2023年3月号
特集

東レ 新型低コストRFIDの複数同時読取技術

塗布型半導体で世界最上級性能  在庫管理やトレーサビリティに用いられるバーコードやQRコードは、商品を一つずつ至近距離で読み取る必要があった。
近年、利用が広まっているRFIDは、電波を発するタグを用いて、複数同時読み取り(アンチコリジョン)できることが利点だがコストが高い。
そこで東レを研究責任者とする「アンチコリジョン機能を有する高効率な自動認識タグの開発」ユニットは、新型低コストRFIDタグの複数同時読み取り技術の開発に取り組んだ。
 RFIDタグはICチップとアンテナを組み合わせたもので、ICチップ内の情報を無線送信し、読み取り機で受信することでデータをやり取りする。
そのため複数同時読み取りが可能だが、コストの高さが普及のハードルとなってきた。
 打開策として低コストICチップの開発が進められている。
その一つは、従来の半導体材料であるシリコンよりも低コストかつ高い半導体性能を持ったカーボンナノチューブ複合体を、インクとしてフィルムやガラス基板に塗布することで半導体回路を形成する技術。
東レは、同技術を用いた半導体では世界最高クラスの性能を実現しており、RFIDタグやセンサーなどへの応用を目指している。
 今回の研究では、こうした塗布式RFIDタグの複数同時読み取り技術をテーマとした。
 ただし複数のタグから発せられる電波が同時に読み取り機に届くと、電波同士が衝突して読み取りが阻害される。
そこで研究ユニットは、タグ同士で送信のタイミングをずらし、より多くのタグから無線を受信できる技術の開発に取り組んだ。
通信のバッティングを避けろ  まず、一つの読み取り機に対して複数のRFIDタグが存在する場合、1秒間での通信成功率が99%となるタグの個数を調べた。
タグごとにスロット(通信経路を占有できる時間枠)を割り当て、スロットに合わせてデータを送信するという条件を設定し、スロット数と同時読み取り可能なタグ数の理論値を検証した。
スロット数が200の時は10個強だった同時読み取り可能タグ数は、スロット数600では25個前後、1千では40個弱と増えていくという結果が得られた。
 ただし、スロット数を増加させると通信所要時間も増えるので、通信速度の向上が求められる。
タグ一つ当たりの送信データ量を64ビットとして、小売業者へのヒアリングに基づき目標設定した1秒間同時読み取り可能数10個を実現するには、30キロヘルツの通信速度が必要との計算結果となった。
 次に、こうした通信性能を実現する半導体回路を設計し、シミュレーションにより期待通りの動作となっていることを確認した。
 その上で、その回路をシリコン半導体マイコンで再現し、性能を実測した。
数キロヘルツから100キロヘルツまで実験した結果、いずれの通信速度でも理論値通りのタグ数を同時に読み取れることが確認できた。
 国費での研究開発は22年5月に終了したが、東レは引き続き研究開発を推進し、23年度には社会実装のための実証実験実施を目指している。

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