2023年4月号
特集
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ドローン/ロボット 宅配自動化作戦の明暗
ドローン宅配「プライムエア」も失速
2022年10月、アマゾンは自動走行ロボット「アマゾンスカウト(Amazon Scout)」による宅配サービスの実験を中止すると発表した。
アマゾンのスポークスパーソンが大手メディアに語ったところによると「顧客ニーズに合致していない」ことが中止の理由だという。
アマゾンスカウトは、高さ約40センチメートル、横幅約30センチメートルほどの小型のクーラーボックスのような筐体に六つの車輪を装備した自動配達ロボットだ。
人の歩行とほぼ同じスピードで歩道上を走行して、人やペット、そのほかの障害物を避けながら目的地まで荷物を運ぶ(写真1)。
受け取り人がアプリなどで到着通知を受けて自宅前の歩道上にいくと、アマゾンスカウトの上部にあるカバーが開く。
利用者が注文品を取り出すと自動でカバーが閉まり、帰路につく。
アマゾンは19年1月、ワシントン州シアトルから北東約60マイルのスノホミッシュ郡の住宅街でアマゾンスカウトのテストを行った。
アマゾンスカウト6台を投入。
「アマゾンスカウト大使(Amazon Scout Ambassador)」と称するアマゾンのスタッフが監視の下、月曜~金曜日の日中にプライム会員に荷物を配達した。
同8月にはカリフォルニア州アーバイン地区でも配達実験を開始。
コロナウイルスの感染拡大が深刻化した20年秋には、ジョージア州アトランタ地区とテネシー州フランクリン地区にもテストエリアを拡大した。
アマゾンスカウトを使った配達は、受け取り人が玄関先まで荷物を取りに行かなくてはならない。
置き配などにあたる機能はないため、利便性という点で課題があるのは理解できる。
しかし、それは当初から自明であった。
それでも他のチェーンストアやスタートアップは宅配ロボットの実験を継続している。
アマゾンはロボット宅配からの完全撤退は否定しているが、報道によると総勢約400人に上るアマゾンスカウトの開発チームは解散して、社内の別部門に移ることになったという。
これによってライバルたちからは後れを取ることになる。
アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス氏の肝いりで始まったドローン配送サービス「プライムエア(Prime Air)」も厳しい状況にある。
アマゾンは昨年12月、カリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションの2カ所で、プライム会員を対象にしたプライムエアの配達実験を開始した。
カレッジステーションでは100ドルのギフトカードをオファーして、エアポートから4マイル圏内に住むプライム会員を対象にテスト参加者を募った。
契約後にはプライムエアのスタッフが実際に住民宅を訪問して、バックヤードに大木や電柱などの障害物がないことなどを確認した。
昨年11月にアマゾンは、32年までに年間5億個の荷物をプライムエアで配達する計画を発表した。
しかし、ニュースサイトの「ビジネスインサイダー」や「ザ・インフォメーション」などが報じたところによると今年1月中旬までのプライムエアの空輸実績は世帯数にして10軒以下にとどまっている。
ロックフォードでドローン宅配の対象世帯となったのは2軒のみで、宅配した回数は3回だけ。
カレッジステーションの対象世帯も5軒に過ぎない。
アマゾンの元従業員が明かしたところによると、プライムエアが失速状態になっているのは、連邦航空局(FAA)からの厳しい規制を課されているためだという。
一本の道路を横切るにも車が通っていないことをいちいち確認しなければならず、複数人での確認作業が必要となる。
FAAが厳しい措置を取っているのは、プライムエアのローンチ前に行った実験での事故が大きく影響している。
アマゾンはドローンの開発実験を行っていたオレゴン州ペンドルトン地区で過去に何度か墜落事故を起こしている。
そのうち21年に起きた事故では小麦農場で火災が発生。
少なくとも20エーカー(東京ドーム2個分弱の広さ)を焼いたと報告されている。
しかし、報道によるとアマゾンは墜落事故の調査が入る前に勝手に証拠を撤去したことが複数回あり、FAAの心象をひどく損ねることになった。
これをFAAは重く受け止め、ドローンが学校や発電所の上を飛ぶことを禁じるとともに、フライトを認可制にして運航に厳しい制限を課したのだ。
アマゾンが独自に開発したプライムエアのドローン「MK27−2」は地上から最大400フィート(約120メートル)を飛行して、最大速度は時速50マイル(時速80キロメートル)に達する。
最大積載量は5ポンド(約2・2キログラム)。
機体を含めた最大総重量は89ポンド(約40キログラム)となっている(写真2)。
利用者のバックヤードなどの目的地まで来ると6フィート(1・8メートル)まで降下して、パッケージをリリースして飛び去るように設計されている。
ケーブルを使って荷物を下ろしたり、パラシュートで投下するドローン宅配と異なり、人の高さまで高度を下げて届けるため、人やペットなどの障害物を確実に回避できる。
しかし、FAAは、ドローンが荷物を落とすバックヤードの面積が自宅よりも広いことを条件の一つにしている。
さらに、下に人がいる上空を飛ぶことは禁じられているため、バックヤード内に人がいる状態では荷物を届けることができない。
また1・8メートルの高さから注文品を落とすため、梱包は衝撃に耐えられるような特別仕様にする必要がある。
ライバルは開発を継続 昨年末に1万人の従業員を解雇したアマゾンは今年に入ってさらに1万8千人のレイオフを発表したが、プライムエア部門のスタッフには昨年12月時点でレイオフを開始する告知を行っている。
対象とされたのはデザインやメンテナンス、システムエンジニアにテストフライト担当者やフライトオペレーションなど。
本社を含めプライムエアが関わる複数の場所ですでにレイオフは始まっており、ドローン実験のあるペンドルトン地区では半数にも及ぶスタッフが職を解かれた。
一方、ウォルマートは今年1月、ドローン宅配による配達実績が6千件以上となったことを発表した。
プライムエアとの競争で大きく水を明けた格好だ。
同社はドローン開発スタートアップのドローンアップ(DroneUp)、フライトレックス(Flytrex)、ジップライン(Zipline)とそれぞれ提携を結び、注文から30分以内に配達する空輸サービスを提供している。
20年にノースカロライナ州(1店)でドローン配達の実験的運用を開始した。
それが現在はバージニア州(3店)、フロリダ州(9店)、アーカンソー州(4店)、テキサス州(11店)、ユタ州(2店)、アリゾナ州(6店)の7州に拡大しており、対応店舗は36店に及んでいる。
ドローン宅配の対象商品は約2万点あり、空輸で人気となる上位5品目は「グレートバリュー・クッキー&クリーム・アイスクリーム」「2パウンド・レモン」「ロテッサリーチキン」「レッドブル」「バウンティ・ペーパータオル」となっている。
さらにグーグルの親会社のアルファベット傘下のウィング(Wing)は、米国、オーストラリア、フィンランドで既に30万件のドローン宅配の実績を挙げている。
ジェフ・ベゾス氏が13年に表明した注文から30分以内の配達を実現するドローン宅配の夢は、このままではライバルたちに出し抜かれることになってしまう。
アマゾンのスポークスパーソンが大手メディアに語ったところによると「顧客ニーズに合致していない」ことが中止の理由だという。
アマゾンスカウトは、高さ約40センチメートル、横幅約30センチメートルほどの小型のクーラーボックスのような筐体に六つの車輪を装備した自動配達ロボットだ。
人の歩行とほぼ同じスピードで歩道上を走行して、人やペット、そのほかの障害物を避けながら目的地まで荷物を運ぶ(写真1)。
受け取り人がアプリなどで到着通知を受けて自宅前の歩道上にいくと、アマゾンスカウトの上部にあるカバーが開く。
利用者が注文品を取り出すと自動でカバーが閉まり、帰路につく。
アマゾンは19年1月、ワシントン州シアトルから北東約60マイルのスノホミッシュ郡の住宅街でアマゾンスカウトのテストを行った。
アマゾンスカウト6台を投入。
「アマゾンスカウト大使(Amazon Scout Ambassador)」と称するアマゾンのスタッフが監視の下、月曜~金曜日の日中にプライム会員に荷物を配達した。
同8月にはカリフォルニア州アーバイン地区でも配達実験を開始。
コロナウイルスの感染拡大が深刻化した20年秋には、ジョージア州アトランタ地区とテネシー州フランクリン地区にもテストエリアを拡大した。
アマゾンスカウトを使った配達は、受け取り人が玄関先まで荷物を取りに行かなくてはならない。
置き配などにあたる機能はないため、利便性という点で課題があるのは理解できる。
しかし、それは当初から自明であった。
それでも他のチェーンストアやスタートアップは宅配ロボットの実験を継続している。
アマゾンはロボット宅配からの完全撤退は否定しているが、報道によると総勢約400人に上るアマゾンスカウトの開発チームは解散して、社内の別部門に移ることになったという。
これによってライバルたちからは後れを取ることになる。
アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス氏の肝いりで始まったドローン配送サービス「プライムエア(Prime Air)」も厳しい状況にある。
アマゾンは昨年12月、カリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションの2カ所で、プライム会員を対象にしたプライムエアの配達実験を開始した。
カレッジステーションでは100ドルのギフトカードをオファーして、エアポートから4マイル圏内に住むプライム会員を対象にテスト参加者を募った。
契約後にはプライムエアのスタッフが実際に住民宅を訪問して、バックヤードに大木や電柱などの障害物がないことなどを確認した。
昨年11月にアマゾンは、32年までに年間5億個の荷物をプライムエアで配達する計画を発表した。
しかし、ニュースサイトの「ビジネスインサイダー」や「ザ・インフォメーション」などが報じたところによると今年1月中旬までのプライムエアの空輸実績は世帯数にして10軒以下にとどまっている。
ロックフォードでドローン宅配の対象世帯となったのは2軒のみで、宅配した回数は3回だけ。
カレッジステーションの対象世帯も5軒に過ぎない。
アマゾンの元従業員が明かしたところによると、プライムエアが失速状態になっているのは、連邦航空局(FAA)からの厳しい規制を課されているためだという。
一本の道路を横切るにも車が通っていないことをいちいち確認しなければならず、複数人での確認作業が必要となる。
FAAが厳しい措置を取っているのは、プライムエアのローンチ前に行った実験での事故が大きく影響している。
アマゾンはドローンの開発実験を行っていたオレゴン州ペンドルトン地区で過去に何度か墜落事故を起こしている。
そのうち21年に起きた事故では小麦農場で火災が発生。
少なくとも20エーカー(東京ドーム2個分弱の広さ)を焼いたと報告されている。
しかし、報道によるとアマゾンは墜落事故の調査が入る前に勝手に証拠を撤去したことが複数回あり、FAAの心象をひどく損ねることになった。
これをFAAは重く受け止め、ドローンが学校や発電所の上を飛ぶことを禁じるとともに、フライトを認可制にして運航に厳しい制限を課したのだ。
アマゾンが独自に開発したプライムエアのドローン「MK27−2」は地上から最大400フィート(約120メートル)を飛行して、最大速度は時速50マイル(時速80キロメートル)に達する。
最大積載量は5ポンド(約2・2キログラム)。
機体を含めた最大総重量は89ポンド(約40キログラム)となっている(写真2)。
利用者のバックヤードなどの目的地まで来ると6フィート(1・8メートル)まで降下して、パッケージをリリースして飛び去るように設計されている。
ケーブルを使って荷物を下ろしたり、パラシュートで投下するドローン宅配と異なり、人の高さまで高度を下げて届けるため、人やペットなどの障害物を確実に回避できる。
しかし、FAAは、ドローンが荷物を落とすバックヤードの面積が自宅よりも広いことを条件の一つにしている。
さらに、下に人がいる上空を飛ぶことは禁じられているため、バックヤード内に人がいる状態では荷物を届けることができない。
また1・8メートルの高さから注文品を落とすため、梱包は衝撃に耐えられるような特別仕様にする必要がある。
ライバルは開発を継続 昨年末に1万人の従業員を解雇したアマゾンは今年に入ってさらに1万8千人のレイオフを発表したが、プライムエア部門のスタッフには昨年12月時点でレイオフを開始する告知を行っている。
対象とされたのはデザインやメンテナンス、システムエンジニアにテストフライト担当者やフライトオペレーションなど。
本社を含めプライムエアが関わる複数の場所ですでにレイオフは始まっており、ドローン実験のあるペンドルトン地区では半数にも及ぶスタッフが職を解かれた。
一方、ウォルマートは今年1月、ドローン宅配による配達実績が6千件以上となったことを発表した。
プライムエアとの競争で大きく水を明けた格好だ。
同社はドローン開発スタートアップのドローンアップ(DroneUp)、フライトレックス(Flytrex)、ジップライン(Zipline)とそれぞれ提携を結び、注文から30分以内に配達する空輸サービスを提供している。
20年にノースカロライナ州(1店)でドローン配達の実験的運用を開始した。
それが現在はバージニア州(3店)、フロリダ州(9店)、アーカンソー州(4店)、テキサス州(11店)、ユタ州(2店)、アリゾナ州(6店)の7州に拡大しており、対応店舗は36店に及んでいる。
ドローン宅配の対象商品は約2万点あり、空輸で人気となる上位5品目は「グレートバリュー・クッキー&クリーム・アイスクリーム」「2パウンド・レモン」「ロテッサリーチキン」「レッドブル」「バウンティ・ペーパータオル」となっている。
さらにグーグルの親会社のアルファベット傘下のウィング(Wing)は、米国、オーストラリア、フィンランドで既に30万件のドローン宅配の実績を挙げている。
ジェフ・ベゾス氏が13年に表明した注文から30分以内の配達を実現するドローン宅配の夢は、このままではライバルたちに出し抜かれることになってしまう。
