2023年4月号
特集
特集
中国EC物流市場の注目プレーヤー
域内宅配「同城配送」の競争激化
中国の2022年の宅配便の総売上高は前年比2・3%増の1兆600億元だった。
年間取扱個数は前年比2・1%増の1105億8千万個だった。
1日当たりの取扱個数は最大7億個を超え、人口1人当たりの年間利用個数は約80個となった(図1)。
一方、即時配達(当日配達)の取扱個数は21年に前年比38%増の294億個に達した。
22年のデータはまだ発表されていないが、400億個を超えたと見られる。
さらに、コンサルティング会社のiResearch(艾瑞諮詢)によると26年には取扱個数が約958億個に達し、市場規模は5748億元~7664億元まで拡大することが予想されている。
即時配達の拡大は、中国の宅配業界にさまざまな影響を及ぼしている。
その一つが、「同城配送」をめぐる競争の激化である。
同城配送とは、同一都市における配達業務のことで、同一都市内の宅配、貨物輸送、即時配達などが含まれる。
近年、宅配事業者、即時配達事業者、EC事業者などが同城配送を強化している。
⃝順豊エクスプレス 「順豊同城」を上場して攻勢かける 宅配最大手の順豊エクスプレス(SF)は16年に同城配送の事業部門「順豊同城急送」を立ち上げ、19年に「順豊同城」として分社化、21年末に同社を香港証券取引所に上場させた。
順豊同城の業務は法人向け(toB)と個人向け(toC)に分かれる。
現状では「toB」が中心で、20年時点では最大の取引先である親会社のSF向けが売り上げ全体の33・6%を占めている。
それ以外の主要取引先としては、マクドナルド、ピザハット、瑞幸コーヒー、喜茶、吉野家など大手飲食チェーンの名前があがっている。
順豊同城の営業収入は18年が9・93億元、19年が21・07億元、20年が48・43億元と倍々ゲームで伸びている。
しかし、純利益はそれぞれ3・28億元、4・7億元、7・58億元のマイナスで推移しており、赤字額が拡大している。
22年上半期も営業収入は44・8億元と急伸した。
同社は3PLとしても、ライブコマースやミニプログラムといった新たなECモデルに積極的に総合物流ソリューションを提供しており、外販売り上げの前年同期比は28%増となっている。
⃝京東 全国10万店舗と連携して60分配送 EC大手の京東は、19年9月に「物競天択」と名付けたプロジェクトを開始して、京東アプリ内にオンラインショップとオフライン店舗の商品を同時に表示して、位置情報サービス(LBS)とアルゴリズムを活用しながら、消費者に最適な選択肢(価格が安く、もしくは速く届ける商品)を提供するO2O(オンライン・トゥ・オンライン)戦略を進めてきた。
21年11月には生鮮食品、即時配達などの関連業務を集約して、全国1200都市の約10万の小売店舗と連携、注文から60分以内に配達する「小時購」サービスを打ち出した。
さらに、22年3月には、これまで即時配達を行ってきた「京東到家」とO2O事業部のメンバーを中心に「同城購業務部」を新設。
「一大三小」を新たな戦略として掲げた。
「一大」とは同一都市での即時小売を強化すること意味し、「三小」は「出前(フードデリバリー)」「来店総合サービス」および「家政サービス」の三つのサービスを指している。
消費者のさまざまな生活シーンを囲い込むことで、5年以内に流通総額3千億元を達成するという目標を掲げている。
⃝美団 全国2千カ所に小規模ダークストア 即時配達最大手の美団は、利用頻度の高い出前を中心とした即時配達ネットワークの強みを生かし、さまざまなEC事業を展開している。
即時小売を担う「美団閃購」は18年にスタートした。
21年に同事業は全国2800の県・区・市をカバーし、リアル店舗約236万店を集め、流通総額は前年比66%増の814億元に達した。
22年第2四半期の美団閃購の1日当たりの平均取扱件数は約430万件に上り、同事業は美団のコア業務の一つに位置付けられた。
続く第3四半期には、美団に出店するスーパーマーケット、コンビニエンスストア、パパママストアの取引量はそれぞれ62・0%増、27・9%増、125%増と大幅に増加した。
一方、リアル店舗は売場やバックヤードのスペースに制約があるために新商品や人気商品の投入が遅れるという課題に対応するため、美団は20年9月より小売業と共同で「閃電倉」と呼ぶダークストアを各地に設置している。
1倉庫当たりの面積が平均170平方メートル、取扱アイテム数は約4千点という小型物流拠点で、その数は22年末時点で全国2千カ所を超えた。
小売業が立地選定、賃貸、仕入れと運営業務を担い、美団は配達業務の他、半径5キロ圏の消費者の購買・検索履歴などのデータを提供して商品推薦と価格決定をサポートしている。
新たなEC形態の物流インフラ SNS、ライブ配信、ショート動画などをベースとした「脱集中型EC」の拡大を、各社は新たな成長分野ととらえ、積極的に動いている。
ショート動画のティックトックは22年9月に「音需達」と名付ける物流プラットフォームを開設した。
京東物流は同プラットフォームに参加した最初の宅配企業となった。
その後、中国郵政速逓、順豊、円通、中通、韻達などの物流大手が次々に参画した。
同8月にティックトックは即時配達の餓了么(ウーラマ)との提携を発表、動画・ライブ配信とフードデリバリーの連携により、「見て、注文して、すぐに届く」新しい生活シーンを提案した。
さらに同12月には提携先を順豊同城、達達快送、閃送、UU跑腿などの即時配達企業にも広げた。
ティックトックは、従来のフードデリバリーとは異なり、コンテンツの面白さでユーザーの購買意欲を刺激して、共同購入、来店もしくは自宅への配達へと導いている。
23年の食品・飲料の流通総額を750億元と予想しており、そのうち40億元をフードデリバリーで見込んでいる。
また、22年7月にティックトックはアプリ内にネットスーパー「抖音超市」を開設した。
食品・飲料、化粧品、日用雑貨など、九つのカテゴリーを取り扱い、配送は主に順豊が担当している。
一方、順豊は新たなEC物流の需要開拓に積極的に取り組み、ライブコマースやミニプログラムに総合的な物流ソリューションを提供している。
同一都市内平均1時間の即配の他、青果物を収穫から最短8時間で食卓に届けるといった独自のサービスを提供している。
ただし、ライブコマースによる衝動買いや、注文から7日間以内は無条件に返品を受け付ける法的ルール、返品送料保険付き商品の増加、さらにはコロナによる発送の遅れなどにより、ECの返品率が大きく上昇している。
22年には1日当たり平均1500万件の返品荷物が発生した。
23年はさらに2千万件に増加することが見込まれている(図2)。
これに対応して順豊は21年5月より、PDDを始め、唯品会、ティックトック、淘宝・天猫など多くのECプラットフォームと提携して、返品の配達・受取サービスを開始した。
返品による受取、配達業務は中国では「逆向物流」と呼ばれる。
現在、順豊は逆向物流において最大のシェアを獲得している。
また、順豊は地域政府と連携して、高齢者世帯向けの食事配達サービスにも乗り出している。
中国の高齢者の9割は自宅で老後生活を送る。
高齢化の進展に伴い、今後は食事配達サービスの需要が大きく拡大していくと見られている。
順豊は22年11月に蘇州娄葑町、23年1月に上海老西門町などでそれぞれ高齢者世帯向け食事配達サービスの実証実験をスタートした。
配達先が散在し、配達経路は複雑で、かつ取り扱う商品は多種多様という課題の克服に取り組んでいる。
宅配便の新たなビジネスモデル 即時配達の普及は、既存の宅配便をベースとしたECの大きな脅威となっている。
同じ商品、同じ値段であれば、消費者は当然ながら早く届く即時配達を選ぶ。
これに対して既存の宅配便はビジネスモデルの変革を余儀なくされている。
⃝菜鳥 全国300都市で自社物流体制を強化 アリババ傘下の物流プラットフォームの菜鳥は、高度な情報技術を駆使しながら、物流会社に出資したり、もしくは協力を得て、配達時間を短縮し、配達効率を高め、中国の物流業界全体の生産性向上に取り組んでいる。
19年5月、菜鳥は「一横両縦」と名付けた3カ年計画を発表した。
そこで物流業界全体のデジタル化の推進、グローバル物流事業における配送能力の強化、そして即時配達を含めた物流ソリューションの提供の三つを成長の柱と位置付けた。
この戦略の下、菜鳥は直営の物流体制を強化した。
19年5月、菜鳥はアリババが出資した芝麻開門、東駿、万象、晟邦などの同城物流会社と共同で「丹鳥物流」を設立した。
丹鳥は、アリババ傘下のネットスーパーの「天猫超市」や越境ECの「天猫国際(Tmall Global)」の配達の主な担い手となり、同一都市における食品や日用品などの当日または翌日配達を行っている。
さらに中国最大のショッピングモール「天猫(Tmall)」が22年2月に直営店「猫享自営」を開設したのに続き、同4月には家電直営の「喵速達」を打ち出し、食料品や化粧品、家電製品などを直接取り扱う体制を整えた。
同8月には丹鳥を「菜鳥直送」に名称変更。
認知度の高い「菜鳥」のブランドで全国約300都市における自社配達体制の強化した。
同10月には10億元を投じて家電や家具などの大型荷物の配送サービスを強化し、新たに約1万人の設置スタッフを雇用した。
⃝京東物流 在庫最適化+宅配の一体サービスが急拡大 こうした一連の動きにより、アリババと京東の物流をめぐる競争に再び火が付いている。
京東は創業間もない頃から自社物流体制を構築して、高品質な物流サービスを武器に事業を拡大してきた。
17年4月には物流事業を分社化して京東物流を設立、21年5月に同社を香港証券取引所に上場させている。
京東物流は次の3層からなる物流体制を敷いている。
第1層は「亜洲一号」と呼ばれる大規模自動化センターで、全国の27の大中都市に35カ所を構えている。
第2層のRDCとFDCは全国約1500カ所。
第3層はラストワンマイルの集配を行う約1・8万拠点だ。
同社は単なる宅配ではなく、在庫アロケーションの最適化とスピーディな配達を一体化した独自のサプライチェーンサービスを提供している。
これまでに蓄積したノウハウと高度なアルゴリズムに基づき各商品の需要を予測、全国のRDCとFDCに最適に配分する。
オーダーが入ると、その顧客から最も近いRDCもしくはFDCの在庫を引き当て素早く出荷する。
これにより翌日ないしは当日配達を実現している。
この体制を取るために、京東物流はRDC・FDCを20年末時点の約900カ所から22年末には1500カ所に増やした。
倉庫の総面積も17年末の560万平方メートルから22年末の3千万平方メートルに拡大している。
また、京東物流は食品・日用品、アパレル、自動車などの業界を向けた専用センターの整備に取り組み、各専門分野での運営効率を高め、一体化したサプライチェーンサービスの提供で競争力を高めようとしている。
昨年3月のは、大口荷物の配達に特化する徳邦を買収し、家電や家具などの配達能力を強化した。
21年度、京東物流の営業収入は前年比42・7%増の1047億元に達した。
そのうち「一体化サプライチェーンサービス」による収入は711億元で全体の68%を占めている。
一方、京東グループ向けの売り上げは18年の266億元から21年は456億元に増加したが、売上全体に占める比率は70%から44%に低下している。
さらに22年第3四半期には、外部顧客の割合が67・8%まで上昇、2四半期連続で黒字を達成した。
一体化サプライチェーンサービスの収益化にメドを付けた模様だ。
年間取扱個数は前年比2・1%増の1105億8千万個だった。
1日当たりの取扱個数は最大7億個を超え、人口1人当たりの年間利用個数は約80個となった(図1)。
一方、即時配達(当日配達)の取扱個数は21年に前年比38%増の294億個に達した。
22年のデータはまだ発表されていないが、400億個を超えたと見られる。
さらに、コンサルティング会社のiResearch(艾瑞諮詢)によると26年には取扱個数が約958億個に達し、市場規模は5748億元~7664億元まで拡大することが予想されている。
即時配達の拡大は、中国の宅配業界にさまざまな影響を及ぼしている。
その一つが、「同城配送」をめぐる競争の激化である。
同城配送とは、同一都市における配達業務のことで、同一都市内の宅配、貨物輸送、即時配達などが含まれる。
近年、宅配事業者、即時配達事業者、EC事業者などが同城配送を強化している。
⃝順豊エクスプレス 「順豊同城」を上場して攻勢かける 宅配最大手の順豊エクスプレス(SF)は16年に同城配送の事業部門「順豊同城急送」を立ち上げ、19年に「順豊同城」として分社化、21年末に同社を香港証券取引所に上場させた。
順豊同城の業務は法人向け(toB)と個人向け(toC)に分かれる。
現状では「toB」が中心で、20年時点では最大の取引先である親会社のSF向けが売り上げ全体の33・6%を占めている。
それ以外の主要取引先としては、マクドナルド、ピザハット、瑞幸コーヒー、喜茶、吉野家など大手飲食チェーンの名前があがっている。
順豊同城の営業収入は18年が9・93億元、19年が21・07億元、20年が48・43億元と倍々ゲームで伸びている。
しかし、純利益はそれぞれ3・28億元、4・7億元、7・58億元のマイナスで推移しており、赤字額が拡大している。
22年上半期も営業収入は44・8億元と急伸した。
同社は3PLとしても、ライブコマースやミニプログラムといった新たなECモデルに積極的に総合物流ソリューションを提供しており、外販売り上げの前年同期比は28%増となっている。
⃝京東 全国10万店舗と連携して60分配送 EC大手の京東は、19年9月に「物競天択」と名付けたプロジェクトを開始して、京東アプリ内にオンラインショップとオフライン店舗の商品を同時に表示して、位置情報サービス(LBS)とアルゴリズムを活用しながら、消費者に最適な選択肢(価格が安く、もしくは速く届ける商品)を提供するO2O(オンライン・トゥ・オンライン)戦略を進めてきた。
21年11月には生鮮食品、即時配達などの関連業務を集約して、全国1200都市の約10万の小売店舗と連携、注文から60分以内に配達する「小時購」サービスを打ち出した。
さらに、22年3月には、これまで即時配達を行ってきた「京東到家」とO2O事業部のメンバーを中心に「同城購業務部」を新設。
「一大三小」を新たな戦略として掲げた。
「一大」とは同一都市での即時小売を強化すること意味し、「三小」は「出前(フードデリバリー)」「来店総合サービス」および「家政サービス」の三つのサービスを指している。
消費者のさまざまな生活シーンを囲い込むことで、5年以内に流通総額3千億元を達成するという目標を掲げている。
⃝美団 全国2千カ所に小規模ダークストア 即時配達最大手の美団は、利用頻度の高い出前を中心とした即時配達ネットワークの強みを生かし、さまざまなEC事業を展開している。
即時小売を担う「美団閃購」は18年にスタートした。
21年に同事業は全国2800の県・区・市をカバーし、リアル店舗約236万店を集め、流通総額は前年比66%増の814億元に達した。
22年第2四半期の美団閃購の1日当たりの平均取扱件数は約430万件に上り、同事業は美団のコア業務の一つに位置付けられた。
続く第3四半期には、美団に出店するスーパーマーケット、コンビニエンスストア、パパママストアの取引量はそれぞれ62・0%増、27・9%増、125%増と大幅に増加した。
一方、リアル店舗は売場やバックヤードのスペースに制約があるために新商品や人気商品の投入が遅れるという課題に対応するため、美団は20年9月より小売業と共同で「閃電倉」と呼ぶダークストアを各地に設置している。
1倉庫当たりの面積が平均170平方メートル、取扱アイテム数は約4千点という小型物流拠点で、その数は22年末時点で全国2千カ所を超えた。
小売業が立地選定、賃貸、仕入れと運営業務を担い、美団は配達業務の他、半径5キロ圏の消費者の購買・検索履歴などのデータを提供して商品推薦と価格決定をサポートしている。
新たなEC形態の物流インフラ SNS、ライブ配信、ショート動画などをベースとした「脱集中型EC」の拡大を、各社は新たな成長分野ととらえ、積極的に動いている。
ショート動画のティックトックは22年9月に「音需達」と名付ける物流プラットフォームを開設した。
京東物流は同プラットフォームに参加した最初の宅配企業となった。
その後、中国郵政速逓、順豊、円通、中通、韻達などの物流大手が次々に参画した。
同8月にティックトックは即時配達の餓了么(ウーラマ)との提携を発表、動画・ライブ配信とフードデリバリーの連携により、「見て、注文して、すぐに届く」新しい生活シーンを提案した。
さらに同12月には提携先を順豊同城、達達快送、閃送、UU跑腿などの即時配達企業にも広げた。
ティックトックは、従来のフードデリバリーとは異なり、コンテンツの面白さでユーザーの購買意欲を刺激して、共同購入、来店もしくは自宅への配達へと導いている。
23年の食品・飲料の流通総額を750億元と予想しており、そのうち40億元をフードデリバリーで見込んでいる。
また、22年7月にティックトックはアプリ内にネットスーパー「抖音超市」を開設した。
食品・飲料、化粧品、日用雑貨など、九つのカテゴリーを取り扱い、配送は主に順豊が担当している。
一方、順豊は新たなEC物流の需要開拓に積極的に取り組み、ライブコマースやミニプログラムに総合的な物流ソリューションを提供している。
同一都市内平均1時間の即配の他、青果物を収穫から最短8時間で食卓に届けるといった独自のサービスを提供している。
ただし、ライブコマースによる衝動買いや、注文から7日間以内は無条件に返品を受け付ける法的ルール、返品送料保険付き商品の増加、さらにはコロナによる発送の遅れなどにより、ECの返品率が大きく上昇している。
22年には1日当たり平均1500万件の返品荷物が発生した。
23年はさらに2千万件に増加することが見込まれている(図2)。
これに対応して順豊は21年5月より、PDDを始め、唯品会、ティックトック、淘宝・天猫など多くのECプラットフォームと提携して、返品の配達・受取サービスを開始した。
返品による受取、配達業務は中国では「逆向物流」と呼ばれる。
現在、順豊は逆向物流において最大のシェアを獲得している。
また、順豊は地域政府と連携して、高齢者世帯向けの食事配達サービスにも乗り出している。
中国の高齢者の9割は自宅で老後生活を送る。
高齢化の進展に伴い、今後は食事配達サービスの需要が大きく拡大していくと見られている。
順豊は22年11月に蘇州娄葑町、23年1月に上海老西門町などでそれぞれ高齢者世帯向け食事配達サービスの実証実験をスタートした。
配達先が散在し、配達経路は複雑で、かつ取り扱う商品は多種多様という課題の克服に取り組んでいる。
宅配便の新たなビジネスモデル 即時配達の普及は、既存の宅配便をベースとしたECの大きな脅威となっている。
同じ商品、同じ値段であれば、消費者は当然ながら早く届く即時配達を選ぶ。
これに対して既存の宅配便はビジネスモデルの変革を余儀なくされている。
⃝菜鳥 全国300都市で自社物流体制を強化 アリババ傘下の物流プラットフォームの菜鳥は、高度な情報技術を駆使しながら、物流会社に出資したり、もしくは協力を得て、配達時間を短縮し、配達効率を高め、中国の物流業界全体の生産性向上に取り組んでいる。
19年5月、菜鳥は「一横両縦」と名付けた3カ年計画を発表した。
そこで物流業界全体のデジタル化の推進、グローバル物流事業における配送能力の強化、そして即時配達を含めた物流ソリューションの提供の三つを成長の柱と位置付けた。
この戦略の下、菜鳥は直営の物流体制を強化した。
19年5月、菜鳥はアリババが出資した芝麻開門、東駿、万象、晟邦などの同城物流会社と共同で「丹鳥物流」を設立した。
丹鳥は、アリババ傘下のネットスーパーの「天猫超市」や越境ECの「天猫国際(Tmall Global)」の配達の主な担い手となり、同一都市における食品や日用品などの当日または翌日配達を行っている。
さらに中国最大のショッピングモール「天猫(Tmall)」が22年2月に直営店「猫享自営」を開設したのに続き、同4月には家電直営の「喵速達」を打ち出し、食料品や化粧品、家電製品などを直接取り扱う体制を整えた。
同8月には丹鳥を「菜鳥直送」に名称変更。
認知度の高い「菜鳥」のブランドで全国約300都市における自社配達体制の強化した。
同10月には10億元を投じて家電や家具などの大型荷物の配送サービスを強化し、新たに約1万人の設置スタッフを雇用した。
⃝京東物流 在庫最適化+宅配の一体サービスが急拡大 こうした一連の動きにより、アリババと京東の物流をめぐる競争に再び火が付いている。
京東は創業間もない頃から自社物流体制を構築して、高品質な物流サービスを武器に事業を拡大してきた。
17年4月には物流事業を分社化して京東物流を設立、21年5月に同社を香港証券取引所に上場させている。
京東物流は次の3層からなる物流体制を敷いている。
第1層は「亜洲一号」と呼ばれる大規模自動化センターで、全国の27の大中都市に35カ所を構えている。
第2層のRDCとFDCは全国約1500カ所。
第3層はラストワンマイルの集配を行う約1・8万拠点だ。
同社は単なる宅配ではなく、在庫アロケーションの最適化とスピーディな配達を一体化した独自のサプライチェーンサービスを提供している。
これまでに蓄積したノウハウと高度なアルゴリズムに基づき各商品の需要を予測、全国のRDCとFDCに最適に配分する。
オーダーが入ると、その顧客から最も近いRDCもしくはFDCの在庫を引き当て素早く出荷する。
これにより翌日ないしは当日配達を実現している。
この体制を取るために、京東物流はRDC・FDCを20年末時点の約900カ所から22年末には1500カ所に増やした。
倉庫の総面積も17年末の560万平方メートルから22年末の3千万平方メートルに拡大している。
また、京東物流は食品・日用品、アパレル、自動車などの業界を向けた専用センターの整備に取り組み、各専門分野での運営効率を高め、一体化したサプライチェーンサービスの提供で競争力を高めようとしている。
昨年3月のは、大口荷物の配達に特化する徳邦を買収し、家電や家具などの配達能力を強化した。
21年度、京東物流の営業収入は前年比42・7%増の1047億元に達した。
そのうち「一体化サプライチェーンサービス」による収入は711億元で全体の68%を占めている。
一方、京東グループ向けの売り上げは18年の266億元から21年は456億元に増加したが、売上全体に占める比率は70%から44%に低下している。
さらに22年第3四半期には、外部顧客の割合が67・8%まで上昇、2四半期連続で黒字を達成した。
一体化サプライチェーンサービスの収益化にメドを付けた模様だ。
