2013年7月号
特集
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第4部 ケーススタディ パート目線で作業環境を整備する──R・K・トラック
JULY 2013 34
れてくる。
また店 舗に電話でクレーム が入った場合は、「顧 客視点シート」とい うシステムに内容が 入力され、全ての 関係部署が閲覧・共有する体制が整えられている。
物流に関するクレーム内容は、商品の破損、数 量違い、遅配、大物商品の搬入に伴う家屋破損な ど。
近年、良品計画の「ネットストア事業」は順 調に拡大しており、それに伴ってRKの通販関連 の出荷件数も急増している。
一年前の一日当たり 出荷件数はピーク時で約六〇〇〇件だったが、現 在は一万件を超えている。
顧客と物流との接点が 増えたため、クレームの件数自体は若干の増加傾 向にある。
ただし、クレーム率は改善している。
特にRK が直接管理する通販センター内の作業が原因で発 生するクレーム率は、約五年前の「一〇万分の五」 から、現在は「一〇万分の一」にまで落ちている (※ともに出荷ピース当たり)。
当時から十分及第 点を付けられる実績を挙げていたが、出荷件数が 急増する中でその数字をさらに改善した。
柴嶺社長はその要因をこう説明する。
「庫内オ ペレーションを大きく変えたわけでも、最新鋭の 大型マテハンを導入したわけでもない。
当社がや り続けてきたことはただ一つ。
現場で働く人と向 き合い、彼らが働きやすい環境を整えること。
気 持ち良く仕事ができれば、生産性や作業精度が上 がる。
その結果、クレームも減る。
物流は全て、 働く “人” にかかっている」 もともとRKの庫内現場における人材管理には、 物流は “人” が全て R・K・トラック(以下、RK)は「無印良品」 を展開する良品計画の一〇〇%物流子会社だ。
地 盤とする新潟で「長岡調達センター」「新潟物流 センター」「通販センター」を運営するほか、浦安、 神戸、福岡にそれぞれ物流センターを構えている。
扱う荷物はアパレル関連や雑貨がメーンで、その 物量は良品計画全体の約半分に当たる。
店舗販売用の商品は長岡調達センターから各地 の物流センターに送られ、そこから周辺エリアの 店舗に供給されている。
一方、ネット通販で受注 した商品に関しては、新潟の通販センターから出 荷され、全国の消費者に直接届けられる。
その配 送はヤマト運輸一社に全面委託している。
ただし、家具を中心とする大物商品は各物流セ ンターにあらかじめ在庫されている。
これらの商 品は「宅送品」と呼ばれ、店頭やネット通販で注 文を受けた後、消費者の自宅に届けられる。
配送 はエリアごとに地場の物流企業に委託している。
消費者からの声は、良品計画のシステムやイン フラを経由して伝えられる。
RKの柴嶺哲社長 は「良品計画は電話やメール、ネット、店舗など、 あらゆるチャネルを利用して顧客とのコミュニケー ションを図っている。
その中で物流に関する内容 が出てくれば、即座にRKとの間で共有される仕 組みになっている」と説明する。
例えば消費者が良品計画の「お客様室」にメー ルで物流に関する意見やクレームを入れてきた場 合、その内容は「声ナビ」というウェブ上のシス テムに投稿され、物流を担当する良品計画の流通 推進部やRKに通知メールがバトン形式で送信さ パート目線で作業環境を整備する ──R・K・トラック ネット通販の出荷件数が急増するのをよそに、クレーム 率を着実に改善している。
庫内オペレーションを大きく変 えたわけでも、マテハンを導入したわけでもない。
現場作 業員が気持ち良く働くことのできる環境を整えれば、生 産性や作業精度は上がり、クレームは減る。
物流は全て、 働く “人” にかかっていると判断している。
(石鍋 圭) 柴嶺哲社長 ケーススタディ 35 JULY 2013 う声があれば、検証をした上で修正を加える。
そ のほかにも間仕切りの導入や作業ラインの変更な ど、パート起点の細かな改善は日常茶飯事だ。
「現 場のボトルネックを一番良く分かっているのは現 場で働くパート社員。
その声の通りに改善すれば、 ミスやクレームが減るのは道理」と柴嶺社長。
作業改善に対する意見だけでなく、環境に対す る要望も受け付け、極力応じるように努めている。
休憩室の増設やウォーターサーバーの設置、冷汗 スカーフの配布など、これまでにいくつもの要望 がかなえられている。
こうした取り組みの結果、女性パートの定着率 は〇六年の六八%から現在は九五%にまで上がっ ている。
育児休業取得も積極的に推奨しているが、 ほぼ全てのパートが現場に復帰するという。
通常、 物流現場は人の入れ替わりが激しいが、RKの現 場では作業に慣れた人材が長く定着する。
そのた め高い作業精度を安定的に実現でき、クレームも 抑えることができる。
物流業界関係者の間でも定評がある。
同業他社か らは現場見学の申し込みや、柴嶺社長への講演依 頼が絶えない。
生産性や作業精度はもちろん、ク レーム改善の鍵もここにあるという。
RKの現場の特徴の一つが、女性比率の高さだ。
二〇〇人を越えるレギュラースタッフのうち、約 九八%が女性。
同社が扱う商材はアパレル用品や 雑貨が多いため、質の高い検品や補修作業が欠か せない。
作業者には注意深さや細やかさが求めら れるため、男性よりも女性の方が向いていると判 断している。
そのため、作業環境作りでも “女性目線” を特 に重視している。
例えば現場で使うカゴ車やピッ キングカートでは、女性でも簡単に取り回しがで きるよう軽量化したものを採用している。
またフ ォークリフト作業者には、一人一人に個人用のヘ ルメットを用意している。
細やかな配慮が、女性 パートに受けている。
パート自身からも声も広く集め、現場改善に役 立てている。
「ラベルの印字が小さくて見にくい」 という意見があれば、システムの表示仕様を拡大 変更して見やすくする。
動線に無駄があるとい 配送クレームが今後の課題 庫内作業だけでなく、配送に起因するクレーム 対策にも手を打ってきた。
ネット通販商品の配送 を委託しているヤマトに対しては、単に注意を促 すだけでなく、RK自らヤマトの物流フローを調 査し、破損や遅配が起きる原因の仮説を立て、そ れをぶつけることで具体的な改善策を引き出して いる。
ヤマトのドライバーの取り扱いや配送車への積 み込み方に問題があると判断すれば、その手順や 方法といったオペレーションにまで踏み込んで変 更を求める。
ヤマトはその要望を検討する一方、 RK側に梱包方法の見直しなどを提案する。
ヤマ トが緩衝材を提供して実際の梱包に仕様する実証 などもこれまでに行われている。
こうした施策が奏功し、一〇年度から一一年度 にかけての配送クレームは「一〇万分の二四」か ら「一〇万分の五」へと大きく減少した。
しかし、 続く一二年度は「一〇万分の九」へと再び増加し ている。
まだ完全な改善軌道に乗せ切れていると は言えない。
大物商品の配送に関しては、件数自体は少ない ものの、クレーム率は三万分の一と高い。
配送を 委託している各物流企業とのさらなる連携・教育 を深める必要があるという。
柴嶺社長は「今の取り組みの延長線上では、劇 的にクレームを減らすことは難しい。
配送会社と の取り組みは継続する一方で、今後は梱包をさら に強化するなど当社としての新たな施策も必要だ。
クレームがゼロになるまで満足することはない」 と意気込みを語る。
本部からクレーム内容がバトンメールで送られて来る 女性でも簡単に押せるカゴ車を導入 1 人1 人に個人用のヘルメットを用意 特集
また店 舗に電話でクレーム が入った場合は、「顧 客視点シート」とい うシステムに内容が 入力され、全ての 関係部署が閲覧・共有する体制が整えられている。
物流に関するクレーム内容は、商品の破損、数 量違い、遅配、大物商品の搬入に伴う家屋破損な ど。
近年、良品計画の「ネットストア事業」は順 調に拡大しており、それに伴ってRKの通販関連 の出荷件数も急増している。
一年前の一日当たり 出荷件数はピーク時で約六〇〇〇件だったが、現 在は一万件を超えている。
顧客と物流との接点が 増えたため、クレームの件数自体は若干の増加傾 向にある。
ただし、クレーム率は改善している。
特にRK が直接管理する通販センター内の作業が原因で発 生するクレーム率は、約五年前の「一〇万分の五」 から、現在は「一〇万分の一」にまで落ちている (※ともに出荷ピース当たり)。
当時から十分及第 点を付けられる実績を挙げていたが、出荷件数が 急増する中でその数字をさらに改善した。
柴嶺社長はその要因をこう説明する。
「庫内オ ペレーションを大きく変えたわけでも、最新鋭の 大型マテハンを導入したわけでもない。
当社がや り続けてきたことはただ一つ。
現場で働く人と向 き合い、彼らが働きやすい環境を整えること。
気 持ち良く仕事ができれば、生産性や作業精度が上 がる。
その結果、クレームも減る。
物流は全て、 働く “人” にかかっている」 もともとRKの庫内現場における人材管理には、 物流は “人” が全て R・K・トラック(以下、RK)は「無印良品」 を展開する良品計画の一〇〇%物流子会社だ。
地 盤とする新潟で「長岡調達センター」「新潟物流 センター」「通販センター」を運営するほか、浦安、 神戸、福岡にそれぞれ物流センターを構えている。
扱う荷物はアパレル関連や雑貨がメーンで、その 物量は良品計画全体の約半分に当たる。
店舗販売用の商品は長岡調達センターから各地 の物流センターに送られ、そこから周辺エリアの 店舗に供給されている。
一方、ネット通販で受注 した商品に関しては、新潟の通販センターから出 荷され、全国の消費者に直接届けられる。
その配 送はヤマト運輸一社に全面委託している。
ただし、家具を中心とする大物商品は各物流セ ンターにあらかじめ在庫されている。
これらの商 品は「宅送品」と呼ばれ、店頭やネット通販で注 文を受けた後、消費者の自宅に届けられる。
配送 はエリアごとに地場の物流企業に委託している。
消費者からの声は、良品計画のシステムやイン フラを経由して伝えられる。
RKの柴嶺哲社長 は「良品計画は電話やメール、ネット、店舗など、 あらゆるチャネルを利用して顧客とのコミュニケー ションを図っている。
その中で物流に関する内容 が出てくれば、即座にRKとの間で共有される仕 組みになっている」と説明する。
例えば消費者が良品計画の「お客様室」にメー ルで物流に関する意見やクレームを入れてきた場 合、その内容は「声ナビ」というウェブ上のシス テムに投稿され、物流を担当する良品計画の流通 推進部やRKに通知メールがバトン形式で送信さ パート目線で作業環境を整備する ──R・K・トラック ネット通販の出荷件数が急増するのをよそに、クレーム 率を着実に改善している。
庫内オペレーションを大きく変 えたわけでも、マテハンを導入したわけでもない。
現場作 業員が気持ち良く働くことのできる環境を整えれば、生 産性や作業精度は上がり、クレームは減る。
物流は全て、 働く “人” にかかっていると判断している。
(石鍋 圭) 柴嶺哲社長 ケーススタディ 35 JULY 2013 う声があれば、検証をした上で修正を加える。
そ のほかにも間仕切りの導入や作業ラインの変更な ど、パート起点の細かな改善は日常茶飯事だ。
「現 場のボトルネックを一番良く分かっているのは現 場で働くパート社員。
その声の通りに改善すれば、 ミスやクレームが減るのは道理」と柴嶺社長。
作業改善に対する意見だけでなく、環境に対す る要望も受け付け、極力応じるように努めている。
休憩室の増設やウォーターサーバーの設置、冷汗 スカーフの配布など、これまでにいくつもの要望 がかなえられている。
こうした取り組みの結果、女性パートの定着率 は〇六年の六八%から現在は九五%にまで上がっ ている。
育児休業取得も積極的に推奨しているが、 ほぼ全てのパートが現場に復帰するという。
通常、 物流現場は人の入れ替わりが激しいが、RKの現 場では作業に慣れた人材が長く定着する。
そのた め高い作業精度を安定的に実現でき、クレームも 抑えることができる。
物流業界関係者の間でも定評がある。
同業他社か らは現場見学の申し込みや、柴嶺社長への講演依 頼が絶えない。
生産性や作業精度はもちろん、ク レーム改善の鍵もここにあるという。
RKの現場の特徴の一つが、女性比率の高さだ。
二〇〇人を越えるレギュラースタッフのうち、約 九八%が女性。
同社が扱う商材はアパレル用品や 雑貨が多いため、質の高い検品や補修作業が欠か せない。
作業者には注意深さや細やかさが求めら れるため、男性よりも女性の方が向いていると判 断している。
そのため、作業環境作りでも “女性目線” を特 に重視している。
例えば現場で使うカゴ車やピッ キングカートでは、女性でも簡単に取り回しがで きるよう軽量化したものを採用している。
またフ ォークリフト作業者には、一人一人に個人用のヘ ルメットを用意している。
細やかな配慮が、女性 パートに受けている。
パート自身からも声も広く集め、現場改善に役 立てている。
「ラベルの印字が小さくて見にくい」 という意見があれば、システムの表示仕様を拡大 変更して見やすくする。
動線に無駄があるとい 配送クレームが今後の課題 庫内作業だけでなく、配送に起因するクレーム 対策にも手を打ってきた。
ネット通販商品の配送 を委託しているヤマトに対しては、単に注意を促 すだけでなく、RK自らヤマトの物流フローを調 査し、破損や遅配が起きる原因の仮説を立て、そ れをぶつけることで具体的な改善策を引き出して いる。
ヤマトのドライバーの取り扱いや配送車への積 み込み方に問題があると判断すれば、その手順や 方法といったオペレーションにまで踏み込んで変 更を求める。
ヤマトはその要望を検討する一方、 RK側に梱包方法の見直しなどを提案する。
ヤマ トが緩衝材を提供して実際の梱包に仕様する実証 などもこれまでに行われている。
こうした施策が奏功し、一〇年度から一一年度 にかけての配送クレームは「一〇万分の二四」か ら「一〇万分の五」へと大きく減少した。
しかし、 続く一二年度は「一〇万分の九」へと再び増加し ている。
まだ完全な改善軌道に乗せ切れていると は言えない。
大物商品の配送に関しては、件数自体は少ない ものの、クレーム率は三万分の一と高い。
配送を 委託している各物流企業とのさらなる連携・教育 を深める必要があるという。
柴嶺社長は「今の取り組みの延長線上では、劇 的にクレームを減らすことは難しい。
配送会社と の取り組みは継続する一方で、今後は梱包をさら に強化するなど当社としての新たな施策も必要だ。
クレームがゼロになるまで満足することはない」 と意気込みを語る。
本部からクレーム内容がバトンメールで送られて来る 女性でも簡単に押せるカゴ車を導入 1 人1 人に個人用のヘルメットを用意 特集
