2013年11月号
現場改善
現場改善
第128回 通販向け企画品メーカーQ社の物流最適化
73 NOVEMBER 2013
社長以外はスタッフ全員女性
先月号に続き、通販関連の改革・改善事例を
お伝えする。
Q社はネットやカタログを媒体と する通販企業にオリジナル商品の提案を行う通 販向け企画品メーカーである。
年商約一五億円、 従業員数は二〇人強という規模ながら、商品企 画力に強みを持ち、多くの通販企業と取引を行 っている。
取扱商品はノベルティ、インテリア関連、バ ラエティグッズ、日用雑貨全般と多岐にわたる。
アイテム数は約二〇〇〇。
このうち定番品は約 二〇%の四〇〇アイテムにすぎない。
残りのほ とんどは一回限りのスポット商品である。
中国に主力工場を置いているほか、東南アジ アの三カ所に拠点を置き、自社工場もしくは提 携工場から出荷して、日本国内の通販各社の物 流センターに納品している。
その物流オペレー ションは3PLへの一括委託、というよりも? 丸投げ?に近い状態であった。
Q社の物流責任者から問い合わせを受け、ビ ジネス街の中心部に位置する本社オフィスで初 回の打ち合わせを行うこととなった。
遊び心に 溢れたオフィスであった。
いくつもの扉が設け られた受付は迷路のようで、そこから案内され た打ち合わせの席は一転してフロア全体に仕切 りがなく、ヨーロッパのオープンカフェのようだ った。
アイデア、発想を重視するトップの想い をうかがうことができた。
二〇歳代の女性社員二人が我々を出迎えてく れた。
一人は物流責任者、もう一人はその上 司だという。
少し訝しく感じて質問したところ、 Q社のスタッフは社長以外、全員女性であった。
名刺交換でまた驚いた。
二人ともミドルネーム を持っている。
てっきりハーフだと筆者は思い 込んでいたが、打ち合わせ終了後に、スタッフ 全員がニックネームをミドルネームとして名刺に 入れていることを知った。
そんなユニーク尽くめのQ社であったが、コ ンサルティングのテーマはど真ん中であった。
通 販関連企業としての発展・成長に向けて、物流 面では何をクリアしておく必要があるのか。
物 流効率化はどう進めていけば良いのか、という ものである。
Q社が自らネット通販を始めるこ とも計画されており、その準備も必要であった。
これを受けて我々は数日間の簡易調査を実施。
現場見学、ヒアリング、データ分析を行い、そ の結果を元に、以下の九項目を最適化に向けた 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 中国や東南アジアで独自企画の商品を生産し、日本の通販 会社に卸している。
業績は順調で物量も増えてきた。
しか し、物流は3PLへの丸投げに近い状態だった。
スタッフは 全員が若い女性で社内に物流管理のノウハウはない。
どこか ら手を付けたら良いものか。
物流コンサルタントの支援を受 けることにした。
通販向け企画品メーカーQ社の物流最適化 第128 回 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運送 業者のセールスドライバーを経 て、89年に船井総合研究所入 社。
物流開発チーム・トラッ クチームチーフを務める。
96 年、独立。
日本ロジファクトリー を設立し代表に就任。
現在に 至る。
主な著書に『経営のテ コ入れは物流改善から』(明日 香出版社)、『物流のしくみ』(同 文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE NOVEMBER 2013 74 活動テーマとして提示した。
?国際物流と国内物流の業務委託先分離 ?ネット通販の開始に伴うB to C物流の構築 ?在庫差異の解消 ?在庫過多の解消 ?X業態向け出荷作業のスピードアップ ?発注点の設定と生産管理のシステム化 ?WMS導入 ?商品マスターのリアルタイム更新 ?3PLとの共同改善活動 このうち「?国際物流と国内物流の業務委託 先分離」は、協力会社の3PLが海外における 物流オペレーションを得意としていないことが理 由であった。
その3PLは現地のオペレーション をフォワーダー会社に再委託していた。
Q社が 進出している中国や東南アジアに現地法人を置 いているわけではなく、提携先もしくは強固な 関係にあるパートナー会社があるわけでもなか った。
それもあってだろう。
通関を切るまでの 日数が通常よりも一〜二日余計に掛かっていた。
そこで海外における通関までの前工程は、現 地のオペレーションに強い物流会社に委託先を 変更することにした。
その選定にはコンペ形式 を採った。
その際、次の二点に注意した。
一つ は既存の協力3PLとの取引実績および相性で ある。
委託先を分けてもスムーズに連携できる ことを条件にした。
もう一つは、「新・新興国」 とも呼ばれ、中国に代わる新たな生産基地とし て注目されているバングラデシュとミャンマーに おける対応力である。
近い将来、Q社の新たな 調達先となる可能性が高かった。
このコンペで日系の大手フォワーダーを新たな パートナーに選び、海外業務を切り出した。
そ の結果、通関日数は通常レベルに短縮され、ト ータル物流コストを約十二・五%削減すること ができた。
委託先が一社から二社になったこと で物流責任者の負担は増えた。
しかし、もとも と担当者の仕事量には余裕があったため、勤務 時間内で業務を収めることができた。
つまり事 務コストは上がらなかったわけである。
中国工場との連携を強化 「?ネット通販の開始に伴うB to C物流の構 築」では、配送委託先としてヤマト運輸と佐川 急便が候補に挙がるところだが、Q社の場合、 トップも含め従来から佐川急便との関係が深い とのことで、彼らを中心にフローを組み立てる ことになった。
ポイントとしては、従来の取引 量と実績を宅配料金の交渉に活かすことができ るかどうかであった。
「?在庫差異の解消」には、第一に棚卸しの 頻度を上げる必要があった。
それまでの年四回 は少な過ぎた。
これを月一回に増やした。
委託先の現場オペレーションの改善も必要で あった。
我々がコンサルティングに入った時点 で既に、従来のアナログ作業からバーコード管 理への変更が検討されていた。
そこで我々はパ ッケージソフトを選定し、カスタマイズ内容を検 討する段階からシステムベンダーを交えた打合 せに参画することとなった。
ハンディターミナルを使った入荷検品、ピッ キング、出荷検品を実施するには、Q社が主力 工場とする中国工場の生産体制と連動する必要 があった。
工場出荷時にバーコードシールを貼 り付けることを要請した。
ところが、運用が始まってもシールの貼付が なかなか徹底されない。
そこで段ボールに直接、 コードを印字する方法も検討したが、海外工場 で印刷したコードは輸送途中で擦れて識別でき なくなることが多いという壁にぶつかった。
最 終的には日本でセンターに入荷した時点でシー ルを発行して、対応することになった。
「?在庫過多の解消」は、需要予測の甘さが 主な原因であったが、定番品以外の商品につい ては、スポット品という商品特性に起因する売 れ残りや、返品ルールの問題など、様々な要素 が重なり合っていた。
物流だけで解決できる問 題ではないため、次のフェーズに先送りするこ とになった。
「?X業態向け出荷作業のスピードアップ」 は、受注締め切り時間に問題があった。
他の業 態および得意先に対しては、イレギュラー対応 を含めても午後四時に当日出荷分を締め切って いた。
しかし、X業態の得意先はEOSでの受 信が午後四時半に集中するため、例外的に当日 出荷で扱っていたが、トラックの最終便に間に 合わないことも多かった。
そこでX業態の得意先に締め切り時間の是正 を要請するとともに、センターの作業方法を見 直した。
センター内におけるゾーニング、棚の レイアウト、保管ロケーションを変更して動線 75 NOVEMBER 2013 を短縮。
作業リードタイムを約一五分短縮した。
「?発注点の設定と生産管理のシステム化」は Q社にとって最大の改革テーマと言えた。
定番 品およびAランク品で欠品が発生する原因の大 半は、中国工場の生産の遅れによるものであっ た。
また担当者の勘と経験に依存した納期管理 は、しばしば読み違いを起こしていた。
改善の柱は大きく二つ。
一つは工場に対する 発注精度の向上である。
通販会社ごとに予実 乖離係数を算出し、その分析に基づいて発注点 を決めた。
その結果、欠品の抑制という点では 大幅に改善が進んだ。
しかし、発注精度の問題 は先述の「?在庫過多」の要因ともなっており、 その点では課題を残した。
売れ残った在庫は、損失覚悟で捌くか、ディ スカウントルートに流すのが一般的であるが、Q 社ではトップがそれを良しとはしていなかった。
そこで滞留期間が二カ月を超えた在庫について は、それぞれ新しい売り方を検討し、それでも 残った分だけは、ディスカウントルートの活用 もしくは再加工の対象とすることにした。
もう一つの改善点は、中国工場側での生産 管理の徹底とシステム化および生産の進捗状況 を日本でも把握できるようにすることであった。
これについては現地工場長が中心となってシス テム化の検討に入ったが導入は早くても六カ月 後となる見込みである。
「?WMS導入」は、今後の物量拡大に対応 したバックヤード機能を担保するには必要な施 策であった。
Q社が自社でWMSを開発・所 有するのは荷が重いというトップの判断に基づ き、協力3PLにその役割を任せることにした。
協力3PLのシステムを利用するか、あるいは パッケージを導入するかを判断するため、現在、 3PLのシステム担当者がQ社スタッフにヒア リング調査を行っている最中である。
3PLとの関係を強化 「?商品マスターのリアルタイム更新」は、ロ ケーション管理の精度向上が狙いである。
従来 は商品の改廃、終売情報でさえ、3PLの現場 に十分伝わっていなかった。
そのため出荷頻度 のABC分析に基づくレイアウトやロケーショ ン作りが出来ない状況であった。
そこで商品マスターの更新情報をQ社内と同 様に3PLにもリアルタイムに発信することに した。
これによって現場では定期的にロケーシ ョンを変更することが可能になった。
生産性の 向上とピッキングミスの減少にも寄与している。
「?3PLとの共同改善活動」では、先述の 在庫差異のさらなる抑制と、繁忙期の対応に主 眼を置いた。
特売時やフェイスブック、ツイッ ターなどで口コミが拡散した時などに、一気に 注文件数が跳ね上がると、現場担当者レベルで 「こんなに物量が多いと今日中には出荷できな い」と勝手に判断して、当日出荷ができなくな ることがあった。
通販業界では致命的とも言え る事態である。
そこでQ社物流責任者と我々に3PLのセン ター責任者を交えて収拾方法を協議した。
セン ター責任者は当日に突然、物量が跳ね上がって も人手を確保できないとのことであった。
これ を受けて以下の三つの対策を打つことにした。
⑴定期会議の開催 それまでQ社の物流責任者とセンター責任者 は、必要に応じて電話でやり取りするだけで、 課題解決や要望事項の伝達などの打ち合わせを 一切行っていなかった。
これを改め月一回のペ ースで輸送および物流運営会議を開催し、問題 点の検討や、特売や新商品投入、終売情報の共 有化を図る。
⑵SLAの締結 協力物流会社が荷主に対してサービス品質を 保証する「サービスレベルアグリーメント(SL A)」の締結を視野に置き、作業品質目標(K PI)を設定する。
⑶派遣会社の利用 物量が急増した日には庫内作業員の派遣会社 を利用する。
この三つの施策の効果はすぐに現れた。
これ までの問題の多くは、荷主と3PL間のコミュ ニケーション不足によるものであることが、取 り組みを進めていくうち分かってきた。
Q社の 物流責任者が頻繁に現場へ足を運ぶようになり、 ?丸投げ?が解消されてきたことで、出荷不能 という事態に陥ることはなくなった。
こうして調査開始から約三カ月が経過した。
現状は第一ステージを終えたところだ。
それで もプロジェクトに関与したQ社の女性スタッフた ちは、通販業界において物流がどれだけ重要な のかを理解し、物流に対する問題意識を強く持 つようになった。
高度化に向けて一歩前進した と言えるだろう。
Q社はネットやカタログを媒体と する通販企業にオリジナル商品の提案を行う通 販向け企画品メーカーである。
年商約一五億円、 従業員数は二〇人強という規模ながら、商品企 画力に強みを持ち、多くの通販企業と取引を行 っている。
取扱商品はノベルティ、インテリア関連、バ ラエティグッズ、日用雑貨全般と多岐にわたる。
アイテム数は約二〇〇〇。
このうち定番品は約 二〇%の四〇〇アイテムにすぎない。
残りのほ とんどは一回限りのスポット商品である。
中国に主力工場を置いているほか、東南アジ アの三カ所に拠点を置き、自社工場もしくは提 携工場から出荷して、日本国内の通販各社の物 流センターに納品している。
その物流オペレー ションは3PLへの一括委託、というよりも? 丸投げ?に近い状態であった。
Q社の物流責任者から問い合わせを受け、ビ ジネス街の中心部に位置する本社オフィスで初 回の打ち合わせを行うこととなった。
遊び心に 溢れたオフィスであった。
いくつもの扉が設け られた受付は迷路のようで、そこから案内され た打ち合わせの席は一転してフロア全体に仕切 りがなく、ヨーロッパのオープンカフェのようだ った。
アイデア、発想を重視するトップの想い をうかがうことができた。
二〇歳代の女性社員二人が我々を出迎えてく れた。
一人は物流責任者、もう一人はその上 司だという。
少し訝しく感じて質問したところ、 Q社のスタッフは社長以外、全員女性であった。
名刺交換でまた驚いた。
二人ともミドルネーム を持っている。
てっきりハーフだと筆者は思い 込んでいたが、打ち合わせ終了後に、スタッフ 全員がニックネームをミドルネームとして名刺に 入れていることを知った。
そんなユニーク尽くめのQ社であったが、コ ンサルティングのテーマはど真ん中であった。
通 販関連企業としての発展・成長に向けて、物流 面では何をクリアしておく必要があるのか。
物 流効率化はどう進めていけば良いのか、という ものである。
Q社が自らネット通販を始めるこ とも計画されており、その準備も必要であった。
これを受けて我々は数日間の簡易調査を実施。
現場見学、ヒアリング、データ分析を行い、そ の結果を元に、以下の九項目を最適化に向けた 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 中国や東南アジアで独自企画の商品を生産し、日本の通販 会社に卸している。
業績は順調で物量も増えてきた。
しか し、物流は3PLへの丸投げに近い状態だった。
スタッフは 全員が若い女性で社内に物流管理のノウハウはない。
どこか ら手を付けたら良いものか。
物流コンサルタントの支援を受 けることにした。
通販向け企画品メーカーQ社の物流最適化 第128 回 あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業 大学経済学部卒業。
大手運送 業者のセールスドライバーを経 て、89年に船井総合研究所入 社。
物流開発チーム・トラッ クチームチーフを務める。
96 年、独立。
日本ロジファクトリー を設立し代表に就任。
現在に 至る。
主な著書に『経営のテ コ入れは物流改善から』(明日 香出版社)、『物流のしくみ』(同 文館出版)などがある。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp PROFILE NOVEMBER 2013 74 活動テーマとして提示した。
?国際物流と国内物流の業務委託先分離 ?ネット通販の開始に伴うB to C物流の構築 ?在庫差異の解消 ?在庫過多の解消 ?X業態向け出荷作業のスピードアップ ?発注点の設定と生産管理のシステム化 ?WMS導入 ?商品マスターのリアルタイム更新 ?3PLとの共同改善活動 このうち「?国際物流と国内物流の業務委託 先分離」は、協力会社の3PLが海外における 物流オペレーションを得意としていないことが理 由であった。
その3PLは現地のオペレーション をフォワーダー会社に再委託していた。
Q社が 進出している中国や東南アジアに現地法人を置 いているわけではなく、提携先もしくは強固な 関係にあるパートナー会社があるわけでもなか った。
それもあってだろう。
通関を切るまでの 日数が通常よりも一〜二日余計に掛かっていた。
そこで海外における通関までの前工程は、現 地のオペレーションに強い物流会社に委託先を 変更することにした。
その選定にはコンペ形式 を採った。
その際、次の二点に注意した。
一つ は既存の協力3PLとの取引実績および相性で ある。
委託先を分けてもスムーズに連携できる ことを条件にした。
もう一つは、「新・新興国」 とも呼ばれ、中国に代わる新たな生産基地とし て注目されているバングラデシュとミャンマーに おける対応力である。
近い将来、Q社の新たな 調達先となる可能性が高かった。
このコンペで日系の大手フォワーダーを新たな パートナーに選び、海外業務を切り出した。
そ の結果、通関日数は通常レベルに短縮され、ト ータル物流コストを約十二・五%削減すること ができた。
委託先が一社から二社になったこと で物流責任者の負担は増えた。
しかし、もとも と担当者の仕事量には余裕があったため、勤務 時間内で業務を収めることができた。
つまり事 務コストは上がらなかったわけである。
中国工場との連携を強化 「?ネット通販の開始に伴うB to C物流の構 築」では、配送委託先としてヤマト運輸と佐川 急便が候補に挙がるところだが、Q社の場合、 トップも含め従来から佐川急便との関係が深い とのことで、彼らを中心にフローを組み立てる ことになった。
ポイントとしては、従来の取引 量と実績を宅配料金の交渉に活かすことができ るかどうかであった。
「?在庫差異の解消」には、第一に棚卸しの 頻度を上げる必要があった。
それまでの年四回 は少な過ぎた。
これを月一回に増やした。
委託先の現場オペレーションの改善も必要で あった。
我々がコンサルティングに入った時点 で既に、従来のアナログ作業からバーコード管 理への変更が検討されていた。
そこで我々はパ ッケージソフトを選定し、カスタマイズ内容を検 討する段階からシステムベンダーを交えた打合 せに参画することとなった。
ハンディターミナルを使った入荷検品、ピッ キング、出荷検品を実施するには、Q社が主力 工場とする中国工場の生産体制と連動する必要 があった。
工場出荷時にバーコードシールを貼 り付けることを要請した。
ところが、運用が始まってもシールの貼付が なかなか徹底されない。
そこで段ボールに直接、 コードを印字する方法も検討したが、海外工場 で印刷したコードは輸送途中で擦れて識別でき なくなることが多いという壁にぶつかった。
最 終的には日本でセンターに入荷した時点でシー ルを発行して、対応することになった。
「?在庫過多の解消」は、需要予測の甘さが 主な原因であったが、定番品以外の商品につい ては、スポット品という商品特性に起因する売 れ残りや、返品ルールの問題など、様々な要素 が重なり合っていた。
物流だけで解決できる問 題ではないため、次のフェーズに先送りするこ とになった。
「?X業態向け出荷作業のスピードアップ」 は、受注締め切り時間に問題があった。
他の業 態および得意先に対しては、イレギュラー対応 を含めても午後四時に当日出荷分を締め切って いた。
しかし、X業態の得意先はEOSでの受 信が午後四時半に集中するため、例外的に当日 出荷で扱っていたが、トラックの最終便に間に 合わないことも多かった。
そこでX業態の得意先に締め切り時間の是正 を要請するとともに、センターの作業方法を見 直した。
センター内におけるゾーニング、棚の レイアウト、保管ロケーションを変更して動線 75 NOVEMBER 2013 を短縮。
作業リードタイムを約一五分短縮した。
「?発注点の設定と生産管理のシステム化」は Q社にとって最大の改革テーマと言えた。
定番 品およびAランク品で欠品が発生する原因の大 半は、中国工場の生産の遅れによるものであっ た。
また担当者の勘と経験に依存した納期管理 は、しばしば読み違いを起こしていた。
改善の柱は大きく二つ。
一つは工場に対する 発注精度の向上である。
通販会社ごとに予実 乖離係数を算出し、その分析に基づいて発注点 を決めた。
その結果、欠品の抑制という点では 大幅に改善が進んだ。
しかし、発注精度の問題 は先述の「?在庫過多」の要因ともなっており、 その点では課題を残した。
売れ残った在庫は、損失覚悟で捌くか、ディ スカウントルートに流すのが一般的であるが、Q 社ではトップがそれを良しとはしていなかった。
そこで滞留期間が二カ月を超えた在庫について は、それぞれ新しい売り方を検討し、それでも 残った分だけは、ディスカウントルートの活用 もしくは再加工の対象とすることにした。
もう一つの改善点は、中国工場側での生産 管理の徹底とシステム化および生産の進捗状況 を日本でも把握できるようにすることであった。
これについては現地工場長が中心となってシス テム化の検討に入ったが導入は早くても六カ月 後となる見込みである。
「?WMS導入」は、今後の物量拡大に対応 したバックヤード機能を担保するには必要な施 策であった。
Q社が自社でWMSを開発・所 有するのは荷が重いというトップの判断に基づ き、協力3PLにその役割を任せることにした。
協力3PLのシステムを利用するか、あるいは パッケージを導入するかを判断するため、現在、 3PLのシステム担当者がQ社スタッフにヒア リング調査を行っている最中である。
3PLとの関係を強化 「?商品マスターのリアルタイム更新」は、ロ ケーション管理の精度向上が狙いである。
従来 は商品の改廃、終売情報でさえ、3PLの現場 に十分伝わっていなかった。
そのため出荷頻度 のABC分析に基づくレイアウトやロケーショ ン作りが出来ない状況であった。
そこで商品マスターの更新情報をQ社内と同 様に3PLにもリアルタイムに発信することに した。
これによって現場では定期的にロケーシ ョンを変更することが可能になった。
生産性の 向上とピッキングミスの減少にも寄与している。
「?3PLとの共同改善活動」では、先述の 在庫差異のさらなる抑制と、繁忙期の対応に主 眼を置いた。
特売時やフェイスブック、ツイッ ターなどで口コミが拡散した時などに、一気に 注文件数が跳ね上がると、現場担当者レベルで 「こんなに物量が多いと今日中には出荷できな い」と勝手に判断して、当日出荷ができなくな ることがあった。
通販業界では致命的とも言え る事態である。
そこでQ社物流責任者と我々に3PLのセン ター責任者を交えて収拾方法を協議した。
セン ター責任者は当日に突然、物量が跳ね上がって も人手を確保できないとのことであった。
これ を受けて以下の三つの対策を打つことにした。
⑴定期会議の開催 それまでQ社の物流責任者とセンター責任者 は、必要に応じて電話でやり取りするだけで、 課題解決や要望事項の伝達などの打ち合わせを 一切行っていなかった。
これを改め月一回のペ ースで輸送および物流運営会議を開催し、問題 点の検討や、特売や新商品投入、終売情報の共 有化を図る。
⑵SLAの締結 協力物流会社が荷主に対してサービス品質を 保証する「サービスレベルアグリーメント(SL A)」の締結を視野に置き、作業品質目標(K PI)を設定する。
⑶派遣会社の利用 物量が急増した日には庫内作業員の派遣会社 を利用する。
この三つの施策の効果はすぐに現れた。
これ までの問題の多くは、荷主と3PL間のコミュ ニケーション不足によるものであることが、取 り組みを進めていくうち分かってきた。
Q社の 物流責任者が頻繁に現場へ足を運ぶようになり、 ?丸投げ?が解消されてきたことで、出荷不能 という事態に陥ることはなくなった。
こうして調査開始から約三カ月が経過した。
現状は第一ステージを終えたところだ。
それで もプロジェクトに関与したQ社の女性スタッフた ちは、通販業界において物流がどれだけ重要な のかを理解し、物流に対する問題意識を強く持 つようになった。
高度化に向けて一歩前進した と言えるだろう。
