2023年4月号
特集

海外論文 eコマースにおける包装の持続可能性

ECが環境に与える影響  従来型店舗とeコマースがそれぞれ環境に与える影響を比較した場合、実店舗での販売はCO2排出量が70%、場合によっては84%も少なくて済む。
eコマースは、都市部から遠い地域であれば、自家用車でショッピングモールがある都市部まで長距離を移動する必要がないため、効果的な選択肢となる。
ところが都市部のラストマイルにおいては、eコマースの荷物の種類・素材・大きさや消費者行動などの多くの要素が、環境負荷を増大させる主な原因になってしまう。
 包装資材がエネルギーの使用量・物流・廃棄物の発生に直接影響を与えるという事実に、昨今ますます注目が集まっている。
荷物の重量やボリュームという要素もまた、輸送時のエネルギー使用量に影響を与える。
 これまでの研究においてはしばしば、エネルギーの効率的利用と廃棄物削減という観点から、代替材料にもとづく包装ソリューション開発の必要性が強調されてきた。
また、過剰包装は依然として材料とエネルギーを無駄に使用しており、それが生産や輸送プロセスの環境負荷に影響を与えている。
 eコマースチェーンの最後のリンクは顧客満足である。
ある調査によると、通販顧客の71%は、上質なパッケージで届くのであれば再度オンラインで買物をすると回答している。
企業はパッケージの機能性や美しさを前面に押し出すことで、カスタマーエクスペリエンスの改善とブランドイメージの保持を図る必要がある。
ただし、オンラインの消費者行動の変化を調べた結果、製品の視覚的デザインにはそれほどの重要性はないとするいくつかの研究もある。
包装の進化:素材、フォーマット、最新イノベーション  図表1は、19世紀の終盤から現在に至る包装の歴史を記した年表である。
デザイン史の研究家たちは、1880年から1900年という時期を現代包装の始まりと見なしている。
 マスマーケティングや大量生産等の新しい概念がこの時代に登場し、低価格・大容量を特徴とする初期のスーパーマーケットが開店した。
この頃の包装資材は板紙の組立箱・ブリキ・ガラス製が主であり、機械化により大量生産された。
 第二次世界大戦中(1939〜45年)は戦争関連製品の生産が優先されたため、一般の人々は総じて物資不足に悩まされることになった。
この時期の包装資材は鉄(輸送コンテナ)、ブリキ(缶)、ガラス(瓶)、紙(容器)、クラフト紙(袋)、布(袋)、木(箱)などが主流であった。
 50年代は、パッケージングがマーケティングやコミュニケーションに盛んに利用された。
しかしそれは一方で、廃棄物問題や製品寿命の短さ(いわゆる「計画的陳腐化」)の時代の始まりでもあった。
当時は商品そのものよりも包装が重要視されるほどで、包装は「サイレントセースルマン」といわれることさえあった。
 包装資材は60年代になるまで基本的に変わることはなかった。
棚に並ぶ商品の見栄えを気にするマーケティング部門やデザイナーの関心は、形や色、あるいはサイズにしかなかったからである。
 60年代から70年代は、技術革新と宇宙飛行の黄金時代といわれる。
この時代に包装セクターのニーズに応えるため、防湿・防水プラスチック、アルミニウム、接着剤などの新素材が開発された。
 初期のプラスチック(例:ジョン・ウェズリー・ハイアットのセルロイド)が登場したのは19世紀だが、可燃性が高く寿命も短かったため、1960〜70年代に至るまで包装に使われることはなかった。
 しかし、一度使用され始めるや、さまざまな形状に加工することが容易で、耐久性があり衛生的、かつ柔軟で安価ということで、プラスチックはあらゆる種類の包装の主要材料となった。
水のボトルやレジ袋の素材には、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレート(PET)が広く使われた。
 ところが幸いなことに、科学技術の進歩によって、より人間的なアプローチへの道が開かれることになった。
欧州連合では、包装廃棄物を管理してリサイクル概念を促進するため、94年に「包装廃棄物指令」を発令した。
プラスチックや化石由来の原料に代わる新しい包装資材の研究・生産が求められるようになったのである。
 その1つの選択肢に、市場で調達可能な食用・セルロース系の材料がある。
例えば小麦・大豆・ミルク・トウモロコシなどのタンパク質は、光学的・機械的特性の改善に利用される。
またセルロース誘導体・でんぷん・キチン・ペクチン・アルギン酸塩等の多糖類は、ガスバリア性や機械的特性を向上させる。
そして複合材料に添加されるグリセロール・ワックス・樹脂などの脂質は、防湿フィルムとして機能する。
 包装資材は環境に優しいだけでなく、現在eコマース普及の最大の障害となっているラストマイルの足かせになってはならないという点も重要である。
企業はなるべく荷物を軽くして、できるだけ迅速に届けようと努力しているが、それには当然コストがかかる。
 この問題に関して例えばイケアは購入品の宅配料金を高額に設定している。
その金額を負担してまで宅配を利用するかどうかは顧客の選択次第である。
一方でオンラインスーパーのUlaboxは、明らかに利益を圧迫するにもかかわらず、顧客満足度を維持するためにラストマイルの代金を請求していない。
アマゾンやグーグルは、宅配ロッカーというソリューションに力を入れている。
環境のための包装デザイン戦略  アマゾンは現在、「フラストレーション・フリー・パッケージ」と称する“マテリアルリダクション”プログラムに取り組んでいる。
二次包装では製品の保護とともに廃棄物発生を抑えるため、各包装に使われる材料の量を最小化し、リサイクル性の最大化を目指している。
 同社では認証要件として、最小寸法が228・6㎜×152・4㎜×9・5㎜の堅牢な六面体ボックスの使用を定めている。
箱の素材は段ボールやセルロース、PET、HPDE(高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン(PP)等である。
 すべては100%再生可能で、輸送中に問題が発生しないよう、充分な長さのマスキングテープで気密に梱包されなければならない。
また、パッケージには適切な情報の表示が義務づけられるとともに、各製品の容積は容器の収納キャパシティを超えてはならず、カスタマーが開封しやすいものであることが条件である。
 包装資材というものは、少ない量で済むのならそれに越したことはない。
素材やエネルギーの使用量、および固形廃棄物とCO2排出量削減のために広く行われているのが、「脱物質化」というアプローチである。
 例えばヴィクター・パパネックはその著書「生きのびるためのデザイン」において、1日何百万リットルもの水の浪費を減らすため、トイレットペーパーの幅を1インチ減らすことを提案した。
 ネット通販の問題点は、ほとんどの商品が段ボールという単一の素材を使って梱包されることだ。
それとは対照的に、食品のeコマースには新しく効果的なイノベーションが必要とされる。
 食品包装は法令により、次のような三層構造が定められている。
●一次包装:消費者やエンドユーザーの手に触れる包装や容器で、商品の保護だけでなく宣伝目的も兼ねることがある(例:チョコレートバーを包むフォイル)。
●二次包装:通例、一次包装された商品の流通や店頭での陳列のため、大きめのケースや箱に詰める(例:フォイルに包まれたチョコレートバーを詰め込んだ段ボール箱)。
●三次包装:商品の積み降ろしを容易にするため、大量の商品を輸送目的の大きな荷姿に梱包する(例:シュリンクラップされた木製パレット)。
 食料品のネット通販業者は、その大多数が段ボール製のパッケージおよび紙もしくはプラスチック製の袋(ほとんどが生分解性プラスチック)を利用している。
だがもしeコマースに新たな選択肢が求められているとするなら、こうした素材を使いつづける理由はあるだろうか? 実際にこの分野では、新しい素材に対する確固とした需要が存在する。
実店舗においては宅配用の段ボール箱の代わりに紙袋を使用するケースが増えている。
ケーススタディ:食料品EC  当セクションでは、標準的なパッケージングデザインに代わる新たな試みを紹介する。
ギャルソンワインズ(Garçons Wines)社が独自にデザインした平らなワインボトルは、郵便ポストに入れて送ることができるのだが、これまであまり注目されることはなかった(画像1)。
 100%再生PETからできているため輸送中に割れる心配はなく、使用後も100%リサイクル可能だ。
わずか63グラムと、一般的なガラス製に比べ87%も軽いため、輸送過程の環境負荷もはるかに軽くすむ。
ただしこの新しいかたちのパッケージは、消費者をして中身のワインの品質が劣ると思われやすいというマイナス面もある。
 IteneとCartonajes Fontの両社が共同開発した「ザ・ワインパック」という包装システムは、特殊な折りたたみ構造によってボトルの破損を95%削減する。
外箱は8㎜厚の段ボール二重構造で、内箱は3㎜厚の一重段ボールである(画像2)。
 素材を贅沢に使っているためeコーマス用途としてはコストがかかり過ぎるし、使い捨てなので環境負荷や材料の無駄も増える。
ネット通販で買った商品が過剰包装で届くと、消費者は概してネガティブな印象をもつ傾向がある。
それでも、ザ・ワインパックを利用すればボトルを保護する性能が上がり、結果的に商品のロスが減る。
 図表2には、ワイン輸送に使われる標準的な中仕切り付きの段ボール箱(スタンダードパッケージ)と、ザ・ワインパック(プレミアムパッケージ)のワインボトル100本あたりの最終的な追加コストを示した。
ザ・ワインパックはボトルの破損を防ぎ、商品のロスとそれに伴うコストを削減する。
標準的なものと比較すれば、確かにパッケージングコストは余計にかかる。
しかし、中級以上のワインであれば(表ではワイン本体価格を5ユーロとして試算)、全体としてのコスト削減につながると同時に環境にも優しいソリューションということになる。
 食料品のネット通販からは離れるが、画像3の「スクードパック」はパッケージの環境負荷低減や素材の使用量削減のもう1つの選択肢である。
家具・窓・大理石・ドアの保護に主に利用され、装着が簡単で衝撃に強いことから、ラジエーターや太陽光発電パネルなどあらゆる電気製品に用いることができる。
破損率が最大70%改善され、パッケージのボリュームが減るので輸送コストの節減にもつながる。
 フィンランドの紙製品メーカーのメッツァボード社は近年、eコマース商品の保護に利用する気泡緩衝材や小型ポリスチレンフォーム(いわゆる“プチプチ”や“バラ緩衝材”)の消費量が多いことに頭を痛めていた。
従来の発泡スチロール製のバラ緩衝材は軽くて丈夫なのだが、分解されないために製造現場で働く人の健康被害の原因ともなる。
でんぷんから作られる生分解性のバラ緩衝材もあることはあるのだが、発泡スチロール製より高価である。
 そこで同社では、内側の段ボール紙に特殊なパターンの切り込みを入れる(ストレッチング・インナーパート)ことで、素材の使用量とコストを増やすことなく商品を保護するパッケージを開発した(画像4)。
 フィンランドのリパック社は、CO2排出量を最大80%削減する再生可能な梱包用バッグ「リパック」を提供している(画像5)。
再利用ができないバイオ素材ではなく、ポリプロピレンが原料である。
このポリマーは長持ち・リサイクル可能・軽量が特徴であり、コスト削減にはそれなりの貢献をする。
同社では、使用したバッグを顧客自身が郵便で返却することを提案している。
ただし柔らかい食品など崩れやすい内容物には向いていない。
 前述のパッケージソリューション同士を、コスト削減・素材の使用量・機能という3つの観点から比較したのが図表3である。
これを見ると、スクードパックはすべての面で最も評価できるソリューションであることがわかる。
一方のザ・ワインパックとギャルソンワインズは、素材使用量と機能性という面では有効性が認められるが、スクードパックと比較するとコスト高が難点である。
これらの中間に位置するリパックとストレッチング・インナーパートは、そこそこのコスト削減、素材使用量、機能性といえる。
 図表4は同様に再利用性・リターナブル性・リサイクル性・製品ボリュームへの適応性の評価である。
一見して明らかなように、これらの面ではギャルソンワインズとリパックが抜きん出ている。
リパックは再生可能原料から作られていてリターナブルであるが、標準的な形状しかないため、どのようなタイプの製品にも適合するというわけにはいかない。
ギャルソンワインズは特定の製品・環境(この場合はeコマース)に的を絞る一方、ザ・ワインパック、スクードパック、ストレッチング・インナーパートは、製品への適応性とリサイクル性を考慮したものとなっている。
 以上をまとめると、eコマースに最適なソリューションはギャルソンワインズとリパックといえるが、再生不可能な資源から得られる非生分解性の素材からできているのが難である。
他の3つのソリューションは、生分解性があり再生可能な資源(セルロース系繊維)から作られる段ボールを利用している。
包装材とプロセス  セルロース系の素材は、他の選択肢に比べて非常に環境負荷が低い。
自然界に最も豊富に存在する物質の1つがセルロースであると同時に、最も重要な再生可能原料の1つでもある。
 セルロースは木や植物(草、藻類)、バクテリアなどのほか、林業・木材産業・農業、さらには紙パルプ産業からの廃棄物にも含まれる。
紙や段ボールの主原料は植物細胞である。
マクロ構造としてのセルロースには、使い捨てパッケージへの応用という注目すべき特性があるが、バリア性の面で一定の限界がある。
 ナノセルロースはその卓越した機械的・物理的・光学的特性やバリア性により、さまざまな用途への応用が期待される。
食品包装業界では、この強くて軽いバイオベース素材を効率的に生産する方法が模索されている。
抗菌性があり、透明で水や酸素を透過するため、食品と接する包装材にうってつけなのである。
 3Dプリンティングでは、材料押出・液槽光重合・粉末床溶融結合・バインダージェット・シート積層・指向性エネルギー堆積という7種類の方法のいずれかによって包装材を作ることができる。
こうしたプロセスは数多くの素材に適用可能だが、その中でも特にプラスチック、バイオプラスチック、ポリマー、金属、セラミック、ガラス、食用粘弾性インクなどに適している。
まとめ  近年、eコマースの隆盛により梱包材の使用量が大幅に増え、それに伴って環境問題への効果的な対応策が求められるようになった。
ところが19世紀以来、包装業界は梱包用の箱の構造をほとんど変えてこなかった。
包装がいま置かれている状況は、次のような事実を考えれば簡単に理解できるだろう。
・ 1990年代まで包装は、新たな素材の生産に牽引されるかたちで大きく進化してきた。
しかしながら、現在ではコスト削減や環境負荷低減の効果的な施策が求められていることから、一種の足踏み状態を強いられている。
この状況を打破するには、新たなパラダイムの構築が必要である。
・ 過剰包装がますます一般化してきている。
・ プラスチックなど再生不可能な原料からなる包装は、リサイクル可能であるという理由から広く利用されつづけているが、これに過度に依存することは望ましくない。
・ 梱包した荷物の流通は、依然として包装に関連する主な環境負荷の1つであり、より効果的なソリューションが必要とされている。
 以上のことから、包装の環境負荷を低減させる取り組みでは、次のようなことを考慮すべきであると考えられる。
・ eコマースによって生み出される段ボールを始めとする大量の廃棄物は、分解して自然に還すことができる。
また、一般に広く存在するセルロースのような天然バイオポリマーは、再生可能資源から取り出すことができて、使用後は生分解やアップサイクリングも可能である。
・ 過剰包装を防止するため、実効性のあるガイドラインや政策の制定が強く求められる。
・ 詳細にわたる具体的なデザインガイドを作成し、循環型包装を推進する。
・ 付加製造(3Dプリンター)等の新技術による斬新な包装ソリューションの開発(例:製品の形や大きさによりフィットし、より少ない材料で作られる包装)。
高性能3Dプリンターは、よりクリーンなものづくりを可能にするとともにCO2削減にも貢献する。
・ 環境負荷削減に向け、ドローン・電気自動車・ピックアップポイント等の新しい物流戦略を評価することでベストの選択肢を特定し、さまざまなシナリオでそれらを活用する方法を模索する。
(翻訳構成 大矢英樹)

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