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2022年11月号
特集

NX・NPロジスティクス 本社に専門組織を置き「物流版IE」を全社展開

ユニットロード化で庫内の負荷が増加  NX・NPロジスティクスは「物流2024年問題」への対応などを主な目的とする物流イノベーション推進プロジェクトを2019年4月に本格的にスタートさせた。
「ユニットロード化」「ラウンド輸送」「集車・配車機能の構築」「配送付帯作業の簡素化」を主な取り組み事項に設定している。
 ユニットロード化では、大手小売店向けの納品輸送の一部をカゴ台車に切り替えたほか、基幹拠点から全国7エリアに設置している前線コアセンターへの拠点間輸送でパレット化を進めた。
幹線輸送にはパレットを箱状にすることができる機材「輸送BOX」を用いている。
パレットそのものを箱の底面として利用して四方を輸送BOXで囲い、ふたを閉めてその中にケース商品を積載する。
 使用するパレットサイズの統一も進めた。
家電物流は一般的にケース単位のばら輸送のため、パレットは倉庫で保管する際に利用していた。
「しかも5種類程度のサイズを運用していた。
家電輸送で最も効率的なサイズを研究した結果、1300×1100ミリメートルの13型をメーンとして採用することになった」と岡本雄一郎神戸化推進室次長は話す。
 一連のユニットロード化によって、ドライバーの積み込み作業にハンドリフトなどを使えるようになった。
積み込み作業時間は出荷状況によっても変動するが、おおむね4トン車で半分以下、10トン車は3分の1以下になった。
その一方、倉庫側ではパレットやカゴ台車などへの積み替えが新たに発生して、工程が増え、作業負荷が高まってしまった。
そこで出荷工程全体の改善に取り組んだ。
 製造現場で広く取り入れられているIE(Industrial engineering=作業内容や工程を科学的に分析して商品を正確に早く効率的に生産するための手法)を物流現場向けにカスタマイズした「物流版IE」を用いて作業工程を分析した。
 兵庫県尼崎市の西日本グローバル物流センター(西日本GLC)がその舞台の一つとなった。
所管面積約13万平方メートルという同社最大規模の拠点で、海外生産品などを在庫する東西2大拠点の一つであり、近畿や中四国などのエリア拠点の役割も兼ねている。
 IEでは現場の作業風景を撮影して動画を分析、各工程で最も多くの時間をかけている動作を突き止める。
さらに熟練者と非熟練者の動作を比較することで効率的な方法を見つけ出す。
製造現場とは異なり、物流現場ではスタッフが庫内を頻繁に移動するため、撮影者は庫内スタッフを追いかけて撮影することになる。
 ピッキング、荷揃え検品、積み替えの各工程で庫内スタッフの作業を動画で記録した。
そのうちピッキング工程を分析した結果、同工程の半分近くの時間がロケーションへの移動や運搬といった「歩行・空歩行」に費やされていたことが分かった。
 さらにその内訳について熟練者と非熟練者を比較したところ、何も持たずに移動している「空歩行」が両者の最も大きな違いとなっていた。
熟練者は最短距離でロケーションに移動する一方、非熟練者は無駄な歩行が発生していたからだ。
そこで、空歩行が発生しにくいロケーションの表示やレイアウトの工夫などを実施した。
 荷揃え検品工程の場合は、作業が行いやすく作業動線も短くなる場所へと積み替えエリアを変更するといった改善によって作業負荷の軽減や工程間の手待ち時間解消を実現した。
 各工程別の改善に加えて、複数の工程を通しで分析してトータルで無駄を削減することにも取り組んだ。
西日本GLCはワンフロアが巨大かつ多層階であるため、工程ごとに作業チームが分かれており、ピッキング工程と荷揃え検品工程は作業エリアも上下階で異なっている。
ピッキング工程と荷揃え検品工程の2工程を通しで分析してみたところ、パレットに商品を置く作業とストレッチフィルムを巻く作業という二つの作業が重複していたことが分かった。
そこで、ピッキング工程と荷揃え検品工程を一連のプロセスとして捉えて作業フローを設計し直し、重複していた作業を解消した。
全国のセンターを「神戸化」する  西日本GLCの一連の取り組みをはじめ、同社の現場改善は本社の「神戸化推進室」が主導している。
この少し変わった部署名はその成り立ちに由来している。
同社では神戸営業所が09年ごろから営業所独自でのプロセスイノベーションを展開した。
生産管理の手法を応用して、「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)3定(定位・定品・定量)」やIEの手法を用いた現場改善に取り組み、大きな効果を上げた。
 同じ手法を神戸営業所の近隣拠点で横展開したところ、そこでも改善に成功。
これを受けて全国の拠点を「神戸化」することを目指し、13年に本社部門として神戸化推進室を新設した。
 物流版IEの指導では、同室に所属する大手メーカーのIE認定資格を保有するIEトレーナーが各支店のIE推進責任者と連携。
IE分析を行える人材を理論と実践の二本柱で育成している。
 IEの基礎を学ぶための認定研修の受講を促すとともに、IEトレーナーが物流版IEを用いた分析と改善のやり方を実践方式で教えていく。
21年度は11拠点で208回、IEトレーナーによる拠点別マンツーマン指導を行った。
 坂本将規神戸化推進室室長は「改善活動の主軸に5S3定、物流版IE、リフトマン強靭化を据えている。
特に5S3定は重要で、これが根付いていないと物流版IEの改善効果も限定的になってしまう。
現場改善を継続するのに大事になるのが内発的な動機づけ。
従業員一人一人の意識が全ての基礎になる」と話す。
そのために物流現場だけでなく、全ての職場を対象とする改善活動にも取り組んでいる。
13年度に約4千件だった改善総件数は15年度と20年度には1万件を突破し、9年間では累計7万8千件超の改善が実施された。
 「例えば使いやすいよう現場に線を引くだけでも立派な改善。
『改善活動って難しそう』という意識をなくして、『改善とは楽しいものだ』と思ってもらえるように、参加のハードルは低くしている。
ささいな改善でも、その積み重ねが大事。
それが改善意識の醸成につながる」と坂本室長。
 優れた取り組みについては改善内容を1枚にまとめた「改善マップ」を作成して共有する。
年間の改善総件数のうち、改善マップ化されるのはおよそ1割。
1年間で1千近くの改善マップが作成されている計算だ。
その改善内容は簡単に検索して閲覧できる。
例えば「机の改善」で検索すると、それまでに蓄積してきた具体的な事例が出てくる。
 改善事例の社内大会である「年間改善コミュニケーション大賞」も毎年開催している。
選りすぐりの事例の中から30事例がエントリーし、全執行役員が採点に参加する最終審査で「グランプリ」「準グランプリ」「特別賞」を決定する。
そして、グランプリや準グランプリの中から1件を選んで、JILSなどが主催する全日本物流改善事例大会に参加している。
21年と22年には2年連続で最優秀事例に選出された。
同大会には19年から出場しているが、毎回、異なるセンターが参加している。
これも同社の改善活動が全社規模に根付いていることを物語っている。

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