2013年11月号
特集
特集
第5部 事例研究:バリュー・ネットワーキング ヤマトパッキングサービス海外工場のグローバル調達を効率化
NOVEMBER 2013 30
発注から納品までを可視化
ヤマトホールディングス傘下のヤマトパッキング
サービス(YPC)は、輸出用工業製品の梱包事
業者として六〇年以上の歴史を持つ。
家電品から 建設機械などの重量物まで多様な製品の梱包業務 を請け負い、日本の輸出産業の成長とともに事業 を拡大してきた。
しかし、生産拠点の海外シフトが進み、完成品 の輸出は既に頭打ちとなっている。
日本の貿易輸 出額は二〇〇七年の約八四兆円をピークにその後 は六〇兆円前後の横ばいで推移している。
今後も 大幅な伸びは期待できそうにない。
事業環境が大きく変化したことを受け、YPC はビジネスモデルの転換を進めてきた。
単なる梱 包業から脱皮し、顧客の輸出業務をトータルで支 援する事業に新たな活路を見出そうとしている。
その手始めとして六年ほど前、海外へ移転した 工場に日本から部品を供給しているサプライヤー をターゲットに、部品を梱包して輸出するまでの リードタイムを短縮するサービスを開発した。
既存の輸出梱包基地内に保税蔵置所を設け、ヤ マトグループの通関事務所を併設、梱包作業と輸出 書類の作成を同時に行い通関も一カ所で済ませる 態勢を整備した。
これによって従来は一週間掛か っていた梱包から通関までの期間を三日に短縮した。
リードタイムの短 縮は日本のサプラ イヤー側だけでな く、納品先となる 海外の工場にもメ リットをもたらす はずだ。
それを確認しようとYPCの江頭哲也社 長は現地に飛んで納品先をヒアリングして回った。
しかし、期待していたほどの評価は得られなか った。
国際調達は発注してから納品までの期間が 長く、業務プロセスも複雑なため、日本で船積み までの日数が数日縮まったところで大した意味は ないというのが大方の反応だった。
江頭社長は「正直ショックを受けた。
しかし、 そのままでは引き下がれない、リードタイムが長 い原因はどこにあり、解決のために我々に何がで きるかを考えてみようと思った」と振り返る。
同社は一年半を掛け“買う側”の視点で調達の 業務プロセスを分析し問題点を探った。
江頭社長が訪問した企業の大半は大手の組み立 てメーカーと共に現地に進出した一次(業種によ っては二次)サプライヤーだった。
組み立てメー カーの工場へ製品を納めるために、日本やアジア 各地の二次(三次)サプライヤーから部品を調達 して現地の工場で生産していた。
その調達先は多岐にわたり、相手によって取引 ヤマトパッキングサービス 海外工場のグローバル調達を効率化 海外工場の国際調達を効率化するソリューションを構築、鳥 取の境港に拠点を構えて本格展開している。
クラウド型情報シ ステムによって発注から納品までの全工程を可視化し、グループ のネットワークを活用して集配、決済も代行する。
顧客はサプラ イヤーから必要な分だけ少量ずつ部品を調達することができる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) YPCの江頭哲也社長 YPCは輸出梱包をはじめ貿易物流関連業務を一括し て請け負っている。
5 事例研究:バリュー・ネットワーキング 31 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 して提供し、顧客のプロセスの簡素化を支援する サービスに乗り出した。
発注側(買う側)と受注側(売る側=サプライ ヤー)がクラウド上で情報を共有し、受発注や納 期を管理したり、集荷や出荷の指示を出したり、 代金の決済まで処理できる。
買う側がEASYで発注情報を入力すると、受 注側はこの情報を基に現品票や納品書を発行し、 生産計画を立てて納期を回答する。
現品票を生産 管理に利用することもできる。
生産が完了すると帳票類を製品に添付して出荷。
YPCの倉庫へ入荷した際に現品票のバーコード の条件や数量、タイミングもまちまちで、発注や 納期の管理は極めて煩雑だった。
工場の調達担当 者は日々、電話やメールで取引先や社内の関係部 署間と頻繁にやり取りを行い、発注内容や納期の 確認のための膨大な事務作業に追われていた。
い つ部品が届くのかは直前まで分からず、生産計画 を立てにくいという悩みも抱えていた。
調達のリードタイムが長くなる原因の一つが、 この複雑な事務処理にあるとYPCは考えた。
そ こで発注から納品・決済までの全工程を可視化す る「EASY」というクラウド型情報システムを 自ら開発した。
このシステムをプラットフォームと を読み、入庫予定情報(発注情報)を基に“入 庫消し込み”作業を行う。
買う側はこの情報をE ASY上で確認して納期管理に活用する。
その後、現地へ納品するまでのトレース管理も EASYによって行う。
買う側はEASYの画面 上で随時、輸送状況を検索できる。
従来のように 納期確認のために多大な労力を割く必要はなくなる。
ヤマトグループのヤマトフィナンシャルと連携し て代金決済も代行する。
入庫消し込みの済んだデ ータを基に決済を処理する。
帳票類の作成から決 済までの事務作業を大幅に軽減できる。
“小口のプル化”を実現 この仕組みをさらに高度化するため、同社はヤ マトグループの集配網を活用して「プル型」の調 達を実現する仕組みを構想した。
調達側が荷物の 発側(売る側)との取引条件を「工場の軒先渡し」 へ変更した上で、ヤマトグループが工場へ集荷に 行き、着側(買う側)の指定場所までの輸送を一 元管理する。
近年、ヤマトグループは宅急便事業をアジア全 域(一三年現在、台湾、上海、シンガポール、香港、 マレーシアの五拠点)に拡大している。
そのネッ トワークを活用すれば必要な数だけ少量ずつ回数 を分けて調達することが可能になる。
自動車や家電の大手メーカーでは海外でも日本 国内と同じように、ミルクラン方式などで部品を タイムリーに調達しているケースが珍しくない。
だが中堅メーカーが自らの主導でこうした仕組み を構築するのは難しい。
「そこで我々が仕組みを 提供し、“小口のプル化”を物流面で支援する」 と江頭社長はその狙いを説明する。
国内海外 図1 サービスの概要 グローバル調達支援サービスグローバル販売支援サービス 買う売る 国内海外 宅急便で集めて夜間早朝仕分け 大きな設備や備品も開梱して輸送大きな設備や備品も梱包して輸送 サプライヤー ?発注 ?集荷指示 ?PULL ?支払 ?受注 ?出荷指示 ?納品 ?集金 荷主 購買部 工場 財務 財務営業部 得意先 図2 国際調達をトータルに支援 製造業の製造特化に流通支援で貢献する ⇒ 発注・物流・決済の代行(固定費削減) 買う売る 作る ●構内物流請負 グローバル調達支援 ●発注支援 発注 納期管理(入庫消込) 帳票出力 ●物流支援 輸送(引き取り) 保管 開梱 仕分け 納品 ●決済 購入代金決済 グローバル販売支援 ●受注支援 受注 在庫管理 帳票出力 ●物流支援 出荷 梱包 納品 ●決済 代金回収 流通過程のデジタル化 によりPULLを実現 NOVEMBER 2013 32 の見直しをアドバイスするとともに、境港を発着 の基点とする最適な輸送ルートを提案した。
その結果、ある機械メーカーは従来、中国の天 津港から大阪港経由で部品を調達していたのを、 境港に陸揚げするルートに切り替えた。
調達先と の取引条件も「工場軒先渡し」に変更し、新しい 輸送経路で少量ずつ引き取る方法に変えた。
境港に就航している中国航路は天津港には寄港 しないため、韓国を東西に横断する陸上輸送を組 み合わせたルートをYPCが新規に開拓した。
天 津港から韓国の仁川へRORO船で輸送し、仁川 からトラックに積み替えて東の東海へ陸送、東海 からはフェリーで境港まで海上輸送する。
天津〜仁川間は韓国から中国向けに家電製品や 電子部品を輸送しているRORO船の帰り便を利 用する。
往路と比べて復路は荷量が少ない点に着 目した。
東海〜境港間も着眼点は同じだ。
数年前からこ の航路には日韓の定期便フェリーが就航している ものの、旅客の輸送が中心で貨物用の船倉はほと んど空の状態だった。
空きスペースをうまく組み 合わせることで価格競争力のある輸送ルートを実 現した。
大阪港経由に比べ国内輸送の距離が短く なり、輸送費をトータルで一五%削減できた。
コンテナ船ではなくフェリーを利用することが 小口輸送のリードタイム短縮にも有利に働いた。
通常、小口貨物をコンテナで輸送する場合、CY に荷物を集約して積み合わせる工程が必要になる。
だがフェリーならコンテナに積まずにパレットの 荷姿のまま運ぶことができる。
工程を省ける上、 荷役作業も船内でのフォークリフトによる積み降 ろしだけで済むため簡素化される。
その結果、輸 県の要請を受けてYPCは半年間にわたり独自 に市場調査を行った。
その結果、港湾機能と同社 の情報・物流・金融機能を一体で提供することで、 十分な需要を見込めると判断し進出を決めた。
一 一年十二月に米子市の境港近辺に「山陰流通トリ ニティーセンター」を開設、翌年一月に本格的に 操業を開始した。
韓国を横断するルート開拓 YPCのソリューション事業はここから新たな 局面を迎える。
県の内外を問わず海外と取引のあ る企業にアプローチし、業務プロセスや調達方法 日系メーカーが多く進出しているアジアの国々 の陸上輸送は一般にチャーター便で行われている。
取引ロットも車両単位で設定されることが多いた め、必要以上の数量を購入して余分な在庫を抱え なければならない。
“小口のプル化”を実現でき れば過剰在庫の解消につながる。
また調達物流をサプライヤー任せにせず購買側 の管理下に置くことで、購買・生産活動を計画的 に行えるようにもなる。
取引条件が工場の軒先渡 しに変わるため、サプライヤー側では配送管理が 不要になる。
構想から一年余り、ソリューションサービスと しての枠組みが固まってきたころ、図らずも鳥取 県から拠点誘致が持ちかけられた。
山陰の境港を 根拠地として新しいビジネスモデルを展開してみ てはどうか、という内容だった。
境港は鳥取と島根の両県にまたがる港で、中国 航路や釜山航路が就航し、定期コンテナ船も寄港 している。
鳥取県は境港を西日本における北東ア ジアへの玄関口として発展させる構想を描いている。
鳥取県には電子部品関連の企業が集積し、隣の 島根県も含めると五〇〇社以上の数になる。
その 多くが海外の日系工場向けに製品を輸出している。
境港の港湾機能を充実させることで輸出入の拡大 を後押しし、県内産業の振興を図ろうという目論 見だ。
だが、ほとんどのメーカーは境港を利用せず、 利便性の高い神戸港などの主要港から船積みして いる。
これを憂慮した県はYPCの「グローバル 調達支援サービス」に注目。
同社との連携が港に 付加価値を生み、活性化への起爆剤となると期待 をかけた。
図3 PULL 型の国際調達を実現、リードタイムも短縮 ルート リードタイム 天津〜釜山〜大阪〜米子 11日以上 BEFORE 天津〜仁川〜境港〜米子 9日 AFTER △2日 成果 物流を短絡化し、フェリーの利用で、調達計画・生産計画を立てやすくなった 日本 韓国 中国 ?東海 ?境港 ?仁川 ?天津 33 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 要な部品を日本でサプライヤーから購入してその 一部を韓国の工場向けに輸出していた。
ところが サプライヤーの工場は中国へ移転していて日本に はなく、中国の上海工場から部品を輸入して日本 でこのメーカーに納めていた。
上海で製造された 部品が日本へ輸送され、再び海を越えて韓国へ送 られるという複雑な流れになっていた。
このメーカーに対しては調達方法の変更と物流経 路のショートカットをアドバイスした。
従来のよう に部品を日本で購入するのではなく、サプライヤー の上海工場での「軒先渡し」に変更。
ヤマトグル ープが上海工場へ引き取りに行き、韓国の工場に 必要な分は日本を経由せず直送するかたちにした。
江頭社長は「我々が目指すのは、物流会社の領 域を越え、顧客の流通を様々な角度から支援して 価値を生み出すビジネスだ」と強調する。
同社ではサプライヤーから荷物を引き取る際に、 通常の個数・行き先だけでなく中身もチェックす る。
サプライヤーの出荷内容にミスがあると、部 品を調達する顧客の生産計画や販売計画が狂った り、決済業務に大きな支障が出る。
それを避ける ため標準サービスとして検品代行を実施している。
これも物流会社の領域を越える事例の一つだ。
国内だけでなく海外でも同様に、現地のスタッ フに時間を掛けてこのサービスがなぜ必要かを説き、 作業を根付かせた。
発注した通りにモノが届くよ うになったと顧客から高い評価を受けているという。
同社は年内にも境港に続く新たな拠点の開設を 目指している。
「生産拠点や調達先が頻繁に変わ る時代に、アジアのどこの主要拠点からでも簡単 に引っ張れる仕掛けを作りたい」と江頭社長は意 欲を見せている。
に切り替えた。
リードタイムを一日短縮できる。
今年の五月現在、YPCの境港での貨物取り扱 い実績は二〇フィートコンテナに換算して五三本 分。
これは境港全体の月間取扱量のおよそ五%に 相当する。
同社はこのモデルをヤマトグループとの連携に より海外でも展開している。
あるメーカーは、香 港の販社が日本と香港のサプライヤー数十社から 部品を購入して中国の工場へ納め、出来上がった 製品を香港や日本などで販売するという、調達と 販売の二つの業務フローにYPCのソリューショ ンを採用した。
EASYを通じて受発注・納期管理・決済を行 い、日本と香港のサプライヤーから集荷した部品 を混載して中国へ納品する仕組みを構築した。
香 港での集荷と中国への輸送はヤマトグループの輸 配送網を活用する。
マレーシアでも最近、ヤマトグループの現地法 人と連携して新規の顧客向けにサービスを立ち上 げた。
この顧客は従来、アジア地区のヘッドクオ ーターを置くシンガポールで物流を管理していた。
今回、商物分離を実施して物流機能をマレーシア へ移し、アジア地区での調達および販売に伴う物 流業務をアウトソースした。
ショートカットをアドバイス 調達・販売のグローバル化に伴ってサプライチェ ーンが複雑化し、多国間にわたり無駄な物流が発 生しているケースは少なくない。
YPCはそこに メスを入れ、サプライチェーン上の問題点を探り、 時には取引上の物流経路の見直しも提案する。
日本と韓国に工場を持つあるメーカーでは、必 送のリードタイムを従来の十一日から九日へ二日 間短縮できた。
YPCは昨年暮れのトライアルを経てこの輸送 ルートの実運用を開始。
その後、隔週ペースで実 施している。
今年の夏にはルートを逆にたどる日 本から中国向けの輸送も開始した。
東海〜境港間に限った韓国発ルートも拡大して いる。
従来、仁川から釜山港へ陸送し釜山港から 下関経由で調達していたのを、東海〜境港ルート 図4 華南での調達モデル 香港島 サプライヤー 日本 サプライヤー 20 社 ?発注 ?発注?集荷?決済 YIL 香港 ●物流支援 販社 香港 売る 出荷 買う 入庫 帳合 マージ ?納品?納品 ?集荷 YPC YFC 日本 ●発注支援 ●物流支援 ●決済 マカオ 工場 東莞 買う ※YFC=ヤマトフィナンシャル、YIL=雅瑪多国際物流有限公司の略
家電品から 建設機械などの重量物まで多様な製品の梱包業務 を請け負い、日本の輸出産業の成長とともに事業 を拡大してきた。
しかし、生産拠点の海外シフトが進み、完成品 の輸出は既に頭打ちとなっている。
日本の貿易輸 出額は二〇〇七年の約八四兆円をピークにその後 は六〇兆円前後の横ばいで推移している。
今後も 大幅な伸びは期待できそうにない。
事業環境が大きく変化したことを受け、YPC はビジネスモデルの転換を進めてきた。
単なる梱 包業から脱皮し、顧客の輸出業務をトータルで支 援する事業に新たな活路を見出そうとしている。
その手始めとして六年ほど前、海外へ移転した 工場に日本から部品を供給しているサプライヤー をターゲットに、部品を梱包して輸出するまでの リードタイムを短縮するサービスを開発した。
既存の輸出梱包基地内に保税蔵置所を設け、ヤ マトグループの通関事務所を併設、梱包作業と輸出 書類の作成を同時に行い通関も一カ所で済ませる 態勢を整備した。
これによって従来は一週間掛か っていた梱包から通関までの期間を三日に短縮した。
リードタイムの短 縮は日本のサプラ イヤー側だけでな く、納品先となる 海外の工場にもメ リットをもたらす はずだ。
それを確認しようとYPCの江頭哲也社 長は現地に飛んで納品先をヒアリングして回った。
しかし、期待していたほどの評価は得られなか った。
国際調達は発注してから納品までの期間が 長く、業務プロセスも複雑なため、日本で船積み までの日数が数日縮まったところで大した意味は ないというのが大方の反応だった。
江頭社長は「正直ショックを受けた。
しかし、 そのままでは引き下がれない、リードタイムが長 い原因はどこにあり、解決のために我々に何がで きるかを考えてみようと思った」と振り返る。
同社は一年半を掛け“買う側”の視点で調達の 業務プロセスを分析し問題点を探った。
江頭社長が訪問した企業の大半は大手の組み立 てメーカーと共に現地に進出した一次(業種によ っては二次)サプライヤーだった。
組み立てメー カーの工場へ製品を納めるために、日本やアジア 各地の二次(三次)サプライヤーから部品を調達 して現地の工場で生産していた。
その調達先は多岐にわたり、相手によって取引 ヤマトパッキングサービス 海外工場のグローバル調達を効率化 海外工場の国際調達を効率化するソリューションを構築、鳥 取の境港に拠点を構えて本格展開している。
クラウド型情報シ ステムによって発注から納品までの全工程を可視化し、グループ のネットワークを活用して集配、決済も代行する。
顧客はサプラ イヤーから必要な分だけ少量ずつ部品を調達することができる。
(フリージャーナリスト・内田三知代) YPCの江頭哲也社長 YPCは輸出梱包をはじめ貿易物流関連業務を一括し て請け負っている。
5 事例研究:バリュー・ネットワーキング 31 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 して提供し、顧客のプロセスの簡素化を支援する サービスに乗り出した。
発注側(買う側)と受注側(売る側=サプライ ヤー)がクラウド上で情報を共有し、受発注や納 期を管理したり、集荷や出荷の指示を出したり、 代金の決済まで処理できる。
買う側がEASYで発注情報を入力すると、受 注側はこの情報を基に現品票や納品書を発行し、 生産計画を立てて納期を回答する。
現品票を生産 管理に利用することもできる。
生産が完了すると帳票類を製品に添付して出荷。
YPCの倉庫へ入荷した際に現品票のバーコード の条件や数量、タイミングもまちまちで、発注や 納期の管理は極めて煩雑だった。
工場の調達担当 者は日々、電話やメールで取引先や社内の関係部 署間と頻繁にやり取りを行い、発注内容や納期の 確認のための膨大な事務作業に追われていた。
い つ部品が届くのかは直前まで分からず、生産計画 を立てにくいという悩みも抱えていた。
調達のリードタイムが長くなる原因の一つが、 この複雑な事務処理にあるとYPCは考えた。
そ こで発注から納品・決済までの全工程を可視化す る「EASY」というクラウド型情報システムを 自ら開発した。
このシステムをプラットフォームと を読み、入庫予定情報(発注情報)を基に“入 庫消し込み”作業を行う。
買う側はこの情報をE ASY上で確認して納期管理に活用する。
その後、現地へ納品するまでのトレース管理も EASYによって行う。
買う側はEASYの画面 上で随時、輸送状況を検索できる。
従来のように 納期確認のために多大な労力を割く必要はなくなる。
ヤマトグループのヤマトフィナンシャルと連携し て代金決済も代行する。
入庫消し込みの済んだデ ータを基に決済を処理する。
帳票類の作成から決 済までの事務作業を大幅に軽減できる。
“小口のプル化”を実現 この仕組みをさらに高度化するため、同社はヤ マトグループの集配網を活用して「プル型」の調 達を実現する仕組みを構想した。
調達側が荷物の 発側(売る側)との取引条件を「工場の軒先渡し」 へ変更した上で、ヤマトグループが工場へ集荷に 行き、着側(買う側)の指定場所までの輸送を一 元管理する。
近年、ヤマトグループは宅急便事業をアジア全 域(一三年現在、台湾、上海、シンガポール、香港、 マレーシアの五拠点)に拡大している。
そのネッ トワークを活用すれば必要な数だけ少量ずつ回数 を分けて調達することが可能になる。
自動車や家電の大手メーカーでは海外でも日本 国内と同じように、ミルクラン方式などで部品を タイムリーに調達しているケースが珍しくない。
だが中堅メーカーが自らの主導でこうした仕組み を構築するのは難しい。
「そこで我々が仕組みを 提供し、“小口のプル化”を物流面で支援する」 と江頭社長はその狙いを説明する。
国内海外 図1 サービスの概要 グローバル調達支援サービスグローバル販売支援サービス 買う売る 国内海外 宅急便で集めて夜間早朝仕分け 大きな設備や備品も開梱して輸送大きな設備や備品も梱包して輸送 サプライヤー ?発注 ?集荷指示 ?PULL ?支払 ?受注 ?出荷指示 ?納品 ?集金 荷主 購買部 工場 財務 財務営業部 得意先 図2 国際調達をトータルに支援 製造業の製造特化に流通支援で貢献する ⇒ 発注・物流・決済の代行(固定費削減) 買う売る 作る ●構内物流請負 グローバル調達支援 ●発注支援 発注 納期管理(入庫消込) 帳票出力 ●物流支援 輸送(引き取り) 保管 開梱 仕分け 納品 ●決済 購入代金決済 グローバル販売支援 ●受注支援 受注 在庫管理 帳票出力 ●物流支援 出荷 梱包 納品 ●決済 代金回収 流通過程のデジタル化 によりPULLを実現 NOVEMBER 2013 32 の見直しをアドバイスするとともに、境港を発着 の基点とする最適な輸送ルートを提案した。
その結果、ある機械メーカーは従来、中国の天 津港から大阪港経由で部品を調達していたのを、 境港に陸揚げするルートに切り替えた。
調達先と の取引条件も「工場軒先渡し」に変更し、新しい 輸送経路で少量ずつ引き取る方法に変えた。
境港に就航している中国航路は天津港には寄港 しないため、韓国を東西に横断する陸上輸送を組 み合わせたルートをYPCが新規に開拓した。
天 津港から韓国の仁川へRORO船で輸送し、仁川 からトラックに積み替えて東の東海へ陸送、東海 からはフェリーで境港まで海上輸送する。
天津〜仁川間は韓国から中国向けに家電製品や 電子部品を輸送しているRORO船の帰り便を利 用する。
往路と比べて復路は荷量が少ない点に着 目した。
東海〜境港間も着眼点は同じだ。
数年前からこ の航路には日韓の定期便フェリーが就航している ものの、旅客の輸送が中心で貨物用の船倉はほと んど空の状態だった。
空きスペースをうまく組み 合わせることで価格競争力のある輸送ルートを実 現した。
大阪港経由に比べ国内輸送の距離が短く なり、輸送費をトータルで一五%削減できた。
コンテナ船ではなくフェリーを利用することが 小口輸送のリードタイム短縮にも有利に働いた。
通常、小口貨物をコンテナで輸送する場合、CY に荷物を集約して積み合わせる工程が必要になる。
だがフェリーならコンテナに積まずにパレットの 荷姿のまま運ぶことができる。
工程を省ける上、 荷役作業も船内でのフォークリフトによる積み降 ろしだけで済むため簡素化される。
その結果、輸 県の要請を受けてYPCは半年間にわたり独自 に市場調査を行った。
その結果、港湾機能と同社 の情報・物流・金融機能を一体で提供することで、 十分な需要を見込めると判断し進出を決めた。
一 一年十二月に米子市の境港近辺に「山陰流通トリ ニティーセンター」を開設、翌年一月に本格的に 操業を開始した。
韓国を横断するルート開拓 YPCのソリューション事業はここから新たな 局面を迎える。
県の内外を問わず海外と取引のあ る企業にアプローチし、業務プロセスや調達方法 日系メーカーが多く進出しているアジアの国々 の陸上輸送は一般にチャーター便で行われている。
取引ロットも車両単位で設定されることが多いた め、必要以上の数量を購入して余分な在庫を抱え なければならない。
“小口のプル化”を実現でき れば過剰在庫の解消につながる。
また調達物流をサプライヤー任せにせず購買側 の管理下に置くことで、購買・生産活動を計画的 に行えるようにもなる。
取引条件が工場の軒先渡 しに変わるため、サプライヤー側では配送管理が 不要になる。
構想から一年余り、ソリューションサービスと しての枠組みが固まってきたころ、図らずも鳥取 県から拠点誘致が持ちかけられた。
山陰の境港を 根拠地として新しいビジネスモデルを展開してみ てはどうか、という内容だった。
境港は鳥取と島根の両県にまたがる港で、中国 航路や釜山航路が就航し、定期コンテナ船も寄港 している。
鳥取県は境港を西日本における北東ア ジアへの玄関口として発展させる構想を描いている。
鳥取県には電子部品関連の企業が集積し、隣の 島根県も含めると五〇〇社以上の数になる。
その 多くが海外の日系工場向けに製品を輸出している。
境港の港湾機能を充実させることで輸出入の拡大 を後押しし、県内産業の振興を図ろうという目論 見だ。
だが、ほとんどのメーカーは境港を利用せず、 利便性の高い神戸港などの主要港から船積みして いる。
これを憂慮した県はYPCの「グローバル 調達支援サービス」に注目。
同社との連携が港に 付加価値を生み、活性化への起爆剤となると期待 をかけた。
図3 PULL 型の国際調達を実現、リードタイムも短縮 ルート リードタイム 天津〜釜山〜大阪〜米子 11日以上 BEFORE 天津〜仁川〜境港〜米子 9日 AFTER △2日 成果 物流を短絡化し、フェリーの利用で、調達計画・生産計画を立てやすくなった 日本 韓国 中国 ?東海 ?境港 ?仁川 ?天津 33 NOVEMBER 2013 クロネコヤマト独走 特集 要な部品を日本でサプライヤーから購入してその 一部を韓国の工場向けに輸出していた。
ところが サプライヤーの工場は中国へ移転していて日本に はなく、中国の上海工場から部品を輸入して日本 でこのメーカーに納めていた。
上海で製造された 部品が日本へ輸送され、再び海を越えて韓国へ送 られるという複雑な流れになっていた。
このメーカーに対しては調達方法の変更と物流経 路のショートカットをアドバイスした。
従来のよう に部品を日本で購入するのではなく、サプライヤー の上海工場での「軒先渡し」に変更。
ヤマトグル ープが上海工場へ引き取りに行き、韓国の工場に 必要な分は日本を経由せず直送するかたちにした。
江頭社長は「我々が目指すのは、物流会社の領 域を越え、顧客の流通を様々な角度から支援して 価値を生み出すビジネスだ」と強調する。
同社ではサプライヤーから荷物を引き取る際に、 通常の個数・行き先だけでなく中身もチェックす る。
サプライヤーの出荷内容にミスがあると、部 品を調達する顧客の生産計画や販売計画が狂った り、決済業務に大きな支障が出る。
それを避ける ため標準サービスとして検品代行を実施している。
これも物流会社の領域を越える事例の一つだ。
国内だけでなく海外でも同様に、現地のスタッ フに時間を掛けてこのサービスがなぜ必要かを説き、 作業を根付かせた。
発注した通りにモノが届くよ うになったと顧客から高い評価を受けているという。
同社は年内にも境港に続く新たな拠点の開設を 目指している。
「生産拠点や調達先が頻繁に変わ る時代に、アジアのどこの主要拠点からでも簡単 に引っ張れる仕掛けを作りたい」と江頭社長は意 欲を見せている。
に切り替えた。
リードタイムを一日短縮できる。
今年の五月現在、YPCの境港での貨物取り扱 い実績は二〇フィートコンテナに換算して五三本 分。
これは境港全体の月間取扱量のおよそ五%に 相当する。
同社はこのモデルをヤマトグループとの連携に より海外でも展開している。
あるメーカーは、香 港の販社が日本と香港のサプライヤー数十社から 部品を購入して中国の工場へ納め、出来上がった 製品を香港や日本などで販売するという、調達と 販売の二つの業務フローにYPCのソリューショ ンを採用した。
EASYを通じて受発注・納期管理・決済を行 い、日本と香港のサプライヤーから集荷した部品 を混載して中国へ納品する仕組みを構築した。
香 港での集荷と中国への輸送はヤマトグループの輸 配送網を活用する。
マレーシアでも最近、ヤマトグループの現地法 人と連携して新規の顧客向けにサービスを立ち上 げた。
この顧客は従来、アジア地区のヘッドクオ ーターを置くシンガポールで物流を管理していた。
今回、商物分離を実施して物流機能をマレーシア へ移し、アジア地区での調達および販売に伴う物 流業務をアウトソースした。
ショートカットをアドバイス 調達・販売のグローバル化に伴ってサプライチェ ーンが複雑化し、多国間にわたり無駄な物流が発 生しているケースは少なくない。
YPCはそこに メスを入れ、サプライチェーン上の問題点を探り、 時には取引上の物流経路の見直しも提案する。
日本と韓国に工場を持つあるメーカーでは、必 送のリードタイムを従来の十一日から九日へ二日 間短縮できた。
YPCは昨年暮れのトライアルを経てこの輸送 ルートの実運用を開始。
その後、隔週ペースで実 施している。
今年の夏にはルートを逆にたどる日 本から中国向けの輸送も開始した。
東海〜境港間に限った韓国発ルートも拡大して いる。
従来、仁川から釜山港へ陸送し釜山港から 下関経由で調達していたのを、東海〜境港ルート 図4 華南での調達モデル 香港島 サプライヤー 日本 サプライヤー 20 社 ?発注 ?発注?集荷?決済 YIL 香港 ●物流支援 販社 香港 売る 出荷 買う 入庫 帳合 マージ ?納品?納品 ?集荷 YPC YFC 日本 ●発注支援 ●物流支援 ●決済 マカオ 工場 東莞 買う ※YFC=ヤマトフィナンシャル、YIL=雅瑪多国際物流有限公司の略
