2023年4月号
特集

C2C─EC市場のロジスティクスの動向

1.拡大する市場と小型宅配便の取扱量 ⑴ 日本のC2C─EC市場  経済産業省による「令和三年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2021年における日本国内の個人間のインターネット通信販売(以下、C2C−EC)の市場規模は2兆2121億円で、対前年比12・9%の伸び率であった。
同年の企業から消費者向けのインターネット通信販売(以下、B2C-EC)における物販系分野の市場規模(13兆2865億円)と比較すると小さいが、対前年比の伸び率(8・61%)は上回る成長となった(図1)。
 また同報告書によると、C2C-ECは消費者個人が使用し終わった商品などを出品するモノの二次流通(以下、リユース)と、消費者自身が作成した商品を販売するというハンドメイドに分類できる。
国外ではハンドメイドの取引も盛んであり、日本国内でも「minne」や「Creema」といったハンドメイド商品を扱うECサイトが存在する。
しかし、「ヤフオク!」「メルカリ」「ラクマ」「PayPayフリマ」などのリユース商品の取り扱いを主とするECサイトの取引はそれ以上に盛んである。
そのため本稿では、日本での現状を考慮して、リユース型のC2C-ECを対象にして議論を進めていく。
⑵ 日本の小型宅配便の取扱量  C2C-ECの拡大は宅配便、特に郵便受けに入る小さなサイズの宅配便に大きく影響を与えている。
メルカリなどでは、書籍、雑貨、アクセサリーなど単品での出品が少なくはなく、手ごろな配送料金を設定可能で受取側にも負担の少ない郵便受けへの投かん型の配送サービスは利用者に好まれているようである。
 それを表しているのが図2である。
ヤマト運輸「ネコポス」、日本郵便「ゆうパケット」ともに、2020年9月まで、ネット通販の利用増加の影響を受けて、前年同期に比べて取扱数量は増加していった。
しかし、ヤマト運輸がネコポスを値下げし、日本郵便がゆうパケットを値上げしたことで、メルカリの配送料金においてヤマト運輸の配送が最安値になるようになった。
その結果、2020年10月期からネコポスは取扱量を大きく増やし、ゆうパケットは取扱量を減らすことになった。
それ以降も、ネコポスの取扱量はコロナ禍が始まる以前の2倍から2・5倍で推移しており、ゆうパケットは2020年2月期との比較で横ばいかやや減少となっている。
2.ネットオークションとフリマアプリ ⑴ ネットオークションとフリマアプリの発展  日本のC2C-EC市場を構成する二大サービスとして、「ネットオークション」と「フリマアプリ」が挙げられる。
ネットオークションは、日本のEC黎明期である1990年代後半から、「楽天スーパーオークション」や「Yahoo!オークション(ヤフオク!)」などのオークションサイトよって発展してきた。
これらのサイトにおける出品者には、厳密には小規模の小売店なども存在したが、個人消費者が気軽に商品を販売することが出来る手段として注目された。
 長らく日本のC2C-ECの主流であったネットオークションであったが、2010年代になりスマートフォン(以下、スマホ)の普及が進むと、徐々にフリマアプリの利用が拡大する。
 経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」では、2016年度から2018年度までのネットオークションとフリマアプリの市場規模を推計している。
ネットオークションの市場規模は9987億円から1兆133億円と1・5%程しか拡大していないのに対し、フリマアプリは3052億円から6392億円と2倍以上に拡大している。
 ネットオークション、フリマアプリともに、スマホというツールは個人消費者のECサイトへの出品を容易にしたと言える。
たとえば、商品の撮影はかつて、デジタルカメラや携帯電話で撮影した画像をPCに保存してからサイトに掲載する必要があったが、スマホで撮影すればPCに移す必要がなく出品までを完了できる。
また、価格設定や商品の説明書きも商品バーコードをスマホで読み込むなどすれば、従来よりも容易に他の出品者の同一商品を検索して参考にすることができる。
 商品価格を競ることで決定するネットオークションに比べて、フリマアプリは(値引き交渉などは一部あるものの)価格が確定しており、提示された金額で購入すれば取引がほぼ完了する。
この利用者にとって取引コストが抑えられるという利点が、両サービスの市場規模の拡大に差が出た一因であるかもしれない。
 図1で示した通り、コロナ禍においてC2C-EC市場は大きく拡大した。
これは、特にフリマアプリ市場の影響が大きかった。
ネットオークションの市場規模は2020年度の9483億円から2021年度の9689億円と2・7%の増加にとどまったが、フリマアプリは2020年度の1兆147億円から2021年度の1兆2433億円と22・5%も増加した。
 コロナ禍におけるフリマアプリ市場の成長には、経済産業省の報告書などが指摘するように、多くの消費者が在宅勤務となり、家庭内の整理のためにC2C-ECの利用(特に出品)が増えたことが影響していると考えられる。
⑵ 取引総額から見るヤフオク!とメルカリ  MMD研究所が2021年3月29日から4月7日に行った調査によると、利用経験があるネットオークションとフリマアプリとして選択されたサービスは上位から、メルカリ(63・0%)、ヤフオク!(58・4%)、ラクマ(29・1%)、PayPayフリマ(18・7%)であった(有効回答数3606、複数回答可)。
そこで以下では、ネットオークションとフリマアプリを代表する両サービスの流通取引総額(以下、GMV)について、比較をしていく。
 ネットオークションの代表格であるヤフオク!のGMVは、8千億円超から9千億円超で推移している。
ただし、この数値は運営会社であるZホールディングス(以下、ZHD)の決算資料で「リユース事業」として公表されたものであり、PayPayフリマと「ZOZOUSED」を合わせた数値であることは留意する必要がある。
 なお、2017年3月期までの決算報告書では、ヤフオク!のGMVは「トレードカービュー」「ブックオフオンライン」「Yahoo!チケット」を合わせた数値で公表されており、こちらも2014年3月期以降は8千億円超から9千億円弱で推移している。
ヤフオク!単体のGMVは明確に示されていないものの、経済産業省が推計したネットオークションの市場規模を考慮すると、GMVはほぼ横ばいであるかもしれない。
 フリマアプリの代表格であるメルカリのGMVは、2017年6月期に2318億円であったが、2022年6月期には8814億円に達した(280・2%の増加)。
フリマアプリも含んだZHDのリユース事業のGMVに迫る規模となっており(図3)、経済産業省が推計したフリマアプリの市場規模の成長を考慮すると、単体でのGMVはメルカリが上回っている可能性もある。
なお、調整後営業利益(グループ内の内部取引を控除した後の営業利益)も2017〜2021年度で44億円から224億円に増加している(409・1%増加)。
3.C2C─ECにおけるロジスティクスの現状  「ロジスティクス」という言葉は今日、多くの場面で「ビジネス・ロジスティクス」とほぼ同義に使われている。
その場合のロジスティクスの定義は、「商品や物資を、顧客の要求に合わせて届けるとき、発生地点から到着地点までの商流(商取引流通)と物流(物的流通)を、効率的かつ効果的に、計画・実施・統制すること」(苦瀬博仁編著『ロジスティクス概論【増補改訂版】』2021年のp・22より)となる。
 ビジネスとしての十分な商取引も物流も少なく、出品者単位では計画や統制を行うほどの受注量がないC2C-ECにおいて、ロジスティクスを議論することは矛盾が生じる可能性もある。
しかし、商品の受発注・決済・顧客情報の管理といった商流の機能、輸送・保管・包装・荷役・流通加工・情報などの物流の機能が重要な役割を果たしていることはC2C-ECでも同様であろう。
 B2C-ECを中心に、個人消費者向けのロジスティクスの現状や課題はしばしばいくつかの文献でも議論されており、出品者単位では少ない受注量を束ねることで、C2C-ECにおけるロジスティクスサービスを提供している事例も存在する。
そこで以降では、C2C-EC事業者や物流事業者が展開するサポートサービスなども参照しつつ、個人消費者発のロジスティクスの現状と課題を考察する。
⑴ C2C─ECにおけるロジスティクスの流れ  ここで、C2C-ECのロジスティクスの流れについて、商流と物流の視点から整理していく。
 ヤフオク!やメルカリのようなリユース型の場合、基本的には出品者が事前に購入して使用した商品が販売される。
出品者がECサイト上で販売する商品を購入者が注文し(発注)、注文情報を受けた(受注)出品者は、購入者の配送先(情報)を確認した上で商品の発送準備に入る。
商品の代金は、出品者と購入者双方が事前に了解した決済方法と支払いのタイミングに基づいて、購入者から出品者に支払われる。
 製造業や流通業のロジスティクスに比べると、出品者と消費者間の取引はスポット的になりやすい。
そのため、取引のたびに出品者・購入者間で合意形成を行うよりも、ヤフオク!やメルカリなどのC2C-EC事業者によって提示されるような取引に関する規定がある方が商流は円滑になるであろう。
 次にC2C-ECにおける物流の機能を確認する。
リユース型のように、出品者が自身で不要になった商品を販売している状況であれば、出品者の自宅で保管を行うことが多いであろう。
 出品にあたって、商品の補修やクリーニング、異なる商品と組み合わせるセット化が行われる場合もあるが、出品者が補修などの専門的技術を持っていないことが多く、また大量の商品をセット化することも稀であるので、小売業や流通業のロジスティクスと比較すると流通加工が行われることは少ない傾向にあると考えられる。
 商品の包装にはカートン(いわゆる段ボール)が用いられる。
包装を行うのも個人消費者であるため、企業が行う包装に比べると、包装資材や技術の個人差が大きくなりやすい。
 C2C-ECでの輸送は、日本ではほぼ全て宅配便事業者(それも個人消費者発の荷物を受け付けているヤマト運輸か日本郵便)によって行われるため(図2も参照)、出品者は自身で行う必要があるのは宅配便事業者への連絡などの発送手続となる。
 出品者が自宅までの集荷を依頼すれば、出品者が負担する荷役は玄関先までとなるが、「PUDO」などの公共型宅配ロッカーを介して宅配便事業者と荷物を受け渡す場合、宅配ロッカーに包装された商品を搬入するまでの、出品者自身による輸送と荷役が発生する。
⑵ C2C─ECの商流における課題とサポートサービス  前述の通り、出品者・購入者間の取引について規定や標準が設定されていれば、取引の都度、配送や決済に関する要望を確認する必要がない。
 個人消費者同士が、取引の場(ECサイトなど)や出品者・購入者間の連絡手段の確保、銀行振込やクレジットカードなどの決済手段へのアクセスの円滑化、住所、氏名、決済関連などの出品者・購入者の個人情報管理を行うことは難しい。
そのため、これらを第三者、すなわちC2C-EC事業者が用意したことで、C2C-EC市場は大きく成長したと言える。
 ここまで紹介したネットオークション、フリマアプリはともに、取引の場を提供するだけでなく、出品者・購入者間のサービス内での連絡ツールを用意して、決済を仲介することで出品者・購入者間でのトラブルを防止し、顧客の個人情報の保護を行っている(かつてのネットオークションでは、振込先口座・氏名・住所を互いに伝えることもあったが、近年はC2C-EC事業者や配送業者が介在して個人消費者同士は互いの情報が見えないことが多い)。
 それでも、販売されている商品そのものが出品者の手元にあると、受注以降の対応は出品者である個人消費者が行う必要がある。
スマホを日常的に携帯している現在では、PCだけで商品の管理を行っていた時代に比べれば、受注情報をより早く確認することができるであろうが、自動化や多くの従業員によって受注処理を進めることができる企業に比べると、対応が遅くなりやすいことは否めない。
 出品者が旅行や出張で自宅(大半の場合はC2C-ECにおける在庫拠点)を空けていれば、さらに対応が遅くなる可能性もある(そのような場合、ECサイト上の出品者情報にその旨を提示するか、一時的に出品を停止することが多い)。
⑶ C2C─ECの物流における課題とサポートサービス  C2C-ECのロジスティクスにおける物流機能の中で、出品者自身が対応することが多いものは保管・包装・荷役であり、特に包装の負担が大きいと考えられる。
そのためC2C-EC事業者は、出品者向けの包装ガイドラインや独自の包装資材を提供しており、包装水準や荷姿がある程度統一されるように工夫している。
 またメルカリが行ったアンケートによると、出品未経験の消費者が出品しない理由として、包装と発送作業の手間という項目が最も多く挙げられた。
C2C-EC事業者にとっては、出品商品数を増やすことは取引成立の可能性を高め、結果として手数料を増やすことにもつながるため、包装や発送手続をより簡便に行うことができるサービスを中心に提供している。
 たとえば、倉庫業者と提携して倉庫の空きスペースを提供するオープンロジ、宅配便事業者としてヤマト運輸、そしてメルカリ自体が共同で「あとよろメルカリ便」というサービスを提供していた。
同サービスは、倉庫業者が出品者の商品の保管・包装・荷役・発送手続・輸送を請け負うものであったが、出品者が望むサイズよりも大きい包装になって配送料金が出品者の想定より高くなる、出品者から倉庫業者に送られた商品についてどれが一つの商品単位なのか現場が混乱してしまうなどの問題も生じ、採算が合わないと判断されたためか、2022年3月でサービスの新規申し込み受付を終了した。
 ただし2023年2月現在でも、倉庫での保管の代行は除いて、メルカリとヤマト運輸で梱包と輸送を請け負う「たのメル便」というサービスを展開するなど出品者の梱包の負担を軽減するサービスは引き続き提供されている。
 またラクマでは、「ラクまるっと」という代行サービスが運営会社の楽天から提供されている。
このサービスは、ロジスティクスの面では保管・包装・荷役・発送手続を代行するもので、あとよろメルカリ便と同様のサービスであるが、商品の撮影や説明書き、価格の調整(最初の一週間は希望価格を出品者が設定可能であるが、売れ残ると楽天が調整して値下げされる)、購入者との連絡なども代行する。
 このようにロジスティクスだけでなく、商品PRやプライシングも合わせて代行するサービスは、楽天のような運営会社以外の事業者でもしばしば提供されている。
 C2C-ECにおいて、宅配便事業者への発送手続の負担が大きいことは、先述のメルカリが行ったアンケートでも示される通りである。
その負担とは、連絡すること自体、送り状の記入、宅配便事業者への荷物の受け渡しなどであろう。
 宅配便事業者への連絡はC2C-EC事業者のECサイト上で行える場合も多く、また送り状についても、購入者の氏名や住所などの情報が入力されたQRコードを宅配便事業者の営業所などに設置された端末にかざすことで印刷をするというサービスもある。
 ただし、宅配便事業者への荷物の受け渡しについては、出品者の時間を拘束するという負担をかける可能性がある(自宅まで商品の集荷を依頼する場合、集荷希望の時間帯は出品者が自宅にとどまる必要がある)。
 出品者が任意のタイミングで荷物を宅配便事業者に受け渡すためには、PUDOなどの公共型宅配ロッカーまたはコンビニを中心に設置数を増やしている「スマリボックス」などに荷物を搬入する必要があり、この場合は自宅から宅配ロッカーまでの輸送と荷役も発生する。
しかし、比較的小さい荷姿で発送されるC2C-ECの商品であれば出品者の持ち歩きの負担は大きいものではないかもしれない。
 物流の機能における流通加工などについては、C2C-ECの場合、これまでは注目されることが少なかったと言える。
しかし、メルカリで商品の補修やクリーニングのサービスが検討されるなど、ブランド品や楽器など比較的価格が高くなりやすく、品質が重視される商品では利用される可能性がある。
 そのような中、補修やクリーニングという流通加工が重要な機能となるC2C-ECの形態として、「ラクサス」のようなブランド品のシェアリングサービスが挙げられる。
ラクサスでは、個人消費者(商品提供者)が使わなくなったブランドバッグなどをレンタル用商品として預かり、毎月定額の利用料金を支払う契約利用者が選んだ商品を貸し出す。
そして商品を提供する側の個人消費者には、レンタル商品の利用状況に応じた報酬が支払われる。
 レンタル商品の出品手続や利用者とのやり取りはラクサスが行う。
そして物流については本社がある広島にある物流センターで保管・包装・荷役・発送手続(輸送は2023年2月現在、ヤマト運輸に委託)などを担うほか、レンタル用に預かった商品の補修やクリーニングなどの流通加工を商品が提供された際や利用者から返却された際に行う。
 個人消費者では補修やクリーニングの専門知識がなく、また汚れや傷が貸し出す前からあるか否かについても個人消費者間でトラブルになることが予想され、ラクサスが仲介することでこれらのリスクを請け負いつつ、ブランドバッグのシェアリング市場を形成している。
4.おわりに  本稿では日本のC2C-ECとそのロジスティクスにおける現状や課題を、事業者の取り組みを参考にしつつ考察していった。
 最初にも触れたように、日本のC2C-EC市場は現状、リユース品の売買やシェアリングが中心であるが、今後欧米などと同様にハンドメイドの市場が成長していく可能性も十分に考えられる。
そうなれば、現在のようなロジスティクスのサポートサービスとは異なるサービスが必要となってくると考えられる。
たとえば、ハンドメイドの場合は出品者が小規模な生産者でもあるがゆえに、製造業が行う検品や品質管理のノウハウが利用される可能性もある。
 リユース型についても、浪費的な消費社会からの脱却という社会的な背景や、物価高から廃棄よりも少しでも収入を得たい、少しでも安く商品を入手・利用したいという個人消費者の意向によって、引き続き成長していくと考えられる。
 現在のC2C-ECでは個人消費者が発荷主にもなり得るがゆえに、宅配便事業者のような全国規模で密度が高いネットワークを持つ事業者に輸送を委託することが多い。
しかし、大規模な取扱量を誇るC2C-EC事業者が出現すれば、B2C-ECのようにEC市場業者によるロジスティクスが展開される可能性もある。
 メルカリによる「メルロジ」は試行錯誤の末、いったんはメルカリ本社に吸収されたものの、ロジスティクスをどの程度自前で行うか、また委託する場合もどこに委託するか、などの検討は引き続き関心事項となるであろう。
 それ以外にも、ZHDなどの多角的にサービスを展開するEC事業者がB2C-ECのロジスティクスのインフラをC2C-ECにも活用する、Amazonのように既に独自のロジスティクスを形成しているB2C-EC事業者がC2C-ECにも本格的に参入する可能性なども考えられる。
今後ともその動向に注目していきたい。

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