2022年12月号
特集

包装密度KPI「デンシティー」の活用方法

物流実務家の8割が包装を知らない  包装は「物流の5機能(輸送・保管・荷役・包装・流通加工)」の一つに挙げられている。
包装の改善には、包装資材・包装工数・保管面積・積載工数・廃棄物を減少させて、積載率を劇的に向上するグローバルレベルでの波及効果を期待できる。
しかし、その認知度は悲しいほど低い。
 原因の一つとして、包装改善の主たる舞台がメーカーから荷物が出荷される以前の工程にあるにもかかわらず、メーカーにおいて物流に詳しい人材が減ってきていることがあげられる。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の物流技術管理士資格認定講座の2021年度(第144期、第145期、第146期。
受講者数計303人)の受講者属性を見ても、8割以上は物流事業者・物流子会社・流通業が占めており、製造業は1割余り(11%)にすぎない。
 また同講座の受講者は例年、物流実務経験4年以上、主任クラス以上が過半数を占めている。
物流に係る一般的知識をある程度は持っているはずの人たちである。
それでも講座受講前のアンケート調査によると、「ユニット・ロード・システム」「DFL」「環境パフォーマンス」などを知らない人が8割前後を占めている。
包装に関する一般的理解は心もとないレベルにあることが垣間見える。
 今日のサプライチェーンは包装改善を強く求めている。
2024年問題の解決には、輸送機関への荷積み・荷卸し時間の短縮によるドライバーの労働改善および積載率の向上による輸送数の削減が不可欠である。
包装体積の圧縮はこれらの問題に根源的に寄与することができる。
さらにはグローバルレベルで国際輸送をはじめとする物流コストの削減をもたらし、環境負荷の軽減に貢献する。
 以下、本稿では包装体積を圧縮する具体的な手法について解説する。
主にメーカーを対象とした記述になるが、物流事業者もまた、本稿で述べる包装改善の考え方を基本にして、積極的に荷主に働きかけていくことで、サプライチェーンの効率化に寄与してほしいと願っている。
包装改善のアプローチ  包装改善には「システム」「DFL」「包装材質(緩衝材)」など、多くの切り口がある。
それらは互いにオーバーラップし、その中心に筆者が提唱する「包装密度KPI=デンシティー(Density)」がある(図1)。
まずは、それぞれの切り口から包装改善のインパクトについて確認しておこう。
⃝ユニットロードの視点  ユニットロード(UL)システムは、2024年問題の有効な対策である。
パレットを使ってバラ積みの貨物をユニットロード化することで、トラックの積み下ろし時間は大幅に短縮される。
荷痛みの防止にも貢献する。
荷台に積載できる荷物の量はパレットの分だけ少なくなるが、トータルの効率はバラ積みより圧倒的に優れている。
 ただし、ユニットロード化は、個々の包装寸法のモジュール化を必要とする。
日本で一般的なT11型パレット(1100㎜×1100㎜)を使用する場合には、1100㎜×1100㎜の底面を2分の1、4分の1、8分の1と順次分割していって、個々の製品の包装サイズを、分割した平面寸法のいずれかに収まるように決定する(図2)。
ちなみに個々の包装の高さは、その企業の定める集合包装箱の高さに従って決める。
 写真1は輸出用大型段ボール箱で集合包装した例である。
この事例では多数の製品包装寸法のモジュール化を進めた結果、隙間の極小化が実現した。
また、単一サイズの包装が大量にある場合にはパレットストレッチ包装が可能となる。
いっそうの効率化が図れる。
 ユニットロード化については以前からその必要性がうたわれているが、日本では依然として一部大手企業が導入するにとどまっている。
国内のトラック輸送においてはこれまで、貨物のサイズが厳格に運賃に適用されなかったこともその一因と考えられるが、それ以上にまだまだ啓蒙活動が不足しているということであろうと筆者は認識している。
⃝DFLの視点  「DFL(Design For Logistics)」は環境対応がクローズアップされたことによって注目されるようになった比較的新しい視点であり、考え方である。
しかし、世界のロジスティクス先進企業は従来からDFLを実践してきた。
 プロダクトマネジャーを中心にして主に開発・設計部門が、製品の企画段階から販売後の廃棄に至るすべての過程を考慮して製品および包装を開発・設計する。
そこには原材料の選択、製造工程における危険物質の使用排除、物流過程における輸配送機材への適合性、製品廃棄の際のゴミとしての分別の容易さなどが含まれる。
 物流工程においては、予想される物流ハザードを考慮して、包装だけでなく製品そのものの対振動や対G=加速度などの耐久力を設定する。
形状をできるだけ小さくまとめることにも注意を払う。
それによって、製品を守るための包装(緩衝材も含む)のコストを下げ、種々の輸送機材の積載効率を高め、また倉庫での保管効率を上げる。
 ちなみに今年10月に東京ビッグサイトで開催された国際包装展「TOKYO PACK 2022」では、筆者の感覚では7〜8割のブースが「環境対策」をクローズアップしていたが、DFLに関する展示はほとんど見当たらなかった。
包装体積の圧縮を提案する展示も極めて少なかった。
いずれは廃棄物となる製品や包装の体積を圧縮し、減量することが環境に好影響をもたらすことは自明であるのに、いささか残念であった。
⃝包装材料・緩衝材の視点  包装の最大の目的は「内容物の保護」であり、包装設計は基本的に開発部門の業務である。
DFLが徹底していない企業においては、包装設計の段階で製品の保護を必要以上に考慮して、緩衝材や内外装の段ボールに過大な強度を求める傾向がある。
 筆者の知る事例を一つ紹介する。
形状や重さがほぼ同等の製品を取り扱うA社とB社が、緩衝材に発泡スチロールを使った段ボール外装箱の落下テストを行った。
 開発部門は製品を世に出す前に、製品を包装した箱の振動・落下・圧縮テストなどを必ず実施する。
落下させる高さを上げていくと、まずは外装段ボールが損傷する。
さらに上げていくと、今度は緩衝材の発泡スチロールにクラック(ひび割れ)や欠け落ちが発生する。
 両社とも落下テストの方法は同じだが、その評価には大きな違いがあった。
A社は、外装段ボールや発泡スチロールの損傷は問題とせず、製品の本来の性能をテストして、異常が無ければOKとした。
一方、B社は、発泡スチロールのクラックまでは良しとするも、欠け落ち(分離)があった場合はNGとした。
 包装の目的が内容物の保護である以上、A社とB社のどちらが理にかなっているか明白であろう。
判断の違いはそのまま両者のコスト競争力に反映される。
いたずらに包装を肥大化させることは避けるべきなのである。
 ちなみにJIS(日本産業規格)は落下テストの高さについて、製品の質量と物流環境レベルにより段階的に指針を示している。
そのうちどのレベルを選ぶのかは企業の裁量に任されているが、ここで忘れてはならないのは製品そのものの加速度(G)への耐久力である。
 耐久力の高い製品は緩衝材をそれほど多く必要としなくてもよいはずである。
また製品の耐久力は改良によって変化することもある。
しかし、包装設計の基準はいったん決められてしまうと改良などがあっても長年にわたり改訂されないことが多い。
無駄な包装費用が垂れ流しになり、膨大なロスコストが発生している。
 また、包装、とりわけ緩衝材には多種多様な材料が用いられている。
画期的な緩衝材として1950年ごろに発泡スチロールが発明されて、その緩衝性能・軽さ・断熱性などで緩衝材の王者となった。
開発担当者はこの発泡スチロールも必要以上に厚くする傾向があった。
 しかし、近年は脱プラスチックの視点から発砲スチロール製の緩衝材を削減する動きが進んでいる。
当初の縦・横・高さの6面を完全に発泡スチロールで囲う包装(写真2)から、まずは2面のみを囲う方法に変わっていった(写真3)。
その後、段ボールを使った緩衝技術が進歩して、発泡スチロールの大幅な減量化(写真4)や段ボールのみの緩衝が多く見られるようになっている。
 先述の「TOKYO PACK 2022」でも、脱発泡スチロールを掲げたエアークッション製造機の展示が目立っていた。
段ボールによる緩衝材を提案しているブースもかなり増えた。
重量物にも対応できる100%紙緩衝材の提案などが散見された。
⃝グローバルサプライチェーンの視点  包装とグローバルサプライチェーンの関係性もやはり事例に基づいて解説する。
いずれもシンプルで泥臭い改善ながら多大な効果を挙げている。
納品先におけるハンドリングまで視野に入れて全体を把握することで、グローバルのみならず日本国内の取引においても思いもよらぬ成果につながることを認識してほしい。
事例① 長尺モノの包装・保管方法を変更  まずは、コード状の部品の包装体積の縮小活動をトリガーにして、航空運賃の半減、工場における保管効率の劇的な向上、かつピッキングおよびハンドリング作業の生産性改善を実現した事例である。
 当該部品は、長さが1mから2mと細長く、ある程度曲げた状態で包装することができる。
それを当初はいわゆる一般的なA式の段ボール箱内にとぐろを巻くように包装して輸出していた。
包装内には大きな隙間があった。
そこでこれを写真5の通り、棒状の角紙管などの個別包装に変えて、長い段ボール集合箱に詰めて輸出した。
これによりA式包装箱と比べて体積が半減した。
当然ながら支払い運賃も半分になった。
 荷姿の改良に続き、保管方法も工夫した。
従来はイラストのようにハンガーなどに部品を吊り下げ、それぞれに荷札を付けていた。
これを改め角紙管などの個別包装の小口部分に部品ナンバーやバーコードの印字された管理用シールを貼付した。
写真5の上部にある棚は、個装箱を横倒しで収納したものである。
この改善により、保管効率とハンドリング効率が格段に向上した。
事例② 発注単位をグローバルに統一  あるグローバル精密機械メーカーの事例である。
この会社は小物製品に10個単位の集合包装を使っているが、欧米からの発注はダース単位が多かった。
そのため、例えば欧米から1ダースのオーダーがあった場合、日本側で10個入りの箱をばらして2個取り出し、10個入りの箱と端数の2個を別の輸出用外装箱に入れて出荷する必要があった。
運賃がかさむ上、10個入りの2個だけを取り出して残った8個の端数管理も必要だった。
 そこで、海外の代理店などにダース単位の発注を10個単位に変更するように依頼した。
3カ月後には大多数の発注が10個単位になり、大幅なコストダウンが実現した。
事例③ 必要のない別包装を廃止  輸出包装に関して筆者がコンサルした事例である。
この会社では、部品を海外の現地法人に航空便で輸出するのに、同じ部品でもオーダー番号が違えば別包装とすることが慣行となっていた。
しかし、少数オーダーが圧倒的に多く、最も小さな外装箱を使っても中身はスカスカの状態であった。
荷物の約8割が空間=緩衝材であった。
 筆者が確認したところ、個々の部品にはバーコードが貼付され、かつそこにはオーダー番号も明記されていた。
そこで現地へ問い合わせたところ、オーダー番号別に包装しなくても、現地でのハンドリングには何の支障もないことが分かった。
 この会社は10年以上前から別包装を続けていたが、いつ誰がそう指示したのか自体が不明であった。
即刻すべての部品の同梱を実施した。
その結果、包装密度が跳ね上がり、航空運賃が劇的に下がったのは言うまでもない。
 同様の改善は他のクライアントでも成功しており、決して少なくない企業が陥っている「先入主となる」現象といえるだろう。
サプライチェーンを俯瞰して包装の影響を検証することで容易に発見できる。
包装密度KPI=デンシティー ⃝デンシティーとは何か  さて、これまで述べてきた包装に関するいくつかの視点に通じる考え方が、筆者が提唱する「デンシティー」である。
包装の密度を示す指標あるいは包装生産性の指標(KPI)であるが、適切な日本語が無いので、英語のDensity(密度)をとった。
デンシティーに関しては本誌2015年12月号でも解説したが、そのヒントとなったのは航空運賃の計算方法である。
 航空運賃は、図3のように「実重量(質量)」と「体積重量」を比べて、より重い方に課金される。
体積重量は航空輸送キャリアによって6千㎤が1㎏と定められている(5千㎤を1㎏としているケースも一部ある)。
デンシティーは、体積重量を質量で割った数値をKPIとして活用する。
その具体的な計算方法を以下に説明する。
 図4の「包装A」は体積重量が66・7㎏で実重量が50㎏であるため、体積重量の66・7㎏に対して課金される。
一方、図5の「包装B」は体積重量が23・3㎏、実重量が37㎏なので、課金されるのは実重量の37㎏である。
 双方の体積重量を実重量で割ってデンシティーを計算(図6)すると、包装Aは1・334、包装Bは0・630となる。
この結果を端的に説明すると、「包装Aはデンシティーが1を超えた分=33・4%の空間に運賃を余分に払っている」と判断できる。
一方、包装Bは「デンシティーが1以下なので、包装効率は良い」となる。
 すなわち、包装内の空間がスカスカか否かが、デンシティーの「1」を境として、容易に判断できる。
もちろんAとBの包装を外から眺めたり持ったりすれば、どちらが空間に無駄があるのかは感覚的(定性的)には分かるだろう。
しかし、その程度までは分からない。
スカスカ具合を定量的に数値で示すことで、包装効率の悪い荷物をあぶり出すことができるのである。
 なお、デンシティーは航空運賃計算方法に端を発しているが、その応用はすべての包装に適用できることを強調しておく。
⃝EC貨物のデンシティー分析  このデンシティー分析を筆者の自宅に届いたECの宅配貨物に適用してみよう。
①階段の滑り止め  写真6は、家庭用の階段のステップに張り付けるフェルト製の滑り止めである。
外装を開梱した写真7を見れば分かるが、中身に対して外装箱がかなり大きい。
デンシティーは悪そうである。
 実際に計算したところ表2の通り、質量が1・60㎏に対して体積重量が7・650㎏なので、デンシティーは4・781となる。
すなわち1を超えた3・781分が空気(空間)であり、明らかな過剰包装である。
②ペットフード  写真8の紙袋が外装、中身(写真9)はペットのドライフードである。
緩衝材は入っていなかった。
紙袋は段ボールよりも環境にやさしい素材であり、中身が壊れる物でなければ、適切な包装と言える。
 それでもデンシティーを計算(表3)すると、1・612であった。
袋が膨らみすぎであり、もっと深く袋をたたみ込めばデンシティーは改善される。
(ただし、この場合は宅配のタリフによっては袋を小さくしても運賃が下がらない可能性はある) ③仏壇  次は比較的小さな木製の仏壇である。
緩衝材は八つの角に厚さ10㎜のかなり薄い発泡スチロールが使用されていた(写真10)。
商品と外装箱の間の空間は相当狭い。
デンシティーは約1・7(表4)であった。
一見すると、かなり包装効率は悪いようだが、仏壇(写真11)は組み立て式ではないため、致し方ないところだろう。
 このようにデンシティーは外装箱の寸法と自宅にある体重計で重さを計るだけで計算できる。
非常に簡単なので、自宅に届いた宅配貨物のデンシティーを実際に計算して、いかに無駄な空間が多いかを実感してもらいたい。
コスト削減の方策と組織体制  最近、アマゾンジャパンから筆者のPCに「梱包簡素化に関するお知らせ」と題したメールが届いた。
それによるとアマゾンは2015年比で出荷時の梱包重量を38%、梱包資材を150万t以上削減し、さらに紙袋の使用や一部の製品をメーカーの梱包のままで届ける取り組みを拡大している、とのことである。
 アマゾンに限らずEC貨物の過剰包装に日頃から不満を持ってきた筆者にとって、この活動は歓迎すべきことである。
一方で日本ではたとえ外装の段ボールのわずかな傷であっても許されない傾向にあるのは、頭の痛い問題である。
日本の消費者も簡易包装に慣れるべき時代を迎えたことを認識してほしいところである。
 包装改善によるコスト削減の方策を整理すると図7のようになる。
本稿でそのすべてを説明することはできないが、そこに挙げた要素のうち最大の波及効果を期待できる重要な概念が「空間率の縮小」である。
そして縮小すべき個別の箱を科学的・定量的に白日の下にさらけ出すのがデンシティーなのである。
 デンシティーをどこまで小さくできるかが、腕の見せ所である。
グローバル企業・国内企業を問わず、サプライチェーンの視点で組織横断的に取り組むことがその絶対条件である。
最後にそれを可能にする組織体制の一例を紹介する(図8)。
 組織のトップには、推進力を強固にするため常務以上の役職が望ましい。
委員会には開発部門の参画が必須である。
そして、さまざまな包装改善による成果金額などの情報は、すべて全社包装改善委員会に集約され、海外も含む全グループへ継続的にアピールされなければならない。

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