2013年6月号
ケース

クリナップ 共同物流 全国69カ所のTC経由で施工現場へ直送異業種共配に続きTOTOとも共同化

JUNE 2013  46 サプライチェーン全体の共同化を志向  クリナップは住宅設備機器業界でいち早く ?無在庫型生産システム?を導入したメーカー だ。
部材や製品の在庫を持たず実際の需要に 基づいて生産する体制を二十年も前に確立し、 その運用ノウハウを積み上げてきた。
 この生産方式を支えるために、部材をタイ ムリーに調達し受注した製品を滞りなく供給 する輸配送ネットワークも自ら構築した。
北 海道から沖縄まで六九カ所に「プラットフォ ーム(PF)」と呼ぶスルー型の積み替え基地 を配備し、各地のPFを経由して工場の製品 を全国の住宅施工現場や工務店へ直送できる ようにした。
 同社は福島県いわき市と岡山県津山市の東 西の二カ所に計八工場を構えている。
各工場 からそれぞれ東日本と西日本の各PFへ大型 車で幹線輸送し、PFからルート別に二トン 車に積み替えて配送(支線配送)している。
 在庫を持たない物流システムは、日々の販 売量の変動がそのまま幹線輸送の積載率に反 映される。
在庫をバッファーにして輸送量を 平準化できないと、受注数量の少ない日には 積載率が悪化してしまう。
 これを避けるために、同じ方面のPFへ向 かう便をまとめて配車し、方面単位で輸送量 を調整する?ラウンド輸送?という方法を採 り入れている。
その帰り便もサプライヤーか ら部材を集荷して工場へ戻り、実車率を上げ る工夫をしている。
 外部の企業と自社のネットワークを共同利 用することで積載率を上げる施策も早くから 実行してきた。
二〇〇二年十月に設立した物 流子会社の「クリナップロジスティクス」が その実働部隊だ。
同社が輸送の元請けとなり、 幹線輸送やPFの管理運営を委託する協力運 送会社とともに「C − Arks(シーアーク ス物流研究会)」の統一ブランドで共同配送 事業を展開、顧客開拓を進めてきた。
 クリナップロジスティクスの共同配送は、 幹線と支線で構成される同社の全国ネットワ ークをフルに利用することで最も効果を発揮 する。
このため顧客にアプローチする際は末 端配送の単純な積み合わせだけでなく、調達 から配送までサプライチェーン全体を視野に入 れた共同化を提案することを原則としている。
実際、顧客の大半が幹線輸送と支線配送を組 み合わせて同社のサービスを利用していると いう。
 ただしサプライチェーン全体のコスト削減を にらんで企業間の共同物流を進めようとする と、調達方法やものづくりの考え方まで内情  工場から各地の積み替え基地を経由して全国の 住宅施工現場などへ商品を届ける輸配送網を構築 し、異業種との共同化によって積載率の向上を進 めてきた。
一昨年にはライバルのTOTOともシス テムキッチン製品の共同配送に踏み切った。
今年 度中に全国へ拡大する計画だ。
共同物流 クリナップ 全国69カ所のTC経由で施工現場へ直送 異業種共配に続きTOTOとも共同化 クリナップの坂上智CS推進 部部長 47  JUNE 2013 をさらけ出さなければならないケースも出て くる。
競合企業が相手ではなかなかそこまで は踏み込めない。
 このため共同化のターゲットはこれまで異 業種に限られていた。
異業種なら繁忙期が異 なり、商品によっては重量物と容積勝ちする 嵩高ものの組み合わせができるなど、同業に 比べて共同化のメリットを出しやすいことも 理由の一つだった。
 その同社に四年前、競合メーカーであるT OTOとの共同配送の案件が持ち上がった。
TOTOの販社とクリナップの間で販売提携 が結ばれ、TOTOの販社がクリナップの製 品を主力商品として扱うことになったのがき っかけだ。
その際にメーカー同士も物流分野 で協力し合うことを、TOTOとクリナップ の双方のトップが合意した。
 これを受けて二〇一〇年から担当部署で具 体策の検討を開始。
その結果、両社の製品群 の中で荷姿や配送条件の合うシステムキッチ ンを対象に共同配送を実施することが決まっ た。
 TOTOのシステムキッチンはグループの TOTOハイリビングが製造している。
同社 はそれまで、クリナップと同様に、工場から 出荷した製品を各地に設けた配送拠点を経由 して施工現場などへ届けるという物流体制を 敷いていた。
この配送拠点をすべてクリナッ プロジスティクスの管理下にあるPFへ移管。
TOTOハイリビングが工場からPFへ製品 を持ち込んで以降の配送をクリナップロジステ ィクスが運営することになった。
指定時間の調整が懸念材料に  支線配送に限定したかたちとはいえ、ク リナップロジスティクスにとって、全国規模 の業務受託は大きなビジネスチャンスだった。
しかし、親会社のクリナップの物流担当部門 には当初、ライバルメーカーとの共同化に懸 念があった。
 クリナップではCS推進部が、受注した製 品を施工現場へ届けて据付工事を行うまでの 工程とアフターサービスを統括している。
同 部の指示の下に、クリナップロジスティクス と、施工サービス子会社のクリナップテクノ サービスが、施工現場への製品の搬入や取り 付け・設置を行っている。
 施工現場では搬入に合わせて荷受け要員を 手配しており、指定時間の順守は配送の必須 要件だ。
しかし営業部門の指示した指定時間 をそのまま受け入れると効率の良い配送ルー トが組めないこともある。
コスト削減のため に営業部門と配送時間などの調整を行うこと もCS推進部の役割の一つとなっている。
 従来の異業種との共同配送では、納品先の 業態が異なるため指定時間が重なることは少 なかった。
ところが相手が同業となると事情 は変わる。
施工現場への搬入時間は新築住宅 の場合おおむね午前八時に集中しており、両 社の指定時間は重なる可能性が高い。
その場 合は調整が必要となり、施工現場の希望に応 じられないケースも出てくる。
 CS推進部の坂上智部長は「そうしたケー スでは施行現場や営業部門から不満の声が上 がることも予想された。
市場で熾烈な競争を している相手との共同配送に対し、果たして 社内の賛同が得られるのか心配だった」と振 り返る。
図1 情報システム「SLIM」の概要 エンドユーザー ドライバー運送会社 荷主企業 問い合わせ回答 配送 ホストより配送データ送信 1 配送指示の変更 時間指定、現場状況等 2 ホストデータ以外の配送 指示入力 1 翌日の配送予定の参照 随時 2 当日配送実績を参照 ドライバーのアクセスによ りリアルタイムで可能 最適配送ルート計画 増車の申請/承認 運行日報の報告入力 配送計画を携帯電話にて 照会 1 日常点検の結果入力 2 荷主指示事項の入力 (例:ヘルメットの携帯、 安全靴の携帯等) 1 配送先到着入力 2 配送完了入力 3 遅延等の状況報告 運行管理日報の出力 ドライバーの手書き不要 配送計画の省人化 運行管理の状況確認 SLIMサーバー JUNE 2013  48  その辺りの事情はTOTO側も同様のはず だった。
TOTOはそれまで一社単独、かつ 一台の車両に一つの施工現場の荷物だけを積 む?一現場・一車?を原則として、すべて の施工現場に希望通りの時間に納品してきた。
時間調整が必要になることへの反発はクリナ ップ以上に強いことが予想された。
 両社の納品条件の違いも難題の一つだった。
クリナップは納品の際にドライバーが荷降ろ しをする?軒先渡し?を納品条件としている。
システムキッチン製品は年々、製品重量が重 くなる傾向にあり、一人で荷役作業を行うの が困難になってきているため、近年は助手を 付けてツーマン配送するケースが増えている。
 これに対しTOTOは荷受け側で荷降ろし を行う?車上渡し?が納品条件で、ワンマン 配送を徹底している。
双方とも納品条件の変 更は期待できそうになかった。
とはいえ、ク リナップはツーマン運行、TOTOはワンマ ン運行という条件では、共同配送が成り立た ない。
ツーマン配送を見直す契機に  クリナップはこれを、ツーマン運行が常態 化した自社の配送体勢を見直す契機と捉えた。
PFによってばらつきがあるものの、中には ツーマン運行が全配送車両の八〜九割を占め るところもあり、近年のツーマン配送の増加 は主要なコストアップ要因になっていた。
 「施工現場の状況によってはワンマン運行で しトータルでコストが下がるという判断から、 あえてツーマンを採用するケースもある。
 またクリナップロジスティクスにとって、ベ ースカーゴとなる自社製品でツーマン配送体 制を整備していることが、大型家具や重量貨 物を開拓する際のセールスポイントにもなって いた。
こうした要件も考慮しながら、配車を 組む際に既存の共同配送の荷物を含めてワン マンで配送できるものを極力抽出し、ツーマ ン配送の削減を目指した。
 特定の時間に配送指定が集中する問題につ いては、共配参加企業に対して時間指定の方 法に共通のルールを設けることで改善を図っ た。
ピンポイントの時刻ではなく、一時間以 上の幅を持たせた時間帯で指定するルールに した。
 両社は二〇一一年十二月に群馬県で共配の トライアルを開始し検証を行った。
予想に反 してライバル企業との共配に対する現場の反 発は起きなかった。
 運用面や効果についての検証でも好結果が 出た。
指定時間の問題が配車計画を立てる際 の大きな障害にはならないことが分かった。
 配送先の施工現場は毎回変わる。
その都度、 SLIMに時間指定などの配送条件を入力し て配車計画を立案する。
通常はこの後で、指 定時間とマッチしなかった配送先をピックア ップし、各社の担当部門と調整を行う手順に なっている。
 だが実際には調整が必要なケースはごくわ も支障のないところがもっとあるはず。
(T OTOとの)共同化をきっかけに再吟味して、 必要な現場にだけ助手付き車両を配車するル ールを設ければコスト削減につながる」と坂 上部長は期待した。
 配車計画は共配参加企業の配送指示情報 をクリナップロジスティクスの「SLIM」と いうシステムに取り込んで作成する。
クリナ ップの場合、営業所の業務担当者がサーバー の端末から時間指定やツーマン配送などの配 送条件を入力している。
CS推進部では、担 当者が入力を行う際にワンマン配送の可否を 慎重に判断するよう指導し、コスト意識の強 化を促した。
 ただしツーマン配送が直ちににコストアップ を招くというわけでもなかった。
ツーマン配 送にはもともと搬入時間を調整する狙いもあ った。
助手付きなら施工現場で荷受けスタッ フが不在でも荷降しが可能なため、搬入時間 を柔軟に設定できる。
朝一番に指定時間が集 中するのを避けて一台の車両で数カ所の現場 を回れる。
助手を付けることで運賃単価は上 がっても、配送件数が増えれば積載率が向上 クリナップロジスティクスの 大竹重雄社長 49  JUNE 2013 部では共配の成果を見るため?助手の配置率? という指標を独自に設けている。
トライアル 期間中、着実に指数の改善が見られた。
坂上 部長は「助手を減らすというコスト削減策の 糸口をつかめた」と評価する。
 総車両台数も削減できた。
同じエリアで比 較すると、従来のクリナップの共配便とTO TOの単独便を合わせた台数に対し、TOT Oとの共同化実施後の車両台数は一〇%以上 減少している。
ハイブリッド型拠点で新展開  この成果を確認した上で両社は二〇一二年 七月から他地域への展開を図った。
同月に埼 玉・栃木・岐阜で、十二月に三重で、さら に今年に入り一月に新潟・長野・愛知で、二 月に青森・秋田・岩手で、三月には熊本・宮 崎・鹿児島で相次ぎ共配をスタートした。
今 年度中には全国へ拡大する予定だ。
 原則としてTOTOと共同化するのは支線 の配送だけだが、東北および九州エリアの一 部では幹線ルートの共同輸送も実施している。
通常はTOTOの工場から各PFまでの幹線 便はTOTO側で手配する。
だが東北と九州 については、クリナップロジスティクスがそ れぞれ福島県郡山と大分県宇佐に設けた「ハ ブ基地」でTOTOの荷物を受けて、北東北 と南九州のPFへ共同輸送する。
大竹社長は 「我々の幹線網を活用して(相手に)メリット が出るケースがあればいろいろなかたちの提 案をしていきたい」と話す。
 もともとクリナップロジスティクスのネット ワークは、工場近辺にあるいわき営業所と津 山営業所を東西のハブ基地とし、共同輸送 する外部顧客の貨物もそこで受け入れていた。
だが顧客の利便性向上とスピードアップを図 るため、東については別途、東北自動車道 のインターに近い郡山に一般貨物専用のハブ 基地を設け、各地のPFへの出発地点とした。
九州にも宇佐に同様の基地を設けた。
 郡山PFには従来のTC機能に加え、在庫 型のDC機能も持たせている。
新規に顧客開 拓を進める中で、通販商品などの輸入品を同 社のネットワークで全国のユーザーへ届けたい というニーズが増えてきた。
こうした需要に 無在庫型のネットワークで対応するのは難し い。
調達した商品を一時保管する機能が必要 になった。
 昨年一〇月には、TCとDCの機能を併せ 持つ?ハイブリッド型のハブ拠点?を埼玉県 入間市にも新設。
在庫型か非在庫型かを問わ ず、郡山と入間のいずれかのハブ基地を起点 に東北や関西方面へ幹線輸送するルートを整 備した。
 大竹社長は「スルー型のネットワークが我々 の強みだが、さまざまな物流形態への対応が いる。
ハイブリッド型を新しい共同化のビジ ネスモデルとして拡大していく」と意欲を示 している。
(フリージャーナリスト・内田三知代) ずかだった。
時間の指定に幅を設けたことで 柔軟にルートを組むことができた。
クリナッ プロジスティクスの大竹重雄社長は「約束事 を各社が守ってくれているのでトラブルはま ったく起きていない」と強調する。
 ちなみにTOTOではルール順守のため自 社システムの改修を行い、配送時間を時刻で 指定する入力方法を時間帯で指定する方法へ 変更している。
 必要なところにだけツーマンで配車するルー ルも徐々に浸透した。
クリナップのCS推進 図2 ハイブリッド型拠点の運用イメージ インフラのイメージ A 社 幹線拠点 関東各PF 名古屋 PFへ 在庫 スペース 積み替え スペース 関東H B 社 C社 D社 E 社 CL 津山出荷拠点 CLいわき出荷拠点 宇佐中継拠点(九州HB) 東北 HB 関東 HB 東北HB 経由 東北・甲信越各PFへ いわき 経由 東北・甲信越各PF 草津PF 門真PF 中京 関西 HB HB ●外部荷主専用拠点として活用 ●集荷・持込時間により関東圏は当日配送可 ●在庫保管および入出庫管理機能保有 ●東北〜中部・関西・九州への中継拠点として活用 ●現状のCL拠点との機能分け(最適な提案)

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