2023年4月号
特集

「置き配」考─その進化と普及のシナリオ

「EC+置き配」モデルの源流  宅配便の再配達削減策としての「置き配」が注目されている。
ECや宅配便会社のホームページには置き配を奨励するかのように、「置き配ガイド」が設けられており、利用者が「宅配ボックスなどへの置き配」「コンビニなどでの引き取り」などを選べるようになっている。
 各種の市場調査によると、置き配サービスは利用者からも好意的に受け入れられている。
過去に、宅配事業者の業務担当として、ギフト商品配送の無断「置き配」(当時は「不在放置」と言われた)のクレーム処理・改善対策で苦労した筆者としては、隔世の感がある。
 置き配の元祖は牛乳配達や新聞配達だが、ECにおける先駆者は、三重県鈴鹿市に本社を置くスーパーサンシであろう。
同社は業容拡大のため1984年に固定電話とコンピューターを連動させた会員制の宅配サービス「フレッシュシステムズ」をスタートさせた。
 当時は、パソコンや携帯電話どころかモデムすらなかった時代なので、会員は固定電話の受話器に「音響カプラー」を被せて、商品番号・個数などをテンキー入力した。
するとFAXのような「ヒュルヒュルー」音により電話回線を通じて、発注情報が本部のコンピュータに送られる。
 物流センターでは発注情報に基づき商品がピッキングされ、発注の翌日にトラックで自宅に配達される。
不在の場合にはあらかじめ会員に貸与した鍵付きの保管庫(宅配ロッカー)に商品を格納するという仕組みである(写真1)。
 このフレッシュシステムズ事業は、百貨店・小売業・外食企業などをフランチャイズ(FC)として、「フレッシュ〇〇〇」(本家のスーパーサンシは「フレッシュサンシ」)の名で全国に展開した。
 本稿の参考文献2の第4章「地域に根をはるフレッシュシステムズ」には、「フレッシュ松屋」「フレッシュエンドー」「フレッシュナルス」「フレッシュ・ニコニコドー」「フレッシュ京成」「フレッシュヤオコー」などの事例が紹介されている(掲出順)。
ローカルスーパーの「EC(無店舗)販売システム」に、老舗百貨店などが競ってFC参加したことが分かる。
 40年近くも前にスーパーサンシが「不在時は置き配」を前提としたネットスーパーのビジネスモデルを構築したことには驚かされる。
生協や食材配送会社の置き配は既にあったが、それらは注文書か電話・FAX注文であった。
ECビジネス化したところにサンシの先進性があった。
 ただし、インターネットもない時代に先行し過ぎて消費者も不慣れだったためか、ほとんどのFCは事業の採算化ができずに撤退した。
しかし、スーパーサンシのネットスーパーは現在も同社の基幹事業として継続されている。
さらには「最新最強のネット宅配プラットフォームを提供中 勝てるネットスーパー導入に向けて」と全国のSM事業者にも参加を呼び掛けている(図1参照)。
置き配テックのバリエーション  国土交通省では、宅配ボックスと置き配を別に捉えているが、荷受人サイドから見れば宅配ボックスも置き配も、さらにはコンビニなどでの受け取りも同じ「置き配=非対面・非接触受取」テックとして一つのカテゴリーにくくることができると筆者は考えている。
 そのうち、①宅配ボックス②置き配③コンビニなどでの受け取り④郵便受箱の活用⑤食品・食材の置き配──についてそれぞれ以下に述べる。
なお、「郵便受け」は、日本郵便の正式名称に従い、以下「郵便受箱」と記す。
①宅配ボックス・宅配ロッカー  宅配ボックス・宅配ロッカーについては、国が設置費用を補助するなど支援している割には、現状では普及が進んでいるとは言いがたい。
それでも筆者が住む横浜周辺の新築マンションなどには、建設当初から宅配ロッカーが設置されているケースが増えている。
 しかし、居住者に聞くと、「居住者が無料のコインロッカーとして使っている」「学校から帰った子供が自宅に戻らずに、ランドセルを宅配ロッカーに入れて遊びに行く」など目的外使用があったり、「宅配ロッカーが1階エントランスの場合、居住者に縦持ち・横持ち負担が発生する。
重い水物などは大変」との声もある。
 配送側で宅配ロッカーの共用が進んでいないという問題もある。
ヤマト運輸の「PUDOステーション」(PUDOはPick Up Drop Outの略で、機器はフランス製、写真2)は他事業者でも利用できるとしているが、アマゾンジャパンの「Amazon Hubロッカー」は自社限定である。
 筆者の住居近くのスーパーの店頭にもAmazon Hubロッカーが設置されている。
試しに利用したことがある。
アマゾンのHPで住所などから検索すると、近隣のロッカーが案内される。
Amazon Hubロッカーにはそれぞれ固有名詞が付けられており、筆者の最寄りのロッカー名は「おこし」(写真3)であった。
 その利用法は以下の通り。
注文時に受け取りロッカーとして「おこし」を選択する。
その後、配送業者が購入品を「おこし」に格納すると、到着案内と6桁の解錠IDがメールで筆者(荷受人)に届く。
ロッカーの操作画面でそのIDを入力すると、ロッカーが解錠されて依頼した品物を取り出すことができる。
 到着案内のメールが届いてから3日以内に引き取らないと、商品はAmazon Hubロッカーから配送デポに引き上げられてしまう(Amazonにおけるラストマイル配送の進化は、参考資料5参照)。
 宅配用ではないが、買い物客が店舗で購入した商品を一時的に保管しておくためにロッカーを用意している店もある(写真4)。
購入品をひとまずロッカーで預かり、さらに店内を回遊して買い物してもらおうという狙いである。
 一方、宅配ボックスは、どちらかと言えば戸建て住宅向きだ(写真5)。
筆者の近隣では数軒見かけたことがあるという程度だが、廉価な合成繊維製の置き配専用折りたたみ袋も発売されており、無料配布している自治体もある。
②置き配  置き配には大きく、お届け先があらかじめ置き場所を指定する「指示置き」と、「置き配専用折りたたみバッグ」の二つのパターンがある。
 「指示置き」の方法として、例えばアスクルでは購入時に受け取り方を、「玄関ドア前」「宅配BOX」「ガスメーターBOX」「物置」「車庫」「自転車のカゴ」「建物内受付/管理人預け」「対面での配達を希望」から選ぶことができる。
 受け取り方を選択するメニュー画面で非接触型の置き配の選択肢を先に並べ、「対面での配達を希望」を最後に置いていることから、可能な限り置き配に誘導しようとの意向がうかがえる。
 アスクルは配送業務を自社グループのアスクルロジストの他、ヤマト運輸にも委託している。
ヤマト運輸は当初、置き配の導入に消極的だった。
しかし、その後、再配達の削減による配達員の負担軽減のために、積極的な導入に舵を切ったのは、アスクルでの配送経験もあってのことであろう。
 一方、「置き配専用折りたたみバッグ」の多くは合成樹脂製で防水加工が施されている。
報道によれば、楽天に採用されたり、置き配バッグメーカーと佐川急便が飲料水宅配で提携したり、建設・不動産業者と連携するなど、利用が広がっている。
 置き配バッグ「オキッパ」を販売しているイーパー社では、専門機関に依頼してバッグのLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)を評価した結果、「バッグを使って再配達を削減した回数が利用者1人あたり20回を超えた時点で、CO2の総削減量がバッグ1個分の製造や流通、廃棄の過程でのCO2の総排出量と等価になり、カーボンニュートラルとなることが証明された」としている。
再配達問題の解消だけでなく、SDGs(持続可能な開発)にも役立つとアピールしている。
 ただし、置き配バッグは荷物のサイズによっては場所を取る。
マンション・アパートの通路幅は通常は90センチメートル程度だ。
そこに置き配された荷物があると、ベビーカーや車椅子の通行の邪魔になるほか、地震・火災・ガス爆発などの災害が発生した場合には、避難行動を阻害しかねない。
その法的責任は別にしても、住民同士のトラブルにも発展する恐れがある。
 なお筆者は宅急便の再配達には、ヤマト運輸のウェブサイトから「郵便受箱に入るものは郵便受箱」「それ以外はガスメーターBOX」へ置き配を指示することが多い。
一方、置き配バッグは、マンション共用部分の通路を邪魔するので利用を見合わせている。
③店舗での受け取り  米国では、ネット注文→店舗受け取りが「BOPIS」(Buy Online Pick-up In Store、ボピス)と呼ばれて、スーパーや量販店などに広く採用されている。
日本でも以前からコンビニ受け取りなどが行われてきた。
コンビニは、宅配便の取扱店であり、宅配便の集荷車両が巡回しているので、そのルートを活用して配送一時預りが始まった。
 今ではコンビニだけでなく、スーパー・ドラッグストア・クリーニング店などでも宅配便の受け取りサービスを導入している。
少しでも来店機会を増やして、本業の売上増につなげようという戦略である。
しかし、受け取る側の利便性という点では24時間営業のコンビニが優位となっている。
 筆者も楽天ブックスで購入した書籍の受け取りを、自宅最寄りのコンビニに指定してみたことがある。
受け取りの際には、あらかじめメールで送信された受取証を印刷・持参するか、スマホに送信された受け取りIDを提示する。
それを受けて店員はレジを離れ、バックルームに荷物を探しにいく。
引き渡しには受取証のコードをスキャンするとともに、本人確認として免許証などの提示を求められる。
 これでは昼食の混雑時などはレジが渋滞してしまうだろう。
実際、小心者の筆者は、後ろで待っている買い物客の冷たい視線が気になった。
店員の手間もかかっている。
そのためコンビニ受け取りは一度体験して以降は利用していない。
書籍などの小物は仕事場(オフィス)への置き配を指定するようにしている。
④郵便受箱の活用  メール便など、郵便受箱に入るものは「投函=配達引き渡し」とされている。
しかし、筆者宅はマンションの1階で玄関が集合郵便受箱の近くにあることもあってか、郵便局員は書留でない速達でもチャイムを鳴らして配達する。
 配達員に理由を尋ねてみたところ「速達料金をもらっているので、少しでも早く届けるために、まず、配達してみて不在なら郵便受箱に入れる」とのことだった。
「日本郵便も変わったものだ」と変なところで感心した。
 メルカリやネット通販、さらには百貨店なども「ポストに入るお歳暮」として、包装サイズを郵便受箱に合わせて、郵便受箱の活用による置き配を進めている。
郵便受箱の利用者(荷送人)が増えてくると、郵便受箱が「満杯お断り」という状態にならないか心配である。
 なお、郵便受箱については、日本郵便では「当社が定める規格に適合した大型郵便受箱」として、マンションなどの集合住宅の場合、1戸サイズ(H×W×L)として「120ミリ×300ミリ×450ミリ」などの規格をメーカーに推奨している。
定形外郵便やレターパックなどは、「30ミリ×250ミリ×340ミリ以内で1キログラム程度まで」(定形外郵便物の規格内)が多い。
それよりも大きめの郵便受箱を推奨しているわけである(図2)。
⑤食品・食材の置き配  置き配には紛失や盗難、あるいは汚損などの問題が付きまとう。
実際、置き配に対する消費者の不安・心配は各種の調査結果からも透けて見える。
その最たるものが「食品・食材の安全性」である。
調査でも「食品・食材では、置き配を利用したくない」との声が多い。
 食品・食材を置き配してしまうと、温度管理や日光照射による変質の恐れがある。
他人にイタズラされたり、異物を混入されるリスクもある。
動物(犬・猫・カラスなど)による被害も想定される。
ちなみにカラスは嗅覚が発達し鋭い嘴があるので、段ボールにも穴を開けて食べると言われている。
やはり、食材専門の宅配業者のように、食品・食材の置き配には専用インフラが必要であろう。
 料理レシピサイトを運営するクックパッドは、生鮮食品EC「クックパッドマート」用の生鮮宅配ボックス「マートステーション」を首都圏の約1千カ所に設置している。
マートステーションで受け取る場合の配送料は無料。
「自宅配送」も選べるが、550円(税込)の配送料が掛かる。
置き配への誘導がうかがえる。
 写真6は、東京メトロの地下通路に置かれたマートステーションに、商品をセッティングしているところである。
冷蔵庫(保管ロッカー)に合わせて標準化された、通風性の良い折りたたみコンテナに、配達員がポリ袋入りの食品をセットする。
 筆者はクックパッドマートの女性配達員のセッティング作業を端から見ていて、約40年前のフレッシュシステムズの置き配を思い出すとともに、「ネットやスマホになっても、ビジネスの本質はあまり変わらないな」と感じた。
 マートステーションの受け取りは、スマホアプリのQRコードを、ロッカーのリーダー(写真6では冷蔵庫左側の赤色の機器)に読ませて解錠する。
その際に、冷蔵庫のドア全体が開いてしまうので、冷気が逃げないか、開けっ放しにならないか、他人の商品と間違えて持ち出さないか、あるいは「他人の食材がおいしそうだから」と無断で持ち帰ったりされないか等々が筆者には気になった。
置き配テック──進化の方向性  各種調査によれば、消費者は置き配の利用に慣れてきたこともあって概ねサービスを受け入れる傾向にある。
ただし、置き配の「影」の部分には懸念を持っている。
その懸念を払拭するツールとしてはやはり宅配ボックス・宅配ロッカーが「本命」であろう。
以下にその普及に向けて、ハード・ソフトの2点から提案したい。
ハードの共用化  これまで述べたように、置き配用の宅配ボックス・ロッカーなどのツールには多くの種類がある。
QRコードを提示するだけで解錠できるようにもなり技術的な進歩も見られる。
しかし、社会インフラとしての普及は始まったばかりである。
 新築マンションや新築の戸建て住宅の場合は、工事費全体に占める宅配ボックス・ロッカー費用のウェイトが小さいため、最初から宅配ボックス・ロッカーなどを設置する傾向にある。
しかし、既存住宅への後付けは進んでいない。
 紛失時の賠償責任(保険料負担)と同様に、誰が宅配ボックス・ロッカーなどの設備費用を負担するかという問題がある。
「受益者負担」が妥当と思われるが、再配達が減るからといって、宅配業者は設備費用を積極的に負担はしないであろう。
 その点では不動産管理ソリューションのライナフの取り組みが注目される。
同社はオートロック付きマンションのエントランスに、専用のスマートロック「NinjaEntrance(ニンジャエントランス)」を設置することで、配達員が部屋の前など受取側があらかじめ指定した場所に荷物を届けてくれるサービスを「スマート置き配」としてシステム化している(図3)。
 前述の紛失・盗難や共有スペースの侵害などの問題は依然として残るが、2023年1月の報道では、ニンジャエントランスの一都三県の申し込み棟数は4千棟に達し、一種の社会インフラ化しつつあるようだ。
その理由としてはやはり、玄関先への置き配なので宅配ボックスが不要であり、初期費用、月額費用、工事費用などが全て無料というところが大きいと思われる。
 もう一つのアプローチとして、宅配ボックス・ロッカーなどの共同化を推進すべきである。
現状のまま宅配ボックス・ロッカーの個別設備が進むと、そのうちに、A社・B社・C社‥‥と各社各様の宅配ボックス・ロッカーが、自販機のように並ぶことになる。
 既に首都圏のターミナル駅には、各社の宅配ボックス・ロッカーがコインロッカーと仲良く並んでおり、利用者を戸惑わせている。
さらに西武ホールディングスは、駅を人流だけでなく物流ハブとして活用するために、ECで注文した商品を即日、主要駅に配置したスマートロッカー「BOPISTA(ボピスタ)」で受け取るサービスの実証実験を今年2月1日から3月31日にかけて実施している。
ますます主要駅が「ロッカー展示場」化することになる。
 一方、郵便受箱は荷受人側が設備して、郵便だけでなく新聞・広告チラシ・ポストイン荷物まで広く共同使用されており、通販事業者などは、商品を郵便受箱に適合するサイズに改良している。
こうした配送商品サイズの標準化も欠かせない要素だろう。
写真6で紹介したクックパッドマートのように、オリコンで標準化すれば置き配のスペースやセッティング作業が効率化される。
最近は、メルカリのように郵便受箱の規格に合わせて宅配用の包装材料を規格化して販売するなどの動きもある。
日本郵便側でも大きな商品を投函できるように、郵便受け口の高さを70ミリメートルに拡大した郵便ポストの設置を始めた。
「デザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)」の考え方が、宅配や置き配にも導入されつつある。
 インフラの重複投資を避けて効率的な設備にするためには、日本通信販売協会(JADMA)のような公的な機関を通じて、梱包サイズの標準化とそれに合わせたハードの規格化、そしてハードの共用化の検討が必要と思われる。
ソフトの標準化  ハードインフラとしての宅配ボックス・宅配ロッカーに加えて、ソフトインフラとしての受け取り方法と指定方法の共用化・共通化も、置き配を進化・普及させていく上でのカギになる。
 前述の通りアスクルでは多様な置き配メニューを荷受け人に提示している。
その後、ニッセンも21年1月にヤマト運輸の置き配サービス「EAZY(イージー)」を導入して同様のサービスを開始している(図4)。
その利用手順は以下の通りである。
①お届けのお知らせ(発メール) 注文完了後、置き場所変更URLを含んだお届けお知らせメールがユーザー(荷受人)に配信 ②置き配の希望指定画面 日時・置き場所or自宅外、全て同じ画面から指定できる ③日時変更画面 ④置き場所変更画面  そこで使用されるアプリや受け取り方はソフトインフラである。
アプリ画面の構成と操作方法、受け取り方法を、各社で共通化・標準化することで、ユーザー(荷受人)の操作ストレスは減り、利便性は向上する。
こうした置き配の標準化、共用化は、政府が目指すフィジカルインターネットを実現する上でも不可欠のピースになるだろう。
参考文献 1.国土交通省「宅配便再配達率調査結果」ほか宅配便再配達率調査結果(各年次) 2.浅野恭平『フレッシュシステムズのすべて―究極の無店舗販売』明日香出版社、1987年 3.ジャストシステム・繊研新聞・MMD研究所ほか、「置き配」に関する各種調査結果 4.総務省・経済産業省・国土交通省・Amazon・楽天市場・アスクル・クックパッド・ニッセンHD・メルカリ・ライナフ・ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便などの各ウェブサイト(順不同) 5.長谷川雅行「最近のラストマイル配送の動向」流通経済大学物流科学研究所 物流問題研究74号 2023年

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから