2013年8月号
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「ビッグデータの活用でSCMが進化する」 米IBM フラン・オサリバン SCM部門ゼネラルマネジャー

AUGUST 2013  2 ています」 ──ISCの現在の組織体制は?  「大きく四つのチームから構成されて います。
一つは『CPO(調達最高責 任者)』のチームです。
二つ目が先ほど の営業管理チーム。
そして三つ目は実 行チーム。
製造、調達、物流、検査 など製品に関わる全てのエンジニアリ ングを担当しています。
そして四つ目 は、私はこれがISCの最も大事な役 割だと考えているのですが、変革およ び戦略を担うチームです」  「先ほどのパソコン事業の売却がそう であったように、これまでもIBMは 自らを作り替えるということを継続的 に行ってきましたが、今はサプライチ ェーンを改革することが当社の今後の 成長にとって最も重要だと位置付けら れています」 ──なぜ今になって改めてSCMが重 要になったのでしょうか。
 「一つエピソードを紹介させてくださ い。
先日、私はIBMの最高戦略会 議でプレゼンを行いました。
その会議 にSCM部門の責任者が召集されるの は、それまでなかったことです。
なぜ そこに私が呼ばれたのか。
サプライチ ェーンが変革の時期を迎えていると当 社の経営陣が判断したからです」  「振り返ると我々はERPの普及によ って会社全体の可視性を手に入れまし サービス事業にもSCM ─米IBMのSCM部門「Integrated Supply Chain(ISC)」が二〇〇〇 年代前半に実施した大規模な改革は、 その後のグローバルSCMに一つのモ デルを提示しました。
それから約一〇 年が経過した今、ISCの役割はどう 変わったのでしょうか。
 「ISCの役割はその名の通り、グ ローバルサプライチェーンの統合です。
かつてのIBMは国や事業部門ごとに、 それぞれが製造部門を持ち、調達から 物流、資金管理まで独自に行っていま した。
それをISCの下、グローバル に統合することで年間六五億ドルもの コスト削減を実現しました」  「さらに今期に入ってISCの役割 は大きく拡大されました。
全てのフロ ントオフィスのサポートを任されるよう になったんです。
営業活動における提 案書の作成から入札管理、プライシン グの認定、顧客のフォローアップに至 るまで、あらゆるバックオフィス業務 をISCが担います。
それによって営 業マンを顧客のビジネスやニーズの把 握に集中させようという狙いです」  「同時にそのことがサプライチェーン にも良い効果をもたらします。
非常に 早い段階からSCM部門が商談に参画 することで、顧客ニーズの理解が増し、 将来の需要を予測しやすくなります。
分析(アナリティクス)の結果、問題 が発生しそうであれば事前に手を打つ ことができるようになります」 ──二〇〇五年にIBMはパソコン部 門をレノボに売却しました。
それ以降 のIBMはハードメーカーというより ソリューションベンダーです。
SCM の役割は縮小したのでは。
 「確かに現在のIBMにおける最大 の事業はアウトソーシングサービスで す。
しかし、製品のSCMで培ったナ レッジはアウトソーシングビジネスにも 活用できます。
必要な場所に必要なタ イミングで必要なスキルを持った人材 を投入することは、必要なモノを必要 な場所に必要なだけ供給するのと同じ だからです」  「IBMがパソコン事業を売却した のは、パソコンがコモディティ化して マージン率が下がり、規模の経済がも のを言うビジネスになったからでした。
事業売却はIBMがより付加価値の高 いビジネスに集中するために必要な変 革(トランスフォーメーション)でした。
同様にISCも従来のようにモノだけ を対象とするのではく、サービスに活 動範囲を拡げることによって、自らの 価値を高めていることができると考え 米IBM フラン・オサリバン SCM部門ゼネラルマネジャー 「ビッグデータの活用でSCMが進化する」  情報技術の革新によってSCMが次のステージに進もうとしてい る。
サプライチェーン上に溢れる雑多な情報を構造化して一元管理 し、それを分析することで、正しい施策を科学的に導き出す人工知 能システムが実用に移されている。
「ビジネス・アナリティクス」と 呼ばれている。
              (聞き手・大矢昌浩) 3  AUGUST 2013 た。
その可視性の範囲が今やサプライ ヤーや顧客にまで広がろうとしていま す。
その意味をIBMの経営陣は重視 しているんです。
その会議のプレゼン の後、最高責任者の一人にこう言われ ました。
?フラン。
もうサプライチェー ンは退屈じゃなくなったんだな?と」 ──ISCは二〇〇二年に設立された 当初からIBMのトータルコストの半 分を管理する大組織で、ISCが実施 したサプライチェーンの統合は当時の トップのリーダーシップが大きかったと も聞いています。
そのころからSCM は経営マターだったのでは?  「確かにそうですが、当時はやはり コストの問題が大きかった。
それに対 して現在はコストの問題にとどまらな い戦略上のテーマとしてSCMが浮上 しているのです」 予測から「アナリティクス」へ ──先ほどのISCの戦略チームの説 明の中に「アナリティクス(Analytics)」 という言葉が出てきました。
その意味 は?  「我々はビジネス・アナリティクスに こそ、今日の最もエキサイティングな 変革の芽があると考えています。
最近 『ビッグデータ』という言葉が流行して いますね。
(画像や音声、文書など従 来はコンピュータで分析することが難 導き出す。
そして最後の第四ステージ は『Cognitive(認知型)』です。
『ワト ソン』(IBMが二〇〇九年に開発した 質問応答システム。
一一年にクイズ王 に勝利したことで話題になった)と同 様に、アナリティクスそのものが日々 進化していきます。
たくさんのデータ を取り込んでいくことで分析力が強化 されて、モデリングや予測もどんどん 速くなっていく」 ──システムの専門家でもない限り使 いこなすのは難しそうです。
 「ISCのスタッフの中にも、アナリ ティクスと聞いて数学の話かと尻込みす る者がいます。
しかし、そうではない んです。
難しい数式を使うような仕事は 専門家に任せ、SCM担当者は自分が 実現したい結果を出すためにアナリティ クスをどう使えば良いかさえ理解すれば いい。
それによってSCMを次の段階に 進化させることができます」 しかった)非構造化データを構造化す る動きが急速に進み、構造化されたデ ータがサプライチェーン上に山のように 存在するようになりました」  「ただし、それらはバラバラに分断さ れています。
あるシステムで八桁のシ リアルナンバーで管理している情報を、 別のシステムでは一〇桁で管理してい たりする。
アナリティクスはそれを統 合する技術です。
異なるシステムから データを取り込んで一元化し、モデリ ングや予測の結果を即座にパソコン上 の『ダッシュボード』に表示します」  「柔軟な需給調整によって在庫を削 減しようとしても、従来は供給サイド と需要サイドのシステムの違いがネッ クになりました。
二つのシステムをつ なぐのにIT部門が何カ月も掛けて多 額の投資をする必要がありました。
ア ナリティクスを使えばそれが簡単にで きます。
その結果、サプライチェーン 全体の在庫を最適化できます」  「ただし、アナリティクスを使いこ なすにはカルチャーの変革が必要です。
これまでは取引先や他部門から需要予 測の結果を伝えられても誰もそれを信 じませんでした。
皆が計画を勝手に修 正して、サプライチェーンの各段階で バッファー在庫が積み上がっていまし た」  「そうしたカルチャーを変えるために 『トランスペアレント(透明な)サプラ イチェーン』という取り組みを進めて います。
社内だけでなく、調達先と、 その先の二次サプライヤー、さらに先 の三次サプライヤーまで巻き込み、ま た当社のビジネスパートナーや顧客と も協力してサプライチェーン全体の透 明性を高めようとしています」 ──サプライチェーン全体が一つの計 画数字に基づいて動くのですか。
 「一つの数字というより、『需要予 測は当たらない』という認識に立って、 幅を持った数字として需要を予測しま す。
その幅を日々の運用によって絞り 込んで行きます」 ──どうすればアナリティクスを利用 できるのですか。
 「四つのステージがあります。
その第 一歩はダッシュボードの構築です。
複 数の構造化データを一元化し、ビジネ スルールを定めて、そのルールから外 れたものがあったらアラートを出す仕 組みを作る。
第二ステージは予測の段 階です。
ダッシュボードを構築し、ア ラートも出てくるようになったら、そ れを元にモデリングを行って、次に何 が起きるのかを予測する」  「第三ステージは『Prescriptive(指 令する)』と呼んでいます。
単に予測す るだけでなく、予測に基づいて何をす べきなのか、アナリティクスによって フラン・K・オサリバン (Fran K. O’Sullivan) バージニア大卒。
米IBMのパソ コン部門ゼネラルマネジャーを経 て、2005年の同部門売却に伴 い、レノボの上級副社長に転じ る。
2010年9月にIBMに復帰、 インテグレーテッド・サプライ チェーン(ISC)部門ゼネラルマ ネジャーに就任、現在に至る。

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