2023年4月号
特集

米ネットスーパーのフルフィルメント戦略

ダークストアからの相次ぐ撤退  オムニチャネルリテーラーへの変革を進めるウォルマートの一連の取り組みの中には上手くいかなかったモデルもある。
その一つがネットで注文した商品をピックアップする拠点となるダークストアだ。
ウォルマートだけでなく大手チェーンストアが次々に撤退している。
 シカゴ郊外リンカーンウッド地区にある「ウォルマートピックアップ」(約4万2千平方フィート)は今年3月に閉鎖されるダークストアの一つだ。
2013年までは老舗食品スーパーのドミニクスの店舗だった跡地に19年にオープン、4年弱という短い期間で営業を終了することになる。
 ウォルマートが17年に開業したルイジアナ州メテリー地区の「ピックアップ・オンリー・ストア」も昨年閉鎖された。
ウォルマートが本社を置くアーカンソー州ベントンビルに14年にオープンしたピックアップ・オンリー・ストア(1万5千平方フィート)は最後に残されたピックアップ拠点となったが、これも閉鎖が明らかになっている。
 ウォルマート以外の大手チェーンストアでも、コロナウィルスの大流行中に売り場を倉庫に転用して「ピックアップオンリー」と称してダークストアを展開した事例がいくつかある。
 食品スーパー最大手のクローガーは、20年3月に発令された非常事態宣言の直後、オハイオ州シンシナティ郊外のマウントカーメルの既存店を「クローガー・ピックアップ・オンリー・ストア」に転換した。
しかし、現在までに閉鎖となっている。
 アマゾン傘下の自然食品スーパー、ホールフーズマーケットも20年9月、ニューヨーク市ブルックリン地区にある巨大複合施設「インダストリーシティ(Industry City)」内に古い倉庫を改装してダークストアをオープンしている。
しかし、これも現在までに閉鎖されている。
 アマゾン自身もシアトル市内にダークストア「アマゾン・フレッシュ・ピックアップ(Amazon Fresh Pickup)」の2カ所を展開している。
300坪弱の小型ダークストアに専用の駐車スペースがついた食料品の受け渡し専用拠点だ。
ネットで注文した商品を店のスタッフが倉庫でピッキングして袋詰めを行い、利用者の車まで運んでくれる。
 シアトルの中心地から北に5・6マイルのところにあるアマゾンフレッシュ・ピックアップのバラード店は17年5月にオープンしたが、今年1月末までに閉鎖されている。
もう一つはシアトル市内のソードー地区にあり、スターバックスの本社と同じ建物を共有して現在も営業中だが客足が少なく、前途は厳しい。
 ペンシルベニア州など5州に食品スーパーなど470店以上を展開するジャイアント・イーグルもコロナの流行中にはダークストア化を押し進めていたが、それ以降、新たな展開や拡大などのニュースは聞こえてこない。
 こうして大手チェーンストアが次々にダークストアから撤退しているのは、肉や野菜・果物などの生鮮品を客が自分の目で選べないことが主な原因だ。
加工品は利便性重視でカーブサイドピックアップで受け取っても、生鮮品などは売り場で選ぶスタイルが好まれる。
ところがダークストアではこれができない。
そのため客数が増えず、採算ラインを超えられないのだ。
スタートアップの果敢な挑戦  それでもチャレンジ精神旺盛なスタートアップがその壁を越えようと挑戦している。
マザーグースの童謡の一節を店名に取ったジャックビー(JackBe)は今年1月10日、オクラホマ州オクラホマシティ郊外に生鮮品を中心に揃える1万7千平方フィートのダークストアをオープンした。
 同社は「カーブサイド・ドライブスルー・オンリー」を掲げる。
今のところ宅配サービスは行っていない。
店舗を運営するのはフルタイムスタッフ5人だけで営業時間は週7日、午前8時~午後8時まで。
利用者はジャックビー専用のアプリを介してのみ注文を行う。
ネットスーパーの手数料は無料で、最低購入金額の条件もない。
メンバーシップ制でもなければ、1時間毎のピックアップ枠の指定も必要ない。
注文から15分以内に商品を受け取れるため、カーブサイドピックアップにクルマを停めてから注文することも可能だ。
 同社は既に2号店の建設を始めている。
投資家から375万ドル(約5・1億円)もの資金調達を得ており、エドモンド地区には食品スーパーが少ないことから複数箇所にダークストアを展開できると見ている。
 航空業界のエンジニアとしてキャリアを積んだジム・マクェード氏がコロナ禍の20年に創業した「アディーズ(Addie's)」も今年1月、マサチューセッツ州ボストンの中心地から車で南西に26分のノーウッド地区にダークストア「アディーズ」を開店した。
2万2千平方フィートの施設に生鮮品等4500アイテムを揃えている。
 他のダークストアと同様、利用者は専用のアプリを介して注文を行う。
ネットスーパーは手数料無料で最低購入金額の条件もない。
営業は週7日、午前8時~午後9時まで。
マクェード氏によると、アルゴリズムを用いることで倉庫内で効率的にピッキングができるよう工夫しているという。
今のところ宅配サービスは行っていないようだ。
 ところでスタートアップによるダークストアの展開では、古くは14年に「ズーミン・マーケット(Zoomin Market)」がカンザス州オレイサ地区にオープンしている。
倉庫は約400坪。
手数料やミニマムオーダーなどの条件もなく、午前8時~午後8時までの営業で注文から最短30分で受け取ることができた。
しかし、開店から2年程度で閉鎖となっている。
 昨年3月、シカゴ市内にスタートアップによるダークストア「フレッシュストリート」が開店した。
「ROSS Dress For Less」「TJマックス」「ファイブ・ビロウ」等がテナントに入るショッピングセンター「リンカーン・ヴィレッジ」に1万平方フィートでオープンした。
同社は400万ドル(約5・5億円)の資金調達に成功していたが、1年もたずに撤退となった。
 21年3月に、サウスカロライナ州マウントプレザント地区に開店したドライブスルー・グローサリー「オピ(Opie)」の事例もある。
3千平方フィートの倉庫で24時間営業の1950年代型ダークストアで、現在も営業しているのだが、新たに2カ所を加えるとしていた当初の計画は立ち消えとなっている。
 認知度のある既存の大手チェーンストアでさえ、ダークストアを採算化できずにいる現状では、無名のスタートアップによるダークストアの展開は極めて厳しいと言わざるえない。
それでも短期間に複数のダークストアを展開するといったスタートアップの計画がいまだに聞こえてきている。
クローガー×オカドの自動化戦略  ダークストアの展開以上にチャレンジングなことを成し遂げようとしているのがクローガーだ。
系列の食品スーパーが全くないフロリダ州で宅配オンリーのネットスーパーを開始した。
これは業界初の試みである。
 厳密には同社はフロリダ州に傘下の食品スーパー「ハリスティーター(Harris Teeter)」1店舗のみを置いている。
それに対して物流センターは、タンパ、ジャクソンビル、オーランドに続く4カ所目を新たにマイアミ郊外のオパロッカ地区に立ち上げた。
6万平方フィートのクロスドッキングセンターで90人以上を雇用した。
 同社が21年6月にフロリダ州グローブランド地区に立ち上げた37・5万平方フィートのネットスーパー専用センター「カスタマー・フルフィルメント・センター(CFC:Customer Fulfillment Center)」から運ばれてきた注文品を、クロスドッキングして宅配する。
 クローガーのCFCはイギリスのネットスーパーで自動化ソリューション事業も手掛ける「オカド(Ocado)」と提携して開発したものだ。
生鮮品から日用品まで3・5万品目の在庫を保管・処理する能力を持ち、最新の人工知能(AI)やロボティクスの技術を活用して24時間稼働している。
 「オカド・シェド(Ocado Shed)」とも呼ばれるCFCには、50アイテムを最短3分でピッキングするロボットが1千台以上投入されている。
受注から配送準備完了までの工程を最短5分程度で処理できるという。
それを約400台のバンやトラックを使って90マイル(140キロメートル)圏内の店や利用客に当日もしくは翌日に届ける(写真3)。
 発表された資料を整理すると現在までに、オハイオ州モンローCFC(21年3月)、ジョージア州フォレストパークCFC(22年2月)、テキサス州ダラスCFC(35万平方フィート)、ウィスコンシン州プレザント・プレイリーCFC(34万平方フィート)が稼働している。
 他にCFCとしては小型の13・5万平方フィートのミシガン州ロムルスCFCもある。
今年6月にはコロラド州オーロラ地区にも30万平方フィート近いサイズでオープンすることを発表している。
 他にも建設中などを含め地域が明らかになっているCFCが10カ所以上ある。
メリーランド州フレデリック、アリゾナ州フェニックス、オハイオ州クリーブランド、カリフォルニア州には中型と小型のCFC、フロリダ州は南部に2カ所が計画されている。
またアメリカ北東部、ノースカロライナ州、アメリカ太平洋岸北西部が候補地となっている。
 ハブ・アンド・スポークのハブとなる「CFC(Ocado Shed)」に対して、「ZOOM(ズーム)」と呼ばれるスポーク側の拠点もある。
前述の通りクロスドッキング方式の小型フルフィルメントセンターとして注文品を仕分けしてバンを使って利用者宅に宅配する機能に加えて、生鮮食品や日用品を含め在庫1万品目を在庫して、ズームから30分圏内のスピード宅配を可能にする。
 クローガーが明らかにしたズームはテネシー州ナッシュビルの4万平方フィートのフルフィルメントセンターで、フォレストパークCFCをハブとする。
またズームとしては最大級の8万平方フィートのフルフィルメントセンターもイリノイ州メイウッド地区に建設されることが明らかにされている。
こちらはプレザント・プレイリーCFCをハブにする。
 クローガーはこの「ネットスーパー物流エコシステム」を、オクラホマ州など傘下の食品スーパーがまったくない州でも展開している。
食品スーパーの最大手ではあっても、ほとんど住人に認知されていない地域でネットスーパーを展開して、どれだけのシェアを獲得することができるのか、注目されている。

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから