2013年7月号
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「3PL市場は再び成長軌道に乗った」 ブルース・エドワーズ 独DHLサプライチェーン CEO
JULY 2013 2
ング市場と比べて、ロジスティクス市
場は寡占化が進んでいません。
今後は 寡占化が進むのでしょうか。
「そうは思いません。
ロジスティクス 市場はローカルなニーズが常に強く存 在するため、エクスプレスやフォワー ディング業界ほど寡占化はしない。
ロ ーカルで小規模なプレーヤーが今後も 生き残る」 ──DHLサプライチェーンは業界最 大手です。
その事業規模は強みになり ませんか? 「確かに我々はロジスティクス市場に おける唯一のグローバルプロバイダー です。
グローバルに一環したオペレー ションを提供できます。
また、ある地 域で開発したソリューションを別の場 所に転用できるという点は当社の強み になっています。
その一方で、ロジス ティクス市場における競争が極めてロ ーカルであることも事実です。
そのた めに我々はローカルな競争力とグロー バルな統合とのバランスを取ることを 常に重視しています。
そうしたことが できるプレーヤーは、そうはいないは ずです」 ──シェアを追うことはしない? 「シェアよりも、ナンバーワンである ことを重視しています。
当社がメーン のターゲットとするのは、まだ物流を アウトソーシングしていない会社です。
プレーヤーの二極化が加速 ──二〇一二年度決算の業績がリー マンショック前の水準を上回りました。
3PL市場全体の回復がそのまま反映 されたということでしょうか。
「当社の業績の回復ぶりは、同業他 社を上回っています。
3PL市場にお ける業績の二極化がこれまで以上に進 んでいると感じています」 ──何がドライバーなのでしょうか。
「景気が低迷し、誰もが苦労する困 難な時代にもしっかりと対応できるか。
強いオペレーション部隊を持っている かどうかの差でしょう。
リスクに慎重 になり過ぎて価値のある契約を逃した り、あるいは野心的過ぎる提案によっ て判断ミスを犯すといったような、そ の会社が世界経済危機前から抱えてい た問題が景気の低迷で表面化している のだと思います」 ──DHLサプライチェーンも経済危 機に直面した〇八年度、〇九年度には 赤字に転落しました。
どのような対策 をそこで打ったのでしょうか。
「一九九〇年代末から二〇〇〇年代 前半にかけて我々は積極的なM&Aを 実施しました。
中には期待したような 結果の出なかった案件もいくつかあり ました。
そうした事業を切り離したり、 のれん代を償却するといった手を打ち ました。
それに加えて、先ほど申し上 げたような契約における判断ミスとい うのは当社にもあるわけで、そうした 採算の取れなくなっている仕事を整理 していきました。
いくつかの小さな国 からは撤退もしました。
そこに割いて いたリソースを結果の出せる仕事に集 中させたのです」 ──リストラは一段落しましたか。
「一回やったら終わりというもので はありません。
ほかのビッグビジネス と同様に我々の仕事に再編は付きもの であり、最も収益の上がるところにリ ソースを再配分していくという調整は 今後もずっと続くと認識しています」 ──とは言え、市場の局面は変わった のでは? 「私はこの業界で四半世紀を過ごし てきましたが、〇八年までロジスティ クス市場は後退ということを知りませ んでした。
そして今また市場は年率七 〜八%という成長力を取り戻していま す。
今後もヨーロッパの一部の地域を 例外として、日本を含めたほとんどの エリアで成長が続くと見ています。
実 際、今期に入ってから約五カ月間の当 社の実績を見ても過去に経験がないほ どの契約が取れています」 ──エクスプレス市場やフォワーディ ブルース・エドワーズ 独DHLサプライチェーン CEO 「3PL市場は再び成長軌道に乗った」 業績は世界経済危機前の水準を回復した。
さらに今期は新規案 件の受託が過去最高のペースで進んでいる。
日本でも今年三月に初 のリード・ロジスティクス・プロバイダー(LLP)契約をコニカミ ノルタと結び、従来とは次元の違う包括的な物流アウトソーシング が動き出している。
(聞き手・大矢昌浩) 3 JULY 2013 そうした会社にアウトソーシングを提案 する上で、業界ナンバーワンの地位に あることは大きな意味があります」 ──今年三月にDHLサプライチェー ンの日本法人はコニカミノルタを相手 に、物流子会社(コニカミノルタ物流) の事業継承と「LLP(リード・ロジ スティクス・プロバイダー)」契約の締 結を発表しました。
DHLサプライチ ェーンは旧エクセル時代の二〇〇四年 に富士通から富士通ロジスティクスを 買収しています。
そのインフラにほか のハイテクメーカーの物流子会社を統 合していくという戦略を当時から打ち 出していました。
しかし、二つ目のコ ニカミノルタが決まるまで結局、一〇 年近く掛かっています。
「正直なところ、日本のメーカーがこ こまで長く自家物流を続けてきたこと には驚いています。
富士通ロジスティ クスの買収は、当社と富士通の双方に とって大変に良い結果をもたらしまし た。
それに追随する会社がもっと早く 出てくると見ていました」 ──コニカミノルタ物流を買収するの ではなく、その物流事業を継承して包 括契約を結ぶというスキームを選んだ 理由は。
「最近になって日本でも物流子会社 のM&Aが動き出してきましたが、買 収金額があまりに高額であることが、 す。
そこにコニカミノルタの物流を乗 せることで効率化が進む。
同様に相模 原のセンターもアパレルをはじめとす る小売業向けの汎用施設です。
そうし た産業別のプラットフォームには、案 件ごとに借庫するというやり方だけで なく、立地やコストの面で競争力のあ る、核となる施設を事前に用意してお くのも有効だと考えています」 ──共同物流は海外よりも、むしろ日 本が先行しているのでは? 「そうとも限りません。
実際、当社 は既に七、八カ国で産業別の物流プ ラットフォームを運営しています。
医 薬・ヘルスケア品やサービスパーツ、 イギリスでは酒類・飲料でプラットフ ォームを運営しています。
そうしたニ ーズは世界的に増える傾向にあり、そ こでも当社は素早い投資判断と素早い 立ち上げによって他社をリードしてい ると自負しています」 我々にとってはネックでした。
荷主企 業にとっても、本当に必要なのはサプ ライチェーンを効率化することであっ て、子会社の売却で一時的な資金を手 に入れることではないはずです。
その 点でLLPは買収ではありませんので、 我々から見て前払い的な費用が発生し ない。
荷主もそれに制約を受けること がない。
そのため純粋にサプライチェ ーンの効率化を進められる。
荷主はそ のメリットを享受することができる」 ──LLPは従来の3PLと何が違う のですか。
「LLPの詳細については企業秘密 の部分もあって、今の段階では全てを 公表はできません。
しかし先ほど海外 の先進的なノウハウを各地に転用でき ることが当社の強みだとご説明しまし たが、LLPもその一つです。
当社は 欧米でLLPの専門チームを組織して います。
そのノウハウを今回は日本に 持ち込みました」 日本で「LLP」を本格展開 ──今後のアジアや日本市場における 展開は。
「我々がアジアに進出して以来の、か つてないほどの活発な投資を行うこと になります。
既にシンガポール、イン ドネシア、ベトナムなど、立て続けに 大規模な投資計画を発表しました。
日 本でもこの四月に着工した汎用型のハ ブ施設『相模原ロジスティクスセンタ ー』には延べ五〇億円を投資します」 「それだけ今の我々は強気になってい ます。
とりわけ日本企業には期待して います。
アジアにおける競争は日を追 うごとに激しさを増しています。
日本 企業は欧米企業との競争だけでなくア ジア企業も相手にしなければならなく なっている。
サプライチェーンの効率 化を一段と進める必要があります」 「そこからアウトソーシングの大きな 需要が生まれると見ています。
LLP によって、そうしたニーズに応えてい きます。
我々が提案するLLPの特徴 の一つはリソースの共有です。
物流セ ンター、輸送機能、情報システム、人 材といったリソースを、当社を介して ほかの荷主企業とシェアすることでコ スト効率を向上します」 ──相模原ロジスティクスセンターは 一〇年契約の長期リースで固定的なア セットです。
従来のノンアセットの方 針を修正したのですか。
「我々は荷主のニーズに対応する必要 があります。
今の荷主は必ずしも専用 施設を求めているわけではありません。
コニカミノルタとのLLP契約が実現 したのも、我々が富士通ロジスティク スをベースに構築した精密機器物流の プラットフォームを持っていたからで Bruce A. Edwards 1977年、米グスタフアドルフス 大卒。
米倉庫会社副社長を経て、 89年に大手3PLの英エクセル入 社。
99年、同社取締役米国担当。
2005年、ドイツポストがエクセル を買収、DHLサプライチェーンに社 名変更。
これに伴い同社米国/ア ジア太平洋地区サプライチェーン担 当CEOに就任。
2008年、ドイツポ スト取締役会メンバーおよびDHL サプライチェーンのグローバルCEO に就任。
現在に至る。
今後は 寡占化が進むのでしょうか。
「そうは思いません。
ロジスティクス 市場はローカルなニーズが常に強く存 在するため、エクスプレスやフォワー ディング業界ほど寡占化はしない。
ロ ーカルで小規模なプレーヤーが今後も 生き残る」 ──DHLサプライチェーンは業界最 大手です。
その事業規模は強みになり ませんか? 「確かに我々はロジスティクス市場に おける唯一のグローバルプロバイダー です。
グローバルに一環したオペレー ションを提供できます。
また、ある地 域で開発したソリューションを別の場 所に転用できるという点は当社の強み になっています。
その一方で、ロジス ティクス市場における競争が極めてロ ーカルであることも事実です。
そのた めに我々はローカルな競争力とグロー バルな統合とのバランスを取ることを 常に重視しています。
そうしたことが できるプレーヤーは、そうはいないは ずです」 ──シェアを追うことはしない? 「シェアよりも、ナンバーワンである ことを重視しています。
当社がメーン のターゲットとするのは、まだ物流を アウトソーシングしていない会社です。
プレーヤーの二極化が加速 ──二〇一二年度決算の業績がリー マンショック前の水準を上回りました。
3PL市場全体の回復がそのまま反映 されたということでしょうか。
「当社の業績の回復ぶりは、同業他 社を上回っています。
3PL市場にお ける業績の二極化がこれまで以上に進 んでいると感じています」 ──何がドライバーなのでしょうか。
「景気が低迷し、誰もが苦労する困 難な時代にもしっかりと対応できるか。
強いオペレーション部隊を持っている かどうかの差でしょう。
リスクに慎重 になり過ぎて価値のある契約を逃した り、あるいは野心的過ぎる提案によっ て判断ミスを犯すといったような、そ の会社が世界経済危機前から抱えてい た問題が景気の低迷で表面化している のだと思います」 ──DHLサプライチェーンも経済危 機に直面した〇八年度、〇九年度には 赤字に転落しました。
どのような対策 をそこで打ったのでしょうか。
「一九九〇年代末から二〇〇〇年代 前半にかけて我々は積極的なM&Aを 実施しました。
中には期待したような 結果の出なかった案件もいくつかあり ました。
そうした事業を切り離したり、 のれん代を償却するといった手を打ち ました。
それに加えて、先ほど申し上 げたような契約における判断ミスとい うのは当社にもあるわけで、そうした 採算の取れなくなっている仕事を整理 していきました。
いくつかの小さな国 からは撤退もしました。
そこに割いて いたリソースを結果の出せる仕事に集 中させたのです」 ──リストラは一段落しましたか。
「一回やったら終わりというもので はありません。
ほかのビッグビジネス と同様に我々の仕事に再編は付きもの であり、最も収益の上がるところにリ ソースを再配分していくという調整は 今後もずっと続くと認識しています」 ──とは言え、市場の局面は変わった のでは? 「私はこの業界で四半世紀を過ごし てきましたが、〇八年までロジスティ クス市場は後退ということを知りませ んでした。
そして今また市場は年率七 〜八%という成長力を取り戻していま す。
今後もヨーロッパの一部の地域を 例外として、日本を含めたほとんどの エリアで成長が続くと見ています。
実 際、今期に入ってから約五カ月間の当 社の実績を見ても過去に経験がないほ どの契約が取れています」 ──エクスプレス市場やフォワーディ ブルース・エドワーズ 独DHLサプライチェーン CEO 「3PL市場は再び成長軌道に乗った」 業績は世界経済危機前の水準を回復した。
さらに今期は新規案 件の受託が過去最高のペースで進んでいる。
日本でも今年三月に初 のリード・ロジスティクス・プロバイダー(LLP)契約をコニカミ ノルタと結び、従来とは次元の違う包括的な物流アウトソーシング が動き出している。
(聞き手・大矢昌浩) 3 JULY 2013 そうした会社にアウトソーシングを提案 する上で、業界ナンバーワンの地位に あることは大きな意味があります」 ──今年三月にDHLサプライチェー ンの日本法人はコニカミノルタを相手 に、物流子会社(コニカミノルタ物流) の事業継承と「LLP(リード・ロジ スティクス・プロバイダー)」契約の締 結を発表しました。
DHLサプライチ ェーンは旧エクセル時代の二〇〇四年 に富士通から富士通ロジスティクスを 買収しています。
そのインフラにほか のハイテクメーカーの物流子会社を統 合していくという戦略を当時から打ち 出していました。
しかし、二つ目のコ ニカミノルタが決まるまで結局、一〇 年近く掛かっています。
「正直なところ、日本のメーカーがこ こまで長く自家物流を続けてきたこと には驚いています。
富士通ロジスティ クスの買収は、当社と富士通の双方に とって大変に良い結果をもたらしまし た。
それに追随する会社がもっと早く 出てくると見ていました」 ──コニカミノルタ物流を買収するの ではなく、その物流事業を継承して包 括契約を結ぶというスキームを選んだ 理由は。
「最近になって日本でも物流子会社 のM&Aが動き出してきましたが、買 収金額があまりに高額であることが、 す。
そこにコニカミノルタの物流を乗 せることで効率化が進む。
同様に相模 原のセンターもアパレルをはじめとす る小売業向けの汎用施設です。
そうし た産業別のプラットフォームには、案 件ごとに借庫するというやり方だけで なく、立地やコストの面で競争力のあ る、核となる施設を事前に用意してお くのも有効だと考えています」 ──共同物流は海外よりも、むしろ日 本が先行しているのでは? 「そうとも限りません。
実際、当社 は既に七、八カ国で産業別の物流プ ラットフォームを運営しています。
医 薬・ヘルスケア品やサービスパーツ、 イギリスでは酒類・飲料でプラットフ ォームを運営しています。
そうしたニ ーズは世界的に増える傾向にあり、そ こでも当社は素早い投資判断と素早い 立ち上げによって他社をリードしてい ると自負しています」 我々にとってはネックでした。
荷主企 業にとっても、本当に必要なのはサプ ライチェーンを効率化することであっ て、子会社の売却で一時的な資金を手 に入れることではないはずです。
その 点でLLPは買収ではありませんので、 我々から見て前払い的な費用が発生し ない。
荷主もそれに制約を受けること がない。
そのため純粋にサプライチェ ーンの効率化を進められる。
荷主はそ のメリットを享受することができる」 ──LLPは従来の3PLと何が違う のですか。
「LLPの詳細については企業秘密 の部分もあって、今の段階では全てを 公表はできません。
しかし先ほど海外 の先進的なノウハウを各地に転用でき ることが当社の強みだとご説明しまし たが、LLPもその一つです。
当社は 欧米でLLPの専門チームを組織して います。
そのノウハウを今回は日本に 持ち込みました」 日本で「LLP」を本格展開 ──今後のアジアや日本市場における 展開は。
「我々がアジアに進出して以来の、か つてないほどの活発な投資を行うこと になります。
既にシンガポール、イン ドネシア、ベトナムなど、立て続けに 大規模な投資計画を発表しました。
日 本でもこの四月に着工した汎用型のハ ブ施設『相模原ロジスティクスセンタ ー』には延べ五〇億円を投資します」 「それだけ今の我々は強気になってい ます。
とりわけ日本企業には期待して います。
アジアにおける競争は日を追 うごとに激しさを増しています。
日本 企業は欧米企業との競争だけでなくア ジア企業も相手にしなければならなく なっている。
サプライチェーンの効率 化を一段と進める必要があります」 「そこからアウトソーシングの大きな 需要が生まれると見ています。
LLP によって、そうしたニーズに応えてい きます。
我々が提案するLLPの特徴 の一つはリソースの共有です。
物流セ ンター、輸送機能、情報システム、人 材といったリソースを、当社を介して ほかの荷主企業とシェアすることでコ スト効率を向上します」 ──相模原ロジスティクスセンターは 一〇年契約の長期リースで固定的なア セットです。
従来のノンアセットの方 針を修正したのですか。
「我々は荷主のニーズに対応する必要 があります。
今の荷主は必ずしも専用 施設を求めているわけではありません。
コニカミノルタとのLLP契約が実現 したのも、我々が富士通ロジスティク スをベースに構築した精密機器物流の プラットフォームを持っていたからで Bruce A. Edwards 1977年、米グスタフアドルフス 大卒。
米倉庫会社副社長を経て、 89年に大手3PLの英エクセル入 社。
99年、同社取締役米国担当。
2005年、ドイツポストがエクセル を買収、DHLサプライチェーンに社 名変更。
これに伴い同社米国/ア ジア太平洋地区サプライチェーン担 当CEOに就任。
2008年、ドイツポ スト取締役会メンバーおよびDHL サプライチェーンのグローバルCEO に就任。
現在に至る。
