2023年1月号
特集
特集
花王が目指すコネクテッドロジスティクス
工場から小売店までの一気通貫
花王グループは現在、国内10カ所に生産拠点を置いている。
それに対して物流拠点(ロジスティクスセンター:LC)は、家庭品が全国24カ所、化粧品7カ所、化学品25カ所を展開している。
工場によって生産品目は異なるが、LCにはそれぞれフルラインの商品を在庫している。
また、家庭品と化粧品の拠点数の違いは、受注から納品までのそれぞれのリードタイムを反映して設計した結果である。
家庭品に関しては受注後24時間以内に納品するために、北は北海道から南は沖縄まで全国をカバーするかたちでLCを配置している。
以下、本稿では花王のコンシューマープロダクツ事業(一般消費者向け)のSCMについて説明する。
他の日用品メーカーが卸経由で商品を供給しているのに対して、花王グループは販売会社の花王グループカスタマーマーケティング(KCMK)が卸物流の荷主として活動することで、中間流通を自社運営している。
また、花王は一部の小売物流機能も有している。
ノンアセット型3PLの花王システム物流がチェーンストアなどから物流センター業務を受託して、物流子会社の花王ロジスティクスが現場を運営している。
図1はロジスティクス活動の概要だが、全国10工場から計31の物流拠点(LC)への積送(1次輸送)に、1日当たり大型車約500台を運行している。
可能なルートにおいてはJR貨物や海上輸送へのモーダルシフトを積極的に採り入れている。
LCから小売店への配送(2次輸送)は、1日当たり小型車約1200台を使ってルート配送している。
一部、大型車による小売共配センターへの納品もある。
このように当社はメーカーでありながら、工場から小売物流までを一気通貫で手掛けている。
それにより幅広い視点からサプライチェーン全体の最適化に向けた活動ができていると考えている。
例えば、トラックの積載効率を高めるために、当社は商品の包装や仕様にまで踏み込んで最適化を検討している。
花王グループはESGを経営の根幹に据え、ESG視点での「よきモノづくり」を通して、持続可能な社会の実現に貢献する方針を掲げている。
商品設計の最初の段階からESGの視点で臨むと共に、SCMにおいては顧客・生活者の立場から情報の流れをとらえ、サプライチェーン全体が最適化されるように商品設計・事業計画を立案して、生産・供給のモノの流れをとらえている。
当社は卸物流を自社運営しているために、他のメーカーと比べて顧客や販売の情報をタイムリーに把握できる。
そのデータを基に需要を予測し、生産部門や販売部門、物流部門が一つの予測値を共有して、それぞれの計画を立案することで連携・同期化を図っている。
精度の高い需要予測がこれらの活動の基礎となる。
例えば、部門別や工程別・機能別に最適化を追求すれば、在庫の水準はいたずらに膨らんでしまう傾向になる。
調達部門は低価格で購入しようとするため大量購入に向かい、工場は生産効率を高めようとバッチサイズを大きくしようとする。
また、販売は欠品による機会ロスを抑えようとするだろう。
これらはいずれも在庫水準が高くなる方向に働く。
それに伴い保管や輸送のコスト増や売り残った場合の廃棄リスクが高まり、資本効率を低下させることになる。
精度の高い予測を行い、その予測値に基づいて各部署が連携をとることで、在庫水準は適正化される。
これにより、モノの流れの最適化が可能になる。
需要予測の精度を上げる 製品にはそれぞれライフサイクルがある。
新商品や改良品の発売前には作り溜めが発生する。
在庫水準が一時的に高まり、販売開始直後にはそれが一気に小売店に供給される。
その後は安定的に販売・生産が行われる「通常期」に入り、最後に販売終了期を迎える。
それぞれの時期によって効果的なSCMの手法は異なる。
そのうち「新製品期」と「通常期」におけるデータを活用した予測とモニタリングの方法について説明する。
・ 通常期のSCM 通常期は、過去の売り上げ実績データをベースに予測する。
実績データを時系列分析した結果、「トレンド(季節変動)」「通常変動」「イベント」の三つに分解して管理している。
季節変動は毎年ほぼ同じ波を描く。
再現性が高いため過去の実績データから当年の需要を統計的手法によってかなり正確に予測できる。
もちろん日々の需要は変動する。
しかし、トレンドの予測値からの乖離は通常は一定の幅に収まる(通常変動)。
それに対して「通常変動」と呼ぶには大きすぎる変動を「イベント」と位置付けている。
その多くはプロモーションや価格変動などに起因するため、KCMKを通じて事前に販促情報などを入手することで予測精度を高めている。
高めた予測結果について、花王のSCM部門とSCMに関連する部門が、図2に示すモニター画面を使って情報を共有して、在庫の適正化やサービスレベルの向上を図っている。
図2に赤字で示した「当日」から左側が過去実績、右側が予測・計画値を表している。
グラフの始点から右上に向かってほぼ真っ直ぐ伸びていく赤線が出荷実績・予測値(累計)、横に伸びる水色の線が全国の物流拠点で必要な総在庫量(全LC在庫)、ジグザグの紫色の線が日々の花王のトータル在庫量(生産計画を把握可能)を示している。
従って紫の線と水色の線(全LC在庫)の乖離分が工場在庫ということになる。
在庫を管理する上でのポイントは、顧客への出荷に必要な在庫量を切らさない、すなわち紫の線と水色の線が重ならないようにして、なおかつ大きくなり過ぎないように生産計画を立案することである。
このモニターを使って一部の専用品などを除く花王の全製品について、向こう約3カ月先まで計画を管理している。
先述の突発的な「イベント」には、KCMKから商談情報や「D7」と呼ぶ1週間前の受注情報を入手して関係部署全員で共有して対応している。
また工場倉庫から各地のLCへの供給は基本的に自動化して、在庫切れが起きないようにしている。
・ 新製品のSCM 新製品の発売時には通常期とは異なり、初期納品が発生する。
2回目以降のリピート納品とは出荷傾向が異なるため、両方の要素をそれぞれ考慮して出荷量の予測・モニタリングを行っている。
図3の通り、初回納品の予測値とリピートの予測値の合計が出荷予測値となる。
出荷を開始して以降は、短期的な実績を統計的手法を用いて分析して予測を繰り返し、累計生産量との差を見て生産を調整している。
すなわち、出荷状況をタイムリーに把握して素早くアクションを起こすことで、生産と実需との乖離を抑制している。
当社では統計的手法を用いた需要予測を約20年前から実施してきた。
当時の最先端の手法を採用し、その後も使用するデータやアルゴリズムの改良を加えてきた。
しかし、その方法で出荷開始後の予測はできても、過去実績のない新製品については、発売前に精度の高い予測を行うことが難しかった。
新製品の売り上げ予測が外れると、当然ながら原材料や製品在庫が余ってしまう、もしくは欠品を起こしてしまう。
そこで現在、AI(機械学習)を活用した新製品の需要予測モデルの開発に取り組んでいる。
現在は、市場情報、商品情報の他、ネットやSNS、TV、広告、気象などの情報を「特徴量(予測に寄与する変数)」として、DataRobot社様のAIプラットフォームで、機械学習や深層学習などのアルゴリズムを使って予測している。
その結果、新製品の発売前の需要予測の的中率は、従来の77%から91%まで向上している。
豊橋工場で新たな物流モデル構築 当社の豊橋工場(愛知県豊橋市)では現在、「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」と称して、持続可能なサプライチェーンの実現に向けて、生産と物流が一体となった拠点への変革を進めている。
2022年2月に工場併設型の新倉庫を着工しており、23年上期の竣工を予定している。
建設面積7150平方メートルの施設に、収容能力120万ケースの自動倉庫をはじめ、ケース仕分けロボット、無人搬送車(AGV)、自動運転フォークリフトなどを導入して、自由度の高い完全自動化を実現することを目指している。
仕分け作業用のフロアはマテハン設備を固定化することなく、仕分けロボットとAGVがパレットへの積み付けとパレットからの荷下ろしを同時並行で自在に処理する。
入出庫能力は1日当たりそれぞれ最大4万ケースを見込んでいる。
自動化された新倉庫を運営する上でもサプライチェーンデータの利活用がポイントになる。
例えば製造棟から物流棟へ自動で製品を搬入するには、様々な搬送機器やマテハン設備を経由する。
その結節点でスムーズにモノを動かすには、各種のシステムや設備の連携が必要になる。
生産計画と倉庫の物流計画、積送(輸送)計画を連携させることで工場全体の計画が作成され、それをベースに自動化設備への指示が可能になる。
同じアプローチで、Hacobu社様のバース管理システムを導入して、そのデータを出庫システムと連携させることで、トラックの入出庫のスマート化を実現する。
ドライバーは事前にバース管理システムで荷積みの時間を予約する。
トラックがLCのゲートに到着すると、車両ナンバー認証システムとバース管理システムの情報を連携させて自動入場を処理、トラックを予約したバースに誘導する。
一方、トラックが入場したという情報は出庫システムに送信されて、バースにトラックが到着したらすぐに荷積みを開始できるように現場に準備を指示する。
荷積みの済んだトラックがゲートを通過して退場した情報も管理者で把握する。
これによって場内の待機時間が短縮されて、「ホワイト物流」に貢献することができる。
さらに庫内作業の完全自動化を目指し、大和ハウス工業様、イオングローバルSCM様、日立物流様、豊田自動織機様と当社の5社が協力して、トラックへの荷物の積卸しに自動運転フォークリフトを活用する実証実験にも取り組んでいる。
花王の「坂出LC」(香川県坂出市)を発荷主、イオングローバルSCM様の「四国LC」(香川県坂出市)を着荷主として、輸送会社の日立物流様をはじめ関係者のデータを連携させて、実際のオーダーに基づいて継続的に自動でモノを動かしている。
共創型の輸送ネットワークに転換 これまで自社内で蓄積してきたデータの活用について具体的に説明してきた。
これからは他社を含めた社会全体でいかにデータを活用していくかが重要と考えている。
よって最後に、当社が実現を目指すロジスティクスの将来ビジョン「Connected logistics for ESG」を紹介する。
花王は“ESGよきものづくり”に基づき、ESG視点で関係者と連携したサステナブルなロジスティクスを目指している。
現在のドライバー不足をはじめとする物流の課題は社会全体の問題であり、個々の企業努力だけで解決しようとしても限界がある。
これまで当社はメーカー直販体制をベースとしたハブ・アンド・スポークのサプライチェーンネットワークを強みにしてきた。
しかし、これからはそれを生産者から顧客までをつなぐ共創型のロジスティクスネットワークに再構築していく必要があると考えている。
現在の輸送ネットワークを図4の左側の図のように表現している。
一部で共同輸送も行われてはいるものの、基本的には荷主ごとに自社の荷物だけを輸送している。
そのために積載率は1次輸送が70%、2次輸送は50%程度にとどまっていると現状を認識している。
これを図4の右図のようにそれぞれ100%、80%まで引き上げたい。
当社も従来から共同輸送は行ってきたが、個々の企業がピンポイントで相手を見つけるというこれまでのやり方では目標には到底たどりつけない。
同業他社や物流事業者、卸業者、顧客などとしっかりとつながり、さらには同業だけではなく他の業界のネットワークとも積極的につながって、共創型の輸送ネットワークを実現したいと考えている。
そのためには、各社がサプライチェーンに関するデータを共有するデータプラットフォームを構築する必要がある。
デジタルツイン技術などを活用してフィジカルなモノの動きをサイバー空間上に再現させて、ネットワークの最適化を実現する基盤を検討していく必要もあるだろう。
現在、政府が主導して、物流のあるべき将来像としての「フィジカルインターネット」を2040年までに実現することを目指す活動が進められている。
当社としても、サプライチェーンの最適化や人と社会に優しいレジリエンスで持続可能なサプライチェーンの構築に向けて、多くの企業と志を同じくして活動していきたい。
当部署でも先端技術の活用や多様なパートナーとの協働によって最適化を図る活動に引き続き取り組んでいく。
本稿を読んでくれたサプライチェーン関係者たちと必要なデータを共有して、カーボンネガティブで無駄のない社会を実現するために一緒にチャレンジしていくことを楽しみにしている。
それに対して物流拠点(ロジスティクスセンター:LC)は、家庭品が全国24カ所、化粧品7カ所、化学品25カ所を展開している。
工場によって生産品目は異なるが、LCにはそれぞれフルラインの商品を在庫している。
また、家庭品と化粧品の拠点数の違いは、受注から納品までのそれぞれのリードタイムを反映して設計した結果である。
家庭品に関しては受注後24時間以内に納品するために、北は北海道から南は沖縄まで全国をカバーするかたちでLCを配置している。
以下、本稿では花王のコンシューマープロダクツ事業(一般消費者向け)のSCMについて説明する。
他の日用品メーカーが卸経由で商品を供給しているのに対して、花王グループは販売会社の花王グループカスタマーマーケティング(KCMK)が卸物流の荷主として活動することで、中間流通を自社運営している。
また、花王は一部の小売物流機能も有している。
ノンアセット型3PLの花王システム物流がチェーンストアなどから物流センター業務を受託して、物流子会社の花王ロジスティクスが現場を運営している。
図1はロジスティクス活動の概要だが、全国10工場から計31の物流拠点(LC)への積送(1次輸送)に、1日当たり大型車約500台を運行している。
可能なルートにおいてはJR貨物や海上輸送へのモーダルシフトを積極的に採り入れている。
LCから小売店への配送(2次輸送)は、1日当たり小型車約1200台を使ってルート配送している。
一部、大型車による小売共配センターへの納品もある。
このように当社はメーカーでありながら、工場から小売物流までを一気通貫で手掛けている。
それにより幅広い視点からサプライチェーン全体の最適化に向けた活動ができていると考えている。
例えば、トラックの積載効率を高めるために、当社は商品の包装や仕様にまで踏み込んで最適化を検討している。
花王グループはESGを経営の根幹に据え、ESG視点での「よきモノづくり」を通して、持続可能な社会の実現に貢献する方針を掲げている。
商品設計の最初の段階からESGの視点で臨むと共に、SCMにおいては顧客・生活者の立場から情報の流れをとらえ、サプライチェーン全体が最適化されるように商品設計・事業計画を立案して、生産・供給のモノの流れをとらえている。
当社は卸物流を自社運営しているために、他のメーカーと比べて顧客や販売の情報をタイムリーに把握できる。
そのデータを基に需要を予測し、生産部門や販売部門、物流部門が一つの予測値を共有して、それぞれの計画を立案することで連携・同期化を図っている。
精度の高い需要予測がこれらの活動の基礎となる。
例えば、部門別や工程別・機能別に最適化を追求すれば、在庫の水準はいたずらに膨らんでしまう傾向になる。
調達部門は低価格で購入しようとするため大量購入に向かい、工場は生産効率を高めようとバッチサイズを大きくしようとする。
また、販売は欠品による機会ロスを抑えようとするだろう。
これらはいずれも在庫水準が高くなる方向に働く。
それに伴い保管や輸送のコスト増や売り残った場合の廃棄リスクが高まり、資本効率を低下させることになる。
精度の高い予測を行い、その予測値に基づいて各部署が連携をとることで、在庫水準は適正化される。
これにより、モノの流れの最適化が可能になる。
需要予測の精度を上げる 製品にはそれぞれライフサイクルがある。
新商品や改良品の発売前には作り溜めが発生する。
在庫水準が一時的に高まり、販売開始直後にはそれが一気に小売店に供給される。
その後は安定的に販売・生産が行われる「通常期」に入り、最後に販売終了期を迎える。
それぞれの時期によって効果的なSCMの手法は異なる。
そのうち「新製品期」と「通常期」におけるデータを活用した予測とモニタリングの方法について説明する。
・ 通常期のSCM 通常期は、過去の売り上げ実績データをベースに予測する。
実績データを時系列分析した結果、「トレンド(季節変動)」「通常変動」「イベント」の三つに分解して管理している。
季節変動は毎年ほぼ同じ波を描く。
再現性が高いため過去の実績データから当年の需要を統計的手法によってかなり正確に予測できる。
もちろん日々の需要は変動する。
しかし、トレンドの予測値からの乖離は通常は一定の幅に収まる(通常変動)。
それに対して「通常変動」と呼ぶには大きすぎる変動を「イベント」と位置付けている。
その多くはプロモーションや価格変動などに起因するため、KCMKを通じて事前に販促情報などを入手することで予測精度を高めている。
高めた予測結果について、花王のSCM部門とSCMに関連する部門が、図2に示すモニター画面を使って情報を共有して、在庫の適正化やサービスレベルの向上を図っている。
図2に赤字で示した「当日」から左側が過去実績、右側が予測・計画値を表している。
グラフの始点から右上に向かってほぼ真っ直ぐ伸びていく赤線が出荷実績・予測値(累計)、横に伸びる水色の線が全国の物流拠点で必要な総在庫量(全LC在庫)、ジグザグの紫色の線が日々の花王のトータル在庫量(生産計画を把握可能)を示している。
従って紫の線と水色の線(全LC在庫)の乖離分が工場在庫ということになる。
在庫を管理する上でのポイントは、顧客への出荷に必要な在庫量を切らさない、すなわち紫の線と水色の線が重ならないようにして、なおかつ大きくなり過ぎないように生産計画を立案することである。
このモニターを使って一部の専用品などを除く花王の全製品について、向こう約3カ月先まで計画を管理している。
先述の突発的な「イベント」には、KCMKから商談情報や「D7」と呼ぶ1週間前の受注情報を入手して関係部署全員で共有して対応している。
また工場倉庫から各地のLCへの供給は基本的に自動化して、在庫切れが起きないようにしている。
・ 新製品のSCM 新製品の発売時には通常期とは異なり、初期納品が発生する。
2回目以降のリピート納品とは出荷傾向が異なるため、両方の要素をそれぞれ考慮して出荷量の予測・モニタリングを行っている。
図3の通り、初回納品の予測値とリピートの予測値の合計が出荷予測値となる。
出荷を開始して以降は、短期的な実績を統計的手法を用いて分析して予測を繰り返し、累計生産量との差を見て生産を調整している。
すなわち、出荷状況をタイムリーに把握して素早くアクションを起こすことで、生産と実需との乖離を抑制している。
当社では統計的手法を用いた需要予測を約20年前から実施してきた。
当時の最先端の手法を採用し、その後も使用するデータやアルゴリズムの改良を加えてきた。
しかし、その方法で出荷開始後の予測はできても、過去実績のない新製品については、発売前に精度の高い予測を行うことが難しかった。
新製品の売り上げ予測が外れると、当然ながら原材料や製品在庫が余ってしまう、もしくは欠品を起こしてしまう。
そこで現在、AI(機械学習)を活用した新製品の需要予測モデルの開発に取り組んでいる。
現在は、市場情報、商品情報の他、ネットやSNS、TV、広告、気象などの情報を「特徴量(予測に寄与する変数)」として、DataRobot社様のAIプラットフォームで、機械学習や深層学習などのアルゴリズムを使って予測している。
その結果、新製品の発売前の需要予測の的中率は、従来の77%から91%まで向上している。
豊橋工場で新たな物流モデル構築 当社の豊橋工場(愛知県豊橋市)では現在、「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」と称して、持続可能なサプライチェーンの実現に向けて、生産と物流が一体となった拠点への変革を進めている。
2022年2月に工場併設型の新倉庫を着工しており、23年上期の竣工を予定している。
建設面積7150平方メートルの施設に、収容能力120万ケースの自動倉庫をはじめ、ケース仕分けロボット、無人搬送車(AGV)、自動運転フォークリフトなどを導入して、自由度の高い完全自動化を実現することを目指している。
仕分け作業用のフロアはマテハン設備を固定化することなく、仕分けロボットとAGVがパレットへの積み付けとパレットからの荷下ろしを同時並行で自在に処理する。
入出庫能力は1日当たりそれぞれ最大4万ケースを見込んでいる。
自動化された新倉庫を運営する上でもサプライチェーンデータの利活用がポイントになる。
例えば製造棟から物流棟へ自動で製品を搬入するには、様々な搬送機器やマテハン設備を経由する。
その結節点でスムーズにモノを動かすには、各種のシステムや設備の連携が必要になる。
生産計画と倉庫の物流計画、積送(輸送)計画を連携させることで工場全体の計画が作成され、それをベースに自動化設備への指示が可能になる。
同じアプローチで、Hacobu社様のバース管理システムを導入して、そのデータを出庫システムと連携させることで、トラックの入出庫のスマート化を実現する。
ドライバーは事前にバース管理システムで荷積みの時間を予約する。
トラックがLCのゲートに到着すると、車両ナンバー認証システムとバース管理システムの情報を連携させて自動入場を処理、トラックを予約したバースに誘導する。
一方、トラックが入場したという情報は出庫システムに送信されて、バースにトラックが到着したらすぐに荷積みを開始できるように現場に準備を指示する。
荷積みの済んだトラックがゲートを通過して退場した情報も管理者で把握する。
これによって場内の待機時間が短縮されて、「ホワイト物流」に貢献することができる。
さらに庫内作業の完全自動化を目指し、大和ハウス工業様、イオングローバルSCM様、日立物流様、豊田自動織機様と当社の5社が協力して、トラックへの荷物の積卸しに自動運転フォークリフトを活用する実証実験にも取り組んでいる。
花王の「坂出LC」(香川県坂出市)を発荷主、イオングローバルSCM様の「四国LC」(香川県坂出市)を着荷主として、輸送会社の日立物流様をはじめ関係者のデータを連携させて、実際のオーダーに基づいて継続的に自動でモノを動かしている。
共創型の輸送ネットワークに転換 これまで自社内で蓄積してきたデータの活用について具体的に説明してきた。
これからは他社を含めた社会全体でいかにデータを活用していくかが重要と考えている。
よって最後に、当社が実現を目指すロジスティクスの将来ビジョン「Connected logistics for ESG」を紹介する。
花王は“ESGよきものづくり”に基づき、ESG視点で関係者と連携したサステナブルなロジスティクスを目指している。
現在のドライバー不足をはじめとする物流の課題は社会全体の問題であり、個々の企業努力だけで解決しようとしても限界がある。
これまで当社はメーカー直販体制をベースとしたハブ・アンド・スポークのサプライチェーンネットワークを強みにしてきた。
しかし、これからはそれを生産者から顧客までをつなぐ共創型のロジスティクスネットワークに再構築していく必要があると考えている。
現在の輸送ネットワークを図4の左側の図のように表現している。
一部で共同輸送も行われてはいるものの、基本的には荷主ごとに自社の荷物だけを輸送している。
そのために積載率は1次輸送が70%、2次輸送は50%程度にとどまっていると現状を認識している。
これを図4の右図のようにそれぞれ100%、80%まで引き上げたい。
当社も従来から共同輸送は行ってきたが、個々の企業がピンポイントで相手を見つけるというこれまでのやり方では目標には到底たどりつけない。
同業他社や物流事業者、卸業者、顧客などとしっかりとつながり、さらには同業だけではなく他の業界のネットワークとも積極的につながって、共創型の輸送ネットワークを実現したいと考えている。
そのためには、各社がサプライチェーンに関するデータを共有するデータプラットフォームを構築する必要がある。
デジタルツイン技術などを活用してフィジカルなモノの動きをサイバー空間上に再現させて、ネットワークの最適化を実現する基盤を検討していく必要もあるだろう。
現在、政府が主導して、物流のあるべき将来像としての「フィジカルインターネット」を2040年までに実現することを目指す活動が進められている。
当社としても、サプライチェーンの最適化や人と社会に優しいレジリエンスで持続可能なサプライチェーンの構築に向けて、多くの企業と志を同じくして活動していきたい。
当部署でも先端技術の活用や多様なパートナーとの協働によって最適化を図る活動に引き続き取り組んでいく。
本稿を読んでくれたサプライチェーン関係者たちと必要なデータを共有して、カーボンネガティブで無駄のない社会を実現するために一緒にチャレンジしていくことを楽しみにしている。
