2013年8月号
特集

第6部 震災でも止まらなかったJIT納入──旭化成ホームズ

AUGUST 2013  32 とがしばしば起き ていた。
本来は建 築作業に専念すべ き職人が、その工 程には必要ない部 材をじゃまになら ないよう片付けた り、トラックの交 通整理に追われた りしていた。
 このため、旭化 成ホームズは〇四年以降、部材や設備機器の調達・ 現場搬入に絡む物流を段階的に整備してきた。
同 社の佐藤孝幸購買・物流本部物流部長は「きち んとものづくりをするためにはきちんとものを届 けていく仕組みが必要だということを基本的な考 え方として、物流の改革が始まった。
中でも調達 の非効率を改善して現場の生産性を高めることが 大きな課題だった」と言う。
 その解決策として「取りに行く物流」を実施し た。
旭化成ホームズが自分でトラックを手配して「調 達便」で必要な部材や設備機器をベンダーまで集 荷に行く。
それを自社物流センターにいったん集約。
そこで施工現場ごとに必要な部材・機器をまとめ て、工程の進捗に合わせ現場に納品する仕組みを 構築した。
 旭化成ホームズの戸建て住宅の販売は関東や東 海、近畿などの都市圏が中心だ。
そのため、物流 センターを東京・平和島、神奈川・厚木、千葉・柏、 愛知・小牧、大阪・攝津、福岡の六カ所に置いた。
その後、事業環境の変化に応じて東京から埼玉・ 戸田に設置場所を変えるなどしており、今夏には 全国六カ所に物流センター  旭化成ホームズは、旭化成の一〇〇%子会社の ハウスメーカーだ。
「ヘーベルハウス」ブランドの 戸建て注文住宅や「ヘーベルメゾン」ブランドの 集合住宅を展開し、連結売上高は四八六二億円(二 〇一三年三月期)と業界大手の一角を占める。
 同社の建築工事は、東日本大震災の際にも大き く進捗が乱れることはなかった。
建材のメーカー に部材や設備機器を取りに行く手段を従来から備 えていたためだ。
品物はベンダーにあってもサプ ライチェーンの寸断で届けられないという事態を 避けることができた。
 物流企画室の堀川泰司課長は「もともと災害な ど緊急事態も念頭に置いてシステムを設計してい た。
昔のように現場からベンダーに手配するやり 方では電話がつながらないなどの問題が起こって いただろう。
当社がベンダーや物流会社との間の 調整を一手に引き受ける体制を整えていたことが 大きかった」と振り返る。
 住宅は鉄骨から木材、外壁用パネル、扉、窓、 アルミサッシ、床材、システムキッチン、浴槽など、 部材や設備機器のバラエティが多く、荷姿もバラ バラだ。
施工現場は全国に広がっていて、天候な どの影響で工期が乱れることも少なくない。
 その物流を従来はベンダーサイドに任せてきた。
現場の工事を請け負った工務店などが必要な建材 や設備機器を発注。
それを受け、ベンダーがそれ ぞれ現場にトラックで製品を搬入していた。
 その結果、現場にはトラックが頻繁に出入りし て混雑し、最初に使いたい部材が後回しになった り、後の工程に用いる部材が早く届いたりするこ 震災でも止まらなかったJIT納入 ──旭化成ホームズ  建築現場ごとに部材や設備機器を発注して、ベンダーが バラバラに納品する体制を改めた。
各地に調達物流拠点を 設置。
自分で手配した車両でベンダーまで取りに行き、物 流センターで現場別に仕分けて、工事の進捗に合わせてJIT 納入する。
調達物流を自社化したことで東日本大震災に直 面しても混乱は最小限に抑えることができた。
( 藤原秀行) 堀川泰司 佐藤孝幸物流部長 物流企画室課長 第6 部 33  AUGUST 2013 かの部材と荷合わせして積載効率を高めるなど、 物量の波動にも対応している。
 なお、自社工場で生産している、外壁や天井に 使うALC(軽量気泡コンクリート)パネル、住 宅の本体部分を支える鉄骨などは、取りに行く物 流の対象外としている。
部材搬入回数を三分の一に  調達・現場配送の物流改革に合わせて、施工現 場の工程や部材発注を管理する新たな情報システ ム「ACOSMOS─NET」も開発した。
工事 を手掛ける工務店の担当者が具体的な工程や使う ことが見込まれる部材の種類を事前情報としてパ ソコンに入力。
その内容はインターネットから同 社のサーバーを通じて取引先にも届くため、ベン ダーサイドは早い段階から製品納入の準備ができ る。
 日付の変更があった場合、すみやかにシステム 経由で取引先にその旨が通知される。
現場側が部 材の使用日程を最終確定した翌日には、同じくシ ステムを通じてベンダーに正式な発注が行き、現 場への正式な搬入日程が決まる。
内装に関する部 材の場合、正式発注から基本的に七営業日後(土 日祝祭日除く)にその現場に搬入される段取りだ。
 このシステムの稼働で、各現場の工程の進み具 合や発注状況を一元的に管理できるようになった。
必要な量だけを適宜現場へ運び込む調達・配送物 流と新システムを有機的に結び付けて、JIT納 品の対象品目を徐々に拡大していった。
 部材や設備の物流を集約したことで、トラック で施工現場に搬入する回数は一カ所当たり平均で 物流システム改革前の三分の一程度まで抑えるこ 愛知のセンターを名古屋市へ移転する計画だ。
 このほかにストックポイント(SP)と称する 小型の物流拠点も浜松、岡山、広島の三カ所に設 けている。
物流センターから部材を持ち込んだ上で、 現場別に部材・設備機器を仕分けして配送してい る。
物流センターの管轄エリアの隙間をSPで補い、 営業エリアをくまなくカバーするよう努めている。
 物流センターは通過型だ。
断熱材など、メーカ ーからの預かり在庫として大きなロットで保管し、 各現場の必要に応じてその都度小分けしているも のも一部あるが、基本的には部材や機器を運び込 んだ翌日には、仕分けした現場向けに送り出す。
 システムキッチンのセットのように、一つの邸 宅分がトラック一台で満杯になるような場合は物 流センターから施工現場まで直行する。
一方、あ る物流センターから施工現場へ届ける荷物の量が 少ない時は近接の物流センターにも立ち寄り、ほ とができた。
トラックドライバーが現場到着後、 部材を敷地内に置くだけでなく、住宅の中までき ちんと届けるスタイルに変更したことにより、職 人は本来の施工業務に集中できるようになり、作 業の生産性向上を後押しした。
 堀川課長は「新システムで営業担当がお客様か らシステムキッチンはいつ設置されるかなど、工 程の進捗状況に関する問い合わせがあっても迅速 に回答できるようになった。
顧客満足度を高める 効果もあった」と指摘する。
 「取りに行く物流」は当初、ベンダー三社でスタ ートした。
それが現在は約五〇社に「調達便」を 走らせている。
佐藤部長は「なるべく自社調達で 持っていく量は増やしたい。
そうすれば一緒に運 ぶ部材や設備機器の組み合わせのパターンが増え て、積み合わせによる効率化のパターンをさらに 拡大することができる」と意欲を見せる。
 輸送や物流センター運営はセンコーに委託して おり、同社と組んで輸送・搬入作業の品質向上を 推進している。
上履き着用や退出前の清掃など、 建築現場でのルールを厳格化し、現場を汚したり 作業を妨げたりせず、近隣住民にも不快感を抱か せないよう配慮している。
優れた技能を持つ人を 「CD(カスタマーディライト=顧客感動)リーダ ー」として各ドライバーの指導役に就かせるなど、 インセンティブの付与にも腐心している。
 堀川課長は「名古屋のある現場で丁寧に搬入作 業をしていたドライバーを近隣の方がご覧になって、 そういう運送会社を使うハウスメーカーなら安心 だろうということでアパートを発注してくれたこ とがあった」と、CDの持つ重要性を肌で感じて いる。
旭化成ホームズの物流システムの概要 ACOSMOS-NET 新部材管理システム新工程管理システム 設計センター ベンダー 施工現場 搬入予告 部材物流センター 物流センター (6 拠点) 情報の流れ (公開) 調達物流 (工場出荷からの物流網) 施工に合った最適な物流 (現場最優先の物流体制) 出所:同社資料より 特集 調達物流

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