2013年12月号
SOLE
SOLE
セキュリティ対策と標準規格
SOLE 日本支部の報告
DECEMBER 2013 102
対応における教育訓練、継続性、識
別技術をはじめ、緊急通信、SCM、
リスク評価、生物化学脅威物質、情
報セキュリティ、防災等の規格の再
点検が行われた。
こういった視点での 標準規格のサーベイや標準化作業の 調整機能は、残念ながら我が国では いまだに見られない。
2.セキュリティ関連 標準規格の例 セキュリティ対策に関連する標準規 格の範囲は極めて広範囲にわたって いる。
情報関係ではEDIに関する ISO/TC154(EDI)、情報 セキュリティのISO/IEC/JT C1/SC27、識別技術に関する ISO/IEC/JTC1のSC3 1(AIDC、バーコードやRFID 等の自動認識技術)、SC17(IC カード)、SC37(生体識別)等が ある。
運輸交通分野は、輸送機関別に、 ISOの技術委員会として、TC2 04(ITS)、TC104(コンテ ナ)、TC8(船舶)、TC9(鉄道)、 TC22(自動車)、TC20(航 空)等がある。
また、情報の表示・ 処理にとって重要な地理情報システム に関するISOの技術委員会として、 TC122(GIS)がある。
防災系規格は、防災関連機器や管 リスクマネジメントの対象の一つと なるテロや盗難等のセキュリティ対策 と標準規格について紹介する。
二〇 〇一年の九・一一事件を契機に進め られた米国におけるテロ対策の検討は、 二度と同じテロを発生させないという 一〇〇%セキュリティを達成しようと するものではなく、現実的に適用可 能な手法の費用対効果を検討しなが ら、不審人物や貨物の検査において 複数のスクリーニング手法を適用する ことにより、その発見確率を高める 手法と各種手法適用の優先順位を考 えるものである。
(吉本隆一 オフイス・ロン代表) 1.標準規格による テロ対策の検討 米国では、同時多発テロの発生後、 テロ対策検討の一環として、〇三年 二月に、非営利団体である米国規格 協会(ANSI: American National Standard Institute)内に、ホームラ ンドセキュリティ標準化パネル(HSSP : Homeland Security Standard Panel)が設けられた。
同パネルはテロ対策に資する技術を サーベイし、既存技術をフル活用し てテロ対策に資する方法を検討し、規 格の複合的利用のための整合性確保 や、所要の標準規格を追加するとい った役割を担う検討グループだ。
規格 開発そのものを行うのではなく、テ ロ対策の視点から必要な標準化作業 を行わせるための企画調整機能を担 っている(注1)。
同パネルの予備的検討を踏まえて、 〇四年一月には、国際標準化組織I SOのTMB(技術管理評議会)に セキュリティに関する高級諮問委員 会(Security AG)が設けられ、同様 の作業が行われた。
テロ対策を実施するに当たって、既 存の標準化活動全体をサーベイする ところから始め、既存の利用可能な 技術をフル活用するとともに、国際 的監視システムの構築に必要な相手 国への技術適用への障害を少なくす るために、標準規格を活用するとい う米国のアプローチには見習うべきと ころがある。
こうしてテロ対策の初期から設け られたANSI─HSSPでは、緊急 セキュリティ対策と標準規格 理を含む規格に、ISOの技術委員 会として、TC21(消防器具)、T C33(耐火物)、TC67(石油)、 TC81(農薬)、TC85(原子 力)、TC92(火災安全)、TC9 4(保護衣等)、TC146(大気の 質)、TC147(水質)、TC17 6(品質管理)、TC197(水素)、 TC223(防災)、TC224(飲 料水)、IEC/SC31(防爆電気 機器)がある。
またIECの技術委員 会として、IEC/SC44(機械 類安全性)、IEC/SC45(原子 力計測)、IEC/SC76(レーザ ー機器)、IEC/SC79(警報)、 IEC/SC106(人体暴露)、I EC/SC108(電子機器安全性) 等がある。
なお、ANSI─HSSP発足当 初の議論では、耐熱の保護衣のほか、 バイオテロ対策や放射線対策用の保 護衣の規格等について特段の要請が 行われた。
3.主たる防御対象として 想定されるインフラ テロ対策の議論は、入国者の管理 と、内容物が見えない海外からの輸 入貨物、特に国際コンテナに搭載さ れて輸入される貨物の管理方法が中 心であった。
他方、テロが標的とする社会経済 103 DECEMBER 2013 ここでも各種手法の併用が行われて いる。
X線透視は、麻薬などを飲み 込んで運ぶ人の確認にも利用され効果 を挙げている。
⑶輸送中の状況監視 輸送中の異常を検知するための運 送状況監視システムの基本は、一般 に、輸送計画の策定・実行とその監 視から成る。
停止時刻・場所以外で の停止や停止時間超過等が発生した 場合には事件の発生と見なして対応 することになる。
実際の強盗事件の多くも駐車場 での停止時や休憩時に発生している。
異常がないように見えても、不審 貨物の追加積み込み等の可能性があ る。
こういった犯罪を防止するために は、計画策定時の配慮やその運送状 況の監視だけでなく、同一パターンの 計画・運行指示の繰り返しを回避し、 時間・運転者・経路等の多様な組み 合わせと、車両位置情報以外のCC TVカメラや音声検知等の複数の監 視手法を準備しておく必要がある。
5.国際コンテナ・ セキュリティ対策 サプライチェーンに関わるセキュリ ティ対策、テロ対策と言えば、我が 国では、国際コンテナのセキュリティ 対策ばかりが紹介され、かつ、コン 証としてはTAPA認証(注2)が 有名である。
⑵なりすまし防止 施設管理や情報セキュリティなどに 共通する対策としては、正当に認証 された人や貨物に対する「なりすま し防止」がある。
なりすまし防止の 基本は、パソコンのウイルスチェック 同様に、正当に認証された人や貨物 の識別コードや判定要素のデータファ イルとの照合機能や、パソコンソフト そのものの改変に当たるような重要 かつ危険な行為の検知・警告機能等 から構成される。
この場合、最も簡易な不正進入方 法は、他人のICカードの利用による 進入である。
このようなケースを防止 するためには、単一のチェック機能だ けでなく、顔写真や指紋・瞳孔・音 声等の生体識別、その他の仕組みと 併用することが必要になる。
人を識別する場合は事前にブラック リスト、ホワイトリストが必要である が、情報セキュリティにおける新規ウ イルスの侵入のように、当該人物リ ストの作成・更新自体、国際的な情 報共有が大きな課題である。
貨物の場合には、コンテナのX線 やガンマ線による透視による内容物と 積載品目リストとの照合や、重量(比 重)チェックや麻薬犬による確認など、 的影響の大きなインフラ施設として は、高速道路、鉄道、空港、港湾等 の交通基盤をはじめ、政府組織、電 力網・施設、通信網・施設、消防・ 救急組織、給水・治水施設、金融施 設・システム、エネルギー供給網・ 施設が挙げられている。
また追加的イ ンフラとして、農業、食料、国民的 モニュメントや施設、軍事施設、郵 便事業、化学プラント、医薬品工場 等が例示されている。
4.サプライチェーンに関わる セキュリティマネジメントの対象 こうしたテロ対策標準規格の検討 作業の結果として、サプライチェー ンに関わるセキュリティマネジメント の管理分野として、施設、貨物、人、 情報、組織、危機管理計画の六分野 がまとめられている(図1参照)。
サプライチェーンのためのセキュリ ティマネジメントシステムに関するI SO規格には、ISO28000: 二〇〇七がある。
代表的な管理方法には、施設管理、 スクリーニングによる「なりすまし防 止」、異常事態を検知するための輸送 中等の輸送状況管理等がある。
⑴施設管理 施設管理では、ゲートや柵の設置、 ゲートにおける人や荷物の出入り管 理、施設内における挙動管理のため の室内出入り管理、施設管理区域内 への進入監視のためのフェンス設置、 CCTV監視や赤外線監視、温度・ 振動センサー等による監視などがある。
こういった施設管理に関する民間認 図1 サプライチェーン・セキュリティ・マネジメント・システムの構成要素 施設保護、アクセスコントロール、施設監視、倉庫レイアウト、在庫管理 変形検知報告、在庫管理、検品、追跡管理、不正防止 履歴管理、教育訓練、組織の役割と権限配分、情報・誤報、安全文化開発 情報・データ管理の質、IP・業務情報保護、出荷情報記録、通関EDI、国際規格利用 セキュリティ管理、運営リスク削減、取引先評価、行政当局への協力 事業継続計画、セキュリティ戦略、緊急管理センサー、事故管理 施設管理 貨物管理 人材管理 情報通信管理 企業経営・ネットワーク 危機管理・災害復旧 DECEMBER 2013 104 テナへのRFIDタグの貼付や識別 コードの付与さえ行えばセキュリティ が確保されるかのような施策が横行 しており、ANSI─HSSP発足 当初からの米国内での検討内容に見 られたようなコンテナ犯罪の実態を踏 まえた対策は、あまり紹介されてい ない。
⑴現行のコンテナ・ セキュリティ対策 現行のコンテナ・セキュリティ対策 としては、米国の次の三つの施策が 有名である。
●二四時間ルール:貨物情報の事前 提出規則であり、コンテナ貨物に 関する積み荷目録(マニフェスト) 情報を輸出国の船積み二四時間前 までに米国通関当局(国土安全保 障省税関国境保護局:CBP)に 提出させるルールである。
● C S I : 海上コンテナ安全対策 (Container Security Initiative)で あり、二国間協議を基に、原則、 米国向け海上コンテナの積み出し上 位二〇港を対象として実施されて おり、リスクの高いコンテナの特定、 輸出前コンテナの事前検査・審査、 大型X線装置の適用等を行ってい る。
●C─TPAT:税関と民間とのパ ートナーシップ(Customs-Trade Partnership Against Terrorism) であり、 グローバル・サプライチ ェーンに関わる民間企業が同活動 に参加することによって、セキ ュリティの向上を図るものである。
参加インセンティブとして参加企 業には税関検査回数の低減や税関 検査の優先等の優遇措置が適用さ れるとされていたが、実効性の高 い措置が適用されていないとの批 判がある。
このうち二四時間ルールは、米国 だけでなく欧州、中国そして日本で も実施されるようになった。
また、C ─TPAT制度に対応し、セキュリテ ィを確保しつつ輸出入業務の円滑化 を図る視点から、セキュリティの確 保に優れた事業者を指定するAEO (Authorized Economic Operator) 制度の適用とその国際的な相互認証 が進められている。
このほか、WCO(世界税関機 構:World Customs Organization) では、京都規約(税関手続の簡易 化及び調和に関する国際規約)に基 づき、〇五年に国際貿易の安全確 保および円滑化のためのWCO「基 準の枠組み」(The Framework of Standards to Secure and Facilitate Global Trade)を策定している。
ま た、国際的なテロおよ び組織犯罪対応のため のW C O 加盟税関当 局向けのガイドライン として、電子貨物情 報の事前申告を求める ISCMガイドライン (Customs Guidelines on Integrated Supply Chain Management) を策定している。
I M O( 国際海事 機構:International Maritime Organiza -tion)は港湾セキュリ ティ対策を設け、海事 分野の保安対策を強化 するためのFAL条約 (国際海上交通簡易化 条約:Convention on Facilitation of Inter -national Maritime Traffic)を制定し、我 が国も〇五年に批准し ている。
同様に、IMOは改正SOLA S 条約( 海上における人命の安全 のための国際条約:International Convention for the Safety of Life at Sea)、ISPSコード(船舶および 港湾施設の国際保安コード)を制定 しており、国内法規として「国際航 海船舶および国際港湾施設の保安の 確保等に関する法律」が制定された。
⑵コンテナに関わる 犯罪事例と対策 我が国ではコンテナへの電子シール の貼付が重要な対策として紹介され 図2 OCR 方式のコンテナ管理システムの例(港湾および港湾出入管理) www.htsol.com 105 DECEMBER 2013 7262:二〇一二や、電子シール のISO18185:二〇〇六─〇 七等があり、WCOの貨物固有識別 番号(UCR)についてもGS1の SSCC(Serial Shipping Container Code)とISO15459(輸送単 位識別子)の二案がある(表)。
グローバル・サプライチェーンの管 理については、多様な関係者、多様 な各国輸出入制度があり、情報化の 流れが各所で寸断されているほか、特 定の単一の識別コードで管理できるほ ど単純ではない。
このため、運用さ れている多様なコード体系を踏まえた 変換テーブルの汎用性の確保が要請さ れている状況にとどまっているのが実 情である。
ただし、災害時のグローバルな部 品調達や、輸送中の状態管理はサプ ライチェーン管理のためにも必要とさ れており、そのための標準的なコード 体系による迅速・円滑かつ代替性に 富んだ柔軟な輸送システムの構築が必 要とされている。
この結果、機械式シールや電子シ ールによる積み荷目録と対応コード、 輸出入関係書類の照合を図ることは 不可欠であるが、その貼付が犯罪防 止を保証する機能は低いとされている。
また、国際コンテナ管理の実態と しては、ガントリークレーン、コンテ ナヤード上の搬送機器やコンテナヤー ドからの鉄道・トラックによるコンテ ナの搬出入地点では、CCTVカメ ラが設置され、OCR方式によるコ ンテナコードの読み取りが一般的に行 われている(図2)。
そこでは、九五%程度の読み取り 精度が確保されているため、別途シ ールやRFIDタグ上のコード付けを 義務付ける必要はなく、またコンテナ コード(ISO6346)のテキスト 変換・データベースとの照合が実施さ れているため、新規に別の機器設置 を義務付ける必要性や意義も少ない と指摘されている(図2)。
⑶コンテナ管理に関わる標準規格 コンテナ管理に関わる標準規格も、 利用周波数、タグの貼付位置、コー ド体系、コードの付与・管理者体系 等、目的・用途に応じて多種多様で ある。
ISO10891:二〇〇九、 ISO10374:一九九一/一九 九五、ISO17363、ISO1 7263:二〇一二およびISO1 ているが、ANSI─HSSPに見る 米国内での議論では、コンテナに関わ る犯罪として、電子シールそのものの 取り外し・復元、偽電子シールの貼 付、コンテナドアごとの取り外しによ る積載貨物の盗難・差し替え、コン テナそのものの改造による麻薬・武 器等の密輸品の隠匿事例が紹介され ている。
※ S O L E(The International Society of Logistics:国際ロジスティクス学会)は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・三〇 〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部では毎 月「フォーラム」を開催し、講演、研究発 表、現場見学などを通じてロジスティクス・ マネジメントに関する活発な意見交換、議 論を行っている。
次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは2013年12月 10日(火)、東京・浜松町の商工会 館6Fで開催する。
「自動車の機能安 全」の研究報告等を予定している。
同フォーラムは年間計画に基づいて 運営しているが、単月のみの参加も 可能。
一回の参加費は6000円。
お 問い合わせは事務局( s-sogabe@ mbb.nifty.ne.jp)まで。
表 国際コンテナタグに関するRFID 規格の例 ISO 10374 ISO 17363 ISO 18185 ISO 10891 ISO 14185&6 ISO 17262&3 用途 コンテンツ 貼付場所 通信規格 側面ドア部ドア開閉部側面側面 ISO コード 容器管理 荷主付与 出荷コード 電子シール ドア開閉 暗証コード 輸送単位 識別コード 行政監視 税関コード 位置データ 860MHz 帯 2.45GHz 帯 433MHz 帯 電池付 433MHz 帯 2.45GHz 帯 電池付 非特定(5.8GHz) 注 (注1) 現在もHSSPの同グループのウェブサイト はANSIウェブサイト内に設置されている。
(注2) Technology Asset Protection Association http://www.tapa-asia.org/ http://www.logi-navi.jp/tapa/cat13/ (社)日本工業技術振興協会
こういった視点での 標準規格のサーベイや標準化作業の 調整機能は、残念ながら我が国では いまだに見られない。
2.セキュリティ関連 標準規格の例 セキュリティ対策に関連する標準規 格の範囲は極めて広範囲にわたって いる。
情報関係ではEDIに関する ISO/TC154(EDI)、情報 セキュリティのISO/IEC/JT C1/SC27、識別技術に関する ISO/IEC/JTC1のSC3 1(AIDC、バーコードやRFID 等の自動認識技術)、SC17(IC カード)、SC37(生体識別)等が ある。
運輸交通分野は、輸送機関別に、 ISOの技術委員会として、TC2 04(ITS)、TC104(コンテ ナ)、TC8(船舶)、TC9(鉄道)、 TC22(自動車)、TC20(航 空)等がある。
また、情報の表示・ 処理にとって重要な地理情報システム に関するISOの技術委員会として、 TC122(GIS)がある。
防災系規格は、防災関連機器や管 リスクマネジメントの対象の一つと なるテロや盗難等のセキュリティ対策 と標準規格について紹介する。
二〇 〇一年の九・一一事件を契機に進め られた米国におけるテロ対策の検討は、 二度と同じテロを発生させないという 一〇〇%セキュリティを達成しようと するものではなく、現実的に適用可 能な手法の費用対効果を検討しなが ら、不審人物や貨物の検査において 複数のスクリーニング手法を適用する ことにより、その発見確率を高める 手法と各種手法適用の優先順位を考 えるものである。
(吉本隆一 オフイス・ロン代表) 1.標準規格による テロ対策の検討 米国では、同時多発テロの発生後、 テロ対策検討の一環として、〇三年 二月に、非営利団体である米国規格 協会(ANSI: American National Standard Institute)内に、ホームラ ンドセキュリティ標準化パネル(HSSP : Homeland Security Standard Panel)が設けられた。
同パネルはテロ対策に資する技術を サーベイし、既存技術をフル活用し てテロ対策に資する方法を検討し、規 格の複合的利用のための整合性確保 や、所要の標準規格を追加するとい った役割を担う検討グループだ。
規格 開発そのものを行うのではなく、テ ロ対策の視点から必要な標準化作業 を行わせるための企画調整機能を担 っている(注1)。
同パネルの予備的検討を踏まえて、 〇四年一月には、国際標準化組織I SOのTMB(技術管理評議会)に セキュリティに関する高級諮問委員 会(Security AG)が設けられ、同様 の作業が行われた。
テロ対策を実施するに当たって、既 存の標準化活動全体をサーベイする ところから始め、既存の利用可能な 技術をフル活用するとともに、国際 的監視システムの構築に必要な相手 国への技術適用への障害を少なくす るために、標準規格を活用するとい う米国のアプローチには見習うべきと ころがある。
こうしてテロ対策の初期から設け られたANSI─HSSPでは、緊急 セキュリティ対策と標準規格 理を含む規格に、ISOの技術委員 会として、TC21(消防器具)、T C33(耐火物)、TC67(石油)、 TC81(農薬)、TC85(原子 力)、TC92(火災安全)、TC9 4(保護衣等)、TC146(大気の 質)、TC147(水質)、TC17 6(品質管理)、TC197(水素)、 TC223(防災)、TC224(飲 料水)、IEC/SC31(防爆電気 機器)がある。
またIECの技術委員 会として、IEC/SC44(機械 類安全性)、IEC/SC45(原子 力計測)、IEC/SC76(レーザ ー機器)、IEC/SC79(警報)、 IEC/SC106(人体暴露)、I EC/SC108(電子機器安全性) 等がある。
なお、ANSI─HSSP発足当 初の議論では、耐熱の保護衣のほか、 バイオテロ対策や放射線対策用の保 護衣の規格等について特段の要請が 行われた。
3.主たる防御対象として 想定されるインフラ テロ対策の議論は、入国者の管理 と、内容物が見えない海外からの輸 入貨物、特に国際コンテナに搭載さ れて輸入される貨物の管理方法が中 心であった。
他方、テロが標的とする社会経済 103 DECEMBER 2013 ここでも各種手法の併用が行われて いる。
X線透視は、麻薬などを飲み 込んで運ぶ人の確認にも利用され効果 を挙げている。
⑶輸送中の状況監視 輸送中の異常を検知するための運 送状況監視システムの基本は、一般 に、輸送計画の策定・実行とその監 視から成る。
停止時刻・場所以外で の停止や停止時間超過等が発生した 場合には事件の発生と見なして対応 することになる。
実際の強盗事件の多くも駐車場 での停止時や休憩時に発生している。
異常がないように見えても、不審 貨物の追加積み込み等の可能性があ る。
こういった犯罪を防止するために は、計画策定時の配慮やその運送状 況の監視だけでなく、同一パターンの 計画・運行指示の繰り返しを回避し、 時間・運転者・経路等の多様な組み 合わせと、車両位置情報以外のCC TVカメラや音声検知等の複数の監 視手法を準備しておく必要がある。
5.国際コンテナ・ セキュリティ対策 サプライチェーンに関わるセキュリ ティ対策、テロ対策と言えば、我が 国では、国際コンテナのセキュリティ 対策ばかりが紹介され、かつ、コン 証としてはTAPA認証(注2)が 有名である。
⑵なりすまし防止 施設管理や情報セキュリティなどに 共通する対策としては、正当に認証 された人や貨物に対する「なりすま し防止」がある。
なりすまし防止の 基本は、パソコンのウイルスチェック 同様に、正当に認証された人や貨物 の識別コードや判定要素のデータファ イルとの照合機能や、パソコンソフト そのものの改変に当たるような重要 かつ危険な行為の検知・警告機能等 から構成される。
この場合、最も簡易な不正進入方 法は、他人のICカードの利用による 進入である。
このようなケースを防止 するためには、単一のチェック機能だ けでなく、顔写真や指紋・瞳孔・音 声等の生体識別、その他の仕組みと 併用することが必要になる。
人を識別する場合は事前にブラック リスト、ホワイトリストが必要である が、情報セキュリティにおける新規ウ イルスの侵入のように、当該人物リ ストの作成・更新自体、国際的な情 報共有が大きな課題である。
貨物の場合には、コンテナのX線 やガンマ線による透視による内容物と 積載品目リストとの照合や、重量(比 重)チェックや麻薬犬による確認など、 的影響の大きなインフラ施設として は、高速道路、鉄道、空港、港湾等 の交通基盤をはじめ、政府組織、電 力網・施設、通信網・施設、消防・ 救急組織、給水・治水施設、金融施 設・システム、エネルギー供給網・ 施設が挙げられている。
また追加的イ ンフラとして、農業、食料、国民的 モニュメントや施設、軍事施設、郵 便事業、化学プラント、医薬品工場 等が例示されている。
4.サプライチェーンに関わる セキュリティマネジメントの対象 こうしたテロ対策標準規格の検討 作業の結果として、サプライチェー ンに関わるセキュリティマネジメント の管理分野として、施設、貨物、人、 情報、組織、危機管理計画の六分野 がまとめられている(図1参照)。
サプライチェーンのためのセキュリ ティマネジメントシステムに関するI SO規格には、ISO28000: 二〇〇七がある。
代表的な管理方法には、施設管理、 スクリーニングによる「なりすまし防 止」、異常事態を検知するための輸送 中等の輸送状況管理等がある。
⑴施設管理 施設管理では、ゲートや柵の設置、 ゲートにおける人や荷物の出入り管 理、施設内における挙動管理のため の室内出入り管理、施設管理区域内 への進入監視のためのフェンス設置、 CCTV監視や赤外線監視、温度・ 振動センサー等による監視などがある。
こういった施設管理に関する民間認 図1 サプライチェーン・セキュリティ・マネジメント・システムの構成要素 施設保護、アクセスコントロール、施設監視、倉庫レイアウト、在庫管理 変形検知報告、在庫管理、検品、追跡管理、不正防止 履歴管理、教育訓練、組織の役割と権限配分、情報・誤報、安全文化開発 情報・データ管理の質、IP・業務情報保護、出荷情報記録、通関EDI、国際規格利用 セキュリティ管理、運営リスク削減、取引先評価、行政当局への協力 事業継続計画、セキュリティ戦略、緊急管理センサー、事故管理 施設管理 貨物管理 人材管理 情報通信管理 企業経営・ネットワーク 危機管理・災害復旧 DECEMBER 2013 104 テナへのRFIDタグの貼付や識別 コードの付与さえ行えばセキュリティ が確保されるかのような施策が横行 しており、ANSI─HSSP発足 当初からの米国内での検討内容に見 られたようなコンテナ犯罪の実態を踏 まえた対策は、あまり紹介されてい ない。
⑴現行のコンテナ・ セキュリティ対策 現行のコンテナ・セキュリティ対策 としては、米国の次の三つの施策が 有名である。
●二四時間ルール:貨物情報の事前 提出規則であり、コンテナ貨物に 関する積み荷目録(マニフェスト) 情報を輸出国の船積み二四時間前 までに米国通関当局(国土安全保 障省税関国境保護局:CBP)に 提出させるルールである。
● C S I : 海上コンテナ安全対策 (Container Security Initiative)で あり、二国間協議を基に、原則、 米国向け海上コンテナの積み出し上 位二〇港を対象として実施されて おり、リスクの高いコンテナの特定、 輸出前コンテナの事前検査・審査、 大型X線装置の適用等を行ってい る。
●C─TPAT:税関と民間とのパ ートナーシップ(Customs-Trade Partnership Against Terrorism) であり、 グローバル・サプライチ ェーンに関わる民間企業が同活動 に参加することによって、セキ ュリティの向上を図るものである。
参加インセンティブとして参加企 業には税関検査回数の低減や税関 検査の優先等の優遇措置が適用さ れるとされていたが、実効性の高 い措置が適用されていないとの批 判がある。
このうち二四時間ルールは、米国 だけでなく欧州、中国そして日本で も実施されるようになった。
また、C ─TPAT制度に対応し、セキュリテ ィを確保しつつ輸出入業務の円滑化 を図る視点から、セキュリティの確 保に優れた事業者を指定するAEO (Authorized Economic Operator) 制度の適用とその国際的な相互認証 が進められている。
このほか、WCO(世界税関機 構:World Customs Organization) では、京都規約(税関手続の簡易 化及び調和に関する国際規約)に基 づき、〇五年に国際貿易の安全確 保および円滑化のためのWCO「基 準の枠組み」(The Framework of Standards to Secure and Facilitate Global Trade)を策定している。
ま た、国際的なテロおよ び組織犯罪対応のため のW C O 加盟税関当 局向けのガイドライン として、電子貨物情 報の事前申告を求める ISCMガイドライン (Customs Guidelines on Integrated Supply Chain Management) を策定している。
I M O( 国際海事 機構:International Maritime Organiza -tion)は港湾セキュリ ティ対策を設け、海事 分野の保安対策を強化 するためのFAL条約 (国際海上交通簡易化 条約:Convention on Facilitation of Inter -national Maritime Traffic)を制定し、我 が国も〇五年に批准し ている。
同様に、IMOは改正SOLA S 条約( 海上における人命の安全 のための国際条約:International Convention for the Safety of Life at Sea)、ISPSコード(船舶および 港湾施設の国際保安コード)を制定 しており、国内法規として「国際航 海船舶および国際港湾施設の保安の 確保等に関する法律」が制定された。
⑵コンテナに関わる 犯罪事例と対策 我が国ではコンテナへの電子シール の貼付が重要な対策として紹介され 図2 OCR 方式のコンテナ管理システムの例(港湾および港湾出入管理) www.htsol.com 105 DECEMBER 2013 7262:二〇一二や、電子シール のISO18185:二〇〇六─〇 七等があり、WCOの貨物固有識別 番号(UCR)についてもGS1の SSCC(Serial Shipping Container Code)とISO15459(輸送単 位識別子)の二案がある(表)。
グローバル・サプライチェーンの管 理については、多様な関係者、多様 な各国輸出入制度があり、情報化の 流れが各所で寸断されているほか、特 定の単一の識別コードで管理できるほ ど単純ではない。
このため、運用さ れている多様なコード体系を踏まえた 変換テーブルの汎用性の確保が要請さ れている状況にとどまっているのが実 情である。
ただし、災害時のグローバルな部 品調達や、輸送中の状態管理はサプ ライチェーン管理のためにも必要とさ れており、そのための標準的なコード 体系による迅速・円滑かつ代替性に 富んだ柔軟な輸送システムの構築が必 要とされている。
この結果、機械式シールや電子シ ールによる積み荷目録と対応コード、 輸出入関係書類の照合を図ることは 不可欠であるが、その貼付が犯罪防 止を保証する機能は低いとされている。
また、国際コンテナ管理の実態と しては、ガントリークレーン、コンテ ナヤード上の搬送機器やコンテナヤー ドからの鉄道・トラックによるコンテ ナの搬出入地点では、CCTVカメ ラが設置され、OCR方式によるコ ンテナコードの読み取りが一般的に行 われている(図2)。
そこでは、九五%程度の読み取り 精度が確保されているため、別途シ ールやRFIDタグ上のコード付けを 義務付ける必要はなく、またコンテナ コード(ISO6346)のテキスト 変換・データベースとの照合が実施さ れているため、新規に別の機器設置 を義務付ける必要性や意義も少ない と指摘されている(図2)。
⑶コンテナ管理に関わる標準規格 コンテナ管理に関わる標準規格も、 利用周波数、タグの貼付位置、コー ド体系、コードの付与・管理者体系 等、目的・用途に応じて多種多様で ある。
ISO10891:二〇〇九、 ISO10374:一九九一/一九 九五、ISO17363、ISO1 7263:二〇一二およびISO1 ているが、ANSI─HSSPに見る 米国内での議論では、コンテナに関わ る犯罪として、電子シールそのものの 取り外し・復元、偽電子シールの貼 付、コンテナドアごとの取り外しによ る積載貨物の盗難・差し替え、コン テナそのものの改造による麻薬・武 器等の密輸品の隠匿事例が紹介され ている。
※ S O L E(The International Society of Logistics:国際ロジスティクス学会)は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・三〇 〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部では毎 月「フォーラム」を開催し、講演、研究発 表、現場見学などを通じてロジスティクス・ マネジメントに関する活発な意見交換、議 論を行っている。
次回フォーラムのお知らせ 次回フォーラムは2013年12月 10日(火)、東京・浜松町の商工会 館6Fで開催する。
「自動車の機能安 全」の研究報告等を予定している。
同フォーラムは年間計画に基づいて 運営しているが、単月のみの参加も 可能。
一回の参加費は6000円。
お 問い合わせは事務局( s-sogabe@ mbb.nifty.ne.jp)まで。
表 国際コンテナタグに関するRFID 規格の例 ISO 10374 ISO 17363 ISO 18185 ISO 10891 ISO 14185&6 ISO 17262&3 用途 コンテンツ 貼付場所 通信規格 側面ドア部ドア開閉部側面側面 ISO コード 容器管理 荷主付与 出荷コード 電子シール ドア開閉 暗証コード 輸送単位 識別コード 行政監視 税関コード 位置データ 860MHz 帯 2.45GHz 帯 433MHz 帯 電池付 433MHz 帯 2.45GHz 帯 電池付 非特定(5.8GHz) 注 (注1) 現在もHSSPの同グループのウェブサイト はANSIウェブサイト内に設置されている。
(注2) Technology Asset Protection Association http://www.tapa-asia.org/ http://www.logi-navi.jp/tapa/cat13/ (社)日本工業技術振興協会
