2023年3月号
特集

四つの要素基礎技術と標準化・共通処理方式

 幅広く活用できる物流・商流データ基盤を実現するため、研究ユニットは以下の要素技術の開発に取り組んだ。
①アクセス権限コントロール技術 ②非改ざん性を担保する技術 ③個別管理データを抽出し変換する技術 ④他の先行するプラットフォームとの連携技術 ①アクセス権限コントロール技術  データ提供者がデータの公開範囲や漏洩をコントロールできるようにする技術を指す。
従来、こうしたアクセス権限コントロールは、データ登録先のリソース(データベースやファイル)ごとにアクセス権限を設定する必要があり、作用が煩雑で設定ミスによる漏洩リスクが課題となっていた。
 今回はアクセス権限を利用者ごとに制限できる機能を実現し、リソースごとの設定操作を不要にした。
また、設定の矛盾を検知・回避するため、ルール衝突の自動検知機構や、アイコンをマウスでクリックするだけで設定できるような簡単な画面を開発した。
②非改ざん性担保技術  データの改ざんを防ぐとともに、来歴情報の透明性を高めることで、改ざんされていないことを確認できるようにする技術を指す。
今回は改ざん防止だけでなく、万が一改ざんされた場合にも復旧できるようにするため、主に二つの対策を施した。
 まず、従来の改ざん防止技術と異なり今回は、正当な権限を持つ管理者であってもデータ操作履歴を変更できないようにした。
 また従来は、追跡可能なデータ操作履歴はブロックチェーン(取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術。
データの破壊・改ざんが極めて困難とされている)に配置されたデータや操作履歴に限られていた。
今回の技術では、ブロックチェーンの外に保管されているデータに関しても、操作履歴をブロックチェーンに統合できるようにした。
 この二つの対策によって操作履歴のトレーサビリティを強化したため、仮にセキュリティを突破されデータを改ざんされた場合でも、元のデータを確実に復旧できるようにした。
 技術開発後の効果検証では、100万件のデータに1日10万件のアクセスがあるデータベースでデータ改ざんが発生し、改ざん検知までに日々改ざん箇所が拡大してくというケースを想定した。
検証の結果、従来技術では検知から復旧まで3・5人日要していたものが1人日で可能となり、工数が70%削減できた。
③個別管理データ抽出・変換技術  データ基盤に提供されるデータは個々に異なる形式で作成されており、共同利用するには共通のデータ形式に変換する必要がある。
従来のデータ基盤はデータ提供者が変換作業しており、その手間が参加障壁にもなっていた。
今回は、データ基盤内に先行して提供されていた数十社のデータの変換事例などをシステムが学習し、新規参加企業のデータを自動で変換する技術を開発した。
 効果を検証したところ、出荷指示データや事前出荷明細情報(ASN)など四つの変換定義と一つの変換テーブルの作成が必要なケースで、変換定義の作成工数を30人日9人日へと、70%削減できた。
④他プラットフォーム連携技術  他の業界とデータ流通を活性化させるため、他のブロックチェーンや非ブロックチェーンと透明性・信頼性を担保して連携する技術を指す。
 従来のプラットフォーム間連携は、連携用アプリ自体の透明性は確保できていなかったが、今回はブロックチェーン技術を拡張した連携アプリ(アダプタ)を提供することで、流通するデータの真正性を担保できるようにした。
従来の技術では、大量のデータをブロックチェーンで連携すると処理能力が不足して処理の滞留が生じていたが、今回開発した技術は、連携データのハッシュ値(元データから特定のアルゴリズムで生成される不規則な文字列。
改ざん検知などに用いられる)のみをコネクションチェーン(ブロックチェーン間相互接続に用いられるセキュリティ技術)で連携し、実データはデータベース技術で連携することで、処理能力とデータの完全性の両立を図っている。
社会実装時のビジネスモデル  社会実装時のビジネスモデルとして、富士通はこれらの要素基礎技術をIaaS(従量課金制で提供されるインフラ)やPaaS(従量課金制で提供されるプラットフォーム)で、物流のスマート化を必要とする業界などに提供し、サービス提供料を収益とする。
 23年度には、SIPスマート物流サービスの枠組みで、物流・商流データ基盤を用いた効率化を進めている5業界(地域物流、リテール、医療機器、医療材料、アパレル)に、社会実装に向けたアプローチを行う。
また、他業界や一般事業者にも展開を図っていく。
 さまざまな業界との間で、物流・商流データ基盤を使ったデータ連携や情報分析が可能となるように、「物流情報標準ガイドライン」に定義されたメッセージ標準・コード標準に従った標準化を実装した。
アプリケーションの開発や運用を効率的に行えるよう、共通の処理方式も作成した。
 要素基礎技術の販売開始から3年間で、10者以上の業界団体やリーディングカンパニーに導入し、物流情報連携プラットフォームとしてのデファクトスタンダードを目指す。
25年度までの累積売上高として約3・9億円を見込んでいる。

月刊ロジスティクス・ビジネス

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