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2013年11月号
SOLE

リスクマネジメントへの取り組み

SOLE 日本支部の報告 NOVEMBER 2013  82 構成要素を追加、削除、 変更し、諸資源を見積 もり、資源調達に工夫 を凝らす。
さらには想 定されるあらゆる事態 を棚卸しして、対応策 を練る。
 リスクマネジメント の観点は、この実行可 能性を検証する一つの 手掛かりになると我々 は考える。
また、GS C再構築とは業務改革 であり、業務をリスク という観点から見直す ことも有益と考えてい る。
 我々はG S C 再構 築を、現行(As─I s)の業務をあるべき 姿(To─Be)に変換 し、「事業・仕事を磨く」ことだとと らえている。
「As─Is」から「T o─Be」への変換には既存のコンセ プトや技法(JIT、TQC、TQ M、CM、SE、IE、LCC、C E等々)、生産技術、保全技術、数 理統計、ORなどの共通工学等を活 用・援用するだろうし、原子力、鉄 道、航空、機械、化学、流通、サー ビスなどの各業界の知見も採り入れる ことになるだろう。
 SOLE日本支部ではこれまで、 「ロジスティクス基盤技術」、「業種別 RAMS」、「グローバルサプライチ ェーン(GSC)再構築実践ガイド」、 「モデル化」等について、それぞれ分 科会を組織して研究に取り組んでき た。
今期からそこに「リスクマネジメ ント」が加わることになった。
これに 合わせて八月十三日にトークセッショ ンを開催したので、その概要を紹介 する。
 同トークセッションは、「I S O 31000(リスクマネジメント規 格)」、「GSC再構築とリスクマネジ メント」、「リスクの特性」、「ダイセ ル生産方式」、「海外展開と現地化の 課題」といったテーマをパネリストが それぞれ分担し、その研究結果を報 告するとともに、ロジスティクスの諸 課題とリスクマネジメントがどのよう に関わり、リスクマネジメントから何 を学ぶべきかについて、全員で討議す るかたちで進められた。
(傳田晴久) リスクマネジメント研究の目的  我々SOLE日本支部では現在、 グローバルサプライチェーン(GSC) 再構築のためのガイドラインの作成に 取り組んでいるが、GSCとは一つ のシステムであり、そしてシステムを 設計、構築、運用する際に欠かせな い課題が「システム評価」である。
目 標システムの設定、概要設計、詳細 設計、構築計画立案、システム構築、 モニタリング等全ての段階にシステム 評価がつきまとう。
 システム評価は通常、三つの視点 から行われる。
一つ目の視点は「目 的・願望」である。
そのシステムで 何をやりたいのかを問う。
二つ目は 「価値」である。
そのシステムの費用 対効果を検証する。
そして目的と価 値が確認された後、改めてそのシステ ムを構築し、移行し、運用すること ができるのか、その「可能性」を問 うであろう(図1)。
 フィージビリティスタデイ(実行可 能性の検証)を行うのはそのためであ る。
フィージビリティスタデイの目的 は、調査の結果、そのシステムの実現 が困難であると分かったら止めてしま うということではなく、どのように すれば実現できるかを探ることにある。
そのためにシステムの構造を変えたり、 リスクマネジメントへの取り組み  さらにはISO、JIS、MIL などの規格、標準類も参照する必要 がある(図2)。
とりわけ国際規格に は着目したい。
国際規格は世界の知 見を集約して構成されている。
活用し ない手はない。
その一つにリスクマネ ジメント規格の「ISO31000」 がある。
リスクマネジメントとは何か  一般にリスクマネジメントは「危機 図1 システム評価(3つの視点) このシステムの目 的は何で、それは やりたいことか? このシステムはや るべきことか? (費用対効果性) このシステムはど うすれば実現でき るか(フィージビリ ティスタデイ) 国際規格・標準対応  ISO9000シリーズ・品質  ISO14000 環境  ISO31000 リスクマネジメント 業界業種標準対応 経済社会規範対応  企業の社会的責任  国際会計 諸資源見積り 評価1:目的・願望 評価2:価値機能 評価3:可能性 入力 出力 製品(サービス)を 実現するプロセス (業務マップ) キャタリスト 83  NOVEMBER 2013  一方、後者の顕在リスクは「完全 回避リスク(運用が終わるまで対策に より発生させないリスク)」、「発生時 期顕在リスク(予測する発生時期に処 置を施し回避するリスク)」、「発生時 期模索リスク(発生は予測されるもの の時期が不明であり状態を継続監視 するリスク)」に分けられる。
 これらのリスクは多くの場合、装置 やシステムを実際に運用しているオペ レーターの長年の経験を聞き出すこと によって発掘することができる。
事業再構築の要点  我々SOLE日本支部は八月十三 日のトークセッションにおいて「事業 再構築とリスクマネジメント」につい て議論、意見交換した結果、事業再 構築の際にリスクマネジメントの視点 から考慮すべき事項として以下の四 項目をとりまとめた。
事業の継続性確保のために ライフサイクルマネジメントを  事業とは一つのシステムであり、そ のライフサイクルは事業の企画段階か ら始まり、事業設計、事業構築・展 開、事業の運営、事業廃棄段階へと 進む(図4)。
 米国国防調達大学(DAU)のテ キストには「ロジスティクス・ライフ サイクル・マネジメント・システム」 組織経営における判断は、ポジティブ な影響を主体として計画が立てられる 場合が多く、ネガティブな影響を小さ くするという視点だけでリスクマネジ メントをとらえていては、必ずしも最 適な経営判断ができなくなっているこ とが指摘されるようになってきた。
 これを受けて〇九年十一月一五日 に発行された「ISO31000(リ スクマネジメント規格)」では、好ま しくない影響と好ましい影響を共に リスクとして扱うことにより、リスク マネジメントの有効性を拡大しようと している。
「リスクの最適化」という 概念である(『リスクマネジメントの 実践ガイド』三菱総合研究所)。
 リスクには「潜在性(常に新たな リスクが発現する)」、「再発性(過去 のリスクは将来においても類似のリス クとして発生する)」、「変容性(将来 のリスクは過去のリスクから変化して 発生する)」という三つの特性がある。
 またリスクは「潜在リスク」と「顕 在リスク」に分けてとらえることがで きる(図3)。
前者の潜在リスクはさ らに「完全潜在リスク(運用が終わる まで現れることがないリスク)」、「兆 候発見リスク(運用中に予期せぬ異常 として不具合に至る前に発見されるリ スク)」、「未然防止不可リスク(運用 中に不具合として発見されるリスク)」 に分けられる。
管理」、「危険管理」、「リスク管理」 などと訳されているが、その意味す るところは「経営活動に生じる様々 な危険を最小の費用で最小限に抑え ようとする管理手法」(小学館のデジ タル大辞典)である。
 それではリスクとは何か? 様々 な定義があるが、一般的には、「ある 行動に伴って(あるいは行動しない ことによって)、危険に遭う可能性や 損をする可能性を意味する概念」で あり、日本語では「ハザード(ha zzard)」や「危険性」などと訳 される。
 「リスク=ハザード」という考え方 もあるが、厳密にはハザードとは潜在 的に危険の原因となり得るものを指し、 リスクとはハザードとそれが現実の危 険となる可能性を組み合わせた概念で ある。
つまりハザードがあるとしても、 それがほとんど起こり得ない場合には リスクは低い。
一方、発生確率は低 くても起こった場合の結果が甚大であ れば、リスクは高いということになる。
 国際規格におけるリスクの定義は、 二〇〇二年に発行された「ISO/IEC Guide 73」で変更されて、これに伴 いリスクマネジメントの意味が大きく 変化したとされる。
 さらに従来のリスクマネジメントで は、好ましくない影響を管理すること の重要性が強調されてきたが、実際の 図2 事業・仕事を磨く 共通工学 生産、保全 OR、情報技術 分野別工学 原子力、鉄道 機械、化学 規格・標準類 ISO、JIS、 業界規格 など As-Is (現状システム) To-Be 事業・仕事を磨く (理想システム) コンセプト・技法 JIT、TQC、TQM CM、SE、LCC CE、IE、VE 図3 運用上のリスク分類 運用上のリスク 潜在リスク 顕在リスク 完全潜在リスク 兆候発見リスク 未然防止不可リスク 完全回避リスク 発生時期顕在リスク 発生時期模索リスク として、国防装備品の調達システム の流れを示し、フェーズごとに検証と 意思決定ポイントを設けている。
 それぞれのフェーズにおいてライフ サイクル上に想定されるリスク(事業 継続を阻害する要因)を徹底抽出し、 リスクの可能性と影響度合いを分析 し、事前にリスクを抑止する対策や発 生時の対策を事前に講ずるのである。
 事業を取り巻く条件、環境がいか に変化しようとも、事業の成果を出 し続けるためには、そのような事業 のライフサイクルマネジメントが必要 である。
オペレーションレベルの 業務設計をすべし  想定されるリスクへの対応をどのよ うに定義するか。
組織体が組織的な 活動を整斉と行うには、その活動の あり方、仕事のやり方を事前に正式 に決めておかなければならない。
そ の具体例がマニュアルである。
 マニュアルを事前定義とすれば、 マニュアル化されていない習慣的な仕 事のやり方や先輩から後輩に伝承さ れたものは事後定義と呼び得るであ ろう。
事後定義の場合、人が替わる ことでやり方も変わってしまう。
業務 が不安定になり、伝承、教育、訓練 が難しくなるので、文書化、見える 化は必要である。
 しかし、一般に業務設計のレベル は粗い。
網の目に例えれば隙間が大き い。
この粗い網の目を埋めるのに効果 的であったのが、小集団活動である。
業務の細部について良く理解してい るのはシステムエンジニアあるいは管 理者などの業務設計者よりもむしろ、 現場の業務担当者であるからだ。
 多くの場合、業務の目的、入出力 (物や情報)、使用設備・道具、大 まかな手順、基準・標準類、出来高、 納期などを担当者に与え、指導者の 適切な監督、指導があれば、業務は 適切に遂行されるであろう。
 しかし、例外事象や異常事態に遭 遇した場合は対応困難である。
例外 事項、異常事態、緊急事態が発生し た時の対処方法がきちんと決められ ていなければ、各人が勝手な行動を 起こし、収拾が付かなくなる。
リス ク分析、評価の結果、発生確率、影 響度合いから、対処すべき現象が想 定された場合には、どのように対処 すべきかを事前定義し、教育訓練し ておく必要がある。
リスクの観点から仕事を評価すべし  業務プロセス(仕事)の評価は通 常、事業の目的・目標への貢献度合 い、有効度、費用対効果等の観点か ら行うが、リスクという観点からの評 価も重要である。
評価の結果、重要 でないとみなされたものは排除される。
重要と評価されたものでも、その方法 については改善改革対象である。
 業務プロセスは階層構造を持ち、 ブレークダウンされる。
上位プロセス では事業への貢献度が高いと評価され ても、ブレークダウンされた下位のプ ロセス群(機能群)の中には事業の目 的・目標に直接貢献しないものもあ る。
たとえば、事業が安定的に、正 常に展開されているときには不要で あるが、異常な状態が発生した時に は力を発揮するプロセス等である。
そ のため仕事の評価は網羅的に行わな ければならない。
 生産革新の方法論の一つとして「ダ イセル生産方式」が脚光を浴びている。
化学品メーカーのダイセル化学工業が 一九九六年から取り組んでいる活動 である。
ダイセル生産方式では「業務 NOVEMBER 2013  84 生産計画 部品調達 図4 事業プロダクト・プロセス革新とグローバル対応 GSC・国際工程管理 (ライフサイクルマネジメント)*(新国際工程管理) 事業計画 開発・実施準備 調達 販売 生産 運用・サービス リタイアメント(撤退) ? 事業企画準備段階? 実施段階? 運用・廃棄段階 ?1 ?2 ?3 自社分析 事業企画 事業設計 ? ナレッジプロジェクト   マネジメント ? マネジメント改善(組織・人的資源管理・財務など) ? マインド・スキル開発と習得 ? 現行事業・業務改善(現場を磨く) (繰り返し量産) (個別受注設計生産) 販売計画 引き合い 仕様打ち合わせ カスタマイズ設計 生産計画 部品調達 受注処理 輸配送配置 現地工事 運用リタイア 廃棄・再利用 完成品在庫 ?5 ?4 工程作り ネットワークネットワーク業務 プロセス作り 製品支援 生産 保全・整備(TPM) 据付け 生産 85  NOVEMBER 2013 新年度の活動計画  SOLE日本支部では新年度(二 〇一三年一〇月〜一四年九月)の活 動計画として、次のテーマを予定して いる。
それぞれの研究テーマに関心あ る方々の参加を期待している。
1.モデリングの研究  システム設計の基本であるモデリン グについて、機能構造化と?課題ば らし?の方法について研究する。
2.業種別RAMSの研究  業種別のライフサイクルモデルとし て先端事例を記述する。
3.GSC再構築実践ガイド作り 4.国際標準規格への取り組み  「ISO9000(品質マネジメン ト)」、「ISO14000(環境マネ ジメントおよびアセスメント)」、「I SO31000(リスク:事業継続 を含む)」、「ISO22000(食品 安全)」を対象に、仕事・事業を磨く ための知恵・知識のベースとして国際 標準規格を研究し、解説書(小冊子) を作成する。
伴うリスクを管理する経験がないこと が大きい。
リスク対応における予防な どの認識が乏しい。
 海外展開に伴う一般的なリスクと しては、「外国人従業員の教育や労務 管理が難しい」、「現地経営管理者の 不足」、「現地の規制や会計制度への 対応が難しい」などが挙げられてい る。
また、撤退、移転の理由として は「受注先、販売先の開拓確保の困 難性」、「生産(管理)・品質管理の困 難性」、「生産コストの上昇」が挙げ られている。
 日本とは異なる「文化・商習慣」、 「法規制制度」、「倫理観」などもリス クになる。
現地での体制作りや、人 材確保・育成に留意し、現地スタッ フへの?お任せ?ではなく、ガバナン スをしっかり取ることが重要である。
総点検」と呼ぶ業務プロセスの評価を 行っている。
不要な業務機能、価値 の低い業務機能を徹底的にそぎ落と し、真に必要な物のみを残す。
 また、同社はベテランオペレータ ーの知識、経験を徹底的に聞き出し、 知識ベースを構築し、業務分担や業 務フロー上の問題点に加えて、「潜在 トラブル」の発掘を行い、トラブルを 未然に防止する基盤整備を行ってい るという。
現地化の課題  GSC再構築において、海外現地 化の問題は避けて通れない。
海外に 直接投資した中小企業は現地で様々 な問題に遭遇する。
撤退を余儀なく されている企業も少なくない。
進出 計画の甘さというより、事業展開に 次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは2013年11月7 日(木)、東京・浜松町の商工会館6 Fで開催する。
「サプライチェーン・セ キュリティ」の研究報告等を予定して いる。
同フォーラムは年間計画に基づ いて運営しているが、単月のみの参 加も可能。
一回の参加費は6000円。
お問い合わせは事務局(s-sogabe@ mbb.nifty.ne.jp)まで。

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