2023年3月号
特集
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リテール サプライチェーン全域を対象にデータ連携
業界全域を対象とするデータ基盤
日用消費財の川上のサプライチェーンでは小ロット・多頻度・短リードタイムの物流が展開されている。
しかし、製配販の垂直連携や各層での水平連携が十分でないため、納品トラックの待機時間発生や積載率の低下などが発生している。
一方、コンビニなどのサプライチェーンの川下では各大手企業が独自の物流ネットワークを構築して個別最適を推し進めた結果、トラックドライバーを始めとする物流人員の不足が深刻化している。
リテール(日用消費財・コンビニ等)データ基盤ユニットでは、各種物流課題を解決することを目的にリテール業界サプライチェーン全域の企業が利用可能なデータ基盤を開発し、これを活用した「物流オペレーションデータ連携」「共同物流支援システム」「コンビニ共同物流システム」を構築した。
物流オペレーションデータ連携 紙媒体の納品伝票を使った検品が日用消費財業界では今も主流となっている。
そのため、紙の伝票運用に起因する煩雑な入出荷業務やトラックの待機時間などといった問題が顕在化している。
一部事業者間では納品伝票の電子化や着車バース予約システムの導入が進みつつあるものの、サービスごとにデータ項目・レイアウトが異なることから、発荷主・着荷主はそれぞれのシステムに対応した使い分けをする必要があり、それが非効率を招いていた。
課題解決に向けて、異なるサービスプロバイダーが提供する伝票電子化ソリューションが発行した伝票キーをSIPデータ基盤に格納して蓄積し、他ソリューションからの伝票キー情報問い合せをデータ基盤から抽出して回答する納品伝票エコシステムを開発した。
メーカー、卸、小売りなどの各プレーヤーが標準的にデータを活用できるようになるため、出荷場所と荷届先が異なる伝票電子化サービスを使用している場合であっても、ユーザーはそれぞれの相手先システムを意識せずにデータにアクセスし、利用することができる。
自社システムとの連携もできるため、新たに専用システムを入れる必要もない。
納品伝票データの伝票キー情報は着車バース予約システムの運用でも利用できるので、こちらとのシステム連携も行っている。
到着する複数の納品トラックが異なる予約システムを使用している場合でも、着側が容易にトラックの到着時間や貨物内容が把握できるため、事前準備などによる物流現場の効率化が可能になる。
この仕組みのプロトタイプモデルを用いて20年度に行った概念実証では伝票発行作業時間(分/日)が85・4%削減、入荷検品作業時間(時間/日)が68・4%削減、トラック待機時間(分/台)が57・2%削減という結果が得られた。
続く21年度には出荷場所側がF-LINEとウイングアーク1st、荷届先側が北海道ロジサービスとTSUNAGUTE、データ基盤は富士通という社会実装に近い組み合わせでの実業務運用テストを実施した(図1)。
ウイングアーク1stとTSUNAGUTEが納品データと受領データを送受信し、データ基盤とは伝票キー情報をやり取りした。
納品伝票エコシステムを用いた一連の物流オペレーションデータ連携によって、従来の紙の納品伝票で必要だった印刷、仕分け、保管などの作業が不要となり大幅な効率化を実現。
商品受領確認のサインもスマホ画面で完結できるようになり、ドライバーや拠点の事務作業負担も軽減できた。
共同輸配送支援システム 日用消費財業界は商品の多品目化・小ロット化の進展によってトラックの積載率低下や車両不足が深刻化している。
一部メーカー間での共同輸配送の取り組みが進みつつあるものの、業界全体としては局地的な範囲にとどまっている。
そこで、メーカー荷主同士の共同輸送マッチングを効率化する共同輸配送支援システムを開発した。
複数荷主がアップロードした輸送データをSIPデータ基盤上で連携させることで、システムが最適な共同輸送の相手先を提示してくれる。
利用に際して、荷主は「出荷日」「着荷日」「出荷地名」「出荷地郵便番号」「出荷地住所」「着荷地名」「着荷地住所」「着荷地郵便番号」「重量」「容積」「商品カテゴリー」の11項目からなる共通フォーマットの形式で輸送実績データを入力。
その情報がデータ基盤のデータベースに登録され、マッチング可能な組み合わせが数理計画のデジタルアニーラ(組み合わせ最適化問題を高速で解く技術)を用いて算出される。
荷主はマッチングさせたい自社の輸送情報をシステムに照会すると、共同輸配送可能な組み合わせがダウンロードできる(図2)。
20年度に実施したプロトタイプを用いた概念実証ではアサヒ飲料、アサヒビール、味の素、エステー、大塚製薬、花王、カメヤマ、キッコーマン、キユーピー、牛乳石鹸共進社、キリンビール、クラシエホームプロダクツ、小林製薬、サンスター、大日本除虫菊、ダリヤ、日清食品、ハウス食品、ライオンの19メーカーが輸配送実績データを提供した。
各社の19年1月から12月の輸配送実績データから車両削減効果の推計を行い、荷主マッチング技術の活用効果を算出した。
その結果、メーカー19社合計の幹線輸送における帰り荷必要車両の改善期待値の削減率は16・1%。
メーカー9ペアによる地域配送における必要車両数は個社配送から共同配送へと転換した場合の改善期待値の削減率が11・9%となった。
21年度にはマッチングシステムの利用を希望するメーカー13社の20年1月から12月の輸配送実績データを用いて検証を行った。
こちらでは空車の削減率が17%となった。
都道府県別の発着上位20パターンも分析した。
1位と2位が兵庫県~大阪府や神奈川県~茨城県といった近距離マッチングとなった一方で、兵庫県~愛知県や埼玉県~大阪府といった中・長距離も上位に入ったことから、共同輸配送支援システムは幅広い距離帯で効果的なマッチングを行えることが確認できた。
コンビニ共同物流システム 大手チェーン小売業界ではコンビニやドラッグストアなどの各社が専用物流センターを設置し、個別最適の物流体制を構築してきた。
しかし、人手不足とコスト上昇が深刻化してくる中でチェーン側の物流ネットワーク維持が難しくなっている上、卸側もチェーン別の専用物流体制への対応に課題が発生している。
これを解決するため、複数の異なるチェーン小売業を対象とするコンビニ共同物流システムを開発した。
構築したシステムではデータハブであるSIPデータ基盤に複数小売の共同配送や、卸センターでの共同在庫を行うために必要となる各種データなどを蓄積。
共同配送や共同在庫の実施時に必要となる小売の商品や店舗といった各種マスタや出荷指示データ、卸センターの入荷・出荷・在庫情報などを条件別に抽出して共有できるようにした。
あわせて小売業側の見込み物量に基づいて納品日や出荷場所、納品場所を指定すると、必要となるカゴ車やトラックの台数を算出できる機能も開発。
店舗ルート、配送スケジュール、配送量予定などを同一のデータフォーマットでデータ基盤に取り込める仕組みを整備した。
20年度のプロトタイプモデルによる概念実証を経て、21年度には都市圏エリアでコンビニ共同物流システムの効果検証を行った。
有明や台場などの都内湾岸付近のセブン─イレブン13店、ファミリーマート13店、ローソン14店の合計40店が参加し、共同物流センターは江東区新砂にある佐川急便のXフロンティアが担当した。
TC型の共同配送では各社専用DCでドライ商品を店別ピッキングした後、共同物流センターに横持ちし、各社店舗へと共同配送。
DC型の共同在庫では飲料カテゴリー限定アイテムを共同物流センターに在庫保管し、店別ピッキングして共同配送を行った。
共同配送と共同在庫の効果を検証したところ、10%以上の上昇を目標値に設定していた労働生産性は、店舗移動距離が13・8%短縮、トラック回転数は69%向上、ルート当り店舗数は10%向上した。
店舗配送トラック数については41・8%削減し、積載率は実証期間中の最大荷量日の容積ベースで7・8ポイント向上した。
コンビニ共同物流システムを用いた共同配送テストは21年度に北海道の札幌と函館でも実施した。
センター間の共同幹線輸送では1便当たりの距離で48%削減、時間で23%削減できた。
店舗への共同配送では1ルート当たり距離で22%削減、時間で20%削減となった。
3種類のビジネスモデルを社会実装 十分な効果を得られたことから、日用消費財業界の主なメーカー、卸、小売、業界団体などが参画する「製・配・販連携協議会」を軸にSIP物流・商流データ基盤を活用した輸配送の共同化とオペレーションデータ連携を進めている。
具体的には①日用消費財メーカーを主とする荷主同士のマッチングサービス②コンビニなどの小売の共同物流を支援するデータ連携サービス③サービスプロバイダーや各事業者間のシームレスな電子伝票の送受信を実現するデータ連携サービス──の三つのサービスを社会実装におけるビジネスモデルとして展開(図3)。
さらに今後は類似する流通形態を持つ業界への水平展開も目指していく。
しかし、製配販の垂直連携や各層での水平連携が十分でないため、納品トラックの待機時間発生や積載率の低下などが発生している。
一方、コンビニなどのサプライチェーンの川下では各大手企業が独自の物流ネットワークを構築して個別最適を推し進めた結果、トラックドライバーを始めとする物流人員の不足が深刻化している。
リテール(日用消費財・コンビニ等)データ基盤ユニットでは、各種物流課題を解決することを目的にリテール業界サプライチェーン全域の企業が利用可能なデータ基盤を開発し、これを活用した「物流オペレーションデータ連携」「共同物流支援システム」「コンビニ共同物流システム」を構築した。
物流オペレーションデータ連携 紙媒体の納品伝票を使った検品が日用消費財業界では今も主流となっている。
そのため、紙の伝票運用に起因する煩雑な入出荷業務やトラックの待機時間などといった問題が顕在化している。
一部事業者間では納品伝票の電子化や着車バース予約システムの導入が進みつつあるものの、サービスごとにデータ項目・レイアウトが異なることから、発荷主・着荷主はそれぞれのシステムに対応した使い分けをする必要があり、それが非効率を招いていた。
課題解決に向けて、異なるサービスプロバイダーが提供する伝票電子化ソリューションが発行した伝票キーをSIPデータ基盤に格納して蓄積し、他ソリューションからの伝票キー情報問い合せをデータ基盤から抽出して回答する納品伝票エコシステムを開発した。
メーカー、卸、小売りなどの各プレーヤーが標準的にデータを活用できるようになるため、出荷場所と荷届先が異なる伝票電子化サービスを使用している場合であっても、ユーザーはそれぞれの相手先システムを意識せずにデータにアクセスし、利用することができる。
自社システムとの連携もできるため、新たに専用システムを入れる必要もない。
納品伝票データの伝票キー情報は着車バース予約システムの運用でも利用できるので、こちらとのシステム連携も行っている。
到着する複数の納品トラックが異なる予約システムを使用している場合でも、着側が容易にトラックの到着時間や貨物内容が把握できるため、事前準備などによる物流現場の効率化が可能になる。
この仕組みのプロトタイプモデルを用いて20年度に行った概念実証では伝票発行作業時間(分/日)が85・4%削減、入荷検品作業時間(時間/日)が68・4%削減、トラック待機時間(分/台)が57・2%削減という結果が得られた。
続く21年度には出荷場所側がF-LINEとウイングアーク1st、荷届先側が北海道ロジサービスとTSUNAGUTE、データ基盤は富士通という社会実装に近い組み合わせでの実業務運用テストを実施した(図1)。
ウイングアーク1stとTSUNAGUTEが納品データと受領データを送受信し、データ基盤とは伝票キー情報をやり取りした。
納品伝票エコシステムを用いた一連の物流オペレーションデータ連携によって、従来の紙の納品伝票で必要だった印刷、仕分け、保管などの作業が不要となり大幅な効率化を実現。
商品受領確認のサインもスマホ画面で完結できるようになり、ドライバーや拠点の事務作業負担も軽減できた。
共同輸配送支援システム 日用消費財業界は商品の多品目化・小ロット化の進展によってトラックの積載率低下や車両不足が深刻化している。
一部メーカー間での共同輸配送の取り組みが進みつつあるものの、業界全体としては局地的な範囲にとどまっている。
そこで、メーカー荷主同士の共同輸送マッチングを効率化する共同輸配送支援システムを開発した。
複数荷主がアップロードした輸送データをSIPデータ基盤上で連携させることで、システムが最適な共同輸送の相手先を提示してくれる。
利用に際して、荷主は「出荷日」「着荷日」「出荷地名」「出荷地郵便番号」「出荷地住所」「着荷地名」「着荷地住所」「着荷地郵便番号」「重量」「容積」「商品カテゴリー」の11項目からなる共通フォーマットの形式で輸送実績データを入力。
その情報がデータ基盤のデータベースに登録され、マッチング可能な組み合わせが数理計画のデジタルアニーラ(組み合わせ最適化問題を高速で解く技術)を用いて算出される。
荷主はマッチングさせたい自社の輸送情報をシステムに照会すると、共同輸配送可能な組み合わせがダウンロードできる(図2)。
20年度に実施したプロトタイプを用いた概念実証ではアサヒ飲料、アサヒビール、味の素、エステー、大塚製薬、花王、カメヤマ、キッコーマン、キユーピー、牛乳石鹸共進社、キリンビール、クラシエホームプロダクツ、小林製薬、サンスター、大日本除虫菊、ダリヤ、日清食品、ハウス食品、ライオンの19メーカーが輸配送実績データを提供した。
各社の19年1月から12月の輸配送実績データから車両削減効果の推計を行い、荷主マッチング技術の活用効果を算出した。
その結果、メーカー19社合計の幹線輸送における帰り荷必要車両の改善期待値の削減率は16・1%。
メーカー9ペアによる地域配送における必要車両数は個社配送から共同配送へと転換した場合の改善期待値の削減率が11・9%となった。
21年度にはマッチングシステムの利用を希望するメーカー13社の20年1月から12月の輸配送実績データを用いて検証を行った。
こちらでは空車の削減率が17%となった。
都道府県別の発着上位20パターンも分析した。
1位と2位が兵庫県~大阪府や神奈川県~茨城県といった近距離マッチングとなった一方で、兵庫県~愛知県や埼玉県~大阪府といった中・長距離も上位に入ったことから、共同輸配送支援システムは幅広い距離帯で効果的なマッチングを行えることが確認できた。
コンビニ共同物流システム 大手チェーン小売業界ではコンビニやドラッグストアなどの各社が専用物流センターを設置し、個別最適の物流体制を構築してきた。
しかし、人手不足とコスト上昇が深刻化してくる中でチェーン側の物流ネットワーク維持が難しくなっている上、卸側もチェーン別の専用物流体制への対応に課題が発生している。
これを解決するため、複数の異なるチェーン小売業を対象とするコンビニ共同物流システムを開発した。
構築したシステムではデータハブであるSIPデータ基盤に複数小売の共同配送や、卸センターでの共同在庫を行うために必要となる各種データなどを蓄積。
共同配送や共同在庫の実施時に必要となる小売の商品や店舗といった各種マスタや出荷指示データ、卸センターの入荷・出荷・在庫情報などを条件別に抽出して共有できるようにした。
あわせて小売業側の見込み物量に基づいて納品日や出荷場所、納品場所を指定すると、必要となるカゴ車やトラックの台数を算出できる機能も開発。
店舗ルート、配送スケジュール、配送量予定などを同一のデータフォーマットでデータ基盤に取り込める仕組みを整備した。
20年度のプロトタイプモデルによる概念実証を経て、21年度には都市圏エリアでコンビニ共同物流システムの効果検証を行った。
有明や台場などの都内湾岸付近のセブン─イレブン13店、ファミリーマート13店、ローソン14店の合計40店が参加し、共同物流センターは江東区新砂にある佐川急便のXフロンティアが担当した。
TC型の共同配送では各社専用DCでドライ商品を店別ピッキングした後、共同物流センターに横持ちし、各社店舗へと共同配送。
DC型の共同在庫では飲料カテゴリー限定アイテムを共同物流センターに在庫保管し、店別ピッキングして共同配送を行った。
共同配送と共同在庫の効果を検証したところ、10%以上の上昇を目標値に設定していた労働生産性は、店舗移動距離が13・8%短縮、トラック回転数は69%向上、ルート当り店舗数は10%向上した。
店舗配送トラック数については41・8%削減し、積載率は実証期間中の最大荷量日の容積ベースで7・8ポイント向上した。
コンビニ共同物流システムを用いた共同配送テストは21年度に北海道の札幌と函館でも実施した。
センター間の共同幹線輸送では1便当たりの距離で48%削減、時間で23%削減できた。
店舗への共同配送では1ルート当たり距離で22%削減、時間で20%削減となった。
3種類のビジネスモデルを社会実装 十分な効果を得られたことから、日用消費財業界の主なメーカー、卸、小売、業界団体などが参画する「製・配・販連携協議会」を軸にSIP物流・商流データ基盤を活用した輸配送の共同化とオペレーションデータ連携を進めている。
具体的には①日用消費財メーカーを主とする荷主同士のマッチングサービス②コンビニなどの小売の共同物流を支援するデータ連携サービス③サービスプロバイダーや各事業者間のシームレスな電子伝票の送受信を実現するデータ連携サービス──の三つのサービスを社会実装におけるビジネスモデルとして展開(図3)。
さらに今後は類似する流通形態を持つ業界への水平展開も目指していく。
