2023年3月号
特集
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医療材料 医療機関の積極参加で共同院外倉庫が実現
保管スペースの制約が生む非効率
現状、メーカーから出荷された医療材料は複数の卸を通して各病院へ納品される。
ただし病院内の在庫スペースは限られており、納品量を少なくする必要があることから、積載率が低く配送回数が多い非効率な状況になっている。
コロナ禍発生後は、医療材料の安定確保のため一度に大量購入する必要も生じ、現在も保管に苦労している医療機関は多い。
また、生命関連産業という特性上、欠品や在庫差異が許されない高精度の在庫管理や入出荷検品が求められるが、医療現場の多くは在庫管理や受発注業務を人的判断や人海戦術に頼っており、医療機関ごとにルールも異なる。
こうしたことから物流コストは高くなりがちだが、医療材料の多くは公定価格なので、価格転嫁することは難しい。
医療材料が持続的に安定供給される社会にするには、こうした状況を改善する必要がある。
そこで帝人を代表機関とする研究ユニットを組成し、新たな物流システムの研究開発に取り組んだ。
帝人はRFID技術を用いて、ICタグが添付された物品の入出庫・ロケーション・通過を検知するシステムを展開しており、医療機関に対しても医療材料の物流効率化ソリューションとして提供している。
今回の研究では、データ基盤の構築・運営やRFIDデバイスなど実証機器の提供を担った。
ユニットにはこのほか、医療材料卸の小西医療器、医療材料メーカーのホギメディカル、聖路加国際病院、東京医科歯科大学医学部附属病院が参画した。
また、支援機関として佐川急便が配送や実証の場を提供したほか、院内物流システムのベンダーなど複数のIT企業が社会実装までのシステム構築や保守業務で、大手コンサルタントが社会実装までのプロジェクトサポートやマーケティング面で協力した。
配送回数3割減、院内物流作業6割減 医療材料物流に関しては、これまでもメーカーや商社などが改善を試みてきたが、立場の強い医療機関側が経営レベルで物流合理化に取り組むケースがほとんどなく、成果に結びつきにくかった。
それに対し今回は医療機関側が主体的に参画し、複数の病院で使用される医療材料を一括保管する共同院外倉庫を構築、その倉庫を中心に共同物流の仕組みを整えたことが大きな特徴となっている。
共同院外倉庫は参画した各病院から近い、東京都品川区にある佐川グローバルロジスティクスの流通センターに設置した。
複数の病院から発注された医療材料は、メーカーから共同院外倉庫に配送し、その上で発注元の病院を巡回するルートを組んで届けることにした。
広い在庫スペースを確保することで一度に納品できる量を増やし、積載効率の向上と配送回数の削減を図った。
また、病院内での仕分け作業を減らすため、共同院外倉庫内で各病院の使用部署ごとの仕分けを行った。
共同院外倉庫の運営は、医療材料卸の小西医療器が担当した。
まずは、近隣の各医療機関と共同院外倉庫の物流情報を共有できる医療材料データ基盤の構築に取り組んだ。
共同院外倉庫からは受注情報、出荷情報、製品情報などを、医療機関からは発注情報、入荷予定情報、消化情報、製品情報などをやり取りする仕組みを、業務システム環境上に整えた。
並行して共同院外倉庫では、ピッキング、出荷、棚卸など準備作業の効率化を進めた。
医療材料物流は医療機関の内外を問わず人材の流動性が激しく、商品把握などのスキル維持が課題となっている。
医療材料の種類も多様化している上に、ピッキング作業や出荷検品、棚卸作業時に一つ一つバーコードで読み込んでいるため多くの工数が発生している。
そこで今回はRFIDタグを使用して一括読み取りを実施し、経験の浅い人材でも容易に対応できるようにした。
医療機関側の業務効率化も必要だった。
現在、医療機関内では使用した医療材料の登録をバーコード読み取りや手入力で行っており、多量の工数が発生している。
手術で使用する医療材料については、術式ごとに準備する手術物品リストが存在しているが、リストの定期的な見直しはされておらず、準備する医療材料に過不足が生じて無駄な作業の一因となっている。
そこで医療機関内にポスト型のRFID読み取り機を設置し、RFIDカードを投函するだけでリアルタイムに使用実績登録と補充の発注をできるようにして、 バーコードの読み取り工数を削除した。
また、医療材料の使用情報をリアルタイムで共同院外倉庫に連携することで、ピッキング準備などを前倒しできるようにした。
手術の準備リストも精度を高め、適正数量の医療材料で準備できるよう取り組んだ。
既存の商習慣を見直す機会にもなった。
一例として注射器の小分け作業が挙げられる。
以前は10階に配送する注射器は3本1組、9階への配送分は5本1組、8階への配送分は10本1組というように、配送先の個別要望に応じて小分けしていたが、卸と病院で協議を重ね、10階には5本1組、8階には5本2組と、小分けの仕方を最大公約数に集約することで合理化した(図表2)。
一連の取り組みは2021年10月から22年12月にかけて実施した。
構築した物流システムに関しては約半年間実証実験を行った。
実証実験前はホギメディカルから聖路加国際病院と東京医科歯科大学医学部附属病院に、年間各240回行っていた配送が、2病院合わせて年間336回と30%減少した。
共同院外倉庫でのピッキング作業工数は、バーコード読み取りからRFID読み取り機に切り替えたことで、棚入れが41%減、小分けが46%減、定数ピッキングが29%減、臨時ピッキングが63%減、出荷が57%減となった。
医療機関内における医療材料登録工数は、受入検品が77%減、ピッキングが75%減、棚入れ・カード貼付が80%減、発注作業が73%減となった。
受入検品時の1日当たり作業時間は475分から190分へと約60%削減された(図表3)。
実証実験で成果を得られたことから、1月から物流システムを本格稼働した。
今後は他の病院にも参加を募り、東京都内での規模拡大を目指す。
「院内に保管スペースがない」「複数の病院が近くに存在している」「物量が多い」の3条件を満たす医療機関は、共同院外倉庫が改善効果を発揮しやすいため、まず首都圏にある300床以上の病院426施設をターゲットに開拓に乗り出す。
次いで25年以降は、ターゲット地域を中部・近畿など他の大都市圏に広げていく。
中部・近畿ではターゲットとなる病院は現状、計538施設ある。
全国には300床以上の病院が1533施設あり、関東・中部・近畿だけでその6割を占めている(図表4)。
参加病院数は23年には4施設、25年には12施設、30年には100施設を目指す。
社会実装後のビジネスモデル(図表5)として、帝人は協力事業者と共にRFID関連システムの提供、共同院外倉庫の運用、入庫・保管・配送の効率化を行う。
共同院外倉庫からはRFIDカードを貼付した医療材料が医療機関へと共同配送され、検品は自動で行われる。
医療材料が使用されるとRFIDカードが回収され、補充品が共同院外倉庫に自動発注される。
また、共同院外倉庫から出荷されると、医療材料のメーカーや卸に補充品が自動発注される。
帝人と協力事業者は、こうした物流システムの利用料を医療機関から得て収益とする。
参加病院数が増えた後には、同じくSIPスマート物流のテーマとなっている医療機器物流ともデータ連携し、この物流システムの対象を医療機器にも拡大するとともに、病院での医療材料の消費情報などを医療機器メーカーにも提供することで新しいデータビジネスを創出する構想も描いている。
ただし病院内の在庫スペースは限られており、納品量を少なくする必要があることから、積載率が低く配送回数が多い非効率な状況になっている。
コロナ禍発生後は、医療材料の安定確保のため一度に大量購入する必要も生じ、現在も保管に苦労している医療機関は多い。
また、生命関連産業という特性上、欠品や在庫差異が許されない高精度の在庫管理や入出荷検品が求められるが、医療現場の多くは在庫管理や受発注業務を人的判断や人海戦術に頼っており、医療機関ごとにルールも異なる。
こうしたことから物流コストは高くなりがちだが、医療材料の多くは公定価格なので、価格転嫁することは難しい。
医療材料が持続的に安定供給される社会にするには、こうした状況を改善する必要がある。
そこで帝人を代表機関とする研究ユニットを組成し、新たな物流システムの研究開発に取り組んだ。
帝人はRFID技術を用いて、ICタグが添付された物品の入出庫・ロケーション・通過を検知するシステムを展開しており、医療機関に対しても医療材料の物流効率化ソリューションとして提供している。
今回の研究では、データ基盤の構築・運営やRFIDデバイスなど実証機器の提供を担った。
ユニットにはこのほか、医療材料卸の小西医療器、医療材料メーカーのホギメディカル、聖路加国際病院、東京医科歯科大学医学部附属病院が参画した。
また、支援機関として佐川急便が配送や実証の場を提供したほか、院内物流システムのベンダーなど複数のIT企業が社会実装までのシステム構築や保守業務で、大手コンサルタントが社会実装までのプロジェクトサポートやマーケティング面で協力した。
配送回数3割減、院内物流作業6割減 医療材料物流に関しては、これまでもメーカーや商社などが改善を試みてきたが、立場の強い医療機関側が経営レベルで物流合理化に取り組むケースがほとんどなく、成果に結びつきにくかった。
それに対し今回は医療機関側が主体的に参画し、複数の病院で使用される医療材料を一括保管する共同院外倉庫を構築、その倉庫を中心に共同物流の仕組みを整えたことが大きな特徴となっている。
共同院外倉庫は参画した各病院から近い、東京都品川区にある佐川グローバルロジスティクスの流通センターに設置した。
複数の病院から発注された医療材料は、メーカーから共同院外倉庫に配送し、その上で発注元の病院を巡回するルートを組んで届けることにした。
広い在庫スペースを確保することで一度に納品できる量を増やし、積載効率の向上と配送回数の削減を図った。
また、病院内での仕分け作業を減らすため、共同院外倉庫内で各病院の使用部署ごとの仕分けを行った。
共同院外倉庫の運営は、医療材料卸の小西医療器が担当した。
まずは、近隣の各医療機関と共同院外倉庫の物流情報を共有できる医療材料データ基盤の構築に取り組んだ。
共同院外倉庫からは受注情報、出荷情報、製品情報などを、医療機関からは発注情報、入荷予定情報、消化情報、製品情報などをやり取りする仕組みを、業務システム環境上に整えた。
並行して共同院外倉庫では、ピッキング、出荷、棚卸など準備作業の効率化を進めた。
医療材料物流は医療機関の内外を問わず人材の流動性が激しく、商品把握などのスキル維持が課題となっている。
医療材料の種類も多様化している上に、ピッキング作業や出荷検品、棚卸作業時に一つ一つバーコードで読み込んでいるため多くの工数が発生している。
そこで今回はRFIDタグを使用して一括読み取りを実施し、経験の浅い人材でも容易に対応できるようにした。
医療機関側の業務効率化も必要だった。
現在、医療機関内では使用した医療材料の登録をバーコード読み取りや手入力で行っており、多量の工数が発生している。
手術で使用する医療材料については、術式ごとに準備する手術物品リストが存在しているが、リストの定期的な見直しはされておらず、準備する医療材料に過不足が生じて無駄な作業の一因となっている。
そこで医療機関内にポスト型のRFID読み取り機を設置し、RFIDカードを投函するだけでリアルタイムに使用実績登録と補充の発注をできるようにして、 バーコードの読み取り工数を削除した。
また、医療材料の使用情報をリアルタイムで共同院外倉庫に連携することで、ピッキング準備などを前倒しできるようにした。
手術の準備リストも精度を高め、適正数量の医療材料で準備できるよう取り組んだ。
既存の商習慣を見直す機会にもなった。
一例として注射器の小分け作業が挙げられる。
以前は10階に配送する注射器は3本1組、9階への配送分は5本1組、8階への配送分は10本1組というように、配送先の個別要望に応じて小分けしていたが、卸と病院で協議を重ね、10階には5本1組、8階には5本2組と、小分けの仕方を最大公約数に集約することで合理化した(図表2)。
一連の取り組みは2021年10月から22年12月にかけて実施した。
構築した物流システムに関しては約半年間実証実験を行った。
実証実験前はホギメディカルから聖路加国際病院と東京医科歯科大学医学部附属病院に、年間各240回行っていた配送が、2病院合わせて年間336回と30%減少した。
共同院外倉庫でのピッキング作業工数は、バーコード読み取りからRFID読み取り機に切り替えたことで、棚入れが41%減、小分けが46%減、定数ピッキングが29%減、臨時ピッキングが63%減、出荷が57%減となった。
医療機関内における医療材料登録工数は、受入検品が77%減、ピッキングが75%減、棚入れ・カード貼付が80%減、発注作業が73%減となった。
受入検品時の1日当たり作業時間は475分から190分へと約60%削減された(図表3)。
実証実験で成果を得られたことから、1月から物流システムを本格稼働した。
今後は他の病院にも参加を募り、東京都内での規模拡大を目指す。
「院内に保管スペースがない」「複数の病院が近くに存在している」「物量が多い」の3条件を満たす医療機関は、共同院外倉庫が改善効果を発揮しやすいため、まず首都圏にある300床以上の病院426施設をターゲットに開拓に乗り出す。
次いで25年以降は、ターゲット地域を中部・近畿など他の大都市圏に広げていく。
中部・近畿ではターゲットとなる病院は現状、計538施設ある。
全国には300床以上の病院が1533施設あり、関東・中部・近畿だけでその6割を占めている(図表4)。
参加病院数は23年には4施設、25年には12施設、30年には100施設を目指す。
社会実装後のビジネスモデル(図表5)として、帝人は協力事業者と共にRFID関連システムの提供、共同院外倉庫の運用、入庫・保管・配送の効率化を行う。
共同院外倉庫からはRFIDカードを貼付した医療材料が医療機関へと共同配送され、検品は自動で行われる。
医療材料が使用されるとRFIDカードが回収され、補充品が共同院外倉庫に自動発注される。
また、共同院外倉庫から出荷されると、医療材料のメーカーや卸に補充品が自動発注される。
帝人と協力事業者は、こうした物流システムの利用料を医療機関から得て収益とする。
参加病院数が増えた後には、同じくSIPスマート物流のテーマとなっている医療機器物流ともデータ連携し、この物流システムの対象を医療機器にも拡大するとともに、病院での医療材料の消費情報などを医療機器メーカーにも提供することで新しいデータビジネスを創出する構想も描いている。
