2013年6月号
特集
特集
第3部 情報共有化とシステム活用
JUNE 2013 26
「単品管理」を支える仕組み
セブン─イレブンにおける情報システム活用の基
本は「需給管理」すなわち「デマンド・チェーン・
マネジメント(DCM)」であり、そのために必
要な情報を入手し、それを取引先のメーカーやベ
ンダーも含め必要とする人に提供することである。
DCMは店舗からの発注がその起点となる。
発 注が乱れると、店舗の売り上げに影響するだけで なく、それによって配送センターのオペレーション や在庫、製造工程まで全てが大きくぶれてしまう。
そのためセブン─イレブンでは一九七四年に東京 の豊洲に一号店を開店してから四年後の七八年に 「第1次店舗システム」を開発して、バーコードを 利用した発注業務のシステム化を行っている。
八 二年の「第2次総合店舗システム」では日本で初 めてPOSレジスターを本格的に導入した。
その後も店舗システムは数回にわたる大改造に よって進化し、現在は「第6次」が稼働している。
これらのシステム開発の最大の目的は発注精度を 上げることにあり、それは「第1次」の開発から 現在に至るまで何ら変わっていない。
コンビニで販売している約二八〇〇アイテムの 商品の売れ行きを単品ごとに管理する「単品管 理」の思想がそのベースになっている。
「単品管理」 とは一言で言えば「明日、自分の店で何がどれだ け売れるのか、何をいくつ売り込むのか」を考え るための手法である。
おにぎりを例に取ってみよう。
明日、店舗の近 くの公園で小学生のサッカーの試合があるという 情報が入った。
それによって、おにぎりの販売に はどのような影響が生じるだろうか。
選手が小学生の場合、試合を観戦に来ている親 が当然、食べ物の手配をすることになる。
明日の 天気予報は晴れ。
炎天下の試合になる。
親は安全 で保存の利く商品を選ぶだろう。
おにぎりの具材 でいうと「梅」や「昆布」、「鮭」などの塩気の利 いた商品を好んで選ぶはずだ。
そんな仮説が成り 立つ。
従って、子供が好きな「ツナマヨ」や「エ ビマヨ」など傷みやすいマヨネーズを使った商品 よりも、「梅」、「昆布」、「鮭」の発注を増したほ うがいい。
同じサッカーの試合でも、これが中学生や高校 生の試合なら売れる商品もまた違ってくる。
「梅」、 「昆布」、「鮭」などは選ばれず、「ツナマヨ」や「エ ビマヨ」などのマヨネーズ系や「ソーセージ」な ど食べ応えのある具材に人気が集まるだろう。
中 高生となると親ではなく、本人が自分で食べ物を 選ぶからである。
このように、おにぎり全体の量を増減するので はなく、その中のどの商品(SKU)に、どれだ けのニーズがあるのかまで考えることが重要である。
それが「単品管理」なのである。
「単品管理」のために、店舗では納品日の天候 気温や催事などの情報を収集し、誰がどのように 購入するのか「仮説」を立て、商品の「発注」を 行い、納品、陳列、販売を行う。
さらにその後も POSデータを確認して、店舗で立てた仮説が正 しかったのか間違っていたのかを「検証」し、そ れを次の発注に役立てる。
この「仮説」➡「発注」➡「検証」の一連の 単品管理を総合店舗システムが支えている。
シス テムが明日の単品ごとの発注数を教えてくれるわ けではない。
今日のPOSデータの実績だけで明 情報共有化とシステム活用 全国1万5000店に同じ品質の商品を安定的に供給 し、かつ毎週100アイテムもの商品の入れ替えを行 うには、精度の高い需給調整機能が不可欠だ。
そ のためにセブン-イレブンは情報インフラの高度化に 継続的に取り組み、情報の活用ノウハウを蓄積して きた。
27 JUNE 2013 特集 ータを分析し、情報精度や仮説の立て方、単品 数量への落とし込み方を自分で「検証」するの である。
この行為を店内で販売している全ての商品につ いて繰り返し行うことで、顧客のニーズを捉えた 品揃えができるようになり、買い物の満足度や店 舗に対する信頼度が上がるのである。
その結果と して、店舗の売り上げと利益が増加するという図 式である。
総合店舗システムはそのツールである にすぎない。
「チームMD」における情報共有 売り場面積がわずか三〇坪程度のコンビニ一店 舗当たりのアイテム別発注数は限られている。
し かし、それが一万五〇〇〇店も集まると膨大な量 になる。
全国の全ての店舗に全く同じ品質の商品 を供給するためには、調達に大変な気を遣わなけ ればならない。
二〇〇五年に期間限定で販売して大ブームにな った「空弁」を例に、これを考えてみよう。
「空弁」 は鯖の片身を焼き酢飯の上に乗せた弁当であった。
販売期間は二週間で、一店舗当たりの確保量は合 計一〇〇個という規制をかけていた。
原材料の確 保に限界があったからだ。
一店当たり一〇〇個でも当時のセブン─イレブン の店舗数は約一万一〇〇〇店であったため、原材 料として一一〇万個分の「片身の鯖の切り身」を 調達する必要があった。
しかも鯖のサイズには厳 密な規定があり、大き過ぎても小さ過ぎても弁当 には使えない。
味や品質にバラツキが出ることも 避けなければならないため、産地も決まっている。
従って、同じ産地のほぼ同じサイズの鯖を、(使 日の発注数を決めてしまってもいけない。
そうで はなく、「仮説」を立てるのである。
システムは納品日の天候・気温、全国規模の催 事情報、単品ごとの販売状況、販売キャンペーン、 メディア情報などの必要な関連情報を提供してく れる。
それに店舗が自ら集めた情報を加えて「仮説」 を立て、それを単品ごとの数量に落とし込んで「発 注」を行う。
そして販売が終わった後にPOSデ うのは半身なので)計五五万匹確保しなければな らなかったわけである。
これを一定期間中に調達 するとなると、需給管理にわずかなミスが発生し ただけで、たちどころに商品供給ができなくなっ てしまう。
「空弁」のようなヒット商品は店舗も、もっと 売りたいと言ってくる。
お客様からももっと欲し いとの声をいただく(実際、定番化を望む声が多 かった)。
しかし、型と品質の揃った鯖をそれだ け大量に安定供給するのは非常に困難なことであ った。
このように全国一万五〇〇〇店への商品供給は、 大げさに言えば、地球の生態系にまで影響を及ぼ す可能性さえ秘めている大仕事なのである。
それ をコントロールしているのが「チーム・マーチャン ダイジング(チームMD)」である。
チームMDはセブン─イレブンの商品部と物流部、 デイリー品メーカー、さらには原材料や包装資材 などの調達先によって構成されている。
現在セブ ン─イレブンが企画する商品は全てこの四者から成 るチームMDの協働作業から生まれている。
四者の間では様々なデータが共有されている。
デイリー品のPOSデータに関しては、発注締め 後の確定データだけでなく、時間ごとの「仮締め データ」も共有している。
一つの具材でも揃わな ければ出荷できない弁当や惣菜の需給管理に、こ れが大きな威力を発揮する。
発注締め時間は毎日十一時だが、それより前の 早朝時点や前日夕方時点での発注数を確認するこ とで、その日の最終的な発注量を予測するのである。
それに基づいて事前の仕込みを行い、必要があれ ば具材等の緊急発注をかける。
製造時刻から出荷 図1 チームマーチャンダイジング 販売情報 共配センター 店舗 チームMD ・商品開発 ・需要管理 販売情報 発注情報 (web) 納品 配送 発注 発注 販売情報 ──マーケット分析 ──販売情報分析 ──客層分析 顧客ニーズに合わせた商品開発の実現 納品 商品部 原材料 ベンダー デイリー品 メーカー 販売情報 JUNE 2013 28 までのリードタイムが非常に短い商品であるため、 そうした分刻みのコントロールが求められるので ある。
通常、店頭で商品が売れると、店舗は物流セン ターに、物流センターはベンダーに、ベンダーはメ ーカー(工場)に対してその商品の発注を行う。
店頭で売れた分だけを発注すれば良いが、各段階 の関係者は欠品を恐れるため、発注量はメーカー にさかのぼるまでの間に大きく膨れ上がってしま うことが多い。
実際、セブン─イレブンでも以前は、店頭や物流 センター、卸の倉庫などで多くの余剰在庫が発生 していた。
そのほとんどが廃棄処分となるため、 メーカーやベンダーはもちろん、セブン─イレブン にとっても死活問題である。
そのため従来からメーカーやベンダーはそれぞ れ独自に需要予測の高度化に取り組んでいた。
し かしサプライサイドだけの取り組みには限界があ った。
そこで、セブン─イレブンはPOSデータを はじめとするデマンドサイドの情報を、サプライサ イドと共有するDCMに乗り出した。
積極的な情 報公開を進めたのである。
その結果、需給調整の管理レベルは格段に上が り、品切れ率を抑えたまま、原材料メーカーから 生産メーカー、配送センター、店舗に至るトータ ル在庫量を低減し、廃棄損を大きく減らしたので ある。
原材料調達のコントロール チームMDにおける具体的な情報の流れやその 内容を見てみよう。
店舗からの発注データは締め時間からわずか九 分後の十一時九分に、全てのデイリー品メーカー に製造指示書として配信される。
製造指示書には 発注個数だけでなく、必要な具材の数も明記され ている。
幕の内弁当であれば、「焼き魚の切り身 が何個」、「ソーセージが何本」、「煮物が何キログ ラム」という具合である。
メーカーはそのデータを基に、原材料の必要量 や仕込み時間などを計算する。
米飯であれば、炊 飯の開始時間などもスケジューリングする。
そし て工場内の在庫量を確認し、予測使用量との差分 を原材料ベンダーに発注する。
最短で翌日には原材料が納品される。
ちなみに、 その輸送に店舗向けの共同配送インフラを利用す る取り組みが進められている。
デイリー品の工場 と配送センターは併設もしくは近接しているケー スが多いことから、デイリー品の配送センター間 を横持ちするチルド品の幹線輸送便を活用し、原 材料調達費の低減を図っている。
データの開示は全てウェブ上で行われる。
メー カーやベンダーは専用端末などを改めて用意する 必要はない。
セブン─イレブン本部にPCを登録し、 証明書を発行するだけだ。
それでも筆者が知る限 りセキュリティを含めデータ開示に関して大きな問 題は発生していない。
ウェブ上で開示される情報は発注データをはじ め、新商品情報から理論消費量まで多岐に渡る。
それを元にメーカーが「共同購入組織」を通じて 原材料メーカーに発注をかける。
この共同購入組 織はセブン─イレブンのデイリー品を生産するメー カーの原材料コスト削減のために組織された組合 だ。
複数のメーカーが共通して使用する原材料の 調達を共同化で仕入れることで原価の引き下げを 図っている。
さらに原材料ベンダーから各地のデイリー品工 場への納品も共同化しているのは先に述べた通り。
これによって原材料のトレーサビリティも可能と なり、商品事故などが発生した場合の対応が非常 に迅速に行えるようになった。
新商品の在庫コントロール 非デイリー品(常温商品、フローズン商品など) 図2 需給管理による販売と製造の関係 製造受注 3 個3 個 発注在庫受注 3 個20個3 個 発注在庫受注 3 個15個3 個 発注在庫販売 3 個7個3個 購入 3 個 売れた量だけ補充すれば、 廃棄ロスは生じない メーカーベンダー物流センター店舗消費者 発注・販売 在庫情報 Web 発注・販売情報 Web 29 JUNE 2013 特集 の需給管理・情報共有化も進んでいる。
非デイリー品は「在庫型」の商品であり、ベン ダーの在庫を共同配送センターで預かっているか たちである。
その在庫補充発注の権限と責任も共 同配送センター自身が担っている。
十分かつ確度 の高い関係情報がなければ需給管理の乱れを招き、 センター運営に大きな支障を来してしまう。
そのために、非デイリー品においては「取引先 情報システム」と呼ぶ情報インフラを通して、発 注の「仮締めデータ」とPOSデータによる実績 データを開示している。
この仕組みの最も重要な 役割は流通のトータル在庫の最適化であり、過剰 在庫を極限まで低減させることである。
セブン─イレブンでは、デイリー商品などを含め て毎週およそ一〇〇種類もの新商品が発売される。
ただし、本部推奨商品の数にはほとんど増減がない。
つまり、一〇〇アイテムの新商品が発売されるの と同時に、一〇〇アイテムがカット(推奨取り消し) されているのである。
そのコントロールが非デイリー品の共同配送セン ターの大きな鍵になる。
先ほどの取引先情報シス テムはそのためのツールであり、新商品の在庫量 を算出し、また推奨取り消し後の「カット残在庫」 の削減に利用されている。
非デイリー品の新商品を導入する際、各配送セ ンターにどれだけ在庫を確保するかは基本的には 各ベンダー(卸)が判断する。
ただし、事前にセ ブン─イレブンの商品部と予測を詰めておく。
先に述べた通り非デイリー品は店舗に「月・水・ 金」と「火・木・土」の二パターンで納品してい るため、大型の新商品であっても初日(月曜日の 夜間に納品する分)の在庫量さえ配送センターに 確保できていれば、後は店舗からの発注に基づい て補充をかければいい。
しかし実際にはテレビCMなどにより人気や話 題が先行している新商品の場合は、一店舗当たり 一〇〇ロットもの発注が来ることもある。
初回(月 曜日の夜)の納品分ですら数量が不足する可能性 がある。
これを防止するためにデイリー品と同様に、発 注の「仮締めデータ」を活用し、それが予測数量 を超えている場合には月曜の午前中までにメーカ ーに追加補充を要請する。
これによって月曜、火 曜と続けてメーカーが在庫を欠品させない限り、 センターで欠品が発生することはない。
カット残在庫の削減方法 これに対して本部の推奨が取り消しとなった「カ ット残在庫」の読みは非常に難しい。
店舗に推奨 取り消し(推奨カット)が告示されるのは、カッ ト日の約一週間前だ。
告示以降は、よほどのこと がない限り、店舗からの発注はほとんどゼロとな る。
つまり、推奨カットの告示日が実質的なカッ ト残在庫のスタートとなる。
一方、配送センターへの告示は、店舗への告示 日の約二週間前である。
このタイムラグを使って カット残在庫をできる限り削減しなければならな い。
ここで使用するデータは、週別、日別の地区 ごとの販売数、導入率(店での扱い率)などであ る。
これらのデータを毎日確認しながら、ほかの センターと協議し、在庫の横持ちなどの調整を行う。
どの地区のセンターの在庫が多いのか、あるい は少なくなっているのか、各地区の販売数はどう 推移しているのかなど、ウェブ上のデータを表計 算ソフトに落として分析する。
売れそうな地区を 見つけてほかの地区から在庫を転送するのである。
スムーズに商品の切り替えができれば廃棄損を 減らせるだけでなく、保管スペースの有効利用が できるようにもなるため、新製品のハンドリング も楽になる。
庫内作業の生産性向上と固定費の負 担増を回避できるのである。
(信田洋二) 図3 需給管理と物流のオペレーション連携 店舗メーカー ベンダー ?積極的な売場展開 ?チャンス・ ロスの軽減 ?ロイヤリティの向上 ?情報共有と商品開発 ?計画生産・計画配送 ?流通在庫把握による欠品防止・生産 調整 ?需給管理の精度向上 ?在庫管理・欠品防止・返品削減 ?返品不可在庫のリスク低減 ?仕分け・納品 ?在庫管理・欠品防止・ 返品削減 ?メーカー発注精度向上 納品 Web Web Web 取引先情報 システム ?推奨店舗数 ?導入率 ?発注速報 ?納品数量 ?販売数量 ──など 納品 納品 共配センター
DCMは店舗からの発注がその起点となる。
発 注が乱れると、店舗の売り上げに影響するだけで なく、それによって配送センターのオペレーション や在庫、製造工程まで全てが大きくぶれてしまう。
そのためセブン─イレブンでは一九七四年に東京 の豊洲に一号店を開店してから四年後の七八年に 「第1次店舗システム」を開発して、バーコードを 利用した発注業務のシステム化を行っている。
八 二年の「第2次総合店舗システム」では日本で初 めてPOSレジスターを本格的に導入した。
その後も店舗システムは数回にわたる大改造に よって進化し、現在は「第6次」が稼働している。
これらのシステム開発の最大の目的は発注精度を 上げることにあり、それは「第1次」の開発から 現在に至るまで何ら変わっていない。
コンビニで販売している約二八〇〇アイテムの 商品の売れ行きを単品ごとに管理する「単品管 理」の思想がそのベースになっている。
「単品管理」 とは一言で言えば「明日、自分の店で何がどれだ け売れるのか、何をいくつ売り込むのか」を考え るための手法である。
おにぎりを例に取ってみよう。
明日、店舗の近 くの公園で小学生のサッカーの試合があるという 情報が入った。
それによって、おにぎりの販売に はどのような影響が生じるだろうか。
選手が小学生の場合、試合を観戦に来ている親 が当然、食べ物の手配をすることになる。
明日の 天気予報は晴れ。
炎天下の試合になる。
親は安全 で保存の利く商品を選ぶだろう。
おにぎりの具材 でいうと「梅」や「昆布」、「鮭」などの塩気の利 いた商品を好んで選ぶはずだ。
そんな仮説が成り 立つ。
従って、子供が好きな「ツナマヨ」や「エ ビマヨ」など傷みやすいマヨネーズを使った商品 よりも、「梅」、「昆布」、「鮭」の発注を増したほ うがいい。
同じサッカーの試合でも、これが中学生や高校 生の試合なら売れる商品もまた違ってくる。
「梅」、 「昆布」、「鮭」などは選ばれず、「ツナマヨ」や「エ ビマヨ」などのマヨネーズ系や「ソーセージ」な ど食べ応えのある具材に人気が集まるだろう。
中 高生となると親ではなく、本人が自分で食べ物を 選ぶからである。
このように、おにぎり全体の量を増減するので はなく、その中のどの商品(SKU)に、どれだ けのニーズがあるのかまで考えることが重要である。
それが「単品管理」なのである。
「単品管理」のために、店舗では納品日の天候 気温や催事などの情報を収集し、誰がどのように 購入するのか「仮説」を立て、商品の「発注」を 行い、納品、陳列、販売を行う。
さらにその後も POSデータを確認して、店舗で立てた仮説が正 しかったのか間違っていたのかを「検証」し、そ れを次の発注に役立てる。
この「仮説」➡「発注」➡「検証」の一連の 単品管理を総合店舗システムが支えている。
シス テムが明日の単品ごとの発注数を教えてくれるわ けではない。
今日のPOSデータの実績だけで明 情報共有化とシステム活用 全国1万5000店に同じ品質の商品を安定的に供給 し、かつ毎週100アイテムもの商品の入れ替えを行 うには、精度の高い需給調整機能が不可欠だ。
そ のためにセブン-イレブンは情報インフラの高度化に 継続的に取り組み、情報の活用ノウハウを蓄積して きた。
27 JUNE 2013 特集 ータを分析し、情報精度や仮説の立て方、単品 数量への落とし込み方を自分で「検証」するの である。
この行為を店内で販売している全ての商品につ いて繰り返し行うことで、顧客のニーズを捉えた 品揃えができるようになり、買い物の満足度や店 舗に対する信頼度が上がるのである。
その結果と して、店舗の売り上げと利益が増加するという図 式である。
総合店舗システムはそのツールである にすぎない。
「チームMD」における情報共有 売り場面積がわずか三〇坪程度のコンビニ一店 舗当たりのアイテム別発注数は限られている。
し かし、それが一万五〇〇〇店も集まると膨大な量 になる。
全国の全ての店舗に全く同じ品質の商品 を供給するためには、調達に大変な気を遣わなけ ればならない。
二〇〇五年に期間限定で販売して大ブームにな った「空弁」を例に、これを考えてみよう。
「空弁」 は鯖の片身を焼き酢飯の上に乗せた弁当であった。
販売期間は二週間で、一店舗当たりの確保量は合 計一〇〇個という規制をかけていた。
原材料の確 保に限界があったからだ。
一店当たり一〇〇個でも当時のセブン─イレブン の店舗数は約一万一〇〇〇店であったため、原材 料として一一〇万個分の「片身の鯖の切り身」を 調達する必要があった。
しかも鯖のサイズには厳 密な規定があり、大き過ぎても小さ過ぎても弁当 には使えない。
味や品質にバラツキが出ることも 避けなければならないため、産地も決まっている。
従って、同じ産地のほぼ同じサイズの鯖を、(使 日の発注数を決めてしまってもいけない。
そうで はなく、「仮説」を立てるのである。
システムは納品日の天候・気温、全国規模の催 事情報、単品ごとの販売状況、販売キャンペーン、 メディア情報などの必要な関連情報を提供してく れる。
それに店舗が自ら集めた情報を加えて「仮説」 を立て、それを単品ごとの数量に落とし込んで「発 注」を行う。
そして販売が終わった後にPOSデ うのは半身なので)計五五万匹確保しなければな らなかったわけである。
これを一定期間中に調達 するとなると、需給管理にわずかなミスが発生し ただけで、たちどころに商品供給ができなくなっ てしまう。
「空弁」のようなヒット商品は店舗も、もっと 売りたいと言ってくる。
お客様からももっと欲し いとの声をいただく(実際、定番化を望む声が多 かった)。
しかし、型と品質の揃った鯖をそれだ け大量に安定供給するのは非常に困難なことであ った。
このように全国一万五〇〇〇店への商品供給は、 大げさに言えば、地球の生態系にまで影響を及ぼ す可能性さえ秘めている大仕事なのである。
それ をコントロールしているのが「チーム・マーチャン ダイジング(チームMD)」である。
チームMDはセブン─イレブンの商品部と物流部、 デイリー品メーカー、さらには原材料や包装資材 などの調達先によって構成されている。
現在セブ ン─イレブンが企画する商品は全てこの四者から成 るチームMDの協働作業から生まれている。
四者の間では様々なデータが共有されている。
デイリー品のPOSデータに関しては、発注締め 後の確定データだけでなく、時間ごとの「仮締め データ」も共有している。
一つの具材でも揃わな ければ出荷できない弁当や惣菜の需給管理に、こ れが大きな威力を発揮する。
発注締め時間は毎日十一時だが、それより前の 早朝時点や前日夕方時点での発注数を確認するこ とで、その日の最終的な発注量を予測するのである。
それに基づいて事前の仕込みを行い、必要があれ ば具材等の緊急発注をかける。
製造時刻から出荷 図1 チームマーチャンダイジング 販売情報 共配センター 店舗 チームMD ・商品開発 ・需要管理 販売情報 発注情報 (web) 納品 配送 発注 発注 販売情報 ──マーケット分析 ──販売情報分析 ──客層分析 顧客ニーズに合わせた商品開発の実現 納品 商品部 原材料 ベンダー デイリー品 メーカー 販売情報 JUNE 2013 28 までのリードタイムが非常に短い商品であるため、 そうした分刻みのコントロールが求められるので ある。
通常、店頭で商品が売れると、店舗は物流セン ターに、物流センターはベンダーに、ベンダーはメ ーカー(工場)に対してその商品の発注を行う。
店頭で売れた分だけを発注すれば良いが、各段階 の関係者は欠品を恐れるため、発注量はメーカー にさかのぼるまでの間に大きく膨れ上がってしま うことが多い。
実際、セブン─イレブンでも以前は、店頭や物流 センター、卸の倉庫などで多くの余剰在庫が発生 していた。
そのほとんどが廃棄処分となるため、 メーカーやベンダーはもちろん、セブン─イレブン にとっても死活問題である。
そのため従来からメーカーやベンダーはそれぞ れ独自に需要予測の高度化に取り組んでいた。
し かしサプライサイドだけの取り組みには限界があ った。
そこで、セブン─イレブンはPOSデータを はじめとするデマンドサイドの情報を、サプライサ イドと共有するDCMに乗り出した。
積極的な情 報公開を進めたのである。
その結果、需給調整の管理レベルは格段に上が り、品切れ率を抑えたまま、原材料メーカーから 生産メーカー、配送センター、店舗に至るトータ ル在庫量を低減し、廃棄損を大きく減らしたので ある。
原材料調達のコントロール チームMDにおける具体的な情報の流れやその 内容を見てみよう。
店舗からの発注データは締め時間からわずか九 分後の十一時九分に、全てのデイリー品メーカー に製造指示書として配信される。
製造指示書には 発注個数だけでなく、必要な具材の数も明記され ている。
幕の内弁当であれば、「焼き魚の切り身 が何個」、「ソーセージが何本」、「煮物が何キログ ラム」という具合である。
メーカーはそのデータを基に、原材料の必要量 や仕込み時間などを計算する。
米飯であれば、炊 飯の開始時間などもスケジューリングする。
そし て工場内の在庫量を確認し、予測使用量との差分 を原材料ベンダーに発注する。
最短で翌日には原材料が納品される。
ちなみに、 その輸送に店舗向けの共同配送インフラを利用す る取り組みが進められている。
デイリー品の工場 と配送センターは併設もしくは近接しているケー スが多いことから、デイリー品の配送センター間 を横持ちするチルド品の幹線輸送便を活用し、原 材料調達費の低減を図っている。
データの開示は全てウェブ上で行われる。
メー カーやベンダーは専用端末などを改めて用意する 必要はない。
セブン─イレブン本部にPCを登録し、 証明書を発行するだけだ。
それでも筆者が知る限 りセキュリティを含めデータ開示に関して大きな問 題は発生していない。
ウェブ上で開示される情報は発注データをはじ め、新商品情報から理論消費量まで多岐に渡る。
それを元にメーカーが「共同購入組織」を通じて 原材料メーカーに発注をかける。
この共同購入組 織はセブン─イレブンのデイリー品を生産するメー カーの原材料コスト削減のために組織された組合 だ。
複数のメーカーが共通して使用する原材料の 調達を共同化で仕入れることで原価の引き下げを 図っている。
さらに原材料ベンダーから各地のデイリー品工 場への納品も共同化しているのは先に述べた通り。
これによって原材料のトレーサビリティも可能と なり、商品事故などが発生した場合の対応が非常 に迅速に行えるようになった。
新商品の在庫コントロール 非デイリー品(常温商品、フローズン商品など) 図2 需給管理による販売と製造の関係 製造受注 3 個3 個 発注在庫受注 3 個20個3 個 発注在庫受注 3 個15個3 個 発注在庫販売 3 個7個3個 購入 3 個 売れた量だけ補充すれば、 廃棄ロスは生じない メーカーベンダー物流センター店舗消費者 発注・販売 在庫情報 Web 発注・販売情報 Web 29 JUNE 2013 特集 の需給管理・情報共有化も進んでいる。
非デイリー品は「在庫型」の商品であり、ベン ダーの在庫を共同配送センターで預かっているか たちである。
その在庫補充発注の権限と責任も共 同配送センター自身が担っている。
十分かつ確度 の高い関係情報がなければ需給管理の乱れを招き、 センター運営に大きな支障を来してしまう。
そのために、非デイリー品においては「取引先 情報システム」と呼ぶ情報インフラを通して、発 注の「仮締めデータ」とPOSデータによる実績 データを開示している。
この仕組みの最も重要な 役割は流通のトータル在庫の最適化であり、過剰 在庫を極限まで低減させることである。
セブン─イレブンでは、デイリー商品などを含め て毎週およそ一〇〇種類もの新商品が発売される。
ただし、本部推奨商品の数にはほとんど増減がない。
つまり、一〇〇アイテムの新商品が発売されるの と同時に、一〇〇アイテムがカット(推奨取り消し) されているのである。
そのコントロールが非デイリー品の共同配送セン ターの大きな鍵になる。
先ほどの取引先情報シス テムはそのためのツールであり、新商品の在庫量 を算出し、また推奨取り消し後の「カット残在庫」 の削減に利用されている。
非デイリー品の新商品を導入する際、各配送セ ンターにどれだけ在庫を確保するかは基本的には 各ベンダー(卸)が判断する。
ただし、事前にセ ブン─イレブンの商品部と予測を詰めておく。
先に述べた通り非デイリー品は店舗に「月・水・ 金」と「火・木・土」の二パターンで納品してい るため、大型の新商品であっても初日(月曜日の 夜間に納品する分)の在庫量さえ配送センターに 確保できていれば、後は店舗からの発注に基づい て補充をかければいい。
しかし実際にはテレビCMなどにより人気や話 題が先行している新商品の場合は、一店舗当たり 一〇〇ロットもの発注が来ることもある。
初回(月 曜日の夜)の納品分ですら数量が不足する可能性 がある。
これを防止するためにデイリー品と同様に、発 注の「仮締めデータ」を活用し、それが予測数量 を超えている場合には月曜の午前中までにメーカ ーに追加補充を要請する。
これによって月曜、火 曜と続けてメーカーが在庫を欠品させない限り、 センターで欠品が発生することはない。
カット残在庫の削減方法 これに対して本部の推奨が取り消しとなった「カ ット残在庫」の読みは非常に難しい。
店舗に推奨 取り消し(推奨カット)が告示されるのは、カッ ト日の約一週間前だ。
告示以降は、よほどのこと がない限り、店舗からの発注はほとんどゼロとな る。
つまり、推奨カットの告示日が実質的なカッ ト残在庫のスタートとなる。
一方、配送センターへの告示は、店舗への告示 日の約二週間前である。
このタイムラグを使って カット残在庫をできる限り削減しなければならな い。
ここで使用するデータは、週別、日別の地区 ごとの販売数、導入率(店での扱い率)などであ る。
これらのデータを毎日確認しながら、ほかの センターと協議し、在庫の横持ちなどの調整を行う。
どの地区のセンターの在庫が多いのか、あるい は少なくなっているのか、各地区の販売数はどう 推移しているのかなど、ウェブ上のデータを表計 算ソフトに落として分析する。
売れそうな地区を 見つけてほかの地区から在庫を転送するのである。
スムーズに商品の切り替えができれば廃棄損を 減らせるだけでなく、保管スペースの有効利用が できるようにもなるため、新製品のハンドリング も楽になる。
庫内作業の生産性向上と固定費の負 担増を回避できるのである。
(信田洋二) 図3 需給管理と物流のオペレーション連携 店舗メーカー ベンダー ?積極的な売場展開 ?チャンス・ ロスの軽減 ?ロイヤリティの向上 ?情報共有と商品開発 ?計画生産・計画配送 ?流通在庫把握による欠品防止・生産 調整 ?需給管理の精度向上 ?在庫管理・欠品防止・返品削減 ?返品不可在庫のリスク低減 ?仕分け・納品 ?在庫管理・欠品防止・ 返品削減 ?メーカー発注精度向上 納品 Web Web Web 取引先情報 システム ?推奨店舗数 ?導入率 ?発注速報 ?納品数量 ?販売数量 ──など 納品 納品 共配センター
