2013年6月号
3PL再入門

第5回 3PL主導型の共同物流

3PL 再 入門 梶田ひかる トランコム(株) ロジスティクスソリューションアドバイザー 《第  回》  大手荷主向けの3PLが一段落すれば、次は中 堅・中小向けの3PLが注目されることになる。
共 同物流システムの提供がその代表的ソリューショ ンとなり得る。
荷主主導の共同化には構造的な 課題がある。
3PLを利用することで課題を乗り 越えることができる。
JUNE 2013  70 荷主主導の共配は続かない  3PLは、規模の経済性を利用することで、 ローコストかつ高度な物流システムを荷主に提 供することを基本とするビジネスである。
本 連載ではこれまで、大手メーカーもしくは中 堅メーカーが、これを活用する上での留意点 を解説してきた。
 あえてメーカーに限定したのは、メーカー は物流をアウトソースしやすいためである。
製品・商品による差別化が基本であり、物流 においては効率が最重視される。
これに対し て流通業では、物流の能力が重要な差別化手 段の一つになることが多いため、3PLの利 用には向かないこともある。
 ただし、中堅よりも規模の小さな中小規模 の荷主となると、メーカーや流通業という業 態の違いを問わず、3PLのもたらす規模の 経済性が大いに効果を発揮する。
その一つの 形態が共同物流である。
物流システムを、そ の管理まで含めて委託することを3PLと呼 ぶならば、共同物流もその定義に合致するサー ビスである。
 もっとも、共同物流は3PLという言葉が 普及するずっと以前から、物流コスト低減の 一つの方法として広く認知されていた。
はや り廃りを繰り返しながら、実施に向けた取り 組みが何度も試みられてきた。
最近では温暖 化ガス削減の有力な手段としても共同配送が 注目されている。
 しかし、うまくいっているケースはまれで 失敗のほうが目立つ。
その理由を筆者は、荷 主主導で進めようとするからだと考えている。
実際、荷主主導の共同配送は継続が難しい。
工場や物流センターの移転に伴い出荷場所が 変わったり、取扱量が変わったりするからで ある。
 一方、物流事業者がサービスとして手掛け ている共同配送には長期にわたって継続し、 定着しているものが多い。
広くとらえれば路 線便(特別積合せ運送)や宅配便も共同配送 のバリエーションの一形態と言える。
 狭義の共同配送の事例としては、家電メー カーの物流子会社によるJIT納品サービス が挙げられる。
各地の物流センターで、周辺 のサプライヤーから部品を集荷し、組み立て 工場近隣の倉庫に輸送。
工場の生産計画に合 わせて、生産ラインにJIT納入する。
サプ ライヤーの要請があれば、物流センターで在 庫保管も行う。
このほかにも同一納品先向け の納品代行、産業集積地における共同集荷な ど、物流事業者が行っている共同配送の事例 は枚挙にいとまがない。
 なぜ荷主主導ではうまくいかないものが、 物流事業者が主導するとうまくいくのか。
理 由の一つは共同化の対象とする荷主の数である。
荷主主導の場合、組む相手が限られているた め、出荷量や出荷場所が変化した時に対応が 難しくなってしまう。
 もう一つは利害調整である。
荷主同士で組 5 3PL主導型の共同物流 71  JUNE 2013 む場合には、それぞれ現状の物流コストを考 慮しながら、それを上回らないように料金を 調整しなければならない。
それに対して物流 事業者主導の場合は、当然ながら物流事業者 自身の判断で料金を設定するため、荷主間の 利害調整が必要なくなる。
荷主はそのサービ スを利用することでコストが下がるのであれ ばそれを利用するし、下がらないのなら利用 しないというだけである。
 また物流事業者は、多くの荷主を確保する ために、できるだけ料金を下げようとする。
さらには設定した料金で利益を確保するため に自主的に効率化にも取り組む。
物量が減れ ばそれを補うためにほかの荷主を探す。
それ でも事業として成り立たない場合には、サー ビスを取りやめれば良い。
 このように物流事業者が共同配送を主導す ることにより、荷主側の不公平感はなくなり、 効率化に向けた取り組みが進み、継続性が増 すのである。
共同配送の三つのタイプ  共同配送にはいくつかのタイプがある。
そ の分類については諸説あるが、ここでは 一九九二年に当時の通産省産業流通政策課が まとめた分類を使用することにしよう。
これ によると共同配送は大きく、「帰り荷貨物確 保による共同化」、「複数の発荷主が一括して 配送する共同化」、「共同配送センター設置に よる共同化」の三つに分類される(図1)。
 このうち「帰り荷貨物確保による共同化」 について、当時の通産省は特定のメーカー同 士で帰り荷を融通し合うかたちの共同化を主 に想定していたが、現在は求貨求車システム の利用が主流となっている。
その日によって 輸送量は変動するため、特定の相手と取り決 めるより、求貨求車システムで不特定多数を 相手にマッチングした方が効率は良い。
 「複数の発荷主が一括して配送する共同化」 は、メーカーのみならず卸においても普及し ている。
繁華街の渋滞緩和を目的とする地域 交通政策として地方自治体が主導している例 も散見される。
さらには、類似する業種が集 まる産業集積地、いわゆる産業クラスターに おいては、集荷の共同化も進んでいる。
自動 車部品のミルクラン輸送や大手量販が調達物 流システムとして構築している例が目立つ。
 このタイプの共同化は、各地域の物流事業 者がその主な担い手となっている。
そのエリ アの工場、配送センター、店舗等の移転に伴 い、出荷量は常に変動するため、それに応じ たサービス改廃が頻繁に行われている。
ただし、 これらの配送・集荷サービスは輸送が中心で あり、それを3PLと呼ぶのは妥当ではない だろう。
 3PLに該当するのは、三つ目の「共同配 送センター設置による共同化」である。
先述 の家電メーカーの部品JIT配送もこれに分 類される。
荷主に代わって集荷・出荷・配送 のオペレーションを運用し、これを管理する。
物流システムを包括的に請け負い、その管理 まで行うのであるから、3PLの条件を満た している。
 荷主はこのサービスを利用することで、一 社単独でそのエリアの物流システムを構築し た時と比べてコストを抑えられる。
ただし、 今のところ大手メーカーでは、北海道や北陸、 四国など、物量の少ない地域における利用が 中心となっている。
 これに対して中堅以下の荷主では全国で共 同配送を利用するケースが増えている。
中堅・ 中小規模のメーカーで販売を全国展開してい 図1 共同配送と3PL 帰り荷貨物確保による共同化 複数の発荷主が一括して配送する共同化 共同配送センター設置による共同化 Aメーカー工場Aメーカーセンター Bメーカー工場 同一地域 Bメーカーセンター Aメーカー工場 A 社共同センター 同一届け先 3PL B 社 C社 Bメーカー工場 出所:通産省産業流通政策課(当時)の資料より作成 る場合には、それだけ利用によるメリットが 大きくなる。
また、大手メーカーに劣らない サービス品質を確保するという点でも共同配 送が有効な手段となる。
 そのようなことから、国土交通省は 二〇〇五年に「物流総合効率化法(流通業 務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」 を施行し、これを3PL推進支援策と位置付 けて、共同物流の促進を図っている。
 同法は共同配送を行うためのセンター建設 を支援するもので、認定を受けると市街化調 整区域における開発許可、事業許可の一括取 得、税制特例などを受けられる。
高速道路近 隣等の交通アクセスの良い立地に高機能なセ ンターを設けて、共同配送を推進することで 物流効率化と環境負荷低減を図る狙いがある。
リンク(輸送)が太くなれば、コストが低減 されるだけでなく、輸送によって排出される 温暖化ガスも削減される。
そのために必要な ノード(拠点)の建設を促そうということで ある。
 もっとも、物流総合効率化法を利用でき る企業は、大規模センターを建設するだけの 資本力があり、かつ共同配送の利用者となる 荷主を集められる物流事業者に限られる。
そ のため同法を活用している事例は現時点で 二〇〇件に満たないが、それでも着実に共同 化は進んでいるのである。
 筆者がアドバイザーを務めるトランコムでは、 過去に家電量販の共同配送を手掛けていたノ ウハウを活かして中 堅・中小メーカーを 主な対象とした共同 配送システムを構築 している。
業界を限 定し、業界固有の統 一伝票などの商慣行 に対応するほか、同 一納品先への納品 量を集めることによ る輸送コスト低減を 図っている。
 菓子・食品業界に おける共同配送サー ビスがその一つであ る(図2)。
菓子メー カーには中小企業が 多く、共同配送に向 いている業種である。
しかも、「味」で差 別化ができることか ら、中小メーカーでも全国販売しているとこ ろが多い。
日用雑貨品と比べると、菓子は卸 の大規模化も進んでない。
また一般の加工食 品と同じ物流システムに乗りやすい商品であ るため、食品卸が菓子を扱うケースも増えて いる。
 トランコムが地盤を持つ名古屋、大阪など には菓子・食品の産業クラスターが形成され ている。
このほかにも同社は、東北、関東、 九州に中核拠点を置き、北海道と沖縄を除く 全国への配送をカバーしている。
 荷主は商品在庫をトランコムの各地の中核 拠点に保管し、受注が入ったら、その情報を トランコムの情報システムに送信する。
これを 受けてトランコムはほかの荷主の受注分と合 わせて配送センターでピッキングし、方面別に 仕分けて車建てで各地の拠点に搬送。
そこで 納品先別に仕分けて、複数荷主の荷物を一括 JUNE 2013  72 3PL 再 入門 図3 ネット通販向け3PL サービス サプライヤー 消費者 注文 ネット小売事業者3PLサービス 配送センター 保管依頼 納品 入庫 保管 ピッキング 検品・仕分配送 出荷指示宅配便事業者 各種レポート 提供 図2 トランコムの菓子・食品共同配送 メーカー 顧客 保管商品入庫共配センター 集荷 持ち込み 商品保管 在庫管理 統一伝票発行 受領書回収/返却 (卸) (量販一括物流センター) 出所:トランコム 納品する。
 この共同配送システムを利用することによ り、菓子・加食の中堅・中小メーカーは、そ れまで路線便で出荷していた荷物を同業他社 との混載による車建てのかたちで納品できる。
輸送コストおよび事務作業の大幅な削減を期 待できる。
ネット通販向けサービスの台頭  近年、急速に拡大している共同物流に、 ネット小売りを対象としたものがある。
ネッ ト通販市場は着実に拡大しており、昨年度の 市場規模は一〇兆円を超えたと言われている。
ネット小売りはアマゾン、楽天、ヤフーなどの 仮想モールを利用することにより、容易に始 めることができる上、中小企業であっても全 国を対象とした販売が可能である。
 その物流を支援するサービスが年々増加し ている。
中でも常温品を対象としたものは、 顧客の物流ニーズが画一的であることから、 入庫・保管・出庫・配送までの一連のプロセ スをサポートするレディメードサービスが多く 存在する(図3)。
複数の荷主の荷物を共同 保管し、配送を行うこれらのサービスもまた、 共同物流システムの一例と言えるであろう。
 宅配便大手のヤマト運輸は、既存のサービ スとは別に顧客の独自サイト向けや仮想モー ル向けなど、それぞれのニーズに応じた複数 のサービスを提供している。
佐川急便も同様 である。
 物流業以外からの参入も多い。
代表的な ものに、仮想モール運営企業がある。
アマゾ ンの「FBA(フルフィルメントbyアマゾ ン)」や楽天の「楽天スーパーロジスティクス」 は、いずれもモールの出店者を対象とした共 同物流サービスである。
通販専業者も参入し ている。
ニッセン、千趣会、スクロールなど が、自ら構築した通販システムにほかの通販 会社を相乗りさせるかたちで物流事業を行っ ている。
 各社のサービスにはそれぞれ特徴がある。
夜の注文を翌日届けるという短納期をうたっ たものもあれば、海外からの注文に対応して いるものもある。
独自通販サイトの構築支援、 コールセンター代行、回収サービスなど、通販 事業を包括的に支援するさまざまな関連サー ビスも充実している。
その詳細は各社のホー ムページで詳しく紹介されている。
ネット小 売りはそれらを比較して自分のニーズに適し たものを選ぶことができる。
中小荷主向け3PL  大手荷主の3PL化が一段落すれば、次に 注目されるのは、中堅・中小を対象とした3 PLである。
その一形態としてこれらの物流 業主導の共同物流が注目される。
 大手向けの3PLが荷主それぞれのニーズ に対応したカスタムメードのサービスであるの に対し、共同物流サービスは類似する荷物を 対象としたレディメードの物流システムであり、 取扱貨物の量が増えるほど、規模の経済性が 働くという性格を持っている。
 JIT納入や専用伝票など、納品時に業界 固有のサービスを要求される家電品の調達物 流や菓子・加工食品の販売物流などには、同 一業種のメーカーを複数集める共同配送が効 果的である。
また常温品のネット通販物流は、 消費者の要求するサービスに大差がないこと から、荷主の業種・業態を問わない共同化が 可能である。
 荷主は商品で差別化ができるのであれば、 この共同配送サービスを利用することにより、 中小であってもローコストで全国に販路を拡 大できる。
単独で物流インフラを構築できる のは、物量のある大手メーカーくらいである。
その大手メーカーですら今や販売量の少ない 地域や新規事業では共同配送を利用するよう になっている。
つまり共同配送が、企業規模 を問わずに利用可能な3PLソリューションに なろうとしているのである。
73  JUNE 2013 梶田ひかる(かじた・ひかる)  1981年南カリフォルニア大学 OR理学修士取得。
同年日本IBM 入社、91年日通総合研究所入社。
2001年デロイトトーマツコンサ ルティング(現アビームコンサル ティング)入社。
11年4月 トラン コム(株)のロジスティクスアドバ イザーに就任。
現在に至る。

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