 までに随時、民間規格の「EIA 649」 に移行させている。
また九七年に発 刊した「MIL HDBK 61」も、二〇〇 二年の「MIL HDBK 61B」の発刊後 に、随時、民間規格である「ANSI/ EIA 649」に移行している。
出来高管理 (Earned Value Management) 軍は古くからコストを尺度にしたプ ロジェクト管理を意識していた。
その 端緒は一九五九年の「PERT/C OST」にあると言われているが、本 格的な「出来高管理(Earned Value Management:EVM)」のはじまり は一九六七年の「C/SCSC」で ある。
その後、変遷を経て、現在ではE MVが軍の調達システムのプロジェク ト管理手法に採用され、各プロジェク トの進捗状況等を日常的にダッシュボ ードで閲覧可能となっている。
その ために、毎年「DID(Data Item Description)」を発刊し、最新の状況 を保証するようにしている。
なお現在 軍が採用している民間規格は「AN SI/EIA784」である。
以上に述べた軍規格の変遷を表2 にまとめた。
93 APRIL 2013 表2 規格の変遷 初期規格 WBS ’ 68 MIL-STD-881 ’ 11 MIL-STD-881C ’ 95 民間規格へ (ISO15288、EIA632A等) ’ 95 MIL-STD-499C ’ 98 民間規格へ (IEEE/EIA 12207)、Model ’ 09 民間規格へ (EIA649、ANSI/EIA649) ’ 09 民間規格へ (ANSI748) (’ 75)881A、(’ 93)881B (’ 98)HDBK881、(’ 05)HDBK881A (’ 09)STD973(Notice5) (’ 01)HDBK61A、(’ 02)HDBK61B (’ 67)DoDD、DoDI7000.2、 (’ 91)DoDI5000.2、(’ 96)DoD 5000.2-R (’ 74)STD499A、(’ 93)STD499B (’ 88)2167A、(’ 94)STD498 ’ 69 MIL-STD-499 ’ 85 MIL-STD-2167 ’ 92 MIL-STD-973 ’ 59 EVM PERT/COST システム工学 ソフトウエア 工学 構成管理 改訂現在(2012)
