2023年4月号
特集
特集
小売・EC物流の市場規模と業態別トレンド
年率5%程度の市場規模拡大が続く
矢野経済研究所の調べによると2021年度の「小売・EC物流」の市場規模は、物流事業者の販売高ベースで、前年度比105・1%の7兆9千億円(速報値)だった(図表1)。
増加の主な要因としては、小売業全体の市場規模拡大に加え、消費者向け物販における電子商取引(EC)化率の伸長が挙げられる。
消費者向けEC関連荷物の特徴である多品種、少量、小口化が進むことで荷役費や輸送費が上昇している。
なかでも物流コストがかさむラストワンマイル物流の増加が、小売・EC物流の市場規模を押し上げている。
経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2021年のBtoC EC市場規模は前年比7・35%増の20兆6950億円だった。
そのうち物販系は13兆2865億円で前年比8・61%増と大きく増加した。
物販系のEC化率も8・78%となり、前年より約0・7ポイント上昇した。
小売・EC市場の22年度の市場規模は前年度比104・3%の8兆2400億円(前年度比104・3%)を見込む。
コロナ禍による特需は収束に向かいつつあり、前年度と比較すると成長の勢いはやや鈍化するものの、EC化率の伸長による物量(個数)の増加傾向は依然として続いており、燃料費や人件費等のコストも上昇しているため、小売・EC物流市場の拡大基調は続くと見ている。
さらに23年度は前年比105・6%、24年度は同105・2%と、小売市場全体の伸びを大きく上回る年率5%程度の成長を予想している(図表2)。
その主な要因はEC化率の伸長である。
同じ商品・同じ数量を取り扱う場合でも、実店舗販売と比較すると、ECはピッキング費用とラストワンマイルの配送費が上乗せされるため、物流費の比率が高い。
さらに商品の多様化に伴うSKUの増加が小売・EC物流市場の規模を底上げすると予想した。
なお、本稿における小売・EC物流の対象範囲は図表3の通り小売りの物流センター以降の川下であり、対象となる担い手は主に物流事業者である。
小売・EC事業者自らが流通加工や配送を行っている場合の費用は含めていない。
フードデリバリーサービス(配送代行サービス)事業者による配送も対象外としている。
また、EC物流にはBtoBとBtoCの二つのパターンがあるが、以下、本稿ではBtoC-EC物流について述べる。
EC物流のコスト構造 一般に企業の物流費は、①輸送費、②在庫・保管費、③荷役・作業費(仕分け、包装・梱包、流通加工等)、④その他(情報管理等)の四つに分類できる。
小売業においてはそのうち輸送費が最も大きな割合を占めるといわれており、輸送費の増加は物流費全体に大きな影響を与える。
とりわけBtoC-ECのラストワンマイルは、少量多品種・多頻度・配送先の多さが特徴であり、小売業のなかでも特に輸送費の割合が高くなる傾向がある。
また、他業界と比較して、EC物流は仕分け、包装・梱包、流通加工等、倉庫内の荷役作業にかかる費用の割合が大きいという特徴もある。
小売業の物流は消費者へ商品を届ける最終工程となるために、二次加工や小分け作業、値札付けや梱包などの作業が多い。
調達・生産段階に比べてロット(製品の最小単位)が小さいので、必然的に作業量が増える。
ただし、同じ小売業でも取り扱う商品の特性や店舗フォーマットによって、EC物流のトレンドには違いがある。
図表4に、食品スーパー、百貨店、コンビニエンスストア、ドラッグストア、大型家電専門店、無店舗小売店(EC専業)の各業態におけるEC物流の特徴と動向を整理した。
各業態においては、自社の強みを活かしながら、いかに消費者に求められるサービスを適切な水準で提供できるかが重要となる。
BtoCラストワンマイルの展開 BtoC-ECのラストワンマイルは、配送先が全国各地に分散しているため、全国ネットワークを展開する大手宅配便事業者へ委託されるのが一般的である。
人手不足が深刻化するなか、宅配便事業者は増加を続ける荷物に対応できる効率的な仕組みや体制づくりを求められている。
宅配は、配達先が日によって異なるため、最適な配送ルートが日々異なるという特徴がある。
それに対して昨今は、最適な配送を自動で算出する配車管理システムやAI等による自動ルート組み機能の導入が進み、誰でも効率的な配送ができるような仕組みが構築されつつある。
荷物の届け方(消費者の受取方法)も多様化している。
コロナ禍を契機として置き配が広く認知された。
駅などに設置されている宅配ロッカーや、コンビニやドラッグストア等の店舗を受け渡し窓口とする自宅外受取の需要も高まっている。
既存の大手宅配便事業者以外のラストワンマイルの担い手についても言及しておきたい(図表5)。
各地域の中小配送事業者が協業して組合などの組織を作り、首都圏全域など広域エリアの配送を手がける動きがみられる。
ラストワンマイル物流の需要拡大を受け、配送事業者同士のこうした協業は今後も進むと考えられる。
また、コンビニの商品配送や飲食店のフードデリバリーなどにおいて、主に配送を担っているのは「配送代行サービス」である。
そのドライバーの多くは、プロのドライバーとしてのライセンスを持たない自家用の、いわゆる「白ナンバー」や軽貨物の「黄ナンバー」であり、基本的に法律上は物流事業者とはみなされていない。
しかし、ラストワンマイル物流の担い手としての存在感は高まっており、配送代行サービス事業者と物流事業者の垣根は曖昧になりつつある。
物流現場の人手不足は時を追うごとに深刻化している。
さらに今後は労働規制の強化によってドライバー1人当たりの総労働時間が短くなっていくことから、荷物が運べなくなる分岐点は既に間近に迫っていると考えられる。
EC物流のクライシスを回避するには、右に挙げたような宅配大手以外の配送・配達サービスがそれぞれの強みを活かして事業を発展できるように、改めて事業内容を整理するとともに、消費者や働き手が不利益を被らない最低限の共通ルール整備が急がれる。
これからのEC物流マーケット 今後もEC物流は、消費者のライフスタイルの多様化に対応するために、様々な形に変化しながら拡大していくものと考えられる。
消費者ニーズの多様化や他社との差別化のため、EC物流における包装・梱包、荷役、流通加工等の付加価値サービスのニーズは今後も増加していくことが見込まれる。
また、作業量の増加に伴い、EC物流のセンターの自動化・省人化の動きも加速する。
ドローンやロボットによる配達の自動化も広がっていくだろう。
しかし、物流をこれから維持・発展させていくためには、物流事業者による効率化・無人化の取り組みだけでは十分ではない。
EC事業者をはじめとする荷主や、消費者一人一人の意識改革と協力が必要不可欠である。
再配達の削減や物量平準化への取り組み、積載効率の改善、消費者への協力の呼びかけなどにより、荷主や荷物の受け手側が効率的なラストワンマイル物流の一翼を担う必要性が高まっていく。
増加の主な要因としては、小売業全体の市場規模拡大に加え、消費者向け物販における電子商取引(EC)化率の伸長が挙げられる。
消費者向けEC関連荷物の特徴である多品種、少量、小口化が進むことで荷役費や輸送費が上昇している。
なかでも物流コストがかさむラストワンマイル物流の増加が、小売・EC物流の市場規模を押し上げている。
経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、2021年のBtoC EC市場規模は前年比7・35%増の20兆6950億円だった。
そのうち物販系は13兆2865億円で前年比8・61%増と大きく増加した。
物販系のEC化率も8・78%となり、前年より約0・7ポイント上昇した。
小売・EC市場の22年度の市場規模は前年度比104・3%の8兆2400億円(前年度比104・3%)を見込む。
コロナ禍による特需は収束に向かいつつあり、前年度と比較すると成長の勢いはやや鈍化するものの、EC化率の伸長による物量(個数)の増加傾向は依然として続いており、燃料費や人件費等のコストも上昇しているため、小売・EC物流市場の拡大基調は続くと見ている。
さらに23年度は前年比105・6%、24年度は同105・2%と、小売市場全体の伸びを大きく上回る年率5%程度の成長を予想している(図表2)。
その主な要因はEC化率の伸長である。
同じ商品・同じ数量を取り扱う場合でも、実店舗販売と比較すると、ECはピッキング費用とラストワンマイルの配送費が上乗せされるため、物流費の比率が高い。
さらに商品の多様化に伴うSKUの増加が小売・EC物流市場の規模を底上げすると予想した。
なお、本稿における小売・EC物流の対象範囲は図表3の通り小売りの物流センター以降の川下であり、対象となる担い手は主に物流事業者である。
小売・EC事業者自らが流通加工や配送を行っている場合の費用は含めていない。
フードデリバリーサービス(配送代行サービス)事業者による配送も対象外としている。
また、EC物流にはBtoBとBtoCの二つのパターンがあるが、以下、本稿ではBtoC-EC物流について述べる。
EC物流のコスト構造 一般に企業の物流費は、①輸送費、②在庫・保管費、③荷役・作業費(仕分け、包装・梱包、流通加工等)、④その他(情報管理等)の四つに分類できる。
小売業においてはそのうち輸送費が最も大きな割合を占めるといわれており、輸送費の増加は物流費全体に大きな影響を与える。
とりわけBtoC-ECのラストワンマイルは、少量多品種・多頻度・配送先の多さが特徴であり、小売業のなかでも特に輸送費の割合が高くなる傾向がある。
また、他業界と比較して、EC物流は仕分け、包装・梱包、流通加工等、倉庫内の荷役作業にかかる費用の割合が大きいという特徴もある。
小売業の物流は消費者へ商品を届ける最終工程となるために、二次加工や小分け作業、値札付けや梱包などの作業が多い。
調達・生産段階に比べてロット(製品の最小単位)が小さいので、必然的に作業量が増える。
ただし、同じ小売業でも取り扱う商品の特性や店舗フォーマットによって、EC物流のトレンドには違いがある。
図表4に、食品スーパー、百貨店、コンビニエンスストア、ドラッグストア、大型家電専門店、無店舗小売店(EC専業)の各業態におけるEC物流の特徴と動向を整理した。
各業態においては、自社の強みを活かしながら、いかに消費者に求められるサービスを適切な水準で提供できるかが重要となる。
BtoCラストワンマイルの展開 BtoC-ECのラストワンマイルは、配送先が全国各地に分散しているため、全国ネットワークを展開する大手宅配便事業者へ委託されるのが一般的である。
人手不足が深刻化するなか、宅配便事業者は増加を続ける荷物に対応できる効率的な仕組みや体制づくりを求められている。
宅配は、配達先が日によって異なるため、最適な配送ルートが日々異なるという特徴がある。
それに対して昨今は、最適な配送を自動で算出する配車管理システムやAI等による自動ルート組み機能の導入が進み、誰でも効率的な配送ができるような仕組みが構築されつつある。
荷物の届け方(消費者の受取方法)も多様化している。
コロナ禍を契機として置き配が広く認知された。
駅などに設置されている宅配ロッカーや、コンビニやドラッグストア等の店舗を受け渡し窓口とする自宅外受取の需要も高まっている。
既存の大手宅配便事業者以外のラストワンマイルの担い手についても言及しておきたい(図表5)。
各地域の中小配送事業者が協業して組合などの組織を作り、首都圏全域など広域エリアの配送を手がける動きがみられる。
ラストワンマイル物流の需要拡大を受け、配送事業者同士のこうした協業は今後も進むと考えられる。
また、コンビニの商品配送や飲食店のフードデリバリーなどにおいて、主に配送を担っているのは「配送代行サービス」である。
そのドライバーの多くは、プロのドライバーとしてのライセンスを持たない自家用の、いわゆる「白ナンバー」や軽貨物の「黄ナンバー」であり、基本的に法律上は物流事業者とはみなされていない。
しかし、ラストワンマイル物流の担い手としての存在感は高まっており、配送代行サービス事業者と物流事業者の垣根は曖昧になりつつある。
物流現場の人手不足は時を追うごとに深刻化している。
さらに今後は労働規制の強化によってドライバー1人当たりの総労働時間が短くなっていくことから、荷物が運べなくなる分岐点は既に間近に迫っていると考えられる。
EC物流のクライシスを回避するには、右に挙げたような宅配大手以外の配送・配達サービスがそれぞれの強みを活かして事業を発展できるように、改めて事業内容を整理するとともに、消費者や働き手が不利益を被らない最低限の共通ルール整備が急がれる。
これからのEC物流マーケット 今後もEC物流は、消費者のライフスタイルの多様化に対応するために、様々な形に変化しながら拡大していくものと考えられる。
消費者ニーズの多様化や他社との差別化のため、EC物流における包装・梱包、荷役、流通加工等の付加価値サービスのニーズは今後も増加していくことが見込まれる。
また、作業量の増加に伴い、EC物流のセンターの自動化・省人化の動きも加速する。
ドローンやロボットによる配達の自動化も広がっていくだろう。
しかし、物流をこれから維持・発展させていくためには、物流事業者による効率化・無人化の取り組みだけでは十分ではない。
EC事業者をはじめとする荷主や、消費者一人一人の意識改革と協力が必要不可欠である。
再配達の削減や物量平準化への取り組み、積載効率の改善、消費者への協力の呼びかけなどにより、荷主や荷物の受け手側が効率的なラストワンマイル物流の一翼を担う必要性が高まっていく。
