2013年11月号
特集
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第3部 カゴ車ユニットロードが革新起こす
NOVEMBER 2013 22
繁忙期に溢れた荷物をスピード処理
今年年末の繁忙期、ヤマトグループで3PL事
業を担うヤマトロジスティクス(YLC)は特定
の荷主を対象に、注文が集中してオーバーフロー
を起こした荷物を、カゴ車単位でまとめて引き受け、
すぐに仕分けて宅急便で出荷する新サービスのテ
ストを行う。
その結果を見て来年には正式に商品 化する考えだ。
荷物の仕分けには「FRAPS( Free Rack Auto Pick System)」と呼ぶ独自開発のマテハン システムを使用する。
荷主は出荷する商品の総量 をピッキングして、宅急便のネットワークで使用し ているカゴ車をベースに作成した移動式のラック に積載。
それをヤマトのターミナルに持ち込んで ラックのままFRAPSの作業ラインに格納する と、即座にデジタル・ピッキング・システムでピー ス単位の仕分けができる(写真1)。
この仕組みを使えばオーバーフロー分の緊急処 理だけでなく、ヤマトの拠点に在庫を保管してい なくても当日配送が可能になる。
東・名・阪のゲ ートウェイが完成すれば都市間の当日配送も実現 する。
理論上、日本のどこかに合計三日分の在庫 があれば当日配送に対応できることになる。
在庫 配分を考える必要がなくなる。
元は通販会社の利用を想定して開発した仕組み だが、工場調達や店舗納品など、B to Bにも利用 が広がっている。
YLCの星野芳彦取締役常務執 行役員は「FRAPSはロールボックス(カゴ車) 単位のサービスなので、個建ての宅急便ではロッ トも単価も合わないB to B物流にもよく馴染む」 という。
宅急便と同じロールボックスを使用する「JI TBOXチャーター便」のターミナルにFRAP Sを導入することも検討している。
JITBOX チャーター便はロールボックス単位の個建て輸送サ ービスで、ヤマトホールディングスを中心にセイノ ーホールディングスや日本通運などの主要な特積 み会社が共同運営している。
同サービスを使って 着地側のターミナルまでロールボックスのまま輸送 し、そこでFRAPSにかけてピース単位に小分 けする。
全て個建てで出荷するより輸送コストを 抑えられる。
ロールボックスによるユニットロード化は宅急便 ネットワークの大きな特徴の一つだ。
様々な大き さや荷姿の荷物を、標準化された容器やパレット に積載して取り扱うことをユニットロード化と呼ぶ。
輸送、荷役、保管などのハンドリングや機械化が 容易になり、荷物をダメージから守る効果がある。
カゴ車ユニットロードが革新起こす 多頻度小口化が進んでいるとはいえ、BtoB物流の輸送は 依然として複数口がメーンだ。
完全個建ての宅急便でカバー できる範囲は限られている。
そこでヤマトは宅急便ネット ワークで使用している「ロールボックスパレット」を単位と した新しい物流サービスを開発した。
その心臓部となる仕 掛けが「FRAPS」だ。
(大矢昌浩) (写真1)神奈川クイック通販ロジセンターのFRAPS。
ロールボック スを開いた状態で棚枠にはめ込むと、そのままDPSでピース単位の 処理ができる。
3 23 NOVEMBER 2013 った」という。
FRAPSの開発でその夢が現実 のものになった。
ロールボックス単位のスルー型物流 FRAPSの開発に先立ち、星野取締役は「T SS(トゥデイ・ショッピング・サービス)」と呼 ぶネット通販向けの当日配送サービスを二〇〇七 年に立ち上げている。
ネット通販の注文は二〇時 から深夜二時にピークを迎える。
通常その時間帯 の受注は出荷処理が翌日になるため、納品は翌々 日以降になってしまう。
これに対してTSSは深 夜〇時までの注文を最短翌日朝八時に届ける。
そのために宅急便のターミナル(ベース店)内 にTSS用のスペースを確保、バケット(ケース) 用自動倉庫システム「APF(オート・ピック・ ファクトリー)」を導入した。
二四時間三六五日 稼働のAPFでピッキングを自動処理して、その まま宅急便のネットワークに乗せる。
サービスを開始すると、すぐに複数の通販会社 が採用を決めた。
スピード配送によって買い物客 の顧客満足度は大きく向上した。
キャンセルが減り、 新しい需要を掘り起こすことに成功した。
不在の 持ち戻りを抑制する効果も得られた。
配送リード タイムはその後、最短四時間まで短縮した。
しかし、当初の引き合いが一巡すると新規受託 のペースは鈍ってきた。
TSSはYLCの拠点に 在庫を保管してお くことが条件にな る。
配送も宅急便 に限定される。
荷 主は既存施設や協 力物流会社との契 ただし、容器の分だけトラックの積載率は落ちる。
ヤマトのロールボックスは最大積載重量が六〇〇 ?で自重が一〇〇?程度ある。
サイズは内寸が一 〇四〇?×一〇四〇?×一七〇〇?の容量約一・ 八㎥だが、外枠と底部のキャスターで縦横高さの スペースを取られるため、荷物をそのままトラッ クの荷台に積み込む「直積み」で満載にした時の 七割程度しか積載できない。
そのため通常、特積み会社はユニットロード化 を避け、直積みを基本にしている。
しかしヤマト は荷役作業の省力化と輸送品質を重視して、宅急 便のサービス開始当初からロールボックスによるユ ニットロードにこだわってきた。
その結果、日々 数十万台ものロールボックスが全国を行き来する 特有のネットワークが出来上がった。
星野取締役は「個人的には二〇年も前から、ロ ールボックスを使って企業向けのサービスができ ないだろうかと考えていた。
世間ではロールボッ クスは積載率が悪いと言われる。
しかし、車輪が 付いているので移動は楽だ。
そこでロールボック スを動く棚として使って回転率を上げれば、積載 率をカバーしてお釣りが来るだろうという発想だ 約を整理しなくてはならない。
導入のハードルは 高い。
YLCとしてもAPFのバケット数には限 りがあるため、満庫になれば新たに設備を増強し ない限り受託量を増やせない。
重装備の設備で投 資負担は軽くない。
このTSSの経験がFRAPSに活かされてい る。
保管型のTSSと違ってFRAPSはスルー 型だ。
荷主は必要に応じて利用できる。
物量の増 加にも設備の増強なしに柔軟に対応できる。
しか もバケットからロールボックスにユニットが変わっ たことで、通販だけでなく中ロットの企業間物流 に広く応用が効くようになった。
今年一〇月現在、宅急便のベース店一〇拠点に FRAPSを導入している。
一六年までに国内六 九のベース店全店に配備する計画だ。
海外でも既 に上海、台湾、タイの三拠点に導入している。
一〇月に稼働したばかりのタイでは、現地に進 出した日系ドラッグストアチェーンが一括物流にF RAPSを利用している。
ヤマトのセンターで商 品を荷受けし、FRAPSで仕分けて店舗に一括 納品している。
作業が標準化されているため立ち 上げが容易で店舗の拡張にも柔軟に対応できる点 が評価された。
今後は同じ仕組みを現地の他のチ ェーンストアにも横展開して、ロールボックスの混 載による輸送コスト低減を進めていく考えだ。
星野取締役は「FRAPSの存在が徐々に知ら れてきて、対応が追いつかないくらい引き合いが 増えてきた。
FRAPSのラックをそのまま工場 の生産ラインに乗せられないかなど、お客様から アイデアをいただくことも多い。
当面は手を広げ 過ぎることは控え、メリットの出せるターゲット を見極めてノウハウを蓄積していく」と言う。
YLCの星野芳彦 取締役常務執行役員 (写真2)作業性に配慮して様々なタイプの ロールボックス型ラックを研究開発してい る。
写真は試作中のもので2台のラックを 連結するとロールボックス1台になる。
クロネコヤマト独走 特集
その結果を見て来年には正式に商品 化する考えだ。
荷物の仕分けには「FRAPS( Free Rack Auto Pick System)」と呼ぶ独自開発のマテハン システムを使用する。
荷主は出荷する商品の総量 をピッキングして、宅急便のネットワークで使用し ているカゴ車をベースに作成した移動式のラック に積載。
それをヤマトのターミナルに持ち込んで ラックのままFRAPSの作業ラインに格納する と、即座にデジタル・ピッキング・システムでピー ス単位の仕分けができる(写真1)。
この仕組みを使えばオーバーフロー分の緊急処 理だけでなく、ヤマトの拠点に在庫を保管してい なくても当日配送が可能になる。
東・名・阪のゲ ートウェイが完成すれば都市間の当日配送も実現 する。
理論上、日本のどこかに合計三日分の在庫 があれば当日配送に対応できることになる。
在庫 配分を考える必要がなくなる。
元は通販会社の利用を想定して開発した仕組み だが、工場調達や店舗納品など、B to Bにも利用 が広がっている。
YLCの星野芳彦取締役常務執 行役員は「FRAPSはロールボックス(カゴ車) 単位のサービスなので、個建ての宅急便ではロッ トも単価も合わないB to B物流にもよく馴染む」 という。
宅急便と同じロールボックスを使用する「JI TBOXチャーター便」のターミナルにFRAP Sを導入することも検討している。
JITBOX チャーター便はロールボックス単位の個建て輸送サ ービスで、ヤマトホールディングスを中心にセイノ ーホールディングスや日本通運などの主要な特積 み会社が共同運営している。
同サービスを使って 着地側のターミナルまでロールボックスのまま輸送 し、そこでFRAPSにかけてピース単位に小分 けする。
全て個建てで出荷するより輸送コストを 抑えられる。
ロールボックスによるユニットロード化は宅急便 ネットワークの大きな特徴の一つだ。
様々な大き さや荷姿の荷物を、標準化された容器やパレット に積載して取り扱うことをユニットロード化と呼ぶ。
輸送、荷役、保管などのハンドリングや機械化が 容易になり、荷物をダメージから守る効果がある。
カゴ車ユニットロードが革新起こす 多頻度小口化が進んでいるとはいえ、BtoB物流の輸送は 依然として複数口がメーンだ。
完全個建ての宅急便でカバー できる範囲は限られている。
そこでヤマトは宅急便ネット ワークで使用している「ロールボックスパレット」を単位と した新しい物流サービスを開発した。
その心臓部となる仕 掛けが「FRAPS」だ。
(大矢昌浩) (写真1)神奈川クイック通販ロジセンターのFRAPS。
ロールボック スを開いた状態で棚枠にはめ込むと、そのままDPSでピース単位の 処理ができる。
3 23 NOVEMBER 2013 った」という。
FRAPSの開発でその夢が現実 のものになった。
ロールボックス単位のスルー型物流 FRAPSの開発に先立ち、星野取締役は「T SS(トゥデイ・ショッピング・サービス)」と呼 ぶネット通販向けの当日配送サービスを二〇〇七 年に立ち上げている。
ネット通販の注文は二〇時 から深夜二時にピークを迎える。
通常その時間帯 の受注は出荷処理が翌日になるため、納品は翌々 日以降になってしまう。
これに対してTSSは深 夜〇時までの注文を最短翌日朝八時に届ける。
そのために宅急便のターミナル(ベース店)内 にTSS用のスペースを確保、バケット(ケース) 用自動倉庫システム「APF(オート・ピック・ ファクトリー)」を導入した。
二四時間三六五日 稼働のAPFでピッキングを自動処理して、その まま宅急便のネットワークに乗せる。
サービスを開始すると、すぐに複数の通販会社 が採用を決めた。
スピード配送によって買い物客 の顧客満足度は大きく向上した。
キャンセルが減り、 新しい需要を掘り起こすことに成功した。
不在の 持ち戻りを抑制する効果も得られた。
配送リード タイムはその後、最短四時間まで短縮した。
しかし、当初の引き合いが一巡すると新規受託 のペースは鈍ってきた。
TSSはYLCの拠点に 在庫を保管してお くことが条件にな る。
配送も宅急便 に限定される。
荷 主は既存施設や協 力物流会社との契 ただし、容器の分だけトラックの積載率は落ちる。
ヤマトのロールボックスは最大積載重量が六〇〇 ?で自重が一〇〇?程度ある。
サイズは内寸が一 〇四〇?×一〇四〇?×一七〇〇?の容量約一・ 八㎥だが、外枠と底部のキャスターで縦横高さの スペースを取られるため、荷物をそのままトラッ クの荷台に積み込む「直積み」で満載にした時の 七割程度しか積載できない。
そのため通常、特積み会社はユニットロード化 を避け、直積みを基本にしている。
しかしヤマト は荷役作業の省力化と輸送品質を重視して、宅急 便のサービス開始当初からロールボックスによるユ ニットロードにこだわってきた。
その結果、日々 数十万台ものロールボックスが全国を行き来する 特有のネットワークが出来上がった。
星野取締役は「個人的には二〇年も前から、ロ ールボックスを使って企業向けのサービスができ ないだろうかと考えていた。
世間ではロールボッ クスは積載率が悪いと言われる。
しかし、車輪が 付いているので移動は楽だ。
そこでロールボック スを動く棚として使って回転率を上げれば、積載 率をカバーしてお釣りが来るだろうという発想だ 約を整理しなくてはならない。
導入のハードルは 高い。
YLCとしてもAPFのバケット数には限 りがあるため、満庫になれば新たに設備を増強し ない限り受託量を増やせない。
重装備の設備で投 資負担は軽くない。
このTSSの経験がFRAPSに活かされてい る。
保管型のTSSと違ってFRAPSはスルー 型だ。
荷主は必要に応じて利用できる。
物量の増 加にも設備の増強なしに柔軟に対応できる。
しか もバケットからロールボックスにユニットが変わっ たことで、通販だけでなく中ロットの企業間物流 に広く応用が効くようになった。
今年一〇月現在、宅急便のベース店一〇拠点に FRAPSを導入している。
一六年までに国内六 九のベース店全店に配備する計画だ。
海外でも既 に上海、台湾、タイの三拠点に導入している。
一〇月に稼働したばかりのタイでは、現地に進 出した日系ドラッグストアチェーンが一括物流にF RAPSを利用している。
ヤマトのセンターで商 品を荷受けし、FRAPSで仕分けて店舗に一括 納品している。
作業が標準化されているため立ち 上げが容易で店舗の拡張にも柔軟に対応できる点 が評価された。
今後は同じ仕組みを現地の他のチ ェーンストアにも横展開して、ロールボックスの混 載による輸送コスト低減を進めていく考えだ。
星野取締役は「FRAPSの存在が徐々に知ら れてきて、対応が追いつかないくらい引き合いが 増えてきた。
FRAPSのラックをそのまま工場 の生産ラインに乗せられないかなど、お客様から アイデアをいただくことも多い。
当面は手を広げ 過ぎることは控え、メリットの出せるターゲット を見極めてノウハウを蓄積していく」と言う。
YLCの星野芳彦 取締役常務執行役員 (写真2)作業性に配慮して様々なタイプの ロールボックス型ラックを研究開発してい る。
写真は試作中のもので2台のラックを 連結するとロールボックス1台になる。
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