2013年5月号
特集
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第5部 インドネシア──沸き上がる内需 日系自動車王国を支えるJIT物流
MAY 2013 38
渋滞やデモがミルクランの障壁に
トヨタ、トヨタ、日産、ダイハツ、ホンダ、そ
してまたトヨタ──。
首都、ジャカルタの道路は日系自動車メーカー の車で溢れている。
インドネシア自動車工業会に よると、二〇一二年の自動車販売台数は前年比二 四・八%増の一一一万六二三〇台だった。
このう ち九五%を日系メーカーが占めている。
インドネシアの自動車市場規模は、タイに次い で現在ASEAN第二位。
しかしその経済規模と 成長性からASEAN随一の市場となり、不動の 地位を築くのは時間の問題と見られている。
その ため、日系各社が手を緩める様子は全くない。
単独で四割近いシェアを握る首位トヨタは、今 年三月にカラワン第二工場を開設。
これにより、 インドネシアにおける生産能力は一四年までに現 行の一〇万台から二五万台に拡大する見通しだ。
日産自動車もチカンペック工場の生産能力を一 四年までに現行の一〇万台から二五万台にまで増 強する。
シェア六位に留まる現在のプレゼンスを 高めたい考えだ。
同様に、スズキやホンダも生産 能力を現行の二〜三倍の水準にまで引き上げる。
この流れに乗り、自動車業界を主要荷主とする 物流企業各社も積極的な姿勢を鮮明にしている。
豊田通商の現地子会社「豊通ロジスティクスセン ター( T T L C )」 の中統史社長は「成 熟しつつあるタイと は異なり、インドネ シアの自動車市場の 成長は今後ますます 加速していく。
物流企業にとっても多くのチャン スが眠っている。
今は大きな投資をかけてでも、 積極的にそのチャンスをものにするべきフェーズだ」 と判断している。
TTLCは一九九五年の設立。
ミルクランやベ ンダー間の部品集約物流、倉庫サービスなどを展 開している。
このうちミルクランではトヨタやダ イハツ、日野自動車などを主要荷主に抱えている。
約一五〇社のサプライヤーを回って自動車部品を ピックアップし、荷主の生産拠点に納めている。
荷主への納入回数は月八四〇〇回を数える。
その規模をさらに拡大させる。
現在、ミルクラ ンで稼働しているトラックは一六二台、ルート数 は一三五ルートだが、今年度中にトラック台数を 最大一八〇台に増強し、ルート数を一五〇にまで 拡げる方針だ。
並行して、車両のスペックアップ も実施する。
受注状況も好調だ。
その一例として、TTL Cは今年三月に稼働したトヨタのカラワン第二工 場における調達物流の大半を受注した。
トヨタは インドネシアで複数の物流会社に調達物流を委託 しているとみられるが、今回の受注によってTT LCの扱い規模が最も大きくなったことはほぼ確 日系自動車王国を支えるJIT物流 インドネシアの自動車市場は日系メーカーが上位を席巻 している。
首位トヨタは既に小ロット多頻度のJIT納入を物 流企業に要求している。
それに対して日産は大ロット発注・ 大ロット納品を基本としている。
ただし、今後は日本式の 高度な物流を必要とする可能性が高い。
応えられるのは日 系物流プレーヤーだけだ。
(石鍋 圭) ミルクランにガルウィング車を投入 日本と同様のGPS 管理を実施 TTLCの中統史社長 第 5 部 インドネシア──沸き上がる内需 39 MAY 2013 は当たり前の取り組みだが、インドネシアで実践 できる物流プレーヤーは限られている。
今後は新たな分野にも取り組む。
その一つが完 成車輸送だ。
インドネシアでは生産拠点から販売 店までの完成車輸送は主にディーラーが行うが、 その品質は高いとは言えない。
その領域に踏み込む。
まずはトヨタの現地主要ディーラーの一社である 「Nasmoco」社の担当領域を段階的に請け 負いたい考えだ。
さらに、補修部品への意欲も燃 やしている。
中社長は「幅広いサービスで既存荷主に貢献す ると同時に、新規荷主も積極的に開拓する。
イン ドネシアではメーカーごとの系列は関係ない。
当 社の強みを活かしながら、インドネシアでの事業 基盤を強化していく」と意気込みを語る。
バンテックが日産向け倉庫を稼働 バンテックは一一年十二月に現地子会社「バン テック・インドモービル・ロジスティクス(VID)」 を設立した。
翌一二年十二月には約二万五〇〇〇 ?の倉庫が竣工。
今年一月から本格稼働させてい る。
それまではフォワーディング事務所の展開に 留まっていたが、国内物流に本格参入した格好だ。
VIDのターゲットは倉庫立地を見れば明らか だ。
日産のチカンペック工場と同じ工業団地内、 それも目と鼻の先に位置している。
同社の西山真 人社長は「日本やイギリス市場と同じように、イ ンドネシアでも日産自動車にとって不可欠な物流 パートナーになることが当面の目標だ」と言う。
喫緊の課題は事業領域の拡充だ。
現在VIDが 提供しているサービスは、港に上がった自動車部 品を自社倉庫に保管し、それをそのまま日産の生 実だ。
世界一厳しい荷主から選ばれる最大の理由は、 高度な輸送管理能力にある。
インドネシアでトヨ タが求めるミルクランや多頻度少量のJIT納入 を実現するのは容易ではない。
自動車産業が集積 する高速道路の渋滞は想像を超える。
労働者のデ モなどによって、調達先のサプライヤーが約束の 時間までに部品を用意できていないこともある。
中社長は「不測の事態を前提にした上でシステ ムとオペレーションを組み、それを運用する能力 が必要になる。
ハードルが高いだけに、豊田通商 グループが培ってきた厳しい管理基準の物流サー ビスが競争力として活きる」と自信をのぞかせる。
例えばGPS管理では他社の多くが位置情報の 把握に留まっているのに対し、TTLCは代替ル ートの選定にまで活用領域を拡げている。
トラブ ルがあれば別のルートを走っているトラックの位 置や残りの燃料、調達先と納品先までの位置関係 などを収集し、最適の方法を割り出して実行する。
同時に、荷主と緊密に連絡を取り合って生産工 程への影響を可能な限り抑えるよう努める。
さら にそのプロセスや結果を分析して荷主と共有し、 その後の実務にフィードバックしている。
日本で 産拠点に届ける という単純な作 業に留まってい る。
一日当た りの納品回数も 少なく、流通 加工もほとんど発生しない。
コストが割高な日系 物流企業がメーンとする領域ではない。
西山社長も「付加価値型のメニューを展開でき なければ当社の強みは発揮できない。
グローバル で展開しているすべてのサービスを提供できる体 制を、早期に整える必要がある」と認める。
ただし、すぐにすべてのメニューが受け入れら れるとは限らない。
例えば現在のインドネシアの 日産には、トヨタが実施しているようなミルクラ ンや多頻度納品といったサービスは適合しない部 分がある。
自動車部品の発注が大ロットで、それ を前提に生産ラインを組んでいるからだ。
だが将来的にはその必要性が出てくる可能性が 高い。
日産の事業規模が拡大し、現在の生産手法 に見直しが入れば、部品の購買ロットや納品頻度 も必然的に変わる。
その時、日本式の高度な物流 が改めて必要とされる。
荷主の事業モデルと歩調 を合わせながら、その時に最適なサービスを提供 する能力がVIDに求められている。
西山社長は「現在の具体的な打ち手の一つとし て、補修部品の保管を検討している。
補修部品で は倉庫レイアウトや庫内オペレーションに独特のノ ウハウが必要になる。
バンテックグループの経験 が存分に活かせる分野だ。
まだインドネシアでの 事業は緒に就いたばかりだが、着実に経験と実績 を重ねていく」と語る。
新倉庫は日産の工場の目と鼻の先に 庫内は既に満床になっている VIDの西山真人社長 特 集 中国物流
首都、ジャカルタの道路は日系自動車メーカー の車で溢れている。
インドネシア自動車工業会に よると、二〇一二年の自動車販売台数は前年比二 四・八%増の一一一万六二三〇台だった。
このう ち九五%を日系メーカーが占めている。
インドネシアの自動車市場規模は、タイに次い で現在ASEAN第二位。
しかしその経済規模と 成長性からASEAN随一の市場となり、不動の 地位を築くのは時間の問題と見られている。
その ため、日系各社が手を緩める様子は全くない。
単独で四割近いシェアを握る首位トヨタは、今 年三月にカラワン第二工場を開設。
これにより、 インドネシアにおける生産能力は一四年までに現 行の一〇万台から二五万台に拡大する見通しだ。
日産自動車もチカンペック工場の生産能力を一 四年までに現行の一〇万台から二五万台にまで増 強する。
シェア六位に留まる現在のプレゼンスを 高めたい考えだ。
同様に、スズキやホンダも生産 能力を現行の二〜三倍の水準にまで引き上げる。
この流れに乗り、自動車業界を主要荷主とする 物流企業各社も積極的な姿勢を鮮明にしている。
豊田通商の現地子会社「豊通ロジスティクスセン ター( T T L C )」 の中統史社長は「成 熟しつつあるタイと は異なり、インドネ シアの自動車市場の 成長は今後ますます 加速していく。
物流企業にとっても多くのチャン スが眠っている。
今は大きな投資をかけてでも、 積極的にそのチャンスをものにするべきフェーズだ」 と判断している。
TTLCは一九九五年の設立。
ミルクランやベ ンダー間の部品集約物流、倉庫サービスなどを展 開している。
このうちミルクランではトヨタやダ イハツ、日野自動車などを主要荷主に抱えている。
約一五〇社のサプライヤーを回って自動車部品を ピックアップし、荷主の生産拠点に納めている。
荷主への納入回数は月八四〇〇回を数える。
その規模をさらに拡大させる。
現在、ミルクラ ンで稼働しているトラックは一六二台、ルート数 は一三五ルートだが、今年度中にトラック台数を 最大一八〇台に増強し、ルート数を一五〇にまで 拡げる方針だ。
並行して、車両のスペックアップ も実施する。
受注状況も好調だ。
その一例として、TTL Cは今年三月に稼働したトヨタのカラワン第二工 場における調達物流の大半を受注した。
トヨタは インドネシアで複数の物流会社に調達物流を委託 しているとみられるが、今回の受注によってTT LCの扱い規模が最も大きくなったことはほぼ確 日系自動車王国を支えるJIT物流 インドネシアの自動車市場は日系メーカーが上位を席巻 している。
首位トヨタは既に小ロット多頻度のJIT納入を物 流企業に要求している。
それに対して日産は大ロット発注・ 大ロット納品を基本としている。
ただし、今後は日本式の 高度な物流を必要とする可能性が高い。
応えられるのは日 系物流プレーヤーだけだ。
(石鍋 圭) ミルクランにガルウィング車を投入 日本と同様のGPS 管理を実施 TTLCの中統史社長 第 5 部 インドネシア──沸き上がる内需 39 MAY 2013 は当たり前の取り組みだが、インドネシアで実践 できる物流プレーヤーは限られている。
今後は新たな分野にも取り組む。
その一つが完 成車輸送だ。
インドネシアでは生産拠点から販売 店までの完成車輸送は主にディーラーが行うが、 その品質は高いとは言えない。
その領域に踏み込む。
まずはトヨタの現地主要ディーラーの一社である 「Nasmoco」社の担当領域を段階的に請け 負いたい考えだ。
さらに、補修部品への意欲も燃 やしている。
中社長は「幅広いサービスで既存荷主に貢献す ると同時に、新規荷主も積極的に開拓する。
イン ドネシアではメーカーごとの系列は関係ない。
当 社の強みを活かしながら、インドネシアでの事業 基盤を強化していく」と意気込みを語る。
バンテックが日産向け倉庫を稼働 バンテックは一一年十二月に現地子会社「バン テック・インドモービル・ロジスティクス(VID)」 を設立した。
翌一二年十二月には約二万五〇〇〇 ?の倉庫が竣工。
今年一月から本格稼働させてい る。
それまではフォワーディング事務所の展開に 留まっていたが、国内物流に本格参入した格好だ。
VIDのターゲットは倉庫立地を見れば明らか だ。
日産のチカンペック工場と同じ工業団地内、 それも目と鼻の先に位置している。
同社の西山真 人社長は「日本やイギリス市場と同じように、イ ンドネシアでも日産自動車にとって不可欠な物流 パートナーになることが当面の目標だ」と言う。
喫緊の課題は事業領域の拡充だ。
現在VIDが 提供しているサービスは、港に上がった自動車部 品を自社倉庫に保管し、それをそのまま日産の生 実だ。
世界一厳しい荷主から選ばれる最大の理由は、 高度な輸送管理能力にある。
インドネシアでトヨ タが求めるミルクランや多頻度少量のJIT納入 を実現するのは容易ではない。
自動車産業が集積 する高速道路の渋滞は想像を超える。
労働者のデ モなどによって、調達先のサプライヤーが約束の 時間までに部品を用意できていないこともある。
中社長は「不測の事態を前提にした上でシステ ムとオペレーションを組み、それを運用する能力 が必要になる。
ハードルが高いだけに、豊田通商 グループが培ってきた厳しい管理基準の物流サー ビスが競争力として活きる」と自信をのぞかせる。
例えばGPS管理では他社の多くが位置情報の 把握に留まっているのに対し、TTLCは代替ル ートの選定にまで活用領域を拡げている。
トラブ ルがあれば別のルートを走っているトラックの位 置や残りの燃料、調達先と納品先までの位置関係 などを収集し、最適の方法を割り出して実行する。
同時に、荷主と緊密に連絡を取り合って生産工 程への影響を可能な限り抑えるよう努める。
さら にそのプロセスや結果を分析して荷主と共有し、 その後の実務にフィードバックしている。
日本で 産拠点に届ける という単純な作 業に留まってい る。
一日当た りの納品回数も 少なく、流通 加工もほとんど発生しない。
コストが割高な日系 物流企業がメーンとする領域ではない。
西山社長も「付加価値型のメニューを展開でき なければ当社の強みは発揮できない。
グローバル で展開しているすべてのサービスを提供できる体 制を、早期に整える必要がある」と認める。
ただし、すぐにすべてのメニューが受け入れら れるとは限らない。
例えば現在のインドネシアの 日産には、トヨタが実施しているようなミルクラ ンや多頻度納品といったサービスは適合しない部 分がある。
自動車部品の発注が大ロットで、それ を前提に生産ラインを組んでいるからだ。
だが将来的にはその必要性が出てくる可能性が 高い。
日産の事業規模が拡大し、現在の生産手法 に見直しが入れば、部品の購買ロットや納品頻度 も必然的に変わる。
その時、日本式の高度な物流 が改めて必要とされる。
荷主の事業モデルと歩調 を合わせながら、その時に最適なサービスを提供 する能力がVIDに求められている。
西山社長は「現在の具体的な打ち手の一つとし て、補修部品の保管を検討している。
補修部品で は倉庫レイアウトや庫内オペレーションに独特のノ ウハウが必要になる。
バンテックグループの経験 が存分に活かせる分野だ。
まだインドネシアでの 事業は緒に就いたばかりだが、着実に経験と実績 を重ねていく」と語る。
新倉庫は日産の工場の目と鼻の先に 庫内は既に満床になっている VIDの西山真人社長 特 集 中国物流
