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2013年11月号
特集

クロネコヤマト独走 第1部 BtoCを制覇してBtoBに領域拡大

クロネコヤマト 独走 特 集 NOVEMBER 2013  14 シェア五〇%が見えてきた  今期に入ってヤマト運輸のシェアが急拡大して いる。
「宅急便」の今年九月度の取扱実績は対前 年比一四・〇%増の約一億二三〇〇万個を記録し た。
今期累計でも十一・四%伸びている。
四月以降、 毎月二けた増のペースが続いている(図1)。
ネッ ト通販大手、アマゾンの影響は明らかだ。
今年四月、 佐川急便はアマゾンとの取引の大部分を返上した。
そのほとんどをヤマト運輸が吸収したとみられる。
 昨春以降、佐川急便は採算の合わない荷物の 運賃是正を進めている。
大型貨物やネット通販の B to Cがその主な対象となっている。
大物貨物に ついてはSGムービングを軸に他社との提携で新 たな配送網を整備、通常の宅配便扱いからの移行 を図る。
通販向けのB to Cはシェアを追わず、案 件ベースで対応していく方針だ。
 日本通運の「ペリカン便」が消滅し、日本郵便 の「ゆうパック」が政治に振り回され迷走して以降、 宅配便市場はヤマト運輸と佐川急便の「二強」に よる寡占状態に入った。
しかし、ここに来て佐川 急便が採算重視に転換し、B to Bへの回帰を強め たことで、B to Cはヤマト運輸の一人勝ちが鮮明 になってきた。
 ヤマトホールディングス(HD)は創業一〇〇 周年を迎える二〇一九年に、国内宅急便の市場シ ェア「五〇%超」、ノンデリバリー事業の営業利益 構成比「五〇%超」、海外売上比率「五分の一超」 の「五・五・五」を数値目標に掲げている。
しか しヤマトHDの木川眞社長は「シェアについては、 深追いはしない。
自然体でいい。
それでも目標と する三つの『五』のうち最も速く達成できるのが BtoCを制覇してBtoBに領域拡大  クロネコヤマトの独走が始まった。
ライバルの佐川急便が採算 重視に戦略を転換、シェア争いから一歩引いたことで、アマゾン をはじめとする通販会社の貨物が雪崩を打ってヤマト運輸に押し 寄せている。
事実上、BtoC 市場を制覇した。
それでも手綱は緩 めない。
駆け馬にムチを入れ、事業領域の拡大を急ぐ。
(大矢昌浩) 1 シェアだろう」と自信を見せる。
 むしろ当面は物量が急増した今年の年末繁忙期 をいかに乗り切るかということに神経を尖らせて いる。
そのための手は打ってきた。
今年七月、ヤ マトHDは次世代の物流ネットワーク「バリュー・ ネットワーキング構想」を発表。
これを路線便進出、 宅急便開発に続く「第三のイノベーション」と位 置付けている。
 柱の一つがラストワンマイルの改革だ。
最前線 をフルタイムのセールスドライバー(SD)で固め る従来の体制にメスを入れた。
SD一人ひとりが 複数のパートタイマーを統率して集配作業を進め る「チーム集配」と呼ぶ新たなオペレーションの 定着を進めている。
15  NOVEMBER 2013  その詳細は本特集第二部で紹介するが、SDの 労働時間短縮とパート活用による人件費抑制のた めに〇八年から取り組んできた改革が、B to Cの 拡大とうまく合致した。
チーム集配を導入したエ リアでは、SDの数を増やさなくても配達量の増 加に対応できる。
配達量が増えるほどパート化率 が高まり、作業効率も上がる。
各家庭に配達する 時間も早くなる。
企業向けと違って集荷セールス の重要性が低い to Cの配達に適している。
 宅配便の取扱個数に占めるB to Cのシェアは今 や四割にも達している。
これまで市場の中心を占 めてきたB to Bの成長が止まり、代わってネット 通販が出荷するB to C貨物の増加が市場拡大の牽 引役となっている。
消費者物流に軸足を置く宅急 便には大変な追い風だ。
 しかし、C to CやB to Bを前提に設計された既 存の宅配便はネット通販の物流ニーズを必ずしも 満たしているとは言えない。
コストの問題に加え て、リードタイム、荷受けの締め時間、返品対応、 梱包材等の回収、配送ドライバーによる納品時の 付加サービスや販促活動など、通販会社の要求は 尽きない。
宅配会社がこれを放置すれば、大手ネ ット通販による自社配送の拡大というかたちで足 下を侵食される恐れがある。
 その先手を打ってヤマトは総額二〇〇〇億円を 投じて宅急便開始以来の大手術を決意した。
東京・ 名古屋・大阪の三大都市圏にそれぞれ約二〇〇億 円を投じて新型ターミナル「ゲートウェイ(GW)」 を建設。
GW間で断続的に幹線輸送車を走らせる ことで荷受け締め時間の制約を解消し、同時に主 要都市間の当日配達を実現する。
 八月にはその第一号施設となる「厚木ゲートウ 約1400億円を投じて9月に稼働した「羽田クロノゲ ート」。
日本最大規模の約20万?の延べ床面積を誇る。
主要なグループ企業が全て入居し、グループ横断型のソ リューションを展開する基地となる。
羽田クロノゲートの開所式では、タレントのTOKIOを 進行役に、広大な施設の各フロアからの中継でその機 能が紹介された。
写真前列は右から木川眞ヤマトHD社 長、瀬戸薫ヤマトHD会長、山内雅喜ヤマト運輸社長。
図2 宅配便取扱個数の推移 40 35 30 25 20 15 10 5 0 99 年度 12 年度 11 年度 10 年度 09 年度 08 年度 07 年度 06 年 度 05 年度 04 年度 03 年度 02 年度 01 年度 00 年度 ※国土交通省資料、日本郵政資料より本誌作成 (億) ヤマト運輸 佐川急便 日本通運 日本郵便 福山通運 西濃運輸 その他 図1 ヤマト運輸「宅急便」の取扱実績    (前年同月比伸び率%) 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 2012 年2013 年 115 110 105 100 95 101.3% 106.5% 106.6% 105.1% 111.4% 111.3% 103.1% 102.8% 104.6% 112.9% 110.5% 114.0% 108.6% (%) NOVEMBER 2013  16 ェイ」が稼働した。
従来型のターミナルは集貨し た荷物を夕方まで保管し、夜間に発送作業と到着 作業を別々に実施していた。
幹線輸送は夜間に一 度だけだった。
厚木GWでは平均重量約六〇〇? のロールボックスパレットを自動搬送する「前詰 め搬送機」をはじめ最新マテハン設備を導入、発 着同時仕分けを実現した。
これを二四時間稼働さ せることで多頻度の幹線輸送が可能になった。
 大手ネット通販の当日配送は在庫型の物流セン ターが起点になる。
対象エリアを広げるには消費 地ごとに拠点を構える必要がある。
しかし、ヤマ トのネットワークを使えば各地に拠点を置かなくて も当日配送に対応できる。
大規模な物流投資が難 しい中堅以下の通販会社が大手と互角に渡り合える。
企業向け2PLソリューション開発  九月には総額一四〇〇億円を投じた「羽田クロ ノゲート」が稼働した。
延べ床面積は約二〇万? で日本最大級の規模を誇る。
物流棟は六層建て。
一階と二階が宅急便ターミナル、上層階はヤマト グループ各社が入居する「付加価値機能エリア」 となっている。
最上階まで「スパイラルコンベア」 を走らせて、付加価値サービスと宅急便ネットワ ークを連結させた。
 羽田クロノゲートを管理するヤマト運輸の井上 光政クロノゲート長は「ヤマトグループの主要企業 全てが一つの施設に入居するのはこれが初めて。
グループの総合力を活かしたソリューションを展開 し、バリュー・ネットワーキング構想を体現する 施設にしたい」と抱負を述べる。
 クロノゲートを基地としてヤマトグループはB to Cの地盤を固めると同時に、事業ドメインをB to 延べ床面積は東京ドーム約4個分の巨大施設 レーザースキャナーが荷札を瞬時に読み取る ロールボックスパレットの「前詰め搬送機」 毎時最大4万8000個を処理するクロスベルトソーター ロボットアームが荷物の形状を把握しコンベアに載せる 集中管理室で稼働状況を逐次監視 羽田クロノゲート── 24 時間365 日稼働でフルサービスを提供する 17  NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 Cに本格的に拡大する。
ヤマトHDの木川社長は 「何も当社が競争の激しいバルキーな企業物流に飛 び込もうというわけではない。
B to Bといっても 小口で多頻度な荷物、我々が強みとする領域で新 しい価値を生み出していく」と言う。
 その尖兵となりそうなのが、ロールボックスを取 扱単位とする物流システム「FRAPS」だ。
ク ロノゲートにも導入された同設備は、消費者向け に設計された宅急便では単価やロットが合わない 企業物流のニーズとよくマッチする。
これを活用し た同社独自のソリューションが既に動き出している。
 FRAPSの開発に当たるヤマトロジスティク スの星野芳彦取締役常務執行役員は「我々はどこ まで行っても輸送会社。
3PLではなく『2PL』 だ。
通常の3PLが在庫の様々な管理手法を提供 するのに対して、我々は在庫を持たないで済むネ ットワークを提供する。
FRAPSがそれを可能 にする」と言う。
第三部でその詳細を、第五部で 具体的な事例を報告する。
 クロノゲートは羽田を発着する国内外の航空貨 物を取り扱う国際物流基地としても機能する。
二 〇一九年に海外売上比率を「五分の一超」まで引 き上げるという計画は、現時点では最も実現から 遠い目標だ。
宅急便のアジア展開は始まったばかり。
現地のネットワークは脆弱で、カバーしているエ リアも限られている。
 これから体力勝負に出ても欧米のインテグレー タや国際物流で先行する日系大手を凌ぐのは至難 の業だ。
一九七六年に宅配便を開発した時と同様 に、マーケティングが鍵になる。
一〇月に発売を 開始した「国際クール宅急便」がその狼煙だ。
本 特集第六部で解説する。
 現在、米国の通販物流は「オムニチャネル(店舗 やネットなど、あらゆるチャネルを連携させて商品を 販売すること)」と「当日配送」がキーワードになっ ている。
今から三年前にオムニチャネルへの注目が集 まるようになり、今年に入って当日配送が新たなトピッ クとして浮上してきた。
 米国のオムニチャネルの取り組みは日本よりも既に 相当進んでいる。
ネットで受けた注文を、物流センター だけでなく店舗から発送したり、あるいは商品を店 舗に留め置きにして、店舗で決済して引き取るといっ たやり方が普及してきた。
日本が学ぶことは多いは ずだ。
 ただし、当日配送については日本が先行している。
米国が日本の動きに注目しているぐらいかもしれな い。
日本と米国ではそもそも地理的条件が大きく違う。
西海岸から東海岸までトラックで運べば国内輸送で も一週間掛かる。
そんな米国でも当日配送は無視で きないテーマになっている。
 つい先日もケイトスペード( kate spade)という 女性向けファッションブランドがネット通販大手の イーベイ( eBay)と組んで、ニューヨークで受注一 時間配送を実施して注目を集めていた。
楽天が買収 を発表したラスベガスの通販物流会社、ウェブジスティ クス(Webgistix)も規模は小さいながら二日以内配 送レベルのサービスを行っている。
 当日配送にはやり過ぎだという声もある。
当日配 送に対するニーズはそ れほど優先度が高くな いという調査結果も出 ている。
しかし、当日 に欲しいという消費者 は確実にいる。
それが 仮に五%だったとして、 比率としては少なくても簡単に切り捨てることはで きない。
五%という数字の持つ意味は、二〇人に一 人ということではなく、二〇回の注文に対して一回 は当日配送が必要だということかもしれない。
 自分がいつも注文している店は当日配送ができない。
仕方なく別の店に注文したところ思いの外、使い勝 手がいい。
いつもの店より便利だということになれ ば、その店は客を奪われてしまう。
二〇回に一回のニー ズに対応できないことで、残り一九回分の注文まで失っ てしまうことになる。
大手通販が当日配送をやるの であれば、中小も同じレベルのサービスができないと 苦しくなる。
ヤマト運輸の当日配送ネットワークが完 成したら助かる会社はかなり多いだろう。
 米国のネット通販の宅配は現状ではUPSが圧倒 的シェアを握っている。
USPS(米郵便公社)も ネット通販向けサービスに力を入れようとしているが、 足下では労務問題に四苦八苦していて、本格攻勢を かけられる状況ではない。
しかし、「一強」のUP Sでさえ採算はかなり苦しいと見ている。
日本の宅 配便ほど使い勝手も良くない。
 米国のeコマース全体を俯瞰すると、その中心に いるのはやはりアマゾンで、アマゾン経由の取引がe コマース全体の約三八%を占めている。
三個に一個 以上が、アマゾンのサイトでクリックされていること になる。
アマゾン自体の売り上げのシェアは約一五% で、マーケットプレイスの販売のほうがずっと多い。
 アマゾンが通販会社の物流を代行する「フルフィル メントby Amazon」の取扱規模も膨らんでい るようだ。
今年の年末には物流要員として五〇〇〇人、 コールセンターで二〇〇〇人を雇用する計画だと伝え られている。
商業施設やコンビニなどに「アマゾンロッ カー」を設置して通販商品の受け渡しをする仕組み も広がってきた。
              (談) 「それでも当日配送は広がっていく」イー・ロジット ⻆井亮一 CEO

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