2013年5月号
特集
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ポスト中国物流 解説 アジアの物流地図が塗り変わる
MAY 2013 12
特集
パナソニックの決断
パナソニックが国内の物流リストラにめどを付け、
ロジスティクスの軸足を本格的にアジアに移して
いる。
三月末、同社は一〇〇%子会社のパナソニ ックロジスティクス(PLC)の株式の三分の二 を日本通運に譲渡すると発表した。
PLCは二〇一二年三月期の売上高七三〇億 円、従業員数約一二〇〇人の大型物流子会社だ。
ただし、資産はほとんどない。
松下ロジスティク ス時代の〇七年に、当時所有していた国内一七カ 所の物流施設を計八五〇億円でプロロジスに売却 しているからだ。
一一年度には大規模な拠点集約も実施している。
東西二カ所に在庫を集約すると同時に、それまで 国内一四カ所に置いていた前線基地を一気に八カ 所に減らした。
国内の物量減少で稼働率の落ちた ネットワークを再編した。
これまでパナソニックは全国の系列販売店「パ ナソニックショップ(旧ナショナルショップ)」に 自社製品を供給するため、独自の物流インフラの 構築に巨費を投じ、そのオペレーションも自前で 運営してきた。
それが現在は国内で販売される製品でも多くが アジアからの輸入品に変わり、国内に分散して在 庫を置く意味はなくなった。
流通の川下では家電 量販店やネット通販がシェアを握り、系列店の地 盤沈下が顕著になっている。
末端の配送トラック の積載率の悪化に歯止めが掛からない状態だ。
他の家電メーカーも事情は変わらない。
嵩モノ の白物家電を扱っていないメーカーの積載率低下 はパナソニック以上に深刻とも言える。
そのため コスト競争力の低下とカントリーリスクの表面化で中国 生産の見直しが進んでいる。
同時にASEAN諸国の経済成 長でアジア内需が本格化。
さらには貿易・投資の自由化が 現地生産・現地販売の制約を取り払う。
どこから調達し、 どこで組み立て、在庫をどう置くのか。
アジアのロジステ ィクスを再構築する時が来た。
(大矢昌浩) パナソニックの松田雅信 モノづくり本部物流強化 グループマネジャー SGHDの辻本了章 経営企画部国際企画ユニ ット長シニアマネジャー アジアの物流地図が塗り変わる 解 説 13 MAY 2013 は約六三〇億円、うち約八割は国内物流事業が占 めている。
電機業界の物流子会社がメーカー系列 から離れて3PLの元に統合されていく。
一方、メーカーのロジスティクス管理は国内から アジアのネットワーク再編に焦点を移している。
昨 年四月にパナソニックは調達・物流本部機能を大 阪本社からシンガポールに移管した。
グローバルロ ジティクス本部(当時)の六〇人強のスタッフの うち、戦略担当チーム、契約担当チーム、IT担 当者の計一〇人余りがシンガポールに異動した。
その責任者として現地に赴任したパナソニック の松田雅信モノづくり本部物流強化グループマネ ジャーは「今や当社の国際物流の九割近くがアセ アンと中国で発生している。
その統制を取るために、 シンガポールをベースに香港と上海の部隊を有機 的に統合する。
物流会社との契約も集約し、競争 力のあるレートを引き出す」という。
物流交渉もアジアにシフト これまでメーンとしてきた日系の船社やフォワ ーダーだけでなく、欧米系やアジア系ともコミュ ニケーションを密にして、現状に最も適したパー トナーを選び直す。
長距離路線にまで手を伸ばし 始めたアジアのローコストキャリアの利用も視野に 入れている。
「我々の交渉相手となる物流会社側の価格決定 者は日本ではなく、シンガポールや香港にいる。
我々 も意思決定機能をこちらに移すしかない。
出張ベ ースで交渉するのと、日々顔を付き合わせてやり 取りするのとでは、やはり結果も違ってくる」と 松田物流強化GMは考えている。
日系物流会社の経営層も、もはや日本で安穏と 現場レベルでは帰り荷の融通など子会社同士の協 業も行われている。
しかし、合併や拠点統合など の踏み込んだ共同化は、これまで実現していない。
電機業界には有力メーカーの物流子会社が計八 社あった。
その業務内容、インフラともに重複す るところが多い。
統合して業界プラットフォーム を構築すれば大幅な効率化が実現することは従来 から指摘されてきた。
しかし、これまでは親会社 が問題を先送りし再編が進まなかった。
しかし今回、日通はPLCと同時にNECロジ スティクスの買収も発表している。
同社の株式の 四九%を取得し、一四年にこれを五一%に引き上 げるという。
NECロジの一二年三月期の売上高 してはいられない。
日本郵船は既に一〇年にコン テナ船事業の本部機能をシンガポールに移管して いる。
今年三月にはSGホールディングス(SG HD)が、海外事業の統括会社としてSGホール ディングス・グローバル(SGHG)を、やはり シンガポールに設立した。
SGHDは今後三年間でアジアの物流会社の買 収などに総額二六〇〇億円を投じる計画だ。
新会 社がその実行部隊となる。
同社の経営企画部長を 兼務するSGHDの辻本了章経営企画部国際企 画ユニット長シニアマネジャーは「新会社を立ち上 げるまで約二年間掛けて海外展開のグランドデザ インとその方法論を固めてきた。
水面下では有望 な買収案件の交渉も進んでいる。
これまでの遅れ を一気に挽回する」と意気込んでいる。
中国シフトは既に峠を越えた。
人件費高騰でコ ストメリットがなくなったことに加え、カントリ ーリスクの表面化で安定運営が難しくなっている ことから、多くの企業が生産ロケーションの再検 討を始めている。
グローバルサプライチェーンの前 提条件も変わってきた。
中国だけでなくASEA N諸国やインドが市場として台頭。
“アジア内需” が本格化すると同時に貿易・投資の自由化が進ん でいる。
国別の現地生産・現地販売の制約は取り 払われようとしている。
一九九〇年代に市場統合を果たしたEUでは、 通関事業の衰退によって物流業界の再編が進み、 けた違いの規模を誇るメガフォワーダーが誕生した。
国別に分かれていたロジスティクスネットワークの 統合ニーズは、3PLの台頭をもたらした。
二年 後に迫ったASEAN域内の関税撤廃をきっかけに、 同じことがアジアでも起きるかもしれない。
SGHD の海外事業構想(イメージ) 同社資料を元に本誌作成 SGHG 本社 フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング デリバリー デリバリー デリバリー
三月末、同社は一〇〇%子会社のパナソニ ックロジスティクス(PLC)の株式の三分の二 を日本通運に譲渡すると発表した。
PLCは二〇一二年三月期の売上高七三〇億 円、従業員数約一二〇〇人の大型物流子会社だ。
ただし、資産はほとんどない。
松下ロジスティク ス時代の〇七年に、当時所有していた国内一七カ 所の物流施設を計八五〇億円でプロロジスに売却 しているからだ。
一一年度には大規模な拠点集約も実施している。
東西二カ所に在庫を集約すると同時に、それまで 国内一四カ所に置いていた前線基地を一気に八カ 所に減らした。
国内の物量減少で稼働率の落ちた ネットワークを再編した。
これまでパナソニックは全国の系列販売店「パ ナソニックショップ(旧ナショナルショップ)」に 自社製品を供給するため、独自の物流インフラの 構築に巨費を投じ、そのオペレーションも自前で 運営してきた。
それが現在は国内で販売される製品でも多くが アジアからの輸入品に変わり、国内に分散して在 庫を置く意味はなくなった。
流通の川下では家電 量販店やネット通販がシェアを握り、系列店の地 盤沈下が顕著になっている。
末端の配送トラック の積載率の悪化に歯止めが掛からない状態だ。
他の家電メーカーも事情は変わらない。
嵩モノ の白物家電を扱っていないメーカーの積載率低下 はパナソニック以上に深刻とも言える。
そのため コスト競争力の低下とカントリーリスクの表面化で中国 生産の見直しが進んでいる。
同時にASEAN諸国の経済成 長でアジア内需が本格化。
さらには貿易・投資の自由化が 現地生産・現地販売の制約を取り払う。
どこから調達し、 どこで組み立て、在庫をどう置くのか。
アジアのロジステ ィクスを再構築する時が来た。
(大矢昌浩) パナソニックの松田雅信 モノづくり本部物流強化 グループマネジャー SGHDの辻本了章 経営企画部国際企画ユニ ット長シニアマネジャー アジアの物流地図が塗り変わる 解 説 13 MAY 2013 は約六三〇億円、うち約八割は国内物流事業が占 めている。
電機業界の物流子会社がメーカー系列 から離れて3PLの元に統合されていく。
一方、メーカーのロジスティクス管理は国内から アジアのネットワーク再編に焦点を移している。
昨 年四月にパナソニックは調達・物流本部機能を大 阪本社からシンガポールに移管した。
グローバルロ ジティクス本部(当時)の六〇人強のスタッフの うち、戦略担当チーム、契約担当チーム、IT担 当者の計一〇人余りがシンガポールに異動した。
その責任者として現地に赴任したパナソニック の松田雅信モノづくり本部物流強化グループマネ ジャーは「今や当社の国際物流の九割近くがアセ アンと中国で発生している。
その統制を取るために、 シンガポールをベースに香港と上海の部隊を有機 的に統合する。
物流会社との契約も集約し、競争 力のあるレートを引き出す」という。
物流交渉もアジアにシフト これまでメーンとしてきた日系の船社やフォワ ーダーだけでなく、欧米系やアジア系ともコミュ ニケーションを密にして、現状に最も適したパー トナーを選び直す。
長距離路線にまで手を伸ばし 始めたアジアのローコストキャリアの利用も視野に 入れている。
「我々の交渉相手となる物流会社側の価格決定 者は日本ではなく、シンガポールや香港にいる。
我々 も意思決定機能をこちらに移すしかない。
出張ベ ースで交渉するのと、日々顔を付き合わせてやり 取りするのとでは、やはり結果も違ってくる」と 松田物流強化GMは考えている。
日系物流会社の経営層も、もはや日本で安穏と 現場レベルでは帰り荷の融通など子会社同士の協 業も行われている。
しかし、合併や拠点統合など の踏み込んだ共同化は、これまで実現していない。
電機業界には有力メーカーの物流子会社が計八 社あった。
その業務内容、インフラともに重複す るところが多い。
統合して業界プラットフォーム を構築すれば大幅な効率化が実現することは従来 から指摘されてきた。
しかし、これまでは親会社 が問題を先送りし再編が進まなかった。
しかし今回、日通はPLCと同時にNECロジ スティクスの買収も発表している。
同社の株式の 四九%を取得し、一四年にこれを五一%に引き上 げるという。
NECロジの一二年三月期の売上高 してはいられない。
日本郵船は既に一〇年にコン テナ船事業の本部機能をシンガポールに移管して いる。
今年三月にはSGホールディングス(SG HD)が、海外事業の統括会社としてSGホール ディングス・グローバル(SGHG)を、やはり シンガポールに設立した。
SGHDは今後三年間でアジアの物流会社の買 収などに総額二六〇〇億円を投じる計画だ。
新会 社がその実行部隊となる。
同社の経営企画部長を 兼務するSGHDの辻本了章経営企画部国際企 画ユニット長シニアマネジャーは「新会社を立ち上 げるまで約二年間掛けて海外展開のグランドデザ インとその方法論を固めてきた。
水面下では有望 な買収案件の交渉も進んでいる。
これまでの遅れ を一気に挽回する」と意気込んでいる。
中国シフトは既に峠を越えた。
人件費高騰でコ ストメリットがなくなったことに加え、カントリ ーリスクの表面化で安定運営が難しくなっている ことから、多くの企業が生産ロケーションの再検 討を始めている。
グローバルサプライチェーンの前 提条件も変わってきた。
中国だけでなくASEA N諸国やインドが市場として台頭。
“アジア内需” が本格化すると同時に貿易・投資の自由化が進ん でいる。
国別の現地生産・現地販売の制約は取り 払われようとしている。
一九九〇年代に市場統合を果たしたEUでは、 通関事業の衰退によって物流業界の再編が進み、 けた違いの規模を誇るメガフォワーダーが誕生した。
国別に分かれていたロジスティクスネットワークの 統合ニーズは、3PLの台頭をもたらした。
二年 後に迫ったASEAN域内の関税撤廃をきっかけに、 同じことがアジアでも起きるかもしれない。
SGHD の海外事業構想(イメージ) 同社資料を元に本誌作成 SGHG 本社 フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング フォワーディング デリバリー デリバリー デリバリー
