2023年3月号
特集

山形大学 アナログ世代になじみやすい電子タグを開発

紙のように情報を目視確認可能  RFIDタグのように、物品の個別情報を自動認識・共有・可視化することは物流の高効率化に必須だが、IT化一辺倒では高齢化した物流スタッフには受け入れられにくい。
ならば紙伝票のように目視確認できる機能を盛り込むなど、慣れ親しんだ手順で作業できる仕様にすることで、使うハードルを下げられる可能性がある。
山形大学を研究責任者とする「物流の課題解決に資する印刷型フレキシブルセンシングデバイスの開発」研究ユニットは、そうした自動認識センシングデバイスの開発に取り組んだ。
 このデバイスは、ワインボトルなど曲面を持つ商品にも貼り付けられるフレキシブル(折り曲げ・巻きつけ可能)な、無線通信機能付きの電子ペーパー。
電子ペーパーとは、紙のような視認性や携帯性を備え、表示内容を電子的に書き換えることができる媒体を指す。
そのため、電子デバイスとして物流の現場でタイムリーに配送情報などを更新・伝送するとともに、紙ラベルのように宛名や商品名といった情報を文字表示して、目視可能にできる。
 デバイスにはこのほか、温湿度や衝撃などを計測するセンサーも搭載し、運送途中での商品状態を確認したいという荷主側のニーズにも配慮している。
従来、運送途中で商品状態を確認するには開梱作業が伴うため、作業が増える上に開梱による商品ダメージの懸念もあったが、センシングデバイスを用いることで開梱不要なまま品質を追跡管理できるようになる。
研究ユニットではこれによって、品質の追跡管理を行う場合の作業時間を33%以上削減できると見込んでいる。
 研究ユニットは並行して、需要を把握するため、食品・医療・精密機器などの分野でメーカーの声を収集した。
その結果、農水産・食品、医療、精密機器業界では物流の過程における温度・湿度・衝撃の管理ニーズがあること、日系企業がASEANコールドチェーン領域への進出に意欲的だが同地域では品質管理やモニタリングが課題となっており、センシングデバイスが必要とされる可能性は高いことなどが、情報として得られた。
国内でターゲットとなる物流市場の規模として、2018年度時点で3千600億円とにらんでいる。
日本碍子が製造販売開始  国費での研究開発は22年5月に完了した。
その後、山形大学は開発で連携した企業2社とともに社会実装に向けた取り組みを進めている。
 2社のうち、エネルギー供給の要となる薄型二次電池の開発を担った日本碍子との間では、物流現場を想定した実証試験を行い、商品のモニタリングに有効に機能することを確認した。
日本碍子はすでに事業化を見据えた製造販売を始めており、コールドチェーンやトラッキングなどに使われている。
 もう1社、センサーデバイスの設計製造とシステム事業を担当するイノラックスジャパンは、ある程度の量産可能な製造ラインを構築、試験的な生産を行い、信頼度試験や環境試験を進めた。

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