2023年3月号
特集

「SIP物流標準ガイドライン」で情報共有

「ソサエティ5・0」のロジスティクス  「戦略イノベーション創造プログラム(SIP)」は、内閣総理大臣を議長とする「総合科学技術・イノベーション会議」が、省庁の壁を越えてトップダウンで国の研究開発予算を配分した国家プロジェクトだ。
破壊的イノベーションの創出を狙う「ムーンショット型」の研究開発に主眼を置き、2014年度〜18年度のSIP第1期では、自動運転技術やサイバーセキュリティーなど計11の研究課題に総額1580億円の予算が投じられた。
 当初計画を1年前倒しして18年度に始まったSIP第2期では研究課題の一つに「スマート物流サービス」が採択された。
22年度までの5年間で計約59億円の予算が割り当てられた。
「物流」をテーマとする国の研究開発費としては過去最大規模と見られる。
そこに特定企業と国が投資を折半するマッチングファンドとして、民間企業側から総額25・3億円の人的・物的投資が加わった。
 国土交通省が所管する国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所に「SIPスマート物流サービス研究推進法人」がプログラムの事務局として設置されて、内閣府の政策統括官として研究をリードするプログラムディレクターにはヤマト運輸の田中従雅執行役員が任命された。
 スマート物流サービスの最終的な目標は、日本政府が提唱する「ソサエティ5・0」の具現化だ(図1)。
原始の狩猟社会、農耕社会、工業社会を経て発展してきた現代を、モノの製造や流通よりも情報に価値を置いた「情報社会=ソサエティ4・0」と位置付け、これを仮想空間と現実空間の融合によって経済発展と社会的課題の解決を両⽴する「⼈間中⼼の社会=ソサエティ5・0」に進化させるという未来社会のコンセプトだ。
 日本の物流は現状では、製配販3層でデータが分断されて個別最適に陥り、物流事業者はデジタル化の遅れからアナログの運用を余儀なくされている。
そこでスマート物流サービスでは、「物流・商流データ基盤に関する技術の開発」と「省力化・自動化に資する自動データ収集技術の開発」を目的に計15のプロジェクトが進められた。
 具体的な内容は図2の通り。
そこに「業種等データ構築技術」としてくくられている業種別の物流共同化プロジェクトは現在、「要素基礎技術」として開発された富士通の「物流・商流データ基盤」をプラットフォームに利用した実証実験を済ませて順次、社会実装に移っている。
 その運用はすべて、「SIP物流標準ガイドライン」に準拠している。
物流・商流データ基盤における業務プロセス、メッセージ、マスターを定義したもので、21年10月に初版が公開された。
現在は「Ver.2.01」が発行しており、今後は2年ごとの更新が想定されている。
物流・商流データ基盤を構築する過程で必要になった副産物だが、これをもって「スマート物流サービスの最大の成果」とする関係者が多い。
 「SIP標準」は国が定めた最上位の物流標準であり、今後は幅広い業種業界に普及すると見られている。
既存の業界標準EDIや個別仕様の物流システムもSIP標準を共通言語とすることで情報共有が容易になる。
業種をまたいだ共同化を柔軟に企画できる。
「仮想空間と現実空間の融合」に必要なピースが埋まり、フィジカルインターネットの世界が近付くと期待されている。

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