2013年11月号
特集
特集
第2部 ドライバーの働き方を変える
NOVEMBER 2013 18
今期一万五〇〇〇人のパートを増員
今年十二月、ヤマト運輸の現場は正念場を迎え
る。
繁忙期のオペレーションは、ほんの数パーセ ントの物量の読み違いが大きな混乱を引き起こす。
現場担当者が最も緊張を強いられる時期だ。
しかも今期に入って宅急便の取扱個数はほぼ毎 月前年比二けた増で伸びている。
成熟化市場とし ては驚異的な伸びだ。
アマゾンなどの大手通販を はじめとするB to C荷物が大量にヤマトへ流れ込 んでいる。
それでも、「チーム集配」を導入した現場では「ウ チのところは何個来ても大丈夫」と自信の声が上 がっているという。
チーム集配とは、ヤマト運輸 が二〇一一年から導入を進めている宅急便の新た な集配方法だ。
宅急便の集配は一九七六年のサービス開始以来、 ワンマンの「軒先集配」を伝統としてきた。
SD がその日の荷物を見て効率的なルートを頭に描き、 自分で荷物を配送車に積み込み、一人で回って返 ってくる。
それに対してチーム集配は、SDが複数の「フ ィールドキャスト(FC)」と呼ばれる集配員とタ ッグを組む。
FCは朝や夕方など集配のピーク時 に勤務するパートタイマー。
集配エリアの近隣に 住む主婦らで構成されている。
エリアごとに 事前に設定して いる「ドッキン グポイント」と 呼ばれる場所で、 配送車に乗った SDとFCたちが落ち合う。
このドッキングポイ ントでSDが各FCに荷物を手渡す。
FCは台車 や自転車を使って自分の担当エリアを回り荷物を 届ける(図1)。
同じ時間帯に複数の人間で配達することで、S Dが一人で回っていた時よりも各家庭への到着時 間は早くなる。
サービスレベルが上がるだけでなく、 不在による持ち戻りを減らす効果がある。
在宅率 の高い午前一〇時までに荷物を届けられる家庭が 増えるからだ。
各エリアの配達密度や作業効率によってFCの 数を調整する。
繁忙期にはFCの人数を増やせば いい。
フルタイムのSDとパートのFCでは一日 ドライバーの働き方を変える 赤塚愼一 センター業務改革課長 宅急便のラストワンマイルが歴史的な転換期を迎えている。
サービス開始以来の伝統だったフルタイムのセールスドライ バー(SD)で前線を固める方式から、SD と複数のパートタ イマーがチームを組む「チーム集配」への移行が進んでいる。
品質は下げずにBtoC の急増に対応し、コスト効率を高める 狙いだ。
SDの働き方は大きく変わることになる。
(藤原秀行) 2 図1 「チーム集配」のイメージ スタート ドッキングポイント 出所)ヤマトホールディングス資料などを基に作成 19 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 当たりの人件費が一けた違う。
パート化率が上が るほど配達のコスト効率は良くなる。
SDが集配ルートの途中で何度も車を止め、荷 物の積み卸しを繰り返す軒先集配と比べて配送車 の走行距離もずっと短くなる。
燃料費の節約やC O2の排出量削減にも貢献する。
集配改革の最前線に立つ業務改革部の赤塚愼一 センター業務改革課長は「この手法を定着させら れれば朝の配達が午後一時、二時ぐらいまで掛か っていたのが格段に早くなり、結果的に持ち戻り も減らせる」と解説する。
荷物の増加傾向に対し、赤塚課長は「宅急便が 急成長していた昔を思い出すぐらい、久しぶりに 業務量が大きく増えている。
危機感はあるが、そ れでもこれだけ業務量が増えている中でやって行 けているのはこれまで現場が頑張って無駄取りを してくれたおかげだ」と気を引き締める。
ヤマトHDは一三年度、宅急便のデリバリー部 門で、パートを一二年度末の七万七四九六人から、 九万二四〇〇人へと増員する計画だ。
一年間で一 万五〇〇〇人近く増える(図2)。
フルタイマー の伸びが一一四六人にとどまるのとは対称的だ。
これによって同部門の従業員全体に占めるパート の割合は一二年度の五二・六%から一三年度は五 六・五%へ高まる見通しだ。
「どういうふうに戦力化するかをきちんと考えず、 単にパートさんを入れるだけでは逆にSDの生産 性悪化の原因となってしまう」と赤塚課長は指摘 する。
パートを戦力として生かせる環境をきちん と整えてSDの仕事を補完させることで、B to C 荷物の増加にコストを上げることなく、サービス レベルも落とさずに対応できると目論む。
——ヤマトHDが「第3のイノベーション」を進めて います。
業績好調な今、リスクを取って大改革に踏 み切ることを、労働組合はどう受け止めていますか。
「これまでと同じことを続けていたら、安全という わけでもないでしょう。
進化を続けていかないとむ しろリスクは増幅されていく。
過去に成功体験から 脱却できずに、窮地に置かれたことのある会社です から、そういう考え方が労使に根付いています。
国 内で独自の進化をした言わば?ガラパゴスデリバリー? が海外で通用するかむしろ楽しみです」 ——小倉昌男氏時代からヤマトの労使関係は独特で した。
役員たちが反対した宅急便事業を、当時の労 組はむしろ後押ししたとか。
「労使関係について、小倉氏は著書『小倉昌夫経 営学』の中で、『労使の信頼関係があれば、現場の 正しい情報を知ることもでき、経営判断に役立つ。
労使とは夫婦のようなものだから、経営の方向と戦 略を共有できれば大きな力となる』と記しています。
何事につけ労使で相談するという相互信頼が最大の 特徴であり、そのことは現在でも踏襲されていると思っ ています」 ——「早朝アシスト」や「集配アシスト」の導入と「チー ム集配」をベースとした集配業務改革への評価は? 「『集配アシスト』は労使で構築してきたシステムで す。
『チーム集配』についても協議を行っています。
我々 からは『募集・採用』 『教育・スキルアップ』 『定着』の三つのステッ プに対策を講じてから にするべきだと提言し、 取りあえずモデル店を 限定してスタートして みました。
結果は適性 の合うエリアでは成果が出ています」 「しかし、解決すべき課題もあります。
そこで会 社が地域ごとに実施していた『エリア戦略会議』に 組合も出席することにし、改めてエリアごとに最適 なシステムを労使で構築するよう対応を変えました。
パートの人事制度構築も対策の一環です。
評価や批 判より、労使で走りながら考えるというスタイルが 弊社の文化でもあります」 ——集配業務改革の進展やB to C貨物の増加に伴い、 SDの働き方や役割も変化しているようです。
「『チーム集配』ではSD自身が集配もしながらマ ネジメントをします。
当然、自分が一人前のSDの スキルを身に着けていなければパート社員をリードす ることも不可能です。
ですから、その上でマネジメ ントスキルも身に着けるということになります。
そ うなると能力の問題や向き不向きといった個人差も 出てくるので、一律に進めることはできないと思っ ています。
また、インセンティブを公平感のあるも のにすることも今後の課題です。
賛否両論ありますが、 ベテランからは評価も良いようですので、対策の一 つのヒントかもしれません」 ——今期は宅急便の月間取扱個数が前年比で二けた を超える伸びを示しています。
また今年末繁忙期の 業務量は相当なレベルに達することが見込まれます。
現場の状況および年末繁忙期の見通しはいかがですか。
「運輸産業は人が集まりにくいのですが、相当数 の増員が進んでおり体制面は整備されつつあります。
しかし、新人が戦力になるまでのタイムラグがあり ますので、油断はできません。
品質面に特化した労 使委員会も立ち上げました。
できることは全てやろ うというのが、今の現状ですから協調して取り組み を進めています。
十一月から最終の詰めに入り、見 通しも見えてきます」 「進化に向け労使で走りながら考える」ヤマト運輸労働組合 片山康夫 中央書記長 NOVEMBER 2013 20 従来は番地ごとに配送車の荷台のどこに置くかを 細かく分類していたため、いったん配送車の周り に荷物を小分けしてから積み込むという手間が掛 かっていた。
それを、荷台の分類は丁目単位にまで簡素化し、 どんどん直接荷物を置いていくといったやり方に 修正するなどして、積み込み作業の時間短縮を図 っている(図4)。
こうした改善策は現場に率先 して考えてもらっている。
第一部などで触れてきた通り、ヤマトグループ は「バリュー・ネットワーキング構想」に基づき、 「羽田クロノゲート」や「厚木ゲートウェイ」とい った最新鋭の大型拠点を整備。
自社の宅急便ネッ トワークの機能を高め、主要都市間の当日配送な どを提供しようとしている。
ヤマトHDの木川社長は「インフラの整備だけ でなく、現場の仕事のやり方をより効率的なもの 長は「宅急便が始まって以来、SDの働き方とい う部分ではほとんど変革できていなかった。
そこ に本格的にメスを入れることになった。
パート活 用がその柱だった」と説明する。
まずは毎朝の車両への荷物の積み込み作業をS Dの業務から外した。
そのために「早朝アシスト」 と呼ぶ短時間勤務の職制を作った。
午前六時に各 集配営業所へ出勤し、配達の開始時間までに荷物 の仕分けと積み込みを処理する。
SDは出勤し、 朝礼を終えた後、すぐに配送へ出ることができる。
SDの労働時間短縮だけでなく、配達時間も早 まる。
配達の開始は午前八時が理想だ。
しかし、 従来はSDが自分なりに作業しやすいよう荷物を 工夫して積み込んだりするため、作業に時間が掛 かって配達のスタート時間が午前八時以降にずれ 込むこともあった。
午前一〇時までに回ることが できる配達先は当然少なくなってしまう。
早朝ア シストの活用でそうした事態の回避に努めている。
これと並行して集配車の停車場所を固定する「バ ス停方式」への移行に取り掛かった(図3)。
当 初は交通安全対策として停車・発進回数や右折を 減らすために生まれたアイデアだが、配達の順番 が固定されるため、エリアを熟知したSDでなく ても荷物の積み込みが容易になる。
さらには「バス停」を臨時の集配拠点として機 能させることで、SDの集配業務を補助する「集 配アシスト」を投入することが可能になった。
こ れが後のチーム集配に発展した。
チーム集配はバス停方式を一歩進化させ、エリ アをバス停方式よりもさらに広げるとともに、集 配車の停まるポイント数をより少なくしている。
その結果、早朝アシストの業務も改善された。
加えて、早朝だけといった短時間勤務などを可 能にすることで、様々な働き方のニーズに配慮し、 主婦ら女性が今以上に活躍できるようにする。
チーム集配は現在、全体の約三分の一に当たる 二〇〇〇程度のセンターでチャレンジしている。
まだセンターによって取り組みの進度にばらつき があり、業務改革部などが成果を精査している。
それでも赤塚課長は「チーム集配をやっている ところは着実に効率が上がってきている。
サービ スレベルも上げることが可能だ。
当社にとって非 常に重要な戦略だ。
この改革を進めていかないと、 どれだけやっても利益が残らない会社になってし まう」と言い切る。
SD至上主義の伝統にメス フルタイムのSDで固めた集配業務はこれまで、 宅急便の品質を担保する最大の特徴だった。
その ため荷量が増えればSDの人数を増やす必要があ った。
それでも売り上げの拡大と効率化で人件費 の伸びは吸収できた。
収入に対する人件費の割合 は横ばいに抑えられた。
しかし、B to Cの拡大でそれが難しくなってきた。
宅急便の平均単価は〇二年度の七一〇円から一二 年度は五九一円と約一七%下がっている。
フルタ イムの正社員SDを中心とした従来型のオペレー ションを続けていけば、収益性の低下が避けられ なくなることが懸念された。
ヤマトHDは一一〜一三年度の中期経営計画で、 重点実施事項の一つに「高い利益率を生み出すコ スト構造改革の実行」を掲げた。
その中には「集 配改革の完成」が含まれていた。
チーム集配導入の旗振り役の一人である赤塚課 図2 ヤマトホールディングスのデリバリー部門従業員数の推移 100000 90000 80000 70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 2010年度2011年度2012年度2013年度 出所)ヤマトホールディングス決算説明会資料。
13 年度の数値は計画 フルタイマー パートタイマー 21 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 ヤマトグループのバラエティに富んだサービスに関 する知識が必要になってきた。
木川社長は「パー トの方々をたくさん入れてもサービス品質を絶対落 とさないような仕掛けを構築し、それをフルタイ ムのSDがチームとして束ねる。
SDも非常に高 度化された営業知識を持ち、スキルを磨かないと やっていけない時代に入ってきている」と強調する。
SDという仕事自体が大きく変わろうとしている。
こうした大きな変化の流れに対し、SD全員が 諸手を挙げて歓迎しているわけではない。
これま で現場で積み上げてきたノウハウや知見の一部が 無効になってしまうことには抵抗感もある。
それ でもチーム集配が定着すればSDの体力的な負担 は確実に減る。
現場からは「定年までドライバー の仕事ができるようになる」「どうしてこれまで このような方法をやらなかったのか」と歓迎する 声も上がっているという。
赤塚課長は変化に対する懸念、不安をやわらげ るため、現場を足繁く訪れ、チーム集配の意義と 効果を説き、理解を求める日々を過ごしている。
「業務改革部は五年前に立ち上げられたが、特 別のプロジェクトではなくて当たり前に存在して いる部署になってきている。
これだけ生産性向上 の取り組みを長期で続ける会社はあまりないんじ ゃないか」と赤塚氏。
「三〇年余りにわたって築き上げてきた成功体 験がいっぱいあるが、それにあぐらをかいていれ ばあっという間に利益が出ない会社になってしま うと言い続けている。
集配の改革は奥が深いテーマ。
ヤマト一〇〇周年の一九年度ぐらいまでにはもっ と面白い仕掛けが用意できると思う」と現場の業 務改革にあくなき情熱を燃やしている。
に変えるプロジェクトが同時並行的に進んできた からこそ、この構想をまとめることができた」と 集配改革の意義を強調する。
赤塚課長は「フルタイムのSDが基本だったヤ マトのDNAに、パートの本格活用という文化が ようやく浸透してきている」と、パートの戦力化 に手応えを感じているようだ。
営業力+マネジメント能力 宅急便のSDと言えば、これまでは最前線の営 業マンとして元気さと明るさ、体力が求められる 仕事というイメージが強かった。
しかし、チーム 集配が導入されるとSDは、複数のパートを束ね て的確に指示を出す現場の司令塔として、マネジ メント能力を求められるようになる。
営業面でも、宅急便の荷物を集めるだけでなく、 軒先集配バス停集配チーム集配 バス停? バス停? バス停? ドッキング ポイント? ドッキング ポイント? バス停? バス停? バス停? バス停? バス停? ドッキング ポイント? ドッキング ポイント? 図3 集配方式の変化 図4 積み込み作業の見直し例 荷台 荷台の置き場所を簡素化 = 作業時間短縮図る 1丁目 2丁目 1 丁目 1 番地2 丁目 1 番地 2 丁目 2 番地 1 丁目 2 番地 1 丁目 3 番地
繁忙期のオペレーションは、ほんの数パーセ ントの物量の読み違いが大きな混乱を引き起こす。
現場担当者が最も緊張を強いられる時期だ。
しかも今期に入って宅急便の取扱個数はほぼ毎 月前年比二けた増で伸びている。
成熟化市場とし ては驚異的な伸びだ。
アマゾンなどの大手通販を はじめとするB to C荷物が大量にヤマトへ流れ込 んでいる。
それでも、「チーム集配」を導入した現場では「ウ チのところは何個来ても大丈夫」と自信の声が上 がっているという。
チーム集配とは、ヤマト運輸 が二〇一一年から導入を進めている宅急便の新た な集配方法だ。
宅急便の集配は一九七六年のサービス開始以来、 ワンマンの「軒先集配」を伝統としてきた。
SD がその日の荷物を見て効率的なルートを頭に描き、 自分で荷物を配送車に積み込み、一人で回って返 ってくる。
それに対してチーム集配は、SDが複数の「フ ィールドキャスト(FC)」と呼ばれる集配員とタ ッグを組む。
FCは朝や夕方など集配のピーク時 に勤務するパートタイマー。
集配エリアの近隣に 住む主婦らで構成されている。
エリアごとに 事前に設定して いる「ドッキン グポイント」と 呼ばれる場所で、 配送車に乗った SDとFCたちが落ち合う。
このドッキングポイ ントでSDが各FCに荷物を手渡す。
FCは台車 や自転車を使って自分の担当エリアを回り荷物を 届ける(図1)。
同じ時間帯に複数の人間で配達することで、S Dが一人で回っていた時よりも各家庭への到着時 間は早くなる。
サービスレベルが上がるだけでなく、 不在による持ち戻りを減らす効果がある。
在宅率 の高い午前一〇時までに荷物を届けられる家庭が 増えるからだ。
各エリアの配達密度や作業効率によってFCの 数を調整する。
繁忙期にはFCの人数を増やせば いい。
フルタイムのSDとパートのFCでは一日 ドライバーの働き方を変える 赤塚愼一 センター業務改革課長 宅急便のラストワンマイルが歴史的な転換期を迎えている。
サービス開始以来の伝統だったフルタイムのセールスドライ バー(SD)で前線を固める方式から、SD と複数のパートタ イマーがチームを組む「チーム集配」への移行が進んでいる。
品質は下げずにBtoC の急増に対応し、コスト効率を高める 狙いだ。
SDの働き方は大きく変わることになる。
(藤原秀行) 2 図1 「チーム集配」のイメージ スタート ドッキングポイント 出所)ヤマトホールディングス資料などを基に作成 19 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 当たりの人件費が一けた違う。
パート化率が上が るほど配達のコスト効率は良くなる。
SDが集配ルートの途中で何度も車を止め、荷 物の積み卸しを繰り返す軒先集配と比べて配送車 の走行距離もずっと短くなる。
燃料費の節約やC O2の排出量削減にも貢献する。
集配改革の最前線に立つ業務改革部の赤塚愼一 センター業務改革課長は「この手法を定着させら れれば朝の配達が午後一時、二時ぐらいまで掛か っていたのが格段に早くなり、結果的に持ち戻り も減らせる」と解説する。
荷物の増加傾向に対し、赤塚課長は「宅急便が 急成長していた昔を思い出すぐらい、久しぶりに 業務量が大きく増えている。
危機感はあるが、そ れでもこれだけ業務量が増えている中でやって行 けているのはこれまで現場が頑張って無駄取りを してくれたおかげだ」と気を引き締める。
ヤマトHDは一三年度、宅急便のデリバリー部 門で、パートを一二年度末の七万七四九六人から、 九万二四〇〇人へと増員する計画だ。
一年間で一 万五〇〇〇人近く増える(図2)。
フルタイマー の伸びが一一四六人にとどまるのとは対称的だ。
これによって同部門の従業員全体に占めるパート の割合は一二年度の五二・六%から一三年度は五 六・五%へ高まる見通しだ。
「どういうふうに戦力化するかをきちんと考えず、 単にパートさんを入れるだけでは逆にSDの生産 性悪化の原因となってしまう」と赤塚課長は指摘 する。
パートを戦力として生かせる環境をきちん と整えてSDの仕事を補完させることで、B to C 荷物の増加にコストを上げることなく、サービス レベルも落とさずに対応できると目論む。
——ヤマトHDが「第3のイノベーション」を進めて います。
業績好調な今、リスクを取って大改革に踏 み切ることを、労働組合はどう受け止めていますか。
「これまでと同じことを続けていたら、安全という わけでもないでしょう。
進化を続けていかないとむ しろリスクは増幅されていく。
過去に成功体験から 脱却できずに、窮地に置かれたことのある会社です から、そういう考え方が労使に根付いています。
国 内で独自の進化をした言わば?ガラパゴスデリバリー? が海外で通用するかむしろ楽しみです」 ——小倉昌男氏時代からヤマトの労使関係は独特で した。
役員たちが反対した宅急便事業を、当時の労 組はむしろ後押ししたとか。
「労使関係について、小倉氏は著書『小倉昌夫経 営学』の中で、『労使の信頼関係があれば、現場の 正しい情報を知ることもでき、経営判断に役立つ。
労使とは夫婦のようなものだから、経営の方向と戦 略を共有できれば大きな力となる』と記しています。
何事につけ労使で相談するという相互信頼が最大の 特徴であり、そのことは現在でも踏襲されていると思っ ています」 ——「早朝アシスト」や「集配アシスト」の導入と「チー ム集配」をベースとした集配業務改革への評価は? 「『集配アシスト』は労使で構築してきたシステムで す。
『チーム集配』についても協議を行っています。
我々 からは『募集・採用』 『教育・スキルアップ』 『定着』の三つのステッ プに対策を講じてから にするべきだと提言し、 取りあえずモデル店を 限定してスタートして みました。
結果は適性 の合うエリアでは成果が出ています」 「しかし、解決すべき課題もあります。
そこで会 社が地域ごとに実施していた『エリア戦略会議』に 組合も出席することにし、改めてエリアごとに最適 なシステムを労使で構築するよう対応を変えました。
パートの人事制度構築も対策の一環です。
評価や批 判より、労使で走りながら考えるというスタイルが 弊社の文化でもあります」 ——集配業務改革の進展やB to C貨物の増加に伴い、 SDの働き方や役割も変化しているようです。
「『チーム集配』ではSD自身が集配もしながらマ ネジメントをします。
当然、自分が一人前のSDの スキルを身に着けていなければパート社員をリードす ることも不可能です。
ですから、その上でマネジメ ントスキルも身に着けるということになります。
そ うなると能力の問題や向き不向きといった個人差も 出てくるので、一律に進めることはできないと思っ ています。
また、インセンティブを公平感のあるも のにすることも今後の課題です。
賛否両論ありますが、 ベテランからは評価も良いようですので、対策の一 つのヒントかもしれません」 ——今期は宅急便の月間取扱個数が前年比で二けた を超える伸びを示しています。
また今年末繁忙期の 業務量は相当なレベルに達することが見込まれます。
現場の状況および年末繁忙期の見通しはいかがですか。
「運輸産業は人が集まりにくいのですが、相当数 の増員が進んでおり体制面は整備されつつあります。
しかし、新人が戦力になるまでのタイムラグがあり ますので、油断はできません。
品質面に特化した労 使委員会も立ち上げました。
できることは全てやろ うというのが、今の現状ですから協調して取り組み を進めています。
十一月から最終の詰めに入り、見 通しも見えてきます」 「進化に向け労使で走りながら考える」ヤマト運輸労働組合 片山康夫 中央書記長 NOVEMBER 2013 20 従来は番地ごとに配送車の荷台のどこに置くかを 細かく分類していたため、いったん配送車の周り に荷物を小分けしてから積み込むという手間が掛 かっていた。
それを、荷台の分類は丁目単位にまで簡素化し、 どんどん直接荷物を置いていくといったやり方に 修正するなどして、積み込み作業の時間短縮を図 っている(図4)。
こうした改善策は現場に率先 して考えてもらっている。
第一部などで触れてきた通り、ヤマトグループ は「バリュー・ネットワーキング構想」に基づき、 「羽田クロノゲート」や「厚木ゲートウェイ」とい った最新鋭の大型拠点を整備。
自社の宅急便ネッ トワークの機能を高め、主要都市間の当日配送な どを提供しようとしている。
ヤマトHDの木川社長は「インフラの整備だけ でなく、現場の仕事のやり方をより効率的なもの 長は「宅急便が始まって以来、SDの働き方とい う部分ではほとんど変革できていなかった。
そこ に本格的にメスを入れることになった。
パート活 用がその柱だった」と説明する。
まずは毎朝の車両への荷物の積み込み作業をS Dの業務から外した。
そのために「早朝アシスト」 と呼ぶ短時間勤務の職制を作った。
午前六時に各 集配営業所へ出勤し、配達の開始時間までに荷物 の仕分けと積み込みを処理する。
SDは出勤し、 朝礼を終えた後、すぐに配送へ出ることができる。
SDの労働時間短縮だけでなく、配達時間も早 まる。
配達の開始は午前八時が理想だ。
しかし、 従来はSDが自分なりに作業しやすいよう荷物を 工夫して積み込んだりするため、作業に時間が掛 かって配達のスタート時間が午前八時以降にずれ 込むこともあった。
午前一〇時までに回ることが できる配達先は当然少なくなってしまう。
早朝ア シストの活用でそうした事態の回避に努めている。
これと並行して集配車の停車場所を固定する「バ ス停方式」への移行に取り掛かった(図3)。
当 初は交通安全対策として停車・発進回数や右折を 減らすために生まれたアイデアだが、配達の順番 が固定されるため、エリアを熟知したSDでなく ても荷物の積み込みが容易になる。
さらには「バス停」を臨時の集配拠点として機 能させることで、SDの集配業務を補助する「集 配アシスト」を投入することが可能になった。
こ れが後のチーム集配に発展した。
チーム集配はバス停方式を一歩進化させ、エリ アをバス停方式よりもさらに広げるとともに、集 配車の停まるポイント数をより少なくしている。
その結果、早朝アシストの業務も改善された。
加えて、早朝だけといった短時間勤務などを可 能にすることで、様々な働き方のニーズに配慮し、 主婦ら女性が今以上に活躍できるようにする。
チーム集配は現在、全体の約三分の一に当たる 二〇〇〇程度のセンターでチャレンジしている。
まだセンターによって取り組みの進度にばらつき があり、業務改革部などが成果を精査している。
それでも赤塚課長は「チーム集配をやっている ところは着実に効率が上がってきている。
サービ スレベルも上げることが可能だ。
当社にとって非 常に重要な戦略だ。
この改革を進めていかないと、 どれだけやっても利益が残らない会社になってし まう」と言い切る。
SD至上主義の伝統にメス フルタイムのSDで固めた集配業務はこれまで、 宅急便の品質を担保する最大の特徴だった。
その ため荷量が増えればSDの人数を増やす必要があ った。
それでも売り上げの拡大と効率化で人件費 の伸びは吸収できた。
収入に対する人件費の割合 は横ばいに抑えられた。
しかし、B to Cの拡大でそれが難しくなってきた。
宅急便の平均単価は〇二年度の七一〇円から一二 年度は五九一円と約一七%下がっている。
フルタ イムの正社員SDを中心とした従来型のオペレー ションを続けていけば、収益性の低下が避けられ なくなることが懸念された。
ヤマトHDは一一〜一三年度の中期経営計画で、 重点実施事項の一つに「高い利益率を生み出すコ スト構造改革の実行」を掲げた。
その中には「集 配改革の完成」が含まれていた。
チーム集配導入の旗振り役の一人である赤塚課 図2 ヤマトホールディングスのデリバリー部門従業員数の推移 100000 90000 80000 70000 60000 50000 40000 30000 20000 10000 0 2010年度2011年度2012年度2013年度 出所)ヤマトホールディングス決算説明会資料。
13 年度の数値は計画 フルタイマー パートタイマー 21 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 ヤマトグループのバラエティに富んだサービスに関 する知識が必要になってきた。
木川社長は「パー トの方々をたくさん入れてもサービス品質を絶対落 とさないような仕掛けを構築し、それをフルタイ ムのSDがチームとして束ねる。
SDも非常に高 度化された営業知識を持ち、スキルを磨かないと やっていけない時代に入ってきている」と強調する。
SDという仕事自体が大きく変わろうとしている。
こうした大きな変化の流れに対し、SD全員が 諸手を挙げて歓迎しているわけではない。
これま で現場で積み上げてきたノウハウや知見の一部が 無効になってしまうことには抵抗感もある。
それ でもチーム集配が定着すればSDの体力的な負担 は確実に減る。
現場からは「定年までドライバー の仕事ができるようになる」「どうしてこれまで このような方法をやらなかったのか」と歓迎する 声も上がっているという。
赤塚課長は変化に対する懸念、不安をやわらげ るため、現場を足繁く訪れ、チーム集配の意義と 効果を説き、理解を求める日々を過ごしている。
「業務改革部は五年前に立ち上げられたが、特 別のプロジェクトではなくて当たり前に存在して いる部署になってきている。
これだけ生産性向上 の取り組みを長期で続ける会社はあまりないんじ ゃないか」と赤塚氏。
「三〇年余りにわたって築き上げてきた成功体 験がいっぱいあるが、それにあぐらをかいていれ ばあっという間に利益が出ない会社になってしま うと言い続けている。
集配の改革は奥が深いテーマ。
ヤマト一〇〇周年の一九年度ぐらいまでにはもっ と面白い仕掛けが用意できると思う」と現場の業 務改革にあくなき情熱を燃やしている。
に変えるプロジェクトが同時並行的に進んできた からこそ、この構想をまとめることができた」と 集配改革の意義を強調する。
赤塚課長は「フルタイムのSDが基本だったヤ マトのDNAに、パートの本格活用という文化が ようやく浸透してきている」と、パートの戦力化 に手応えを感じているようだ。
営業力+マネジメント能力 宅急便のSDと言えば、これまでは最前線の営 業マンとして元気さと明るさ、体力が求められる 仕事というイメージが強かった。
しかし、チーム 集配が導入されるとSDは、複数のパートを束ね て的確に指示を出す現場の司令塔として、マネジ メント能力を求められるようになる。
営業面でも、宅急便の荷物を集めるだけでなく、 軒先集配バス停集配チーム集配 バス停? バス停? バス停? ドッキング ポイント? ドッキング ポイント? バス停? バス停? バス停? バス停? バス停? ドッキング ポイント? ドッキング ポイント? 図3 集配方式の変化 図4 積み込み作業の見直し例 荷台 荷台の置き場所を簡素化 = 作業時間短縮図る 1丁目 2丁目 1 丁目 1 番地2 丁目 1 番地 2 丁目 2 番地 1 丁目 2 番地 1 丁目 3 番地
