2013年7月号
特集
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第4部 ケーススタディ ミス発生時の状況を再現して検証──TOTO
JULY 2013 30
勝手な運用防止へハンディの機能変更
TOTOは温水便座のウォシュレットや衛生陶
器、水栓金具、洗面化粧台、浴槽などの住宅用
設備機器を幅広く手掛ける国内有数のメーカーだ。
物流本部の下、自前の大規模な物流センターを 北海道・江別、千葉、滋賀、北九州の国内四カ所 に構え、庫内作業や輸配送は物流業者に委託。
同 本部が業者と連携し、日々物流業務の生産性改善 やサービスレベル向上に取り組んでいる。
同社では顧客からクレームが寄せられると、各 物流センターにどのような状況でミスが発生した のか調査依頼書が届く。
それを受け、センターの 製品管理担当者や協力物流業者らが連携して状況 を調べ、不具合の原因と対策に関する報告書をま とめるとともに、再発防止策を随時講じる。
報告 書は写真や図解入りで共有サーバーに蓄積し、従 業員がイントラネットで確認できる。
ケアレスミスの場合は間違った作業者本人に指 導するのが基本だが、トラブルの背景に構造的な 要因がある場合などは、必要に応じて作業手順や システムの変更に踏み切っている。
例えば、各センターでピッキングに用いている ハンディターミナルには、商品に添付しているQ Rコードに何度かざしてもエラーとなりうまくデ ータを読み取れない場合、その商品が正しいもの かどうか作業員が目視で確認できれば次の作業に 進めるよう、スキップボタンが付いている。
しかし、実際には各センターで、エラーになら なくても目視だけで商品を確認してスキップボタ ンを押すという、本来想定していたのとは異なる 使い方が発生していた。
大量の製品のQRコード をスキャンする際にス キップしてハンディに よるチェックを怠り、 品番違いなどに気付 かないケースが相次 いでいた。
このため、昨年六 月からは、特定の権 限を持った人間が確 認しなければスキッ プボタンを使えない ようハンディターミナ ルの機能を一部変更。
これにより、ハンディによる確実なチェックを裏 付け、月平均で六件の誤出荷を減らすことができ た。
機能の見直しでコストは発生するが、ミス防 止のための有効策を優先した。
関東や甲信越、東北などへの製品出荷を手掛け、 製品の取扱量では同社最大規模の千葉物流センタ ー(千葉県八千代市)も、物流品質向上へ独自 の取り組みを続けている。
一二年度から、ミスが起きてクレームが寄せら れた場合、その現場で後日、当時の作業状況を再 現する試みをスタートした。
まずはその製品を担 当した作業員の普段の作業を観察し、手順を守っ ているかといった点を確認。
手順通り作業してい ると分かれば、現場での再現プロセスに入る。
TOTOの担当者らが、製品をこのようにピッ キングし、台車にこのように置き、構内をこのよ うに運んだ、といったところまで作業の流れを細 かくチェックし、原因を検証している。
時には作 業を担当した協力物流業者の従業員本人に登場し ミス発生時の状況を再現して検証 ──TOTO 東日本の商品配送を支える千葉物流センターでは、誤 配送などが生じると、必要に応じて当時の庫内作業状況 を再現し、どこに原因があったのかを徹底的に検証して いる。
物流品質向上の意識が根付きミス発生率は下がっ ているが、もう一段上のレベルに進むため、トヨタ流の「な ぜなぜ分析」で再発防止の強化に着手した。
(藤原秀行) (左から)江口課長、中村部長、的場係長 ケーススタディ 31 JULY 2013 一〇〇万分の一)にとどまっている。
国内四セン ターのトータルでは一二年度の下半期に目標の七・ 五PPMに対し、実績は六PPMまで抑えること ができた。
東日本大震災後は物流網の混乱で一時 水準が悪化したが、基本的には発生率は右肩下が りの状況にあるという。
一三年度は全センター総 合で四PPMの達成を目指している。
「なぜなぜ分析」を物流現場に導入 誤出荷などで寄せられたクレームと真正面から 向き合って、より実効性のある対策を打てるよう にするため、東日本物流部では今年度から千葉物 流センターで一つの問題事象に対して五回の「なぜ」 をぶつけ、本当の原因を探るトヨタ生産方式の「な ぜなぜ分析」を活用する試みを始めた。
誤出荷や輸送中の商品破損・紛失が起きた際に 担当者が物流本部へ提出する報告書について、「な ぜなぜ分析シート」を添付して提出することを義 務付けた。
中村正幸東日本物流部長は「不具合 が起きた際の原因の掘り下げが甘いと感じていた」 とシート導入の動機を語る。
このシートでミスが起きた要因の分析を基本的 に五回繰り返して真因を探り当て、報告書で打ち 出した対策が本当に再発防止に有効なものなのか どうかを確認させるのが狙いだ。
要因分析は最低 三回重ねていないと内容不十分で書き直しの上再 提出させている。
東日本物流部の千葉物流課は一三年度のスロー ガンに「TOTOグループ【ダントツ】の物流拠 点へ進化!」を掲げ、その指針として、トラブル が起きるたびに対策を講じるモグラたたき的なや り方ではなく、トラブルの根を断つ活動へ移行す てもらうこともある。
同センターを所管している東日本物流部千葉物 流課の江口亨課長は「千葉では社内的にも結構シ ビアにやっている方ではないか。
そこまでやらな いと結果が付いてこない」と指摘する。
江口課長は、今年度は暑さで集中力が途切れる などしてミス発生率が高まる夏場に「品質強化月 間」と銘打ったキャンペーン活動を展開し、庫内 の緊張感を維持することなどを考えているという。
同課の的場孝行企画主査兼製品係長は「優れた取 り組みはセンター間で水平展開している。
全体的 なレベルを底上げしていきたい」と強調する。
こうした努力が奏功し、千葉物流センターでは、 誤出荷の発生率は一二年度が七PPM(PPM= ることをうたい、品質面では誤出荷や倉庫内の包 装破損の削減などを目標に設定している。
中村部 長は「なぜなぜ分析もスローガン実現のための道 具の一つ。
さらに上のレベルに進むためには新た な枠組みが必要だ」と解説する。
なぜなぜ分析の重要性を浸透させ、今後シート 添付の対象となるトラブルの範囲を拡大したい考 えだ。
中村部長は「今は徹底する、再教育すると いう言葉で終わる再発防止策は認めないと社内に 言っている。
現状は正しい手順があるのを知って いるのに守れないのが本当の姿であり、そもそも 正しいことが何かを知っている人間に再教育や徹 底をしても効果は期待できない」と語り、抽象的 な表現に終わらせず、より具体的な対策を考えら れる環境づくりに注力する姿勢を示した。
TOTOは〇九年に策定した中長期経営計画「V プラン二〇一七」で、創立一〇〇周年の二〇一七 年に向け、製品の企画・開発や生産技術の高度化 などを総合的に推進している。
その一環で物流改 革にも着手し、全国規模で中継ターミナルを廃止 して輸配送ルートを効率化したり、物流センター の大型マテハン設備を撤去して活スペースを進めた りと大胆な見直しを実施。
千葉物流センターで商 品到着から出荷までのリードタイムを従来の六日 から三日まで短縮するなどの成果を上げてきた。
こうしたVプランに基づく物流効率化、生産性 向上に対して、品質向上はVプランの前から継続 的に取り組んでいる。
中村部長は「物流で生産性 向上と品質はトレードオフになりやすい。
生産性 を上げつつ、品質を落とさないという従来の目標 も堅持するという構図で両方の改革を進めていき たい」と情熱を燃やしている。
パレットの向きを変えられる台車 ピッキング回数を自ら記入してチェック 細かな棚番明示と写真でミス防ぐパレタイズ推進で積載効率改善 千葉物流センターの生産性・品質改革 特集
物流本部の下、自前の大規模な物流センターを 北海道・江別、千葉、滋賀、北九州の国内四カ所 に構え、庫内作業や輸配送は物流業者に委託。
同 本部が業者と連携し、日々物流業務の生産性改善 やサービスレベル向上に取り組んでいる。
同社では顧客からクレームが寄せられると、各 物流センターにどのような状況でミスが発生した のか調査依頼書が届く。
それを受け、センターの 製品管理担当者や協力物流業者らが連携して状況 を調べ、不具合の原因と対策に関する報告書をま とめるとともに、再発防止策を随時講じる。
報告 書は写真や図解入りで共有サーバーに蓄積し、従 業員がイントラネットで確認できる。
ケアレスミスの場合は間違った作業者本人に指 導するのが基本だが、トラブルの背景に構造的な 要因がある場合などは、必要に応じて作業手順や システムの変更に踏み切っている。
例えば、各センターでピッキングに用いている ハンディターミナルには、商品に添付しているQ Rコードに何度かざしてもエラーとなりうまくデ ータを読み取れない場合、その商品が正しいもの かどうか作業員が目視で確認できれば次の作業に 進めるよう、スキップボタンが付いている。
しかし、実際には各センターで、エラーになら なくても目視だけで商品を確認してスキップボタ ンを押すという、本来想定していたのとは異なる 使い方が発生していた。
大量の製品のQRコード をスキャンする際にス キップしてハンディに よるチェックを怠り、 品番違いなどに気付 かないケースが相次 いでいた。
このため、昨年六 月からは、特定の権 限を持った人間が確 認しなければスキッ プボタンを使えない ようハンディターミナ ルの機能を一部変更。
これにより、ハンディによる確実なチェックを裏 付け、月平均で六件の誤出荷を減らすことができ た。
機能の見直しでコストは発生するが、ミス防 止のための有効策を優先した。
関東や甲信越、東北などへの製品出荷を手掛け、 製品の取扱量では同社最大規模の千葉物流センタ ー(千葉県八千代市)も、物流品質向上へ独自 の取り組みを続けている。
一二年度から、ミスが起きてクレームが寄せら れた場合、その現場で後日、当時の作業状況を再 現する試みをスタートした。
まずはその製品を担 当した作業員の普段の作業を観察し、手順を守っ ているかといった点を確認。
手順通り作業してい ると分かれば、現場での再現プロセスに入る。
TOTOの担当者らが、製品をこのようにピッ キングし、台車にこのように置き、構内をこのよ うに運んだ、といったところまで作業の流れを細 かくチェックし、原因を検証している。
時には作 業を担当した協力物流業者の従業員本人に登場し ミス発生時の状況を再現して検証 ──TOTO 東日本の商品配送を支える千葉物流センターでは、誤 配送などが生じると、必要に応じて当時の庫内作業状況 を再現し、どこに原因があったのかを徹底的に検証して いる。
物流品質向上の意識が根付きミス発生率は下がっ ているが、もう一段上のレベルに進むため、トヨタ流の「な ぜなぜ分析」で再発防止の強化に着手した。
(藤原秀行) (左から)江口課長、中村部長、的場係長 ケーススタディ 31 JULY 2013 一〇〇万分の一)にとどまっている。
国内四セン ターのトータルでは一二年度の下半期に目標の七・ 五PPMに対し、実績は六PPMまで抑えること ができた。
東日本大震災後は物流網の混乱で一時 水準が悪化したが、基本的には発生率は右肩下が りの状況にあるという。
一三年度は全センター総 合で四PPMの達成を目指している。
「なぜなぜ分析」を物流現場に導入 誤出荷などで寄せられたクレームと真正面から 向き合って、より実効性のある対策を打てるよう にするため、東日本物流部では今年度から千葉物 流センターで一つの問題事象に対して五回の「なぜ」 をぶつけ、本当の原因を探るトヨタ生産方式の「な ぜなぜ分析」を活用する試みを始めた。
誤出荷や輸送中の商品破損・紛失が起きた際に 担当者が物流本部へ提出する報告書について、「な ぜなぜ分析シート」を添付して提出することを義 務付けた。
中村正幸東日本物流部長は「不具合 が起きた際の原因の掘り下げが甘いと感じていた」 とシート導入の動機を語る。
このシートでミスが起きた要因の分析を基本的 に五回繰り返して真因を探り当て、報告書で打ち 出した対策が本当に再発防止に有効なものなのか どうかを確認させるのが狙いだ。
要因分析は最低 三回重ねていないと内容不十分で書き直しの上再 提出させている。
東日本物流部の千葉物流課は一三年度のスロー ガンに「TOTOグループ【ダントツ】の物流拠 点へ進化!」を掲げ、その指針として、トラブル が起きるたびに対策を講じるモグラたたき的なや り方ではなく、トラブルの根を断つ活動へ移行す てもらうこともある。
同センターを所管している東日本物流部千葉物 流課の江口亨課長は「千葉では社内的にも結構シ ビアにやっている方ではないか。
そこまでやらな いと結果が付いてこない」と指摘する。
江口課長は、今年度は暑さで集中力が途切れる などしてミス発生率が高まる夏場に「品質強化月 間」と銘打ったキャンペーン活動を展開し、庫内 の緊張感を維持することなどを考えているという。
同課の的場孝行企画主査兼製品係長は「優れた取 り組みはセンター間で水平展開している。
全体的 なレベルを底上げしていきたい」と強調する。
こうした努力が奏功し、千葉物流センターでは、 誤出荷の発生率は一二年度が七PPM(PPM= ることをうたい、品質面では誤出荷や倉庫内の包 装破損の削減などを目標に設定している。
中村部 長は「なぜなぜ分析もスローガン実現のための道 具の一つ。
さらに上のレベルに進むためには新た な枠組みが必要だ」と解説する。
なぜなぜ分析の重要性を浸透させ、今後シート 添付の対象となるトラブルの範囲を拡大したい考 えだ。
中村部長は「今は徹底する、再教育すると いう言葉で終わる再発防止策は認めないと社内に 言っている。
現状は正しい手順があるのを知って いるのに守れないのが本当の姿であり、そもそも 正しいことが何かを知っている人間に再教育や徹 底をしても効果は期待できない」と語り、抽象的 な表現に終わらせず、より具体的な対策を考えら れる環境づくりに注力する姿勢を示した。
TOTOは〇九年に策定した中長期経営計画「V プラン二〇一七」で、創立一〇〇周年の二〇一七 年に向け、製品の企画・開発や生産技術の高度化 などを総合的に推進している。
その一環で物流改 革にも着手し、全国規模で中継ターミナルを廃止 して輸配送ルートを効率化したり、物流センター の大型マテハン設備を撤去して活スペースを進めた りと大胆な見直しを実施。
千葉物流センターで商 品到着から出荷までのリードタイムを従来の六日 から三日まで短縮するなどの成果を上げてきた。
こうしたVプランに基づく物流効率化、生産性 向上に対して、品質向上はVプランの前から継続 的に取り組んでいる。
中村部長は「物流で生産性 向上と品質はトレードオフになりやすい。
生産性 を上げつつ、品質を落とさないという従来の目標 も堅持するという構図で両方の改革を進めていき たい」と情熱を燃やしている。
パレットの向きを変えられる台車 ピッキング回数を自ら記入してチェック 細かな棚番明示と写真でミス防ぐパレタイズ推進で積載効率改善 千葉物流センターの生産性・品質改革 特集
