2013年12月号
中国鉄道コンテナ輸送

第6回 鉄道コンテナ輸送の日中比較 明治大学 町田一兵 商学部専任講師

DECEMBER 2013  90 鉄道コンテナ運営会社を経営的な側面から比 較することで、直面している課題の解決策や 将来の方向性を探ってみたいと思う。
 鉄道コンテナ輸送を取り扱う上での日中の 違いとして、まず取り上げられるのが鉄道コ ンテナの手配である。
日本における鉄道コン テナのほとんどは大手通運事業者、つまりフ ォワーダーによって手配されている。
そのため にJR貨物は鉄道車両の運行や維持など、貨 物列車の経営に資源を集中することができて いる。
 図1はJR貨物の東京ターミナルの構内図 だ。
この図からも分かるように、大手フォワ ーダーはそれぞれJR貨物の敷地内に専用ス ペースを確保し、JR貨物とのシームレスな 連携によって効率的に業務を行っている。
日 本の鉄道貨物輸送はフォワーダー抜きには語 れないと言えるだろう。
 それに対して中鉄コンテナ輸送社は大口荷 主や港湾事業者との提携強化を重視しており、 今のところフォワーダー事業者との連携強化 によって鉄道コンテナ取扱業務を拡大しよう という発想には立っていない。
 日本のように鉄道コンテナ駅にフォワーダー が作業スペースを持つということもない。
こ れは旧鉄道部の「一八カ所コンテナセンター 駅整備戦略」に基づき、今日までに全国九カ 所に新設されたコンテナセンター駅においても 同様である。
 今年二月に筆者ら調査団が北京の大紅門で 鉄道貨物フォワーダーの存在  中国では今年三月の組織再編によって鉄道 部が解体されて、行政機能は交通運輸省に吸 収され、運行部門は国有企業化して「中国鉄 路総公司」に生まれ変わった。
 中国の鉄道事業は収入の多くを貨物輸送に 依存している。
時速二〇〇キロ以上で走行す る高速旅客鉄道が次々と新設されているにも 関わらず、旅客事業は現状ではまだ十分な収 益源とはなっていない。
 それだけに貨物輸送収入の確保は中国の鉄 道事業における最重要課題の一つとなってい る。
とりわけ鉄道コンテナを取扱う中鉄コン テナ輸送社(中鉄集装箱運輸有限公司、China Railway Container Transport Co., Ltd : CRCTC)に託した部分は大きい。
 他方、日本の鉄道貨物輸送のほとんどを取 り扱っている日本貨物鉄道(以下JR貨物) は、環境問題を意識したモーダルシフトを国 策として推進してきたにも関わらず、取扱量 が伸びていない。
国内貨物輸送量が減少する 中で、新たな鉄道貨物輸送の需要を増やすこ とが当面の課題となっている。
 国土の広さや経済の発展状況など、中国の 鉄道コンテナ輸送が置かれた状況は日本とは あまりにも大きくかけ離れている。
そのため 両国における鉄道コンテナ輸送の取扱量や鉄 道ネットワークを単純に比較することにあま り意味はないだろう。
そこで本稿では両国の 明治大学 町田一兵 商学部専任講師 鉄道コンテナ輸送の日中比較 中国鉄道コンテナ輸送 《第6回》  今年3月の中国鉄道部解体で新たなスタートを切 った中国鉄道コンテナ輸送の現状と今後の方向性を、 その運営を担う中鉄コンテナ輸送社と日本のJR貨物 との比較から考察する。
鉄道貨物フォワーダーの存 在、情報システムの活用法、海上コンテナの鉄道輸 送(海鉄連運)の状況などがポイントになる。
91  DECEMBER 2013 ヒアリングを行った限り、中国の鉄道貨物フ ォワーダーは自社では貨物自動車を所有して おらず、小口貨物の積み合わせを行うことも できない零細がほとんどで、その多くは鉄道 部OBなどの鉄道関係者が中心となって経営 しているようだった。
 現地で大手とされるフォワーダーでも鉄道 コンテナ貨物の取扱量は極めて少ない。
その 理由としてフォワーダーは「細かな物流サー ビスに欠ける」等、鉄道会社のマーケティン グ意識の欠如を指摘していた。
 鉄道会社はフォワーダーのマージンを渋る 傾向にもあるようで、両者の関係は極めて薄 く、フォワーダーは鉄道コンテナを取り扱って もあまりメリットがない状況であった。
日本 でフォワーダーが荷主と鉄道コンテナ輸送事 業者の橋渡し役として、大きな役割を果たし ているのとは対照的である。
 日本と違って中国では、鉄道コンテナ輸送 事業者と大口荷主や港湾事業者が直接取引し ているケースが多く見られる。
しかし、荷主 が望むドア・ツー・ドアのサービスを提供す る上で必要になる末端の集荷・回収と配送を、 鉄道コンテナ輸送事業者が自ら行うことには 限界がある。
中小規模の荷主を大量に取り込 んで取扱量を増やすには、フォワーダー事業 者とのパートナーシップの構築が必要不可欠 であろう。
情報システムの活用  日中における鉄道コンテナ輸送事業者とフ ォワーダーとの関係性の違いは、両国の鉄道 情報システムの整備にも表れている。
 JR貨物はフォワーダー事業者との情報連 携を重視したシステム整備を行っている。
二 〇〇五年に稼働させた鉄道コンテナ輸送の総 合的な管理システム「IT─FRENS&T RACEシステム」では、フォワーダー事業 者の予約に関わる作業を軽減し、コンテナ輸 送依頼へのスピーディな対応を実現した。
中国コンテナ輸送紅門コンテナ取扱駅の構内図 コンテナホーム 複合A棟 駅事務所 立体駐車場 複合B棟 複合C棟 複合D棟 大井中央陸橋JR東海道新幹線車両基地 湾岸道路 首都高速湾岸線 シンシア JR貨物の東京貨物ターミナル駅の構内図 日本運輸倉庫 札幌通運 東邦薬品 ヤマト運輸 佐川急便 日本通運 リリカラ 建設中 三菱商事 近鉄エクスプレス 日本運輸倉庫 (DHL) 日本運輸倉庫 中国鉄道コンテナ輸送  同社は作業の省力化にも情報システムを活 用している。
貨物駅でのフォークリフトによ るコンテナ荷役作業を管理する「TRACE システム」は、GPSとIDタグ(無線IC タグ)を組み合わせて(注1)、貨物駅構内に おけるコンテナの位置管理を行うシステムだ。
 同システムによって数十センチ単位でコン テナ位置の把握が可能となり、荷役時間の短 縮と輸送の正確性が高まった。
これまで作業 員の「経験と勘」に頼ってきた仕事が、「シ ステムによる自動化」に置き換えられたこと で、人的ミスを最小限に抑えられるようにな った。
 中鉄コンテナ輸送社も情報システムの重要 性は認識している。
旧鉄道部時代から全国鉄 道駅のオンライン化などのシステム開発を進め てきた。
また、「海鉄連運」(海上コンテナの 鉄道輸送)を進める目的で、大連港、天津港、 青島港、寧波港、連雲港港、深圳港の六港 湾に子会社を設置。
各社で船舶の到着および 貨物の動きを把握する情報プラットフォーム を構築している。
これらのプラットフォーム は今後二〜三年以内に統合する計画だ。
 しかし、情報インフラの整備においてフォ ワーダーとの連携強化は意識されていない。
今後はフォワーダー、とりわけ集荷力を持つ 大手事業者との情報共有を検討する必要があ るだろう。
 構内作業の効率化も急務となっている。
構 内作業による時間のロスと積み替えによる荷 は全体の二・七%にすぎない(一二年)。
この 比率を上げるために中鉄コンテナ輸送社は主 に港湾を意識して働き掛けを行っている。
し かし、中国には内陸部にも原材料加工企業が 多く存在する。
セメント(例えば日系のセメ ント企業が進出した雲南省・新疆自治区)や 液体(例えば新疆自治区で加工された大量の ぶどうジュース)など、コンテナ化できる貨 物は数多く存在する。
 長距離輸送における鉄道のメリットを生か すには、こうした原材料の輸送に適した容器 の開発を通じて、輸送の仕組みを提案するこ とが重要である。
その際にも、大手フォワー ダー事業者との連携が効果的である。
 なお、貨物自動車輸送と同様に鉄道貨物 輸送においても、定時性は最も重視されるサ ービス指標の一つである。
そのためJR貨物 では、ほとんどの発着駅間で直行方式を採っ ている。
途中で車両の再編成がないため、定 時性に優れたサービスを提供できる。
 それに対して中国では「五定列車(注2)」 以外、ほとんどの列車が「ヤード中継方式」 を採っている。
しかも、一定の列車台数(標 準では五〇台)あるいは積載量(三〇〇〇ト ン)に達しない限り、発車しない仕組みにな っているので、定時性を担保できない。
その ことを荷主が問題視していることは鉄道関係 者も認識していながら、鉄道輸送能力が逼迫 していることから、効率を高めるために上記 方式を採らざるを得ない状況である。
物のダメージは、中国の鉄道貨物輸送サービ スに対する悪評の大きな原因となっている。
構内作業のレベルアップと省力化および作業 人員の最適配置のためにも、情報化は不可欠 である。
「海鉄連運」の課題  一一年時点で、JR貨物の取扱貨物量全 体に占める鉄道コンテナ荷物はトンベースで六 五・八%、トンキロベースで九〇・五%を占 めている。
鉄道貨物の中心はコンテナ輸送に 既に大きくシフトしている。
とりわけ長距離 においてはその傾向が顕著となっている。
 国内貨物輸送量が低迷する中でJR貨物が 今後、取扱貨物量を増やしていくには、鉄道 と港湾を連携させる日本版「海鉄連運」が一 つの方向性となるだろう。
 しかし、日本には十二フィートの鉄道コン テナが既に普及している。
新たに海上コンテ ナの二〇フィート/四〇フィートコンテナに対 応しようとすればインフラの整備コストが大 きな負担になる。
しかも、投資に見合うだけ の物量の増加は見込めないのが現状である。
 中国もかつては鉄道コンテナの独自基準と して一トン、五トン、一〇トンのコンテナが 存在した。
しかし、近年は規格統一に向かっ ている。
上記サイズのコンテナの老朽化に伴 う処分が進み、二〇/四〇フィートコンテナ への移行が進んでいる。
 現段階で中国の鉄道コンテナ貨物の取扱量 DECEMBER 2013  92 ンなどとのRO─RO船社とシームレスな連 携を図ろうとしている。
JR貨物がメーンと する十二フィートコンテナは現在、中韓でも 一部流通している。
しかし中韓が今後積極的 に十二フィートコンテナを採用することは見 込めず、海上コンテナへの本格的な対応が課 題として残っている。
 一方、中国の場合、国有企業化に伴う課題 は山積しているが、国内貨物輸送量が引き続 き増え続けている点が日本とは違う。
鉄道コ ンテナ輸送のさらなる拡大を図るには、まず 同業他社間の壁を取り払うこと、グループ会 社間のシナジー効果を得ることが重要であろ う。
 例えば、かつて鉄道部傘下にあり、鉄道コ ンテナ輸送社とは兄弟会社に当たる中国鉄道 建設投資公司傘下の貨物フェリー二隻が、煙 台〜大連間で航行している。
しかし、この二 隻の貨物フェリーはコンテナを全く扱っていな い。
鉄道コンテナ輸送の増強のための「鉄水 連運(海鉄連運と同義)」が強く意識される 中、鉄道と複数の港と提携関係を強めようと する動きがあるにも関わらず、中鉄コンテナ 輸送社との連携は全くない状態である。
 さらには中国大陸が他国とつながっている こと、既存の長距離鉄道ネットワークや国際 基準コンテナの使用などのメリットを生かし、 鉄道コンテナのランドブリッジ輸送方式や港 湾との連携による海鉄連運方式を確立するこ とで、他の輸送モードに対する優位性を構築 することが、成長への方向性といえよう。
 そのためには、鉄道部時代の殿様商売的な 意識から脱し、日本における鉄道コンテナ輸 送の現状に鑑みて、フォワーダーとの連携を 強化し、情報システム化や作業の効率化を図 るなど、地道な努力によって鉄道コンテナ輸 送の潜在力をうまく引き出す必要がある。
筆 者ら調査団はそれを祈念している。
注 ⑴ h t t p : / / w w w . J R f r e i g h t . c o . j p / t r a n s p o r t / improvement/it.html ⑵「ルート」、「発着駅」、「駅間運賃」、「所要時間」、 「列車番号」が定まった列車のこと、定時性が高いこ とで通常の貨物列車と区別されている。
なお、「五定 列車」の場合、貨物が十分出ない場合も発車してい る(ヒアリング結果)。
⑶将来的に一八のコンテナセンター駅の間に直行方式 で運行することで定時性を高めたいとのこと。
⑷中国統計出版社編「中国統計年鑑2012」  中鉄コンテナ輸送社では、今後中期的には 輸送需給の緩和によって五定列車を増便でき るようになることを期待し、輸送方式も直行 方式への切り替えが進んでいくことが望まし いとしている(注3)。
日中鉄道貨物輸送の発展のために  JR貨物は一九八七年に発足した当初、一 万人以上の従業員を抱えていた。
それから二 〇数年が経った今、同社の従業員数はほぼ半 減している。
長い時間を掛けて組織のスリム 化を達成した。
 一方、解体したばかりの中国鉄道部は、一 一年時点で一七六万人以上(注4)の人員を 抱えており、組織構成や余剰人員の再配置問 題、新たなコンテナ貨物の取り扱い方針は今 のところ未提示のままである。
 中鉄コンテナ輸送社が収益強化を目的に描 いた「一八カ所コンテナセンター駅整備戦略」 も、当初の計画通りに実現されるのか不透明 さが出てきている。
現段階で完成しているの は半分の九カ所だけで、残りの九カ所がいつ 建設されるのかは明らかにされていない。
既 に稼働している九カ所のコンテナセンター駅は 現状ほとんどが赤字で、それをどう補填する のかも課題になっている。
 JR貨物は当面、海上貨物の一貫輸送を よりスムーズに行うため、一〇〇%子会社の ジェイアール貨物・インターナショナルを通じ て、上海スーパーエクスプレスやカメリアライ 93  DECEMBER 2013 町田一兵(まちだ いっぺい) 1970年生。
中国上海出身、2003年明治大 学大学院博士課程を修了、商学博士号を取 得。
2002年日通総合研究所入社、同社経 済研究部に勤務。
国内ではトラック輸送関 連、海外では中国をはじめ、東南アジア諸 国を中心に物流および関連調査を数多く担 当したのち、2011年4月より、明治大学商 学部専任講師に着任、「国際交通論」を担当。
中物研には2009年に参加。
PROFILE

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