2022年12月号
特集
特集
ECにおける包装の役割と最適化を考える
1.「包装」と「梱包」の違い
本稿の主題に入る前に、まず「包装」と「梱包」という近しい意味合いで使われる言葉を定義する。
日本産業標準調査会の日本産業規格(JIS)によると、「包装」とは「物品の輸送、保管、取引、使用などに当たって、その価値及び状態を維持するための適切な材料、容器、それらに物品を収納する作業並びにそれらを施す技術又は施した状態」を意味する。
一方、「梱包」は「輸送を目的とした木製容器、鋼製容器、段ボール製容器などによる包装。
荷造りと呼ぶこともある」と定義されており、「包装」の方がより広い意味を有していることが分かる。
そこで本稿では、基本的に商品の価値を維持するために適切な資材で保護する状態を「包装」という言葉で統一する。
ECの発展によって、商品を1ピース単位でも包装しなければならないことが増えている。
それに伴い包装作業の自動化・省力化に投資する動きが活発化している。
同時に段ボールなどの包装資材の不足が世界的に深刻化するなど包装についてあらためて検討する必要が生じている。
ECの受荷主には消費者もいる。
そのため企業間の荷物とは違って、包装を商品の保護という目的からだけではなく、他の側面からも考える必要がある。
消費者にとって包装は、例えば贈答品などの場合には装飾的な価値を持ってきた。
また事業者側でも包装を商品の保護以外の目的でも利用してきた。
ヤマト運輸は、包装には「内容物の保護」「取扱いの便利」と並んで「情報提供(広告)」という役務があると説明している。
実際、包装に自社ECサイトへのリンクとなるQRコードを印刷することでアクセス数を高める、新商品やセールの予告を行う、自社製品の関連キャラクターやイラストを印刷するなど、外箱の段ボールそのものを商品の一部と見立てるような包装もしばしば見受けられる。
一方、ECの利用が増加することで、消費者は主要な梱包資材である段ボールや緩衝材の処分を負担に感じるようになっている。
あるいはECで買い物をする時に、注文した商品の「箱」が自宅の宅配ボックスや共同住宅用の宅配ロッカーに入るかどうかを気にするようになった消費者もいるだろう。
メルカリをはじめとするCtoC-ECの発展によって、消費者自身が発荷主となり包装とより身近に接する機会も増えている。
本稿ではそれらの状況を整理しつつ、ECにおける包装の在り方と包装を切り口とした物流効率化の可能性について検討していく。
2.包装の効率化 商品の注文単位が細かいEC物流において、効率的な包装作業は重要である。
ここでは効率化を、作業自体の低コスト化と適切なサイズの包装資材の選択という二つの側面から検討する。
このうち後者には、包装資材の節約という直接的な効果の他に、小サイズ化による積載率の向上、それによる配送費の削減、さらには環境負荷低減が期待されている。
(1)機械による作業の効率化 EC物流センターにおける包装作業は基本的には、段ボールなどの包装資材の組み立て(製函)→商品を緩衝材で包む→商品の箱詰め→(場合によっては緩衝材の納入)→包装資材を折りたたみテープで留める(封函)→送り状を貼付するなどに分割できるであろう。
ただし、取り扱う商品や数量などによって工程数や区分、順番などは違ってくる。
どの作業を機械化すべきかも、各事業者の現状によるところが大きいであろう。
そのため、機械化による投資費用を回収できるか否かを判断するには、まず現状の作業時間などから包装作業の「活動基準原価(Activity Based Costing;ABC)」を把握することが最重要である。
最低賃金の上昇に伴う労働単価の増加、物流センターにおける人手確保の問題など、機械化を検討する前提条件も変化している。
包装以外の作業効率も併せて包装の機械化を検討すべきであろう。
取扱量が多い場合には、商品の誤送付を防ぐためにも、検品と送り状貼付までを機械化によって一体化させることが選択肢になってくる。
最近では機械そのものの性能が上がっているため、作業処理速度の向上に加えて製函・封函時の歪みなどのエラー率も低下している。
画像認識技術の向上によって、納入された商品の高さや大きさをシステムで判別して自動で封函する、すなわち商品の検品と封函を同時に行うことが可能な機器も開発されている。
(2)包装資材選択 全国段ボール工業組合連合会によると、段ボールシートの取引価格はここ数年で40%超上昇している(図1)。
かつては段ボールの原材料となる古紙の需要が、ECの発展を受けて世界的に跳ね上がったことから国内の段ボールシートの価格が上昇した。
その最大の需要者であった中国が古紙の輸入を停止して以降も、原油高、人件費の上昇などの影響もあって、段ボールシートの価格は高止まりしている。
図2の通り、EC・宅配便・引越向け段ボール使用量および食料品や電気機器などの全部門に占める使用割合はほぼ一貫して増加している。
コロナ禍で他部門の段ボール使用量が減少する中でも、EC・宅配便・引越用の段ボールの需要は一定量が維持されたわけである。
段ボール単価の高騰とECの成長に伴う段ボール使用量の増加によって、EC物流における包装費用の増加は今後も避けられないであろう。
包装資材を有効活用するために適切なサイズの箱を選択することの重要性も増していくものと考えられる。
衣料品などの自動包装機の中には、衣料品を真空パックにすることで体積を減らすことができるものもある。
これは包装資材の費用削減だけでなく、サイズと重量で決まる宅配便の輸送費用の削減にもつながる。
特にEC商品は容積勝ちしやすいので、包装した荷姿の小サイズ化は有効である。
ただし、段ボールサイズを細かく分類し過ぎると、サイズ当たりの購入量が減って段ボールの調達単価がかえって上昇する、さらには段ボールの管理費用が増加する可能性もある。
EC事業者としては自社の販売量や商品の種類に応じて包装資材の種類を検討すべきであろう。
また、段ボール箱のメーカーは中小企業が中心であり、よほどの大口ユーザーでない限り、細かなサイズの段ボールの製造を委託するのは現実的には難しいと考えられる。
ただし、その場合でも、自動梱包機などを使って底面は同じでも高さを調整することで、小サイズ化による配送費用の削減を期待できる。
大規模なEC事業者による包装資材の効率的な選択という意味では、米アマゾン・ドット・コムが機械学習を活用して包装資材の使用量を適正化した事例が挙げられる。
Meiyappan & Bales(※1)によると、アマゾンは2015年以降で、1配送当たりの包装資材重量を36%減少させて、段ボール箱20億個に相当する100万トン以上の包装資材を削減したという。
アマゾンは、商品のサイズや重量だけでなく、商品画像や説明文も機械学習の分析材料に加えて最適な包装資材を選択している。
その選択肢には従来通りの段ボールや、メーカーによる包装のまま配送するといった方法の他に、開封しやすさやリサイクルのしやすさに主眼を置いた簡易包装「フラストレーション・フリー・パッケージ(FFP)」などが含まれる。
アマゾンは費用の削減という効果はもちろん、電気自動車による配送などとも組み合わせて、環境負荷軽減のための施策の一つとして、包装資材選択の適正化を位置付けているようである。
なおアマゾンジャパンも、22年8月に段ボールではなく、紙袋やメーカーによる包装をそのまま利用する包装の簡素化を発表している。
3.消費者視点の包装 (1)消費者が望む包装の簡素化 包装の目的として第一に挙げられる商品の保護という観点からすると、消費者にとって包装は追加的な料金が発生しない限り厳重な方が良いのかもしれない(EC事業者が負担する包装費用は、最終的にはコストとして料金に上乗せされることになるが)。
ところが、実際には多くの消費者が商品の保護以上に、包装資材の簡素化を望んでいる。
21年3月に市場調査会社のネオマーケティングが、20〜69歳の男女1千人を対象とするインターネットアンケート形式で実施した「ECサイトの梱包から配送に関する調査」によると、「ゴミが増えないよう、簡易的な包装資材が使用されている梱包」および「環境のため、環境に配慮した梱包資材が使用されている梱包」を約9割が「必要・好印象」と回答している。
同調査は、包装がECサイトの利用に影響するかについても尋ねている。
その結果、過剰包装を嫌ってECサイトでの購入をやめたことがあるという回答者が15・2%いた。
また別の設問では郵便受けに投函する配送方式が選べないことを不満に思う回答者が36・1%に上った。
近年、少しずつ増加している戸建てまたは共同住宅用の宅配ボックスは収納可能な荷物のサイズがさまざまであり、包装を小サイズ化することは宅配ボックスに入らないというリスクを回避することにもなることを考慮すべきだろう。
(2)消費者による包装の選択 いくつかのECサービスにおいては、消費者が通常の包装か贈答品用の包装かを選択することができる。
ただし、これは消費者が能動的に選択可能な包装がこの2種類に限られている場合が多いということでもある。
実際には、消費者の要望はもっと多様であるかもしれない。
包装を商品の保護という観点から考えると、消耗品のように商品の本質的な価値さえ損なっていなければ良いとみなされる商品もあれば、嗜好性の高い商品などは贈答品用でなかったとしても微小な傷でも避けたいであろう。
また、例えば商品が書籍であれば、同一商品であっても、その消費者にとって本に書かれている内容が本質的価値であるのか、あるいは収集して書棚に飾ることが目的なのかといったことによっても、包装に対するニーズは変わってくるだろう。
以上を考慮すると、ECにおける包装は配送方法などと同様に消費者が選択可能であることが望ましい。
しかし、EC事業者は多くの注文件数を処理する必要があり、包装作業に割り当てることのできるリソースは限られている。
消費者が包装に自身の意思を反映することを可能にしたサービスとして、やはりアマゾンの二つの事例を紹介する。
一つは「Amazonパントリー」である。
食品や日用品を専用の包装箱に詰め込んで配達する。
飲料や洗剤などが比較的まとまった量で販売されることが多いアマゾンにおいて、ピース単位でそれらが購入できるサービスとして登場した。
Amazonパントリーで購入できる対象商品を掲載したサイト画面には、それぞれ専用の包装箱の容積を何%使用するかが表示されている。
AmazonパントリーはPrime会員であっても1箱当たりの取扱手数料が発生するため、これにより消費者には専用箱の容積使用率を向上させようとするインセンティブが働く。
消費者に包装の効率化を意識づける試みと言える。
しかし、Amazonパントリーはアメリカでは21年1月に、日本でも21年8月にサービスを終了している。
アメリカでは、コロナ禍の需要急増に対応できなかったという見方も出ているが、消費者に包装効率を考えさせるという仕組み自体の難易度が高かったという指摘もあった。
二つ目は、先述の簡易包装プログラム「FFP」である。
FFPの対象商品にはポイントが上乗せされていたり、FFP以外の商品よりも価格が安かったりと、やはり簡易包装を選ぶインセンティブをつけて販売されている。
アマゾンは最終的に全ての商品をFFPで提供することを目指している。
しかし、22年10月現在、FFPが適用されているのはAmazonのプライベートブランド(PB)「Amazon Basics」を中心とする一部の商品に限られている。
(3)包装資材から得られる消費者の満足感 単なる金銭的な“お得感”だけでは、消費者を物流効率化に資する選択へと促すのは難しいことは、公共型宅配ロッカーを利用することによるポイント付与プログラムが継続的でないことや筆者が過去に行ったアンケート調査(※2)からも示唆されている。
包装においても、商品が適切に保護されている、包装を開けやすい、ごみを捨てる手間が省けるなどのメリットだけでなく、消費者が環境負荷低減を実感できる情報提供の方法が重要であろう。
環境負荷低減への貢献といった要素が消費者の行動にどう影響するかについては、従来から多くの研究で注目されてきた。
CO2排出量を可視化する仕組みとしてはカーボンフットプリントがよく知られているが、消費者が物流効率化や資材削減に寄与する包装サービスの選択を行った場合のCO2削減効果を明示することが、消費者の満足感を向上させる可能性もある。
繰り返しになるが、その際には郵便受け投函や自宅用宅配ボックス、公共型宅配ロッカーの利用といった受け取り方の選択と合わせて実施することが、よりEC物流全体の効率化に寄与することになると考えられる。
4.まとめ EC事業者にとって包装は、商品を保護するための機能であると同時に、ラッピングなどによって消費者の満足度を高める機能でもあり、かつ配送の効率性につながる要素である。
適正な包装は単に包装資材の節約だけでなく、小サイズ化によって配送事業者に支払う運賃を抑制することができる。
宅配事業者にとっても、積載効率を向上し、ポストや宅配ボックスに投函できないリスクを軽減する効果がある。
さらには、包装資材の廃棄が消費者の負担になっている現状を考えれば、過剰な包装の見直しは効果的な施策である。
近年ではメルカリをはじめとしたCtoCのEC事業も成長が著しい。
メルカリは比較的小さい雑貨などの取り扱いが多いため、ヤマト運輸や日本郵便はコンビニエンスストアなどでメルカリ用の小サイズの包装資材を販売するようになっている。
EC事業者、個人の出品者、配送事業者、消費者のいずれにとっても、商品サイズに合わせた適正な包装の重要性が高くなっていることがうかがえる。
また、包装資材については、段ボールを繰り返し利用可能な折り畳みコンテナ(オリコン)に変更する動きが一部で見られる。
ただし、EC物流の場合には、段ボールとオリコンのどちらが環境負荷やコスト負担が少ないかを慎重に検討する必要があるだろう。
段ボールは資源ごみとして回収するルートが既に確立しており、回収率も95%と高い。
段ボール自体も90%以上が段ボール古紙を原料としている。
一方、オリコンを使う場合には、回収のための静脈物流が新たに発生する。
個人向けでも企業間物流のように取引ロットがまとまっており、かつ回収の目途が立っている取引形態であればオリコンの運用も可能であろう。
対面の受け渡しが原則でその場でオリコンを回収できる場合や、置き配でも生活協同組合の配送サービスのように週ごとの定期配送であれば回収は難しくない。
しかし、通常のEC物流は商品サイズや注文量がさまざまであり、サイズ可変式のオリコンでも使用しない限り、配送の積載効率はかえって低下する危険性もある。
包装資材の削減という点ではむしろプラスチック製緩衝材の削減に目を向けた方が現実的かもしれない。
いずれにしても、包装が商品保護だけでなく、受け取りやすさ、資材の廃棄のしやすさ、環境負荷軽減につながるものであることを消費者に実感できるように訴求していくことが重要であることを最後に指摘しておきたい。
参考文献 ※1 Prasanth Meiyappan & Matthew Bales [Amazon.com](2021)"Position Paper: Reducing Amazon's packaging waste using multimodal deep learning" ※2 宮武宏輔(2020)『公共宅配ロッカーの利用に対する消費者の意識』
日本産業標準調査会の日本産業規格(JIS)によると、「包装」とは「物品の輸送、保管、取引、使用などに当たって、その価値及び状態を維持するための適切な材料、容器、それらに物品を収納する作業並びにそれらを施す技術又は施した状態」を意味する。
一方、「梱包」は「輸送を目的とした木製容器、鋼製容器、段ボール製容器などによる包装。
荷造りと呼ぶこともある」と定義されており、「包装」の方がより広い意味を有していることが分かる。
そこで本稿では、基本的に商品の価値を維持するために適切な資材で保護する状態を「包装」という言葉で統一する。
ECの発展によって、商品を1ピース単位でも包装しなければならないことが増えている。
それに伴い包装作業の自動化・省力化に投資する動きが活発化している。
同時に段ボールなどの包装資材の不足が世界的に深刻化するなど包装についてあらためて検討する必要が生じている。
ECの受荷主には消費者もいる。
そのため企業間の荷物とは違って、包装を商品の保護という目的からだけではなく、他の側面からも考える必要がある。
消費者にとって包装は、例えば贈答品などの場合には装飾的な価値を持ってきた。
また事業者側でも包装を商品の保護以外の目的でも利用してきた。
ヤマト運輸は、包装には「内容物の保護」「取扱いの便利」と並んで「情報提供(広告)」という役務があると説明している。
実際、包装に自社ECサイトへのリンクとなるQRコードを印刷することでアクセス数を高める、新商品やセールの予告を行う、自社製品の関連キャラクターやイラストを印刷するなど、外箱の段ボールそのものを商品の一部と見立てるような包装もしばしば見受けられる。
一方、ECの利用が増加することで、消費者は主要な梱包資材である段ボールや緩衝材の処分を負担に感じるようになっている。
あるいはECで買い物をする時に、注文した商品の「箱」が自宅の宅配ボックスや共同住宅用の宅配ロッカーに入るかどうかを気にするようになった消費者もいるだろう。
メルカリをはじめとするCtoC-ECの発展によって、消費者自身が発荷主となり包装とより身近に接する機会も増えている。
本稿ではそれらの状況を整理しつつ、ECにおける包装の在り方と包装を切り口とした物流効率化の可能性について検討していく。
2.包装の効率化 商品の注文単位が細かいEC物流において、効率的な包装作業は重要である。
ここでは効率化を、作業自体の低コスト化と適切なサイズの包装資材の選択という二つの側面から検討する。
このうち後者には、包装資材の節約という直接的な効果の他に、小サイズ化による積載率の向上、それによる配送費の削減、さらには環境負荷低減が期待されている。
(1)機械による作業の効率化 EC物流センターにおける包装作業は基本的には、段ボールなどの包装資材の組み立て(製函)→商品を緩衝材で包む→商品の箱詰め→(場合によっては緩衝材の納入)→包装資材を折りたたみテープで留める(封函)→送り状を貼付するなどに分割できるであろう。
ただし、取り扱う商品や数量などによって工程数や区分、順番などは違ってくる。
どの作業を機械化すべきかも、各事業者の現状によるところが大きいであろう。
そのため、機械化による投資費用を回収できるか否かを判断するには、まず現状の作業時間などから包装作業の「活動基準原価(Activity Based Costing;ABC)」を把握することが最重要である。
最低賃金の上昇に伴う労働単価の増加、物流センターにおける人手確保の問題など、機械化を検討する前提条件も変化している。
包装以外の作業効率も併せて包装の機械化を検討すべきであろう。
取扱量が多い場合には、商品の誤送付を防ぐためにも、検品と送り状貼付までを機械化によって一体化させることが選択肢になってくる。
最近では機械そのものの性能が上がっているため、作業処理速度の向上に加えて製函・封函時の歪みなどのエラー率も低下している。
画像認識技術の向上によって、納入された商品の高さや大きさをシステムで判別して自動で封函する、すなわち商品の検品と封函を同時に行うことが可能な機器も開発されている。
(2)包装資材選択 全国段ボール工業組合連合会によると、段ボールシートの取引価格はここ数年で40%超上昇している(図1)。
かつては段ボールの原材料となる古紙の需要が、ECの発展を受けて世界的に跳ね上がったことから国内の段ボールシートの価格が上昇した。
その最大の需要者であった中国が古紙の輸入を停止して以降も、原油高、人件費の上昇などの影響もあって、段ボールシートの価格は高止まりしている。
図2の通り、EC・宅配便・引越向け段ボール使用量および食料品や電気機器などの全部門に占める使用割合はほぼ一貫して増加している。
コロナ禍で他部門の段ボール使用量が減少する中でも、EC・宅配便・引越用の段ボールの需要は一定量が維持されたわけである。
段ボール単価の高騰とECの成長に伴う段ボール使用量の増加によって、EC物流における包装費用の増加は今後も避けられないであろう。
包装資材を有効活用するために適切なサイズの箱を選択することの重要性も増していくものと考えられる。
衣料品などの自動包装機の中には、衣料品を真空パックにすることで体積を減らすことができるものもある。
これは包装資材の費用削減だけでなく、サイズと重量で決まる宅配便の輸送費用の削減にもつながる。
特にEC商品は容積勝ちしやすいので、包装した荷姿の小サイズ化は有効である。
ただし、段ボールサイズを細かく分類し過ぎると、サイズ当たりの購入量が減って段ボールの調達単価がかえって上昇する、さらには段ボールの管理費用が増加する可能性もある。
EC事業者としては自社の販売量や商品の種類に応じて包装資材の種類を検討すべきであろう。
また、段ボール箱のメーカーは中小企業が中心であり、よほどの大口ユーザーでない限り、細かなサイズの段ボールの製造を委託するのは現実的には難しいと考えられる。
ただし、その場合でも、自動梱包機などを使って底面は同じでも高さを調整することで、小サイズ化による配送費用の削減を期待できる。
大規模なEC事業者による包装資材の効率的な選択という意味では、米アマゾン・ドット・コムが機械学習を活用して包装資材の使用量を適正化した事例が挙げられる。
Meiyappan & Bales(※1)によると、アマゾンは2015年以降で、1配送当たりの包装資材重量を36%減少させて、段ボール箱20億個に相当する100万トン以上の包装資材を削減したという。
アマゾンは、商品のサイズや重量だけでなく、商品画像や説明文も機械学習の分析材料に加えて最適な包装資材を選択している。
その選択肢には従来通りの段ボールや、メーカーによる包装のまま配送するといった方法の他に、開封しやすさやリサイクルのしやすさに主眼を置いた簡易包装「フラストレーション・フリー・パッケージ(FFP)」などが含まれる。
アマゾンは費用の削減という効果はもちろん、電気自動車による配送などとも組み合わせて、環境負荷軽減のための施策の一つとして、包装資材選択の適正化を位置付けているようである。
なおアマゾンジャパンも、22年8月に段ボールではなく、紙袋やメーカーによる包装をそのまま利用する包装の簡素化を発表している。
3.消費者視点の包装 (1)消費者が望む包装の簡素化 包装の目的として第一に挙げられる商品の保護という観点からすると、消費者にとって包装は追加的な料金が発生しない限り厳重な方が良いのかもしれない(EC事業者が負担する包装費用は、最終的にはコストとして料金に上乗せされることになるが)。
ところが、実際には多くの消費者が商品の保護以上に、包装資材の簡素化を望んでいる。
21年3月に市場調査会社のネオマーケティングが、20〜69歳の男女1千人を対象とするインターネットアンケート形式で実施した「ECサイトの梱包から配送に関する調査」によると、「ゴミが増えないよう、簡易的な包装資材が使用されている梱包」および「環境のため、環境に配慮した梱包資材が使用されている梱包」を約9割が「必要・好印象」と回答している。
同調査は、包装がECサイトの利用に影響するかについても尋ねている。
その結果、過剰包装を嫌ってECサイトでの購入をやめたことがあるという回答者が15・2%いた。
また別の設問では郵便受けに投函する配送方式が選べないことを不満に思う回答者が36・1%に上った。
近年、少しずつ増加している戸建てまたは共同住宅用の宅配ボックスは収納可能な荷物のサイズがさまざまであり、包装を小サイズ化することは宅配ボックスに入らないというリスクを回避することにもなることを考慮すべきだろう。
(2)消費者による包装の選択 いくつかのECサービスにおいては、消費者が通常の包装か贈答品用の包装かを選択することができる。
ただし、これは消費者が能動的に選択可能な包装がこの2種類に限られている場合が多いということでもある。
実際には、消費者の要望はもっと多様であるかもしれない。
包装を商品の保護という観点から考えると、消耗品のように商品の本質的な価値さえ損なっていなければ良いとみなされる商品もあれば、嗜好性の高い商品などは贈答品用でなかったとしても微小な傷でも避けたいであろう。
また、例えば商品が書籍であれば、同一商品であっても、その消費者にとって本に書かれている内容が本質的価値であるのか、あるいは収集して書棚に飾ることが目的なのかといったことによっても、包装に対するニーズは変わってくるだろう。
以上を考慮すると、ECにおける包装は配送方法などと同様に消費者が選択可能であることが望ましい。
しかし、EC事業者は多くの注文件数を処理する必要があり、包装作業に割り当てることのできるリソースは限られている。
消費者が包装に自身の意思を反映することを可能にしたサービスとして、やはりアマゾンの二つの事例を紹介する。
一つは「Amazonパントリー」である。
食品や日用品を専用の包装箱に詰め込んで配達する。
飲料や洗剤などが比較的まとまった量で販売されることが多いアマゾンにおいて、ピース単位でそれらが購入できるサービスとして登場した。
Amazonパントリーで購入できる対象商品を掲載したサイト画面には、それぞれ専用の包装箱の容積を何%使用するかが表示されている。
AmazonパントリーはPrime会員であっても1箱当たりの取扱手数料が発生するため、これにより消費者には専用箱の容積使用率を向上させようとするインセンティブが働く。
消費者に包装の効率化を意識づける試みと言える。
しかし、Amazonパントリーはアメリカでは21年1月に、日本でも21年8月にサービスを終了している。
アメリカでは、コロナ禍の需要急増に対応できなかったという見方も出ているが、消費者に包装効率を考えさせるという仕組み自体の難易度が高かったという指摘もあった。
二つ目は、先述の簡易包装プログラム「FFP」である。
FFPの対象商品にはポイントが上乗せされていたり、FFP以外の商品よりも価格が安かったりと、やはり簡易包装を選ぶインセンティブをつけて販売されている。
アマゾンは最終的に全ての商品をFFPで提供することを目指している。
しかし、22年10月現在、FFPが適用されているのはAmazonのプライベートブランド(PB)「Amazon Basics」を中心とする一部の商品に限られている。
(3)包装資材から得られる消費者の満足感 単なる金銭的な“お得感”だけでは、消費者を物流効率化に資する選択へと促すのは難しいことは、公共型宅配ロッカーを利用することによるポイント付与プログラムが継続的でないことや筆者が過去に行ったアンケート調査(※2)からも示唆されている。
包装においても、商品が適切に保護されている、包装を開けやすい、ごみを捨てる手間が省けるなどのメリットだけでなく、消費者が環境負荷低減を実感できる情報提供の方法が重要であろう。
環境負荷低減への貢献といった要素が消費者の行動にどう影響するかについては、従来から多くの研究で注目されてきた。
CO2排出量を可視化する仕組みとしてはカーボンフットプリントがよく知られているが、消費者が物流効率化や資材削減に寄与する包装サービスの選択を行った場合のCO2削減効果を明示することが、消費者の満足感を向上させる可能性もある。
繰り返しになるが、その際には郵便受け投函や自宅用宅配ボックス、公共型宅配ロッカーの利用といった受け取り方の選択と合わせて実施することが、よりEC物流全体の効率化に寄与することになると考えられる。
4.まとめ EC事業者にとって包装は、商品を保護するための機能であると同時に、ラッピングなどによって消費者の満足度を高める機能でもあり、かつ配送の効率性につながる要素である。
適正な包装は単に包装資材の節約だけでなく、小サイズ化によって配送事業者に支払う運賃を抑制することができる。
宅配事業者にとっても、積載効率を向上し、ポストや宅配ボックスに投函できないリスクを軽減する効果がある。
さらには、包装資材の廃棄が消費者の負担になっている現状を考えれば、過剰な包装の見直しは効果的な施策である。
近年ではメルカリをはじめとしたCtoCのEC事業も成長が著しい。
メルカリは比較的小さい雑貨などの取り扱いが多いため、ヤマト運輸や日本郵便はコンビニエンスストアなどでメルカリ用の小サイズの包装資材を販売するようになっている。
EC事業者、個人の出品者、配送事業者、消費者のいずれにとっても、商品サイズに合わせた適正な包装の重要性が高くなっていることがうかがえる。
また、包装資材については、段ボールを繰り返し利用可能な折り畳みコンテナ(オリコン)に変更する動きが一部で見られる。
ただし、EC物流の場合には、段ボールとオリコンのどちらが環境負荷やコスト負担が少ないかを慎重に検討する必要があるだろう。
段ボールは資源ごみとして回収するルートが既に確立しており、回収率も95%と高い。
段ボール自体も90%以上が段ボール古紙を原料としている。
一方、オリコンを使う場合には、回収のための静脈物流が新たに発生する。
個人向けでも企業間物流のように取引ロットがまとまっており、かつ回収の目途が立っている取引形態であればオリコンの運用も可能であろう。
対面の受け渡しが原則でその場でオリコンを回収できる場合や、置き配でも生活協同組合の配送サービスのように週ごとの定期配送であれば回収は難しくない。
しかし、通常のEC物流は商品サイズや注文量がさまざまであり、サイズ可変式のオリコンでも使用しない限り、配送の積載効率はかえって低下する危険性もある。
包装資材の削減という点ではむしろプラスチック製緩衝材の削減に目を向けた方が現実的かもしれない。
いずれにしても、包装が商品保護だけでなく、受け取りやすさ、資材の廃棄のしやすさ、環境負荷軽減につながるものであることを消費者に実感できるように訴求していくことが重要であることを最後に指摘しておきたい。
参考文献 ※1 Prasanth Meiyappan & Matthew Bales [Amazon.com](2021)"Position Paper: Reducing Amazon's packaging waste using multimodal deep learning" ※2 宮武宏輔(2020)『公共宅配ロッカーの利用に対する消費者の意識』
