2013年7月号
特集
特集
第4部 ケーススタディ 協力物流会社のノウハウを活かす──ワタミ手づくりマーチャンダイジング
JULY 2013 32
減らないクレーム件数にメス
ワタミグループは「和民」や「わたみん家」「坐・
和民」などの外食チェーンを運営するほか、介護
施設の運営や、自宅に日替わり弁当を届ける宅食
事業も手掛けている。
また自社農場の「ワタミフ ァーム」も運営し、安全・安心にこだわった農作 物の生産を自ら行っている。
そのワタミグループにおいて、仕入れ、製造、 物流機能を一手に担うのがワタミ手作りマーチャ ンダイジング(以下、WTMD)だ。
グループで 使用する全食材(約三〇〇〇品目)を外部サプラ イヤーやワタミファームから仕入れ、それを加工・ 製造し、外食店舗や介護施設、宅食事業の営業 拠点に納品している。
そのインフラの心臓部とも言えるのが集中仕込 みセンター「ワタミ手作り厨房」だ。
原材料を調 達して加工・製造を行う工場機能と、それを仕分 け・出荷するセンター機能を兼ね備えている。
現在、 全国十三カ所に配備している。
「ワタミ手作り厨房」における物流オペレーショ ンは、在庫を持たないスルー型を基本としている。
製造ラインから供給された食材や弁当を店舗別、 介護施設別、宅食の営業所別に仕分けし、即日納 品している。
庫内作業の運営は越谷センター以外、全て自社 で管理している。
一方、配送業務 は外部委託をメー ンとしている。
配 送を委託する物流 企業は現在約二〇 社。
近年の事業の伸びとともに、その数は増加傾 向にあるという。
二〇〇八年度下期からは「ワタミ・ロジスティ クス・イノベーション(WLI)」という取り組み をスタートさせている。
機会損失につながり得る 配送関連のクレームを「重大な品質クレーム」と して位置付け、パートナーとなる物流会社と協力し、 これを防止・低減するのが狙いだ。
外食店舗およ び介護施設向けの配送から始め、一〇年度からは 宅食営業所向けの配送にも展開している。
それまで全く手付かずだったわけではない。
食 品を扱うだけに、WLI以前から配送の品質には 気を配ってきた。
特に「時間管理」や「温度管理」、 「数量管理」に関しては当時も今も厳しい目を向 けている。
ただし、これらは “最低限” の取り組 みにすぎなかった。
現場レベルではほかにもさま ざまな問題が浮上していたが、対応や改善が棚上 げになっていた。
WTMDの石掛明寿物流部部長は「当時は協 協力物流会社のノウハウを活かす ──ワタミ手づくりマーチャンダイジング 配送クレームの防止と低減に取り組んだ。
しかし、な かなか成果が上がらない。
そこで、2008年度後半から アプローチを転換。
「ワタミ・ロジスティクス・イノベー ション( WLI)」と呼ぶ活動をスタートさせた。
協力物流 会社が独自で立てた改善ノウハウを活かすやり方で、ク レーム件数の大幅削減に成功した。
(石鍋 圭) 石掛明寿物流部部長 図1 クレーム件数の推移 70 60 50 40 30 20 10 0 (件) 07 年 08 年 09 年 10 年 11 年 12 年 66 66 29 26 41 34 33 19 14 外食および介護 宅食 ケーススタディ 33 JULY 2013 六六件だった(図1)。
内容別で見ると、特に「車 両」、「納品」、「管理」に集中していることが分か った。
そこで、この三つを「三大クレーム」と位 置付け、ここを重点的に改善することで、次年度 の〇八年度にはクレームを六五件以下にすること を目標として掲げた。
これを実現するため、把握したデータを全ての 協力物流会社に開示し、注力すべき点を促した。
実績を共有し、数値目標を示せば一定の効果は挙 がるとの判断だった。
ところが、蓋を開けてみれば〇八年度も全く同 じ六六件だった。
「車両」や「管理」は大きく減 ったが、その半面、納品ミスや商品破損が増えて しまった。
「問題が起きているのは現場。
やはり実 績値を共有するだけでは効果は出ない。
より具体 的な方法が必要だと痛感した」と石掛部長。
物流会社の業務改善を評価 〇八年度下期からは各物流会社が業務改善のテ ーマを自ら設定し、エリアごとに現場責任者と物 流部で開催される毎月の定例会議でその進捗を確 認する取り組みを始 めた。
定例会議は 半期(六カ月)を一 クールとし、その最 終月( 四月・一〇 月) には全国物流 会議で改善結果を発 表し、参加者全員 でそれぞれの取り組 みを評価し合う。
具 体的な採点項目は図 力物流会社様からクレーム報告を受けても十分に 検証・追求することができず、統計データをまと めることもできていなかった。
これではいけない という意識が常にあった。
〇六年ごろから物流部 門の組織体制を整え、手付かずだった問題にメス を入れることが可能になった」と当時を振り返る。
まず改善の糸口として、現状把握から始めるこ とにした。
納品先や本部から伝達されるクレーム の種類を「車両」、「納品」、「管理」、「事故」、「ク レーム」の五つに分類した(※宅食向けでは「破 損(積込時の落下など)」と「混入」を加えた七種類)。
調査の結果、〇七年度のクレーム件数は合計で 2の通り。
優秀な事例は、金賞・銀賞・銅賞とい ったかたちで表彰される。
この取り組みを本格化した〇九年度は、クレー ム件数が二九件に激減した。
以降、クレーム件数 は前年実績を下回り続け、一二年度は一四件まで 低減している。
一〇年度からスタートした宅食向 けの取り組みも、スタート当初から順調に成果を 挙げている。
各物流会社は荷主であるWTMDだけでなく、 競合他社からも評価されるだけにいい加減な改善 テーマは立てられない。
そして、自身でコミット したテーマの達成には自然と本気になる。
競合他 社の優れた事例を目の当たりにすることで、改善 に対する知識や手法にも磨きが掛かる。
さらに、WTMDは従来、協力物流会社を「組 織力」、「提案力」、「構築力」、「管理力」、「改善力」、 「思い」の六つのKPIで評価し、委託する業務 領域などを決定していたが、WLI発足以降は「品 質」も加味されるようになった。
このこともクレ ーム改善に大きく貢献している。
しかし、こうした “仕掛け” よりも大切なこと があると石掛部長は言う。
「WLIは当社が一方 的に発信しても効果は薄い。
物流会社様が互いに 協力し、積極的に臨まなければ意味がない。
その ため、定例会議の進行役を物流会社様にやっても らうなどして “横のつながり”が生まれるよう努 力した。
初めはぎこちない雰囲気だったが、回を 重ねるごとに互いの壁は低くなり、本質的な質問 や意見交換が活発に出るようになった。
荷主と物 流会社様は目的を共有する仲間。
数値化はできな いが、人と人とのつながりを大切に、お客様の満 足の追求にこだわりたい」と考えている。
各社の施策を出席者が採点する 特集 図2 WLI の評価項目 テーマ選定改善ストーリー の展開 分かりやすさ (視える化) 分析力・ 解析力 成果・効果 (改善力) 5点4点3点2点1点 テーマが絞り 込め、かつ数 値目標が明確 ロジカルであ り、1つ1つに しっかりと結論 が付いている 的を射た図や グラフ、写真 等が効果的に 使われている 複数の分析手 法を使い真因 を突き止めた 有形効果・無 形効果がとも に出せた テーマを絞り込 めた ロジカルな展開 がなされている 的を射た図や グラフ、写真 等が使えている 単一の分析手 法で真因に近 付いた 有形効果・無 形効果のどち らかが出せた テーマが適切ワタミ手法での 展開はできた ストーリーに沿っ た図やグラフ・ 写真の使用に チャレンジできた ワタミ手法で分 析・解析にチャ レンジできた 改善の方向性 は良かったが 成果・効果が 出なかった テーマがあいまい説明不足を感 じる 図やグラフ・ 写真を一部の み使用できた 従来のレベル でしか分析・解 析できなかった 成果・効果が 出たのか分か らない テーマ選び失敗何が言いたい のか分からない 文字が多く分 かりにくい 分析・解析で きなかった 改善に着手で きていない ※このほかに発表時の時間配分も加味
また自社農場の「ワタミフ ァーム」も運営し、安全・安心にこだわった農作 物の生産を自ら行っている。
そのワタミグループにおいて、仕入れ、製造、 物流機能を一手に担うのがワタミ手作りマーチャ ンダイジング(以下、WTMD)だ。
グループで 使用する全食材(約三〇〇〇品目)を外部サプラ イヤーやワタミファームから仕入れ、それを加工・ 製造し、外食店舗や介護施設、宅食事業の営業 拠点に納品している。
そのインフラの心臓部とも言えるのが集中仕込 みセンター「ワタミ手作り厨房」だ。
原材料を調 達して加工・製造を行う工場機能と、それを仕分 け・出荷するセンター機能を兼ね備えている。
現在、 全国十三カ所に配備している。
「ワタミ手作り厨房」における物流オペレーショ ンは、在庫を持たないスルー型を基本としている。
製造ラインから供給された食材や弁当を店舗別、 介護施設別、宅食の営業所別に仕分けし、即日納 品している。
庫内作業の運営は越谷センター以外、全て自社 で管理している。
一方、配送業務 は外部委託をメー ンとしている。
配 送を委託する物流 企業は現在約二〇 社。
近年の事業の伸びとともに、その数は増加傾 向にあるという。
二〇〇八年度下期からは「ワタミ・ロジスティ クス・イノベーション(WLI)」という取り組み をスタートさせている。
機会損失につながり得る 配送関連のクレームを「重大な品質クレーム」と して位置付け、パートナーとなる物流会社と協力し、 これを防止・低減するのが狙いだ。
外食店舗およ び介護施設向けの配送から始め、一〇年度からは 宅食営業所向けの配送にも展開している。
それまで全く手付かずだったわけではない。
食 品を扱うだけに、WLI以前から配送の品質には 気を配ってきた。
特に「時間管理」や「温度管理」、 「数量管理」に関しては当時も今も厳しい目を向 けている。
ただし、これらは “最低限” の取り組 みにすぎなかった。
現場レベルではほかにもさま ざまな問題が浮上していたが、対応や改善が棚上 げになっていた。
WTMDの石掛明寿物流部部長は「当時は協 協力物流会社のノウハウを活かす ──ワタミ手づくりマーチャンダイジング 配送クレームの防止と低減に取り組んだ。
しかし、な かなか成果が上がらない。
そこで、2008年度後半から アプローチを転換。
「ワタミ・ロジスティクス・イノベー ション( WLI)」と呼ぶ活動をスタートさせた。
協力物流 会社が独自で立てた改善ノウハウを活かすやり方で、ク レーム件数の大幅削減に成功した。
(石鍋 圭) 石掛明寿物流部部長 図1 クレーム件数の推移 70 60 50 40 30 20 10 0 (件) 07 年 08 年 09 年 10 年 11 年 12 年 66 66 29 26 41 34 33 19 14 外食および介護 宅食 ケーススタディ 33 JULY 2013 六六件だった(図1)。
内容別で見ると、特に「車 両」、「納品」、「管理」に集中していることが分か った。
そこで、この三つを「三大クレーム」と位 置付け、ここを重点的に改善することで、次年度 の〇八年度にはクレームを六五件以下にすること を目標として掲げた。
これを実現するため、把握したデータを全ての 協力物流会社に開示し、注力すべき点を促した。
実績を共有し、数値目標を示せば一定の効果は挙 がるとの判断だった。
ところが、蓋を開けてみれば〇八年度も全く同 じ六六件だった。
「車両」や「管理」は大きく減 ったが、その半面、納品ミスや商品破損が増えて しまった。
「問題が起きているのは現場。
やはり実 績値を共有するだけでは効果は出ない。
より具体 的な方法が必要だと痛感した」と石掛部長。
物流会社の業務改善を評価 〇八年度下期からは各物流会社が業務改善のテ ーマを自ら設定し、エリアごとに現場責任者と物 流部で開催される毎月の定例会議でその進捗を確 認する取り組みを始 めた。
定例会議は 半期(六カ月)を一 クールとし、その最 終月( 四月・一〇 月) には全国物流 会議で改善結果を発 表し、参加者全員 でそれぞれの取り組 みを評価し合う。
具 体的な採点項目は図 力物流会社様からクレーム報告を受けても十分に 検証・追求することができず、統計データをまと めることもできていなかった。
これではいけない という意識が常にあった。
〇六年ごろから物流部 門の組織体制を整え、手付かずだった問題にメス を入れることが可能になった」と当時を振り返る。
まず改善の糸口として、現状把握から始めるこ とにした。
納品先や本部から伝達されるクレーム の種類を「車両」、「納品」、「管理」、「事故」、「ク レーム」の五つに分類した(※宅食向けでは「破 損(積込時の落下など)」と「混入」を加えた七種類)。
調査の結果、〇七年度のクレーム件数は合計で 2の通り。
優秀な事例は、金賞・銀賞・銅賞とい ったかたちで表彰される。
この取り組みを本格化した〇九年度は、クレー ム件数が二九件に激減した。
以降、クレーム件数 は前年実績を下回り続け、一二年度は一四件まで 低減している。
一〇年度からスタートした宅食向 けの取り組みも、スタート当初から順調に成果を 挙げている。
各物流会社は荷主であるWTMDだけでなく、 競合他社からも評価されるだけにいい加減な改善 テーマは立てられない。
そして、自身でコミット したテーマの達成には自然と本気になる。
競合他 社の優れた事例を目の当たりにすることで、改善 に対する知識や手法にも磨きが掛かる。
さらに、WTMDは従来、協力物流会社を「組 織力」、「提案力」、「構築力」、「管理力」、「改善力」、 「思い」の六つのKPIで評価し、委託する業務 領域などを決定していたが、WLI発足以降は「品 質」も加味されるようになった。
このこともクレ ーム改善に大きく貢献している。
しかし、こうした “仕掛け” よりも大切なこと があると石掛部長は言う。
「WLIは当社が一方 的に発信しても効果は薄い。
物流会社様が互いに 協力し、積極的に臨まなければ意味がない。
その ため、定例会議の進行役を物流会社様にやっても らうなどして “横のつながり”が生まれるよう努 力した。
初めはぎこちない雰囲気だったが、回を 重ねるごとに互いの壁は低くなり、本質的な質問 や意見交換が活発に出るようになった。
荷主と物 流会社様は目的を共有する仲間。
数値化はできな いが、人と人とのつながりを大切に、お客様の満 足の追求にこだわりたい」と考えている。
各社の施策を出席者が採点する 特集 図2 WLI の評価項目 テーマ選定改善ストーリー の展開 分かりやすさ (視える化) 分析力・ 解析力 成果・効果 (改善力) 5点4点3点2点1点 テーマが絞り 込め、かつ数 値目標が明確 ロジカルであ り、1つ1つに しっかりと結論 が付いている 的を射た図や グラフ、写真 等が効果的に 使われている 複数の分析手 法を使い真因 を突き止めた 有形効果・無 形効果がとも に出せた テーマを絞り込 めた ロジカルな展開 がなされている 的を射た図や グラフ、写真 等が使えている 単一の分析手 法で真因に近 付いた 有形効果・無 形効果のどち らかが出せた テーマが適切ワタミ手法での 展開はできた ストーリーに沿っ た図やグラフ・ 写真の使用に チャレンジできた ワタミ手法で分 析・解析にチャ レンジできた 改善の方向性 は良かったが 成果・効果が 出なかった テーマがあいまい説明不足を感 じる 図やグラフ・ 写真を一部の み使用できた 従来のレベル でしか分析・解 析できなかった 成果・効果が 出たのか分か らない テーマ選び失敗何が言いたい のか分からない 文字が多く分 かりにくい 分析・解析で きなかった 改善に着手で きていない ※このほかに発表時の時間配分も加味
