2005年2月号
進化のゆくえ
進化のゆくえ
ダイエー処理の問題点と今後
FEBRUARY 2005 58 たはずだ 特定のグル プの政治力を感じるという声も聞こえてくる こうした印象は ダイエ 問題の処理が純粋な流通業やビジネスの問題ではなく 政治臭のつきまとう案件であることをあらわしている ダイエ 問題の処理に 政界と官界 それに小売業界の勢力図を塗り変えたい企業群の覇権争いが複雑に絡み合 ている そこに ビジネスチ ンスに群がる投資フ ンドも参加したビジネスの異種格闘技戦といえる 一次入札で残 た七グル プのメンバ を見ると 総合商社や不動産会社 投資フ ンドが多いことが分かる 図1 小売関係では イト ヨ カ堂 イオン 米ウ ルマ トという主客転倒したスポンサ 選び産業再生機構は昨年十二月二八日 ダイエ 支援を正式に決定した 一次入札の結果 スポンサ 候補は七社 グル プ が残 ている 二〇〇五年一月の二次入札によ てさらに絞り込まれ 今春にはスポンサ が決まる予定だ 一次入札では 当初の予定より締め切りを一週間遅らせたり 企業連合による参加に切り替えるなどの変更があ た 多くの企業による応札を効率化するというのがル ル変更の理由だ たが 不自然さを感じた人は多い 政治の産物である再生機構という機関が取りしきる案件であることを 改めて認識した人も少なくなか総合型小売業者と フ ストリテイリング ユニクロ ビデオやCDなどのレンタルシ プの TSUTAYA を展開するカルチ ア・コンビニエンス・クラブ そして中堅ス パ の共同商品開発会社であり連合体であるシジシ ジ パン CGC が参加している 異色は京セラで 小売業との接点がほとんどないにも関わらずイオンと連合を組んだ この顔ぶれからは 小売業者の存在が後方に引 込み その代わりに総合商社や バブル後のリストラに絡んでしばしば目にする外国の投資フ ンドの名前が前面に躍り出ている印象を受ける そして ブランドの知名度や存在感の大きさから 総合商社や投資フ ンドこそがダプリモ・リサーチ・ジャパン 鈴木孝之 代表 第5回ダイエ 処理の問題点と今後産業再生機構によるダイエ の抜本処理が具体化してきた スポンサ 候補はすでに七グル プに絞りこまれており 今春には一社に決まる予定だ 日本の流通業界の勢力図を決する案件ながら 再生機構の関与が多くの問題を招き それぞれのスポンサ 候補の思惑も絡んで事態は一層複雑なものにな ている 59 FEBRUARY 2005イエ 再建の主役であると感じる人も多いかもしれない しかし こうした企業がダイエ 問題を解決する主役であろうはずがない 彼らはあくまでも脇役であり 主役はイオンやイト ヨ カ堂 そしてウ ルマ トとい た大手小売業者である このような主客転倒的な印象を社会に与えていること自体が ダイエ 問題の特徴であり そこに潜む問題を象徴している 川下戦略を進める総合商社ダイエ 問題を巡 ては 総合商社の川下に対するスタンスも浮き彫りにな ている 商社ト プの三菱商事がスポンサ 候補のなかに入 ていないが これは同社が出遅れたからではない すでに川下作戦における布石を完了していることと これまでの経験からダイエ への関与はリスクが高いと判断しているためだ むしろその見識が注目される すでに三菱商事は 菱食という強力な卸をグル プに有し 小売りではコンビニエンスストアのロ ソンを持 ている 商事のロ ソン持株比率は三一%で 投資額は約二〇〇〇億円 平均買いコストは一株六四三二円だ た この大型投資は ロ ソンの株価下落によ て現状では約九〇〇億円の有価証券の評価損とな ている 商事にと ては満足しかねる結果であり このときの苦い経験もあ てダイエ についても支援企業に名乗りを上げなか たと思われる 賢明な判断だろう 商事はイオンと友好関係にあり わざわざ支援企業連合に名乗りを上げなくとも 案件ベ スで関わることができる 伊藤忠商事もフ ミリ マ トに資本参加しており 商事と同様に巨額の株式評価損を抱えている 伊藤忠の出資額は一四〇〇億円で フ ミリ マ トの三一%株主とな ているが このときの株の取得原価は一株当たり約四八〇〇円 これに対して直近の株価は約四割下落しており 約五八〇億円の含み損が発生している ダイエ 支援で伊藤忠は フ ストリテイリングの元副社長で伊藤忠OBの沢田貴司氏の投資フ ンド キアコンと連合を組んでいる ダイエ に出資する考えはなく 物流などでの関わりを考えているという 他の総合商社の川下戦略もかまびすしい マルエツ株を二八・八%保有する第二位の大株主である丸紅は ス パ マ ケ トに特化して川下事業を展開している 住友商事はウ ルマ トと並ぶ西友の株主だが 西友については ウ ルマ トの子会社であるため主導権を握れずにいる グル プに有力な卸もなく 他の総合商社に比べるとこの分野では力が弱いと言わざるをえない 三井物産については イト ヨ カ堂との包括提携にも関わらず 満足すべき取引の拡大に至 ておらずイラついている状況が見てとれる ダイエ 処理でもイト ヨ カ堂が主導し 物産は単に おつき合い しているようにも映る しかし 小売りへの有力な足がかりを持たない物産としては他に道がないのだろう 軽視される企業再生の本質ダイエ 再建のスポンサ を募るにあた て 再生機構は市場のセリ売り的なやり方で投資フ ンドや総合商社の参加を促した 多数の有力企業を参加させることで 最終的なスポンサ 決定に向けたアリバイづくりをしているようにすら見える ダイエ 問題が小売業の問題だという認識に立てば このような違和感を禁じえない もちろん ダイエ が展開してきた事業領域を考えれば 再建のためにはテナント誘致などを中心とする不動産管理会社の力なども欠かせないことは理解できる しかし 破綻企業の再建では 中心となるスポンサ 企業が明確にな ている必要があり それは複数企業ではなく図1 ダイエー再建のスポンサー候補 中核企業 連携企業 イオン 京セラ 伊藤忠商事、オリックス イトーヨーカ堂 ウォルマート・ ストアーズ 丸紅 キアコン カーギル・ジャパン アドバンテッジ パートナーズ 三井物産、三井不動産、 ファーストリテイリング(ユニクロ) 住友商事、ゴールドマン・サックス、 サーベラス シジシージャパン(CGC)、 ケネディ・ウィルソン・ジャパン 三菱地所、カルチュアコンビニエンスクラブ、コールバーグ・クラビス・ロバーツ、リップルウッド (1月10日現在) 注)その後、三菱商事がイオン連合に参加。
丸紅は表中の連合から離脱し、新たにアドバンテッジと連合を組み直した。
また、カーギル連合にはアークスが参加して二次入札に応札した(編集部) FEBRUARY 2005 60たして これを再生と呼べるだろうか 弁済は家賃などを大幅にカ トしたことによるもので 営業力のためでは決してないことを知るべきだ リストラ効果によ て利益が残 ているだけであり これからは競争力強化のための投資が必要となる マイカルが本当に再生したと言えるのは まだ先のことだろう このようにして考えると 総合量販店事業の再建が欠かせないダイエ の案件は 比較的短期の投資リタ ンを求める投資フ ンドになじむ案件ではない にもかかわらず 多くの投資フ ンドの名前が挙が ているのは ダイエ という小売業の再生と 再生機構によるスポンサ の選定手法が本質的に合 ていないことを示唆している 金融危機で歪められたダイエ 問題ダイエ 問題の処理は 自主再建か 再生機構の支援を仰ぐかで最後の最後まで大きくもめた その挙句 再生機構が支援して金融機関への債権放棄などの処理を施した後に スポンサ 企業に手渡すことが決ま た いまさら この道筋を白紙に戻すのは現実的ではない しかし ダイエ という破綻した一私企業の再建に 国策的な再建案件として再生機構が関わ たことの問題点は指摘しておくべきだろう 再生機構が関わるダイエ の再建は 戦後の官主導型行政の延長線にある 本来であればダイエ の破綻が表面化した初期の段階で 民の一社であることが望ましい もし複数企業が出資するようなことになれば 再建の方向性が不明確になりかねないからだ 破綻企業の再建に民主的な手法はなじまない 複数企業が参加する方式では スポンサ を目指す企業が再建の主導権を握れない事態を恐れて スポンサ になる熱意を失いかねない 有力スポンサ 候補が降りてしまうことも考えられる 総合商社や再生フ ンドなどを広く取り込もうとする再生機構のやり方は 企業再建の本質を無視した お役所的 な仕事に映る こうした問題は 再生機構という期間限定の公的機関を受け皿としたことから発している 破綻したダイエ の再建が 民間によ て 市場によ て行われていれば 現状よりず と明快な展開にな ていたはずだ きらびやかなスポンサ 候補の顔ぶれからは ダイエ が完全にマネ ゲ ムの対象にな ていることがうかがえる 企業再生を軽く考えているという印象すら受ける ダイエ 再建の中心的な課題は総合量販店事業にある 総合量販店事業は スポンサ 候補のイオンやイト ヨ カ堂ですら 長年にわた て採算悪化に苦しんでおり 両社ともいまだにその解決方法を手にしていない まず何よりも 小売業態の中で最も苦しんでいるのが総合量販店だということを認識する必要がある どのような状態を再生と呼ぶのかも明確ではない マイカルは計画よりも大幅に早い二〇〇四年十二月に弁済を完了する見込みだ だが果問題として処理すべき案件だ た ところが再生機構が関与したことによ て 自由競争と企業責任を原則とする小売業界の競争は 不公平で不条理なものになることが決定的にな てしま た ダイエ と同じように破綻したマイカルは 最終的に会社更生法の手続きをと た そしてイオンの支援を受け 計画より大幅に短い二〇〇四年十二月をも て弁済債務の返済を完了するところまで漕ぎつけた ところがダイエ は 万策つきたにもかかわらず 当時は同社に融資していた銀行の体力が弱か たことから 破綻処理を先送りし 会社更生法による再建という道をとらなか た 報道の影響もあ て ダイエ は国策的な再生案件のような扱いを受けている しかし ダイエ の経営破綻の原因は 純粋に同社の経営に起因している にもかかわらず 銀行を筆頭に周囲への影響が大きすぎるというだけで 金融機関から手厚い支援を受け 再生機構という公的な機関が関与するのはおかしい ダイエ に対する債権放棄の総額は結局 約一兆円に達することにな た 筆者はダイエ の破綻が表面化した時点で一兆円の債権放棄が必要だろうと予想したが まさに的中した だが当時はどうだ たか 銀行は四〇〇〇億円程度と言い すぐに追加支援で上積みした上に さらに最終的に約六〇〇〇億円の債権放棄をするという 小出しに三回にわた た合計額が一兆円ということだ 61 FEBRUARY 2005もしダイエ を本当に再建するつもりであ たならば 破綻が表面化した時点で一兆円の債権放棄をすべきだ た 銀行は 破綻が表面化した時点で四〇〇〇億円程度の債権放棄をしても 再建が困難であることを承知で問題解決を先送りしたのだ 当時の小売業界の認識は 破綻が表面化した段階の債権放棄の規模の小ささから これでは再建は無理で ダイエ は実質的に終わ たと受け止められていた そして この認識は なぜダイエ だけが会社更生法の手続きをとらずに存続できるのか 自分たちが失敗しても債権放棄なんて期待できない 不公平だという声につなが ている ダイエ 問題の処理には二つの大きな問題がある 一つは一兆円にもなる債権放棄の金額の大きさ もう一つは 小売業はオ バ カンパニ という認識に立 た小売業界の構造改革の視点の欠如だ 借金の棒引きである債権放棄額の大きさが問題であるのは分かりやすい だが むしろ本当に問題なのは 大所高所にた た小売業界の構造改革の視点での議論がほとんどなか た点だ 一小売業の再建という課題にとらわれて 大義と哲学が不在の 各論ばかりが展開されてきたことが嘆かわしい ダイエ は潰すべきだ たのだ 手厚い看護を受けたダイエ が 強い競争力を持つ企業に生まれ変わ た時 ライバル企業は こんな不条理なことはない と言うだろう 日本の小売業界は 長年の規制行政の結果 自由競争が機能せず 中途半端な売上規模と効率の低い企業が群雄割拠する構造とな ている オ バ カンパニ の業界構造を見れば 自由競争の結果としての淘汰 統合 再編は不可欠だ この動きを人為的に停止したり 介入することは 流通構造全体の合理化に逆行し 生活者のためにもならない ダイエ は自らの失敗で経営破綻した 従 て そこに再生機構のような機関の介入は不要で 民間の手で 市場のル ルによ て処理されるべきであ た ダイエ を含む不良債権の処理は バブルの清算による出直しだ そのためには徹底したコスト構造の改革が不可欠で 会社更生法に基づく厳しい処理が望ましい しかし 再生機構が関与したことで 中途半端な再生になる恐れがある 構造改革の狙いからも外れかねない 再生機構の小売業界への介入には大いに違和感がある ダイエ に関して再生機構は 大所高所に立 て小売業界と流通構造変革の哲学を持 て動くというより ダイエ 処理そのものが目的化している感が強い 再生機構に関わる人たちの功名心やキ リアア プの場とな ているという実体からも ダイエ 処理の問題点を感じざるをえない 筆者は 最終的にイオン イト ヨ カ堂 そしてウ ルマ トの小売り三社グル プにスポンサ 候補は絞られると考えている その理由は 総合商社も 投資フ ンドも フ ストリテイリングなどの専門店も 不動産会社も ダイエ に対する関心と支援は部分的であり ダイエ 全体の再建を支援する力がないからだ ここに至 ては ダイエ 問題のメ ンの課題は財務リストラではなく 総合量販店とス パ マ ケ トで構成される小売業ダイエ をどう再建するかが重要だ 当然 そのためには資金の注入が必要になる このため投資フ ンドが絡むことは考えられるが だからと言 てダイエ 問題の初期の段階における財務リストラが最大の課題というわけではない あくまでも 小売業の再生に絡んだ財務という関係だ 図2 産業再生機構によるダイエー再建案 中核事業 非中核事業の売却 株主責任 資本注入(増資) 総合量販店 スーパーマーケット 情報システム投資 赤字店の閉鎖 金融機関に対する債権放棄と優先株の消却の要請 1総合量販店事業 2スーパーマーケット事業 3クレジットカード事業 百貨店、外食、リクルート株(10%)など60社を売却 (注:その結果、グループ会社は、合計110社から50社に減少する) 合計100店の赤字店のうち、53店を閉鎖 (注:47店は残る。
ダイエー全店舗数は263店) 普通株99%減資 5年間に合計100店出店。
投資額400億円 500億円 1,100 億円(再生機構が 500 億円。
うち 400 億円は非主力銀行から買い取った融資債権。
スポンサー 600 億円 )5,970億円 (注:ダイエーが受ける金融支援額は、3回合計約1兆円となる) 全 180 店のうち 150 店に対して、2 年間で 600 億円を投資。
出店は 2 年間凍結 FEBRUARY 2005 62も 自分たちの自由なやり方で再建できないのであれば手を退くこともありえる その一方で ウ ルマ トのこうした意志表明は 再生機構に対する揺さぶりとも考えられる 本当にダイエ を必要としているのであれば 再生機構の出資を渋々ながらも受け入れるはずだ ウ ルマ トが単独でダイエ を支配しようと思えば ダイエ が再生機構の手に移る前にそのチ ンスはあ た だが強い関心とは対照的に その時点では直接ダイエ にかかわろうとはしなか た ダイエ の事業内容の不透明さから 火中の栗を拾うような行動を避けたためと思われる ウ ルマ トは 西友の買収という形で日本進出を果たしたが 西友の売上高は業界ト プのイオンの半分にも程遠く 収益力も弱く ウ ルマ トが不満を感じているのは明らかだ 従 て 日本の小売業界における最大の売り物であるダイエ 獲得に動くのはわかりやすい しかし 一方でウ ルマ トは ビジネスに極めて厳しい企業だ とことんダイエ の面倒を見るという意味で適切な企業スポンサ であるかどうかには疑わしい点がある 西友は ウ ルマ トとの資本提携を発表した後 直近を含めて二度 債務超過を回避するための緊急増資を行 ている 一般的には ウ ルマ トとの資本提携によ て西友は資金的に盤石にな たと受け取られたが 同社の緊急増資要請に対するウ ルマ トの反応は全面的にバ クア プするというものではなか た ウ ルマ トのスポンサ 適性では スポンサ 企業を決定するうえでのキ ワ ドは何か それは雇用と地域経済への影響だろう スポンサ 企業の決定に際して再生機構は 公正中立な立場から スポンサ 候補に名乗りを上げた企業も納得できる説明をしなければならないのは当然だ このことからは スポンサ を一社に絞り込む決定的な理由を見出せなか たときに 複数のスポンサ 企業にダイエ を分割するという決定に至ることも考えられる 仮にそうな た場合は まとま た形でのダイエ 再建ではなく むしろ解体となり 大きな議論を呼ぶことは必至だろう いずれにしても再生機構は難しい立場に立たされている 筆者の想定する最終スポンサ 候補の三社には それぞれ一長一短がある まず 当初から最も強い関心を示していたウ ルマ トはどうか 同社は 直近ではダイエ の減資後の増資の際に再生機構が出資するという計画に対し スポンサ の自由裁量の余地を狭めるとして 候補から降りることも辞さないとまで言 ている 再生機構の出資については ウ ルマ トに限らず 他のスポンサ 候補や再生フ ンドも 撤退するかどうかはともかくとして同様の反応ではないか 当然のことながらウ ルマ トは ダイエ を西友と同様 最終的には子会社化することを狙 ている 再生機構の時限的な出資であ て図3 大手総合量販店の業態別売上規模 イオン イトーヨーカ堂 ダイエー 西友(10カ月決算) ユニー イオン関連 1兆9,806億円 イトーヨーカ堂 1兆4,940億円 ダイエー 1兆4,303億円 西友 6,443億円 ユニー 7,202億円マイカル関連 8,405億円 2兆8,211億円 1兆4,940億円 1兆4,303億円 6,443億円 7,202億円マックスバリュ関連 4,905億円 ヨークベニマル 2,798億円 マルエツ 3,321億円 西友関連 999億円 ユーストア 1,536億円カスミ 1,641億円 ヨークマート 961億円 セイフー 577億円 SSV 655億円 いなげや 1,823億円 サカエ サニー 682億円 8,369億円 3,759億円 3,898億円 2,336億円 1,536億円 3兆6,580億円 1兆8,699億円 1兆8,201億円 8,779億円 8,738億円総合量販店 (GMS) スーパーマーケット (SM) 総 合 計 小 計 小 計 63 FEBRUARY 2005また 西友に対する資本参加のスケジ ルも段階的で 途中でキ ンセルすることも可能なオプシ ン方式とな ている これをウ ルマ トの株主に対する姿勢と 日本企業にはないリスク管理のあらわれと見ることもできる ただ日本的な考え方からすれば 同社は面倒見のいいスポンサ とは必ずしも言えない ウ ルマ トに対するこのような懸念は ダイエ の労働組合の反応としてあらわれるはずだ ウ ルマ トは世界最大最強の小売業だが 従業員の大多数を占める時間外労働者に対する低賃金はアメリカ各地で問題にな ている 時間外労働に対する賃金未払いや 性差別問題などの労働訴訟も数多く抱えており 労働者に対してフレンドリ な企業ではない このことをダイエ の労働組合は知 ており ウ ルマ トを組合としては歓迎しない可能性が高い さらにウ ルマ トに関して最も考慮すべきは もしダイエ がウ ルマ トの手にわた たならば約一兆円弱の金融支援の後に外資に渡すことになるという点だ 旧日本長期信用銀行が アメリカの投資フ ンド リ プルウ ドに買収されて新生銀行に生まれ変わ たのとま たくプロセスが似ている 第二の新生銀行として厳しい批判を受けるのは必至だ このように考えていくと 一番熱心だ たウ ルマ トがダイエ 再建のスポンサ になるとは考えにくい だが欲しが ているウ ルマ トを排除したということになると これは日米間の問題になる ウ ルマ トは その影響力の大きさを利用して 進出国において積極的なロビ 活動を展開している 以前 ウ ルマ トの会長が来日したときには 小泉純一郎首相や旧通産省時代の平沼赳夫通産大臣と会 ている もしウ ルマ トがダイエ を手に入れることができなか たとき すでに資本参加している西友との関係に変化はないのか 場合によ ては西友から手を引くのではないかという見方もあり 今後の動向が注目される 豹変したイト ヨ カ堂イト ヨ カ堂は ある時点からダイエ 処理に対して積極的な姿勢をとるようにな た その後は 慎重で保守的な従来のイメ ジとは様変わりした動きが目立つ かつてマイカルが破綻したとき イト ヨ カ堂は極めて慎重な姿勢を崩さなか た 最終的にマイカルはイオンの手に渡 たが ヤオハンなどの企業再建の経験があるイオンが再建のスポンサ になることに違和感はなか た このためイト ヨ カ堂のマイカルに対する姿勢を批判する声はなく 収益力重視の脇の固い経営方針として改めてイト ヨ カ堂が見直された面すらあ た これに対して ダイエ 問題に対するイト ヨ カ堂の積極的な動きは 信じられないような大転換といえる 君子豹変すとい た感すらある あの慎重なイト ヨ カ堂が 再生機構の手が入るとはいえ リスクがあるダイエ に関わるのはなぜか そして ま たく経験がないのに かつての業界ト プ企業としての誇りなど独特のカルチ を持つダイエ を上手くコントロ ルできるのか イト ヨ カ堂はイオンに比べて外部のカルチ を受け入れる許容度が狭いと言われるが 株主はどう考えているのか 堅実でリスクが小さいというのがイト ヨ カ堂の特徴だ たはずだが リスクが一気に高まるのではないか イト ヨ カ堂の業績への影響はネガテ ブではないのか このようにして数え上げていくと イト ヨ カ堂のダイエ に対する積極的な姿勢はリスクが大きく しかも理解しにくいことが多い イト ヨ カ堂が買収や提携を積極化した背景には 創業者である伊藤名誉会長と その長男の伊藤専務が同社から去 たことがある これによ て鈴木敏文会長がイト ヨ カ堂グル プの実権を握り グル プ内の権力構造が変化したと考えられる ダイエ に対する積極姿勢は 全権を掌握した鈴木会長のリ ダ シ プのあらわれではないだろうか 別の観点からみると マイカル支援のときの反省の結果が ダイエ への積極的な関与につなが ているとも考えられる 真相はどうあれ 最後にして最大規模のオ クシ ンを 手をこまねいて見ているわけにはいかないということなのだろう ダイエ がどの会社の手に渡るかで 総合量販店とス パ マ ケ トの勢力図FEBRUARY 2005 64パ 会社設立の話があるとも聞いている 三井物産 三井不動産と並ぶと イト ヨ カ堂と三井グル プのつながりを改めて示す形となり この企業連合に意味を感じる向きもあるだろう しかし 実態はそんなに単純ではない 三井物産にはダイエ に出資する考えはなく 包括的提携先であるイト ヨ カ堂グル プとの取引を拡大したいという商社としてのビジネス関係を追求しているだけだ このため こういう形で名前が出ることを歓迎していないとも伝えられている 同じ連合を形成するフ ストリテイリング ユニクロ は テナント出店への関心から参加したと考えられる 総合商社や大手小売りのグル プ化 系列化的な動きが鮮明にな てきた中で フ ストリテイリングがイト ヨ カ堂連合に立 たことは興味深い 今後 フ ストリテイリングの出店に何らかの変化が生ずる可能性もあり注目される 店舗活用力と実績に秀でるイオンイオンは企業再建の実績が豊富で ダイエ の既存店舗の活用力と雇用継続力でも高い可能性を持つ ところが ダイエ 処理に関するイオンの姿勢は イト ヨ カ堂に比べるとず とおとなしい 企業連合を組むパ トナ についても ダイエ との関わりの薄い京セラとの組み合わせは華やかさに欠けるように見えるかもしれない しかし 玄人眼には イオンが最もダイエ 再建の力を持 ていると映る が決定的になるのは間違いないためだ それにしてもイト ヨ カ堂は ダイエ の総合量販店のうち どれだけの数の店舗を活用するつもりなのだろうか イト ヨ カ堂の基本的なスタンスである収益力 つまり儲かる店中心に考えれば三〇店ぐらいという数字が当初 イト ヨ カ堂サイドから流れた さすがに利益重視のイト ヨ カ堂という評価だ たが イオンやウ ルマ トと競う以上 三〇店では明らかにスポンサ になるのは難しい ウ ルマ トは一〇〇店舗を活かせると伝わ てきている 一方 イト ヨ カ堂の場合は 基準を緩めたところで単独では五〇店程度どまりではないか そうなると広島のイズミのような イト ヨ カ堂に近いリ ジ ナルチ ンと連携することも考えられる いままで表面化していなか たリ ジ ナルチ ンの名が浮上する可能性もある いずれにしても 総合量販店についてイト ヨ カ堂が何店舗を活用できるかどうかがカギになる そして 同社が従来通り儲かる店にこだわるのであれば スポンサ に選ばれる可能性は低くなる イト ヨ カ堂連合で注目されるのは 包括的な提携関係にある三井物産が名を連ねていることだ デ ベロ パ の三井不動産の参加も注目される イト ヨ カ堂は イオンのイオンモ ルとダイヤモンドシテ のような商業デ ベロ パ 企業を持 ていない 三井グル プと連携を深めていくなかで三井物産との間でデ ベロ 消極的に思えるほどイオンが静かなのには ひとつ分かりやすい理由がある 民主党の岡田克也代表がイオンの岡田元也社長の弟で 民主党の岡田代表の奥さんが自民党代議士と姻戚関係にある点だ この代議士がダイエ 問題とも関わりを持 ていることから 政治的な問題に発展することを恐れて一切発言しないようにしていると思われる また イオンが他社のように連合を組まないのは これまでの経験から 企業再建は一社がやるものと考えていて この原則を貫いているからだろう イオングル プにはデ ベロ パ があるため専門店との強いつながりを持 ている とくに連合を組まなくても グル プ企業や友好関係にある外部企業との連携によ て問題に対応できると考えているはずだ 京セラとの連合も イオンから提案したものではなく 稲盛名誉会長から岡田社長あての電話で決ま たものだという 京セラには流通との接点はほとんどないが 企業再建には実績がある 今回の関与は創業者の稲盛名誉会長の意向によるものと伝えられているが ダイエ の関西地区の店舗を見て ダイエ の力はこんなものではない と感じたことがイオンへの連合の申し入れにつなが たようだ イオン・京セラ連合はきらびやかではないが 両社とも企業再建の豊富な実績を持 ている そして再建企業自身の現場力と人間力を企業再生の源泉とする点で共通している その意味でイオン・京セラ連合には この案件を処理する65 FEBRUARY 2005力があり とくに活用店舗の数 すなわち雇用力を考えれば他のスポンサ 候補より頭ひとつ抜け出している ただ イオンがスポンサ にな た場合の最大の懸念材料は 小売業界の勢力バランスが圧倒的にイオン一社に傾いてしまうことだ 再生機構は政治的な判断をする立場にはないが スポンサ 決定の際にこの点が微妙に働く可能性もある ダイエ のスポンサ 選定は 総合量販店とス パ マ ケ ト業界の勢力バランスを決する まさに天王山的な意味を持 ている 日本の小売史上 最大の買収案件だ スポンサ が決まれば地方ス パ の再編に直結するはずだ その結果 大手小売りに総合商社と卸がつらなる系列化 グル プ化が一段と進む このようにして小売業の巨大化が進めば メ カ と小売業の関係は大きく変わらざるを得ない そのときの端的なテ マが メ カ と小売りによる直接取引だ ダイエ のスポンサ 企業の選定は 日本の小売業界と流通構造の大変革のはじまりとなる すずき・たかゆき 東京外国語大学卒業 一九六八年西友入社 店長 シカゴ駐在事務所長などを経て 八九年バ クレ ズ証券に入社しアナリストに転身 九〇年メリルリンチ証券入社 小売業界担当アナリストとして日経アナリストランキングで総合部門第二位が二回 小売部門第一位が三回と常に上位にランクインし 調査部のフ ストバイスプレデント シニアアナリストを最後に二〇〇三年に独立 現在はプリモ・リサ チ・ジ パン代表 著書に イオングル プの大変革 日本実業出版社 ほか 週刊誌などでの執筆多数
丸紅は表中の連合から離脱し、新たにアドバンテッジと連合を組み直した。
また、カーギル連合にはアークスが参加して二次入札に応札した(編集部) FEBRUARY 2005 60たして これを再生と呼べるだろうか 弁済は家賃などを大幅にカ トしたことによるもので 営業力のためでは決してないことを知るべきだ リストラ効果によ て利益が残 ているだけであり これからは競争力強化のための投資が必要となる マイカルが本当に再生したと言えるのは まだ先のことだろう このようにして考えると 総合量販店事業の再建が欠かせないダイエ の案件は 比較的短期の投資リタ ンを求める投資フ ンドになじむ案件ではない にもかかわらず 多くの投資フ ンドの名前が挙が ているのは ダイエ という小売業の再生と 再生機構によるスポンサ の選定手法が本質的に合 ていないことを示唆している 金融危機で歪められたダイエ 問題ダイエ 問題の処理は 自主再建か 再生機構の支援を仰ぐかで最後の最後まで大きくもめた その挙句 再生機構が支援して金融機関への債権放棄などの処理を施した後に スポンサ 企業に手渡すことが決ま た いまさら この道筋を白紙に戻すのは現実的ではない しかし ダイエ という破綻した一私企業の再建に 国策的な再建案件として再生機構が関わ たことの問題点は指摘しておくべきだろう 再生機構が関わるダイエ の再建は 戦後の官主導型行政の延長線にある 本来であればダイエ の破綻が表面化した初期の段階で 民の一社であることが望ましい もし複数企業が出資するようなことになれば 再建の方向性が不明確になりかねないからだ 破綻企業の再建に民主的な手法はなじまない 複数企業が参加する方式では スポンサ を目指す企業が再建の主導権を握れない事態を恐れて スポンサ になる熱意を失いかねない 有力スポンサ 候補が降りてしまうことも考えられる 総合商社や再生フ ンドなどを広く取り込もうとする再生機構のやり方は 企業再建の本質を無視した お役所的 な仕事に映る こうした問題は 再生機構という期間限定の公的機関を受け皿としたことから発している 破綻したダイエ の再建が 民間によ て 市場によ て行われていれば 現状よりず と明快な展開にな ていたはずだ きらびやかなスポンサ 候補の顔ぶれからは ダイエ が完全にマネ ゲ ムの対象にな ていることがうかがえる 企業再生を軽く考えているという印象すら受ける ダイエ 再建の中心的な課題は総合量販店事業にある 総合量販店事業は スポンサ 候補のイオンやイト ヨ カ堂ですら 長年にわた て採算悪化に苦しんでおり 両社ともいまだにその解決方法を手にしていない まず何よりも 小売業態の中で最も苦しんでいるのが総合量販店だということを認識する必要がある どのような状態を再生と呼ぶのかも明確ではない マイカルは計画よりも大幅に早い二〇〇四年十二月に弁済を完了する見込みだ だが果問題として処理すべき案件だ た ところが再生機構が関与したことによ て 自由競争と企業責任を原則とする小売業界の競争は 不公平で不条理なものになることが決定的にな てしま た ダイエ と同じように破綻したマイカルは 最終的に会社更生法の手続きをと た そしてイオンの支援を受け 計画より大幅に短い二〇〇四年十二月をも て弁済債務の返済を完了するところまで漕ぎつけた ところがダイエ は 万策つきたにもかかわらず 当時は同社に融資していた銀行の体力が弱か たことから 破綻処理を先送りし 会社更生法による再建という道をとらなか た 報道の影響もあ て ダイエ は国策的な再生案件のような扱いを受けている しかし ダイエ の経営破綻の原因は 純粋に同社の経営に起因している にもかかわらず 銀行を筆頭に周囲への影響が大きすぎるというだけで 金融機関から手厚い支援を受け 再生機構という公的な機関が関与するのはおかしい ダイエ に対する債権放棄の総額は結局 約一兆円に達することにな た 筆者はダイエ の破綻が表面化した時点で一兆円の債権放棄が必要だろうと予想したが まさに的中した だが当時はどうだ たか 銀行は四〇〇〇億円程度と言い すぐに追加支援で上積みした上に さらに最終的に約六〇〇〇億円の債権放棄をするという 小出しに三回にわた た合計額が一兆円ということだ 61 FEBRUARY 2005もしダイエ を本当に再建するつもりであ たならば 破綻が表面化した時点で一兆円の債権放棄をすべきだ た 銀行は 破綻が表面化した時点で四〇〇〇億円程度の債権放棄をしても 再建が困難であることを承知で問題解決を先送りしたのだ 当時の小売業界の認識は 破綻が表面化した段階の債権放棄の規模の小ささから これでは再建は無理で ダイエ は実質的に終わ たと受け止められていた そして この認識は なぜダイエ だけが会社更生法の手続きをとらずに存続できるのか 自分たちが失敗しても債権放棄なんて期待できない 不公平だという声につなが ている ダイエ 問題の処理には二つの大きな問題がある 一つは一兆円にもなる債権放棄の金額の大きさ もう一つは 小売業はオ バ カンパニ という認識に立 た小売業界の構造改革の視点の欠如だ 借金の棒引きである債権放棄額の大きさが問題であるのは分かりやすい だが むしろ本当に問題なのは 大所高所にた た小売業界の構造改革の視点での議論がほとんどなか た点だ 一小売業の再建という課題にとらわれて 大義と哲学が不在の 各論ばかりが展開されてきたことが嘆かわしい ダイエ は潰すべきだ たのだ 手厚い看護を受けたダイエ が 強い競争力を持つ企業に生まれ変わ た時 ライバル企業は こんな不条理なことはない と言うだろう 日本の小売業界は 長年の規制行政の結果 自由競争が機能せず 中途半端な売上規模と効率の低い企業が群雄割拠する構造とな ている オ バ カンパニ の業界構造を見れば 自由競争の結果としての淘汰 統合 再編は不可欠だ この動きを人為的に停止したり 介入することは 流通構造全体の合理化に逆行し 生活者のためにもならない ダイエ は自らの失敗で経営破綻した 従 て そこに再生機構のような機関の介入は不要で 民間の手で 市場のル ルによ て処理されるべきであ た ダイエ を含む不良債権の処理は バブルの清算による出直しだ そのためには徹底したコスト構造の改革が不可欠で 会社更生法に基づく厳しい処理が望ましい しかし 再生機構が関与したことで 中途半端な再生になる恐れがある 構造改革の狙いからも外れかねない 再生機構の小売業界への介入には大いに違和感がある ダイエ に関して再生機構は 大所高所に立 て小売業界と流通構造変革の哲学を持 て動くというより ダイエ 処理そのものが目的化している感が強い 再生機構に関わる人たちの功名心やキ リアア プの場とな ているという実体からも ダイエ 処理の問題点を感じざるをえない 筆者は 最終的にイオン イト ヨ カ堂 そしてウ ルマ トの小売り三社グル プにスポンサ 候補は絞られると考えている その理由は 総合商社も 投資フ ンドも フ ストリテイリングなどの専門店も 不動産会社も ダイエ に対する関心と支援は部分的であり ダイエ 全体の再建を支援する力がないからだ ここに至 ては ダイエ 問題のメ ンの課題は財務リストラではなく 総合量販店とス パ マ ケ トで構成される小売業ダイエ をどう再建するかが重要だ 当然 そのためには資金の注入が必要になる このため投資フ ンドが絡むことは考えられるが だからと言 てダイエ 問題の初期の段階における財務リストラが最大の課題というわけではない あくまでも 小売業の再生に絡んだ財務という関係だ 図2 産業再生機構によるダイエー再建案 中核事業 非中核事業の売却 株主責任 資本注入(増資) 総合量販店 スーパーマーケット 情報システム投資 赤字店の閉鎖 金融機関に対する債権放棄と優先株の消却の要請 1総合量販店事業 2スーパーマーケット事業 3クレジットカード事業 百貨店、外食、リクルート株(10%)など60社を売却 (注:その結果、グループ会社は、合計110社から50社に減少する) 合計100店の赤字店のうち、53店を閉鎖 (注:47店は残る。
ダイエー全店舗数は263店) 普通株99%減資 5年間に合計100店出店。
投資額400億円 500億円 1,100 億円(再生機構が 500 億円。
うち 400 億円は非主力銀行から買い取った融資債権。
スポンサー 600 億円 )5,970億円 (注:ダイエーが受ける金融支援額は、3回合計約1兆円となる) 全 180 店のうち 150 店に対して、2 年間で 600 億円を投資。
出店は 2 年間凍結 FEBRUARY 2005 62も 自分たちの自由なやり方で再建できないのであれば手を退くこともありえる その一方で ウ ルマ トのこうした意志表明は 再生機構に対する揺さぶりとも考えられる 本当にダイエ を必要としているのであれば 再生機構の出資を渋々ながらも受け入れるはずだ ウ ルマ トが単独でダイエ を支配しようと思えば ダイエ が再生機構の手に移る前にそのチ ンスはあ た だが強い関心とは対照的に その時点では直接ダイエ にかかわろうとはしなか た ダイエ の事業内容の不透明さから 火中の栗を拾うような行動を避けたためと思われる ウ ルマ トは 西友の買収という形で日本進出を果たしたが 西友の売上高は業界ト プのイオンの半分にも程遠く 収益力も弱く ウ ルマ トが不満を感じているのは明らかだ 従 て 日本の小売業界における最大の売り物であるダイエ 獲得に動くのはわかりやすい しかし 一方でウ ルマ トは ビジネスに極めて厳しい企業だ とことんダイエ の面倒を見るという意味で適切な企業スポンサ であるかどうかには疑わしい点がある 西友は ウ ルマ トとの資本提携を発表した後 直近を含めて二度 債務超過を回避するための緊急増資を行 ている 一般的には ウ ルマ トとの資本提携によ て西友は資金的に盤石にな たと受け取られたが 同社の緊急増資要請に対するウ ルマ トの反応は全面的にバ クア プするというものではなか た ウ ルマ トのスポンサ 適性では スポンサ 企業を決定するうえでのキ ワ ドは何か それは雇用と地域経済への影響だろう スポンサ 企業の決定に際して再生機構は 公正中立な立場から スポンサ 候補に名乗りを上げた企業も納得できる説明をしなければならないのは当然だ このことからは スポンサ を一社に絞り込む決定的な理由を見出せなか たときに 複数のスポンサ 企業にダイエ を分割するという決定に至ることも考えられる 仮にそうな た場合は まとま た形でのダイエ 再建ではなく むしろ解体となり 大きな議論を呼ぶことは必至だろう いずれにしても再生機構は難しい立場に立たされている 筆者の想定する最終スポンサ 候補の三社には それぞれ一長一短がある まず 当初から最も強い関心を示していたウ ルマ トはどうか 同社は 直近ではダイエ の減資後の増資の際に再生機構が出資するという計画に対し スポンサ の自由裁量の余地を狭めるとして 候補から降りることも辞さないとまで言 ている 再生機構の出資については ウ ルマ トに限らず 他のスポンサ 候補や再生フ ンドも 撤退するかどうかはともかくとして同様の反応ではないか 当然のことながらウ ルマ トは ダイエ を西友と同様 最終的には子会社化することを狙 ている 再生機構の時限的な出資であ て図3 大手総合量販店の業態別売上規模 イオン イトーヨーカ堂 ダイエー 西友(10カ月決算) ユニー イオン関連 1兆9,806億円 イトーヨーカ堂 1兆4,940億円 ダイエー 1兆4,303億円 西友 6,443億円 ユニー 7,202億円マイカル関連 8,405億円 2兆8,211億円 1兆4,940億円 1兆4,303億円 6,443億円 7,202億円マックスバリュ関連 4,905億円 ヨークベニマル 2,798億円 マルエツ 3,321億円 西友関連 999億円 ユーストア 1,536億円カスミ 1,641億円 ヨークマート 961億円 セイフー 577億円 SSV 655億円 いなげや 1,823億円 サカエ サニー 682億円 8,369億円 3,759億円 3,898億円 2,336億円 1,536億円 3兆6,580億円 1兆8,699億円 1兆8,201億円 8,779億円 8,738億円総合量販店 (GMS) スーパーマーケット (SM) 総 合 計 小 計 小 計 63 FEBRUARY 2005また 西友に対する資本参加のスケジ ルも段階的で 途中でキ ンセルすることも可能なオプシ ン方式とな ている これをウ ルマ トの株主に対する姿勢と 日本企業にはないリスク管理のあらわれと見ることもできる ただ日本的な考え方からすれば 同社は面倒見のいいスポンサ とは必ずしも言えない ウ ルマ トに対するこのような懸念は ダイエ の労働組合の反応としてあらわれるはずだ ウ ルマ トは世界最大最強の小売業だが 従業員の大多数を占める時間外労働者に対する低賃金はアメリカ各地で問題にな ている 時間外労働に対する賃金未払いや 性差別問題などの労働訴訟も数多く抱えており 労働者に対してフレンドリ な企業ではない このことをダイエ の労働組合は知 ており ウ ルマ トを組合としては歓迎しない可能性が高い さらにウ ルマ トに関して最も考慮すべきは もしダイエ がウ ルマ トの手にわた たならば約一兆円弱の金融支援の後に外資に渡すことになるという点だ 旧日本長期信用銀行が アメリカの投資フ ンド リ プルウ ドに買収されて新生銀行に生まれ変わ たのとま たくプロセスが似ている 第二の新生銀行として厳しい批判を受けるのは必至だ このように考えていくと 一番熱心だ たウ ルマ トがダイエ 再建のスポンサ になるとは考えにくい だが欲しが ているウ ルマ トを排除したということになると これは日米間の問題になる ウ ルマ トは その影響力の大きさを利用して 進出国において積極的なロビ 活動を展開している 以前 ウ ルマ トの会長が来日したときには 小泉純一郎首相や旧通産省時代の平沼赳夫通産大臣と会 ている もしウ ルマ トがダイエ を手に入れることができなか たとき すでに資本参加している西友との関係に変化はないのか 場合によ ては西友から手を引くのではないかという見方もあり 今後の動向が注目される 豹変したイト ヨ カ堂イト ヨ カ堂は ある時点からダイエ 処理に対して積極的な姿勢をとるようにな た その後は 慎重で保守的な従来のイメ ジとは様変わりした動きが目立つ かつてマイカルが破綻したとき イト ヨ カ堂は極めて慎重な姿勢を崩さなか た 最終的にマイカルはイオンの手に渡 たが ヤオハンなどの企業再建の経験があるイオンが再建のスポンサ になることに違和感はなか た このためイト ヨ カ堂のマイカルに対する姿勢を批判する声はなく 収益力重視の脇の固い経営方針として改めてイト ヨ カ堂が見直された面すらあ た これに対して ダイエ 問題に対するイト ヨ カ堂の積極的な動きは 信じられないような大転換といえる 君子豹変すとい た感すらある あの慎重なイト ヨ カ堂が 再生機構の手が入るとはいえ リスクがあるダイエ に関わるのはなぜか そして ま たく経験がないのに かつての業界ト プ企業としての誇りなど独特のカルチ を持つダイエ を上手くコントロ ルできるのか イト ヨ カ堂はイオンに比べて外部のカルチ を受け入れる許容度が狭いと言われるが 株主はどう考えているのか 堅実でリスクが小さいというのがイト ヨ カ堂の特徴だ たはずだが リスクが一気に高まるのではないか イト ヨ カ堂の業績への影響はネガテ ブではないのか このようにして数え上げていくと イト ヨ カ堂のダイエ に対する積極的な姿勢はリスクが大きく しかも理解しにくいことが多い イト ヨ カ堂が買収や提携を積極化した背景には 創業者である伊藤名誉会長と その長男の伊藤専務が同社から去 たことがある これによ て鈴木敏文会長がイト ヨ カ堂グル プの実権を握り グル プ内の権力構造が変化したと考えられる ダイエ に対する積極姿勢は 全権を掌握した鈴木会長のリ ダ シ プのあらわれではないだろうか 別の観点からみると マイカル支援のときの反省の結果が ダイエ への積極的な関与につなが ているとも考えられる 真相はどうあれ 最後にして最大規模のオ クシ ンを 手をこまねいて見ているわけにはいかないということなのだろう ダイエ がどの会社の手に渡るかで 総合量販店とス パ マ ケ トの勢力図FEBRUARY 2005 64パ 会社設立の話があるとも聞いている 三井物産 三井不動産と並ぶと イト ヨ カ堂と三井グル プのつながりを改めて示す形となり この企業連合に意味を感じる向きもあるだろう しかし 実態はそんなに単純ではない 三井物産にはダイエ に出資する考えはなく 包括的提携先であるイト ヨ カ堂グル プとの取引を拡大したいという商社としてのビジネス関係を追求しているだけだ このため こういう形で名前が出ることを歓迎していないとも伝えられている 同じ連合を形成するフ ストリテイリング ユニクロ は テナント出店への関心から参加したと考えられる 総合商社や大手小売りのグル プ化 系列化的な動きが鮮明にな てきた中で フ ストリテイリングがイト ヨ カ堂連合に立 たことは興味深い 今後 フ ストリテイリングの出店に何らかの変化が生ずる可能性もあり注目される 店舗活用力と実績に秀でるイオンイオンは企業再建の実績が豊富で ダイエ の既存店舗の活用力と雇用継続力でも高い可能性を持つ ところが ダイエ 処理に関するイオンの姿勢は イト ヨ カ堂に比べるとず とおとなしい 企業連合を組むパ トナ についても ダイエ との関わりの薄い京セラとの組み合わせは華やかさに欠けるように見えるかもしれない しかし 玄人眼には イオンが最もダイエ 再建の力を持 ていると映る が決定的になるのは間違いないためだ それにしてもイト ヨ カ堂は ダイエ の総合量販店のうち どれだけの数の店舗を活用するつもりなのだろうか イト ヨ カ堂の基本的なスタンスである収益力 つまり儲かる店中心に考えれば三〇店ぐらいという数字が当初 イト ヨ カ堂サイドから流れた さすがに利益重視のイト ヨ カ堂という評価だ たが イオンやウ ルマ トと競う以上 三〇店では明らかにスポンサ になるのは難しい ウ ルマ トは一〇〇店舗を活かせると伝わ てきている 一方 イト ヨ カ堂の場合は 基準を緩めたところで単独では五〇店程度どまりではないか そうなると広島のイズミのような イト ヨ カ堂に近いリ ジ ナルチ ンと連携することも考えられる いままで表面化していなか たリ ジ ナルチ ンの名が浮上する可能性もある いずれにしても 総合量販店についてイト ヨ カ堂が何店舗を活用できるかどうかがカギになる そして 同社が従来通り儲かる店にこだわるのであれば スポンサ に選ばれる可能性は低くなる イト ヨ カ堂連合で注目されるのは 包括的な提携関係にある三井物産が名を連ねていることだ デ ベロ パ の三井不動産の参加も注目される イト ヨ カ堂は イオンのイオンモ ルとダイヤモンドシテ のような商業デ ベロ パ 企業を持 ていない 三井グル プと連携を深めていくなかで三井物産との間でデ ベロ 消極的に思えるほどイオンが静かなのには ひとつ分かりやすい理由がある 民主党の岡田克也代表がイオンの岡田元也社長の弟で 民主党の岡田代表の奥さんが自民党代議士と姻戚関係にある点だ この代議士がダイエ 問題とも関わりを持 ていることから 政治的な問題に発展することを恐れて一切発言しないようにしていると思われる また イオンが他社のように連合を組まないのは これまでの経験から 企業再建は一社がやるものと考えていて この原則を貫いているからだろう イオングル プにはデ ベロ パ があるため専門店との強いつながりを持 ている とくに連合を組まなくても グル プ企業や友好関係にある外部企業との連携によ て問題に対応できると考えているはずだ 京セラとの連合も イオンから提案したものではなく 稲盛名誉会長から岡田社長あての電話で決ま たものだという 京セラには流通との接点はほとんどないが 企業再建には実績がある 今回の関与は創業者の稲盛名誉会長の意向によるものと伝えられているが ダイエ の関西地区の店舗を見て ダイエ の力はこんなものではない と感じたことがイオンへの連合の申し入れにつなが たようだ イオン・京セラ連合はきらびやかではないが 両社とも企業再建の豊富な実績を持 ている そして再建企業自身の現場力と人間力を企業再生の源泉とする点で共通している その意味でイオン・京セラ連合には この案件を処理する65 FEBRUARY 2005力があり とくに活用店舗の数 すなわち雇用力を考えれば他のスポンサ 候補より頭ひとつ抜け出している ただ イオンがスポンサ にな た場合の最大の懸念材料は 小売業界の勢力バランスが圧倒的にイオン一社に傾いてしまうことだ 再生機構は政治的な判断をする立場にはないが スポンサ 決定の際にこの点が微妙に働く可能性もある ダイエ のスポンサ 選定は 総合量販店とス パ マ ケ ト業界の勢力バランスを決する まさに天王山的な意味を持 ている 日本の小売史上 最大の買収案件だ スポンサ が決まれば地方ス パ の再編に直結するはずだ その結果 大手小売りに総合商社と卸がつらなる系列化 グル プ化が一段と進む このようにして小売業の巨大化が進めば メ カ と小売業の関係は大きく変わらざるを得ない そのときの端的なテ マが メ カ と小売りによる直接取引だ ダイエ のスポンサ 企業の選定は 日本の小売業界と流通構造の大変革のはじまりとなる すずき・たかゆき 東京外国語大学卒業 一九六八年西友入社 店長 シカゴ駐在事務所長などを経て 八九年バ クレ ズ証券に入社しアナリストに転身 九〇年メリルリンチ証券入社 小売業界担当アナリストとして日経アナリストランキングで総合部門第二位が二回 小売部門第一位が三回と常に上位にランクインし 調査部のフ ストバイスプレデント シニアアナリストを最後に二〇〇三年に独立 現在はプリモ・リサ チ・ジ パン代表 著書に イオングル プの大変革 日本実業出版社 ほか 週刊誌などでの執筆多数
