2022年11月号
特集
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キユーソー流通システム 「効率分離」の考え方で少量多品種化に対応
庫内業務の専門家集団が改善を主導
キユーソー流通システムは、グループ会社のキユーソーエルプランがオペレーションを担当する拠点のうち、主に共同物流事業を行っている拠点で、出荷エリアと保管エリアを区分する「ダブルトランザクション」を運用している。
キユーソーエルプランは食品物流の庫内オペレーションを専門とする企業だ。
2003年にキユーソー流通システムの倉庫荷役部門から独立して発足した。
荷役作業のプロ集団として庫内業務の作業設計などを担うほか、マテハンや物流関連システムの開発支援なども行う。
同社が運営する物流拠点では、出荷の少量多品種化による生産性への影響が課題となっていた。
取り扱いSKU数が増加して、不動在庫や長期在庫の比率も増える傾向にあった。
移動棚を追加して保管に必要な間口を増やすことなどで対応してきた。
一つの届け先に対して1アイテム1ケースという出荷の比率も増加していた。
棚エリアの作業動線が長くなり、細かくピッキングを行わなくてはならない。
人員増加で対応してきたが、総労働時間の内訳を調べると出荷作業時間が約6割を占めていることが分かった。
そこで倉庫内作業の設計や保管方法を見直すことにした。
総労働時間を削減して、人員を増やさずに少量多品種出荷に対応できる体制を目指した。
出荷作業の効率と保管効率を分けて作業手順を構築する「効率分離」という考え方を基本に据えて、ダブルトランザクションの導入を図った。
キユーソーエルプランの入野智事業本部ビジネスサポート部執行役員はその意図を次のように説明する。
「従来は作業と保管という二つの効率をミックスして考えていた。
作業を早く終わらせるし、モノもたくさん入れる。
これを倉庫の同じ区画内で追い求めていた。
しかし、出荷単位の塊が小さくなり、頻度も上がると、保管と出荷は分けて作業を設計した方が効率は上がる。
保管エリアと出荷エリアを区分けし、事前に設定したしきい値分の安全在庫を出荷エリアへと補充する設計とすることで、保管と出荷の両方の効率を高める庫内の仕組みがダブルトランザクションだ」。
入庫は保管効率を高めることを目的にフリーロケーションで格納する。
これはダブルトランザクションを始める前も同じだった。
ただし、従来は入庫時に格納した場所のままで出荷時にピッキングしていた。
それに対してダブルトランザクションは、リザーブフロアとピッキングフロアを分け、すぐに出荷する量だけをパレット単位でリザーブフロアからピッキングフロアに補充する。
これによりピッキング時の動線が短くなる。
これを運用するには各アイテムの出荷傾向に関する詳細な分析が必要になる。
どのアイテムがどの程度の頻度で、どのくらいの単位で出荷されているのかが分からなければ、リザーブフロアからピッキングフロアに商品をどのタイミングでどの程度の数量を補充すればいいかが判別できないからだ。
そこで商品のEIQ分析を行った。
注文データの注文件数(E=Order Entry)、種類(I=Item)、数量(Q=Quantity)の三つをキーファクターに出荷頻度や注文の重複などといったオーダーの特徴を把握する分析手法だ。
19年の秋ごろから埼玉県の行田営業所など3カ所のモデル営業所でEIQ分析を開始した。
「過去より不動在庫比率や長期在庫比率が上がっている」「取り扱いSKU数が増加傾向にあり必要間口も増加している」「労働時間や残業時間が増加傾向にある」などダブルトランザクションの効果が高いと思われる条件を満たす倉庫をモデル営業所に選定した。
EIQ分析をシステム化 EIQ分析の結果に基づく保管を、まずは従来方式で運用している倉庫でテストした。
出荷頻度を考慮した格納を入庫の際に行うことで、出荷ランク別の保管が出荷作業の生産性向上にどのような影響があるのかを測定した。
当初、EIQ分析は手作業で処理していた。
分析に必要な各種データは存在するものの、それらを一定のフォーマットで管理していなかったため、自動化できなかった。
データの収集と分析はキユーソーエルプランのビジネスサポート部が担当した。
作業設計課の村山直也課長は「分析を行える人間が限られてしまう上に、分析そのものに時間がかかるという課題があった」という。
そこでシステム化を図った。
20年10月にシステムが完成。
自動で必要なデータを収集して頻度や重複率の高さなどの出荷傾向別にアイテムを分類することができるようになった。
過去1カ月分の出荷実績を基にピッキングフロアに配置する商品を選出する。
商品別、日別、届け先別の出荷数量の週平均を算出し、その週平均から1日当たりの出荷量を割り出す。
出荷量/日の全体の半分を占めるアイテムがピッキングフロアへの補充配置対象で、それ以外のアイテムは基本的にリザーブフロア配置となる。
ピッキングフロア内のどの位置に再配置するかはEIQ分析で得られた注文特徴に基づいて各アイテムをABC分類して判定している。
出荷頻度が高い商品であれば出荷作業効率が高い場所に配置する。
ピッキングフロアの在庫残が事前に設定した安全在庫分を考慮したしきい値に到達したら、リザーブフロアからパレット単位で在庫を補充する。
補充方法には出荷量に応じて大きく三つのパターンがある。
1アイテム1ロケーション設定の「1間口指定」、1アイテム複数ロケーション設定の「複数間口指定」、そして「列単位指定」だ。
リザーブフロアからピッキングフロアへの補充を行うタイミングは当日出荷作業終了時間から翌日受注時間までとし、補充リストに基づいてピッキングフロアへと搬送される。
ダブルトランザクションの実施に際して苦労した点の一つが各種のセットアップだった。
「初期セットアップ段階のしきい値の設定に加え、商品入れ替え時期のしきい値の再設定は毎回時間をかけて調整している」とキユーソーエルプランのビジネスサポート部生産性管理課の小島喜雄課長。
ただ、その負荷もノウハウの蓄積によって徐々に下がってきたという。
ダブルトランザクションの運用開始によって、出荷作業時の移動時間が減少し、作業効率が向上した。
業務の標準化も進んだ。
行田営業所の事例はJILSなどによる全日本物流改善事例大会2022で優秀物流改善賞を受賞した。
先行導入した3拠点で想定通りの効果を発揮したことからキユーソーエルプランでは運営する全国46拠点のうち、共同物流事業を担当する中規模・大規模拠点への水平展開を本格的に進めている。
今後はダブルトランザクションの改善も進めていく。
出荷単位が小さくなる傾向はEIQ分析開始後の3年間でさらに進んでいる。
現状ではピッキングフロアへの補充単位はパレットだが、これをケース単位に変更することで全体の生産性を向上できないか検証していく。
補充リストの電子化も予定している。
補充作業を行うフォークリフトなどに装着した端末にリストを表示する仕組みを想定しており、端末操作を含めた検証を進めている。
その先には機械化やAI活用を見据えている。
入野執行役員は「ダブルトランザクションの実施に際して行った分析や数値による可視化は、今後の機械化やAI活用でも役に立つと思っている。
小口出荷作業の効率化は食品物流における喫緊の課題。
人手をかけている作業がどこかを突き止め、そこを効率化していきたい」と展望している。
キユーソーエルプランは食品物流の庫内オペレーションを専門とする企業だ。
2003年にキユーソー流通システムの倉庫荷役部門から独立して発足した。
荷役作業のプロ集団として庫内業務の作業設計などを担うほか、マテハンや物流関連システムの開発支援なども行う。
同社が運営する物流拠点では、出荷の少量多品種化による生産性への影響が課題となっていた。
取り扱いSKU数が増加して、不動在庫や長期在庫の比率も増える傾向にあった。
移動棚を追加して保管に必要な間口を増やすことなどで対応してきた。
一つの届け先に対して1アイテム1ケースという出荷の比率も増加していた。
棚エリアの作業動線が長くなり、細かくピッキングを行わなくてはならない。
人員増加で対応してきたが、総労働時間の内訳を調べると出荷作業時間が約6割を占めていることが分かった。
そこで倉庫内作業の設計や保管方法を見直すことにした。
総労働時間を削減して、人員を増やさずに少量多品種出荷に対応できる体制を目指した。
出荷作業の効率と保管効率を分けて作業手順を構築する「効率分離」という考え方を基本に据えて、ダブルトランザクションの導入を図った。
キユーソーエルプランの入野智事業本部ビジネスサポート部執行役員はその意図を次のように説明する。
「従来は作業と保管という二つの効率をミックスして考えていた。
作業を早く終わらせるし、モノもたくさん入れる。
これを倉庫の同じ区画内で追い求めていた。
しかし、出荷単位の塊が小さくなり、頻度も上がると、保管と出荷は分けて作業を設計した方が効率は上がる。
保管エリアと出荷エリアを区分けし、事前に設定したしきい値分の安全在庫を出荷エリアへと補充する設計とすることで、保管と出荷の両方の効率を高める庫内の仕組みがダブルトランザクションだ」。
入庫は保管効率を高めることを目的にフリーロケーションで格納する。
これはダブルトランザクションを始める前も同じだった。
ただし、従来は入庫時に格納した場所のままで出荷時にピッキングしていた。
それに対してダブルトランザクションは、リザーブフロアとピッキングフロアを分け、すぐに出荷する量だけをパレット単位でリザーブフロアからピッキングフロアに補充する。
これによりピッキング時の動線が短くなる。
これを運用するには各アイテムの出荷傾向に関する詳細な分析が必要になる。
どのアイテムがどの程度の頻度で、どのくらいの単位で出荷されているのかが分からなければ、リザーブフロアからピッキングフロアに商品をどのタイミングでどの程度の数量を補充すればいいかが判別できないからだ。
そこで商品のEIQ分析を行った。
注文データの注文件数(E=Order Entry)、種類(I=Item)、数量(Q=Quantity)の三つをキーファクターに出荷頻度や注文の重複などといったオーダーの特徴を把握する分析手法だ。
19年の秋ごろから埼玉県の行田営業所など3カ所のモデル営業所でEIQ分析を開始した。
「過去より不動在庫比率や長期在庫比率が上がっている」「取り扱いSKU数が増加傾向にあり必要間口も増加している」「労働時間や残業時間が増加傾向にある」などダブルトランザクションの効果が高いと思われる条件を満たす倉庫をモデル営業所に選定した。
EIQ分析をシステム化 EIQ分析の結果に基づく保管を、まずは従来方式で運用している倉庫でテストした。
出荷頻度を考慮した格納を入庫の際に行うことで、出荷ランク別の保管が出荷作業の生産性向上にどのような影響があるのかを測定した。
当初、EIQ分析は手作業で処理していた。
分析に必要な各種データは存在するものの、それらを一定のフォーマットで管理していなかったため、自動化できなかった。
データの収集と分析はキユーソーエルプランのビジネスサポート部が担当した。
作業設計課の村山直也課長は「分析を行える人間が限られてしまう上に、分析そのものに時間がかかるという課題があった」という。
そこでシステム化を図った。
20年10月にシステムが完成。
自動で必要なデータを収集して頻度や重複率の高さなどの出荷傾向別にアイテムを分類することができるようになった。
過去1カ月分の出荷実績を基にピッキングフロアに配置する商品を選出する。
商品別、日別、届け先別の出荷数量の週平均を算出し、その週平均から1日当たりの出荷量を割り出す。
出荷量/日の全体の半分を占めるアイテムがピッキングフロアへの補充配置対象で、それ以外のアイテムは基本的にリザーブフロア配置となる。
ピッキングフロア内のどの位置に再配置するかはEIQ分析で得られた注文特徴に基づいて各アイテムをABC分類して判定している。
出荷頻度が高い商品であれば出荷作業効率が高い場所に配置する。
ピッキングフロアの在庫残が事前に設定した安全在庫分を考慮したしきい値に到達したら、リザーブフロアからパレット単位で在庫を補充する。
補充方法には出荷量に応じて大きく三つのパターンがある。
1アイテム1ロケーション設定の「1間口指定」、1アイテム複数ロケーション設定の「複数間口指定」、そして「列単位指定」だ。
リザーブフロアからピッキングフロアへの補充を行うタイミングは当日出荷作業終了時間から翌日受注時間までとし、補充リストに基づいてピッキングフロアへと搬送される。
ダブルトランザクションの実施に際して苦労した点の一つが各種のセットアップだった。
「初期セットアップ段階のしきい値の設定に加え、商品入れ替え時期のしきい値の再設定は毎回時間をかけて調整している」とキユーソーエルプランのビジネスサポート部生産性管理課の小島喜雄課長。
ただ、その負荷もノウハウの蓄積によって徐々に下がってきたという。
ダブルトランザクションの運用開始によって、出荷作業時の移動時間が減少し、作業効率が向上した。
業務の標準化も進んだ。
行田営業所の事例はJILSなどによる全日本物流改善事例大会2022で優秀物流改善賞を受賞した。
先行導入した3拠点で想定通りの効果を発揮したことからキユーソーエルプランでは運営する全国46拠点のうち、共同物流事業を担当する中規模・大規模拠点への水平展開を本格的に進めている。
今後はダブルトランザクションの改善も進めていく。
出荷単位が小さくなる傾向はEIQ分析開始後の3年間でさらに進んでいる。
現状ではピッキングフロアへの補充単位はパレットだが、これをケース単位に変更することで全体の生産性を向上できないか検証していく。
補充リストの電子化も予定している。
補充作業を行うフォークリフトなどに装着した端末にリストを表示する仕組みを想定しており、端末操作を含めた検証を進めている。
その先には機械化やAI活用を見据えている。
入野執行役員は「ダブルトランザクションの実施に際して行った分析や数値による可視化は、今後の機械化やAI活用でも役に立つと思っている。
小口出荷作業の効率化は食品物流における喫緊の課題。
人手をかけている作業がどこかを突き止め、そこを効率化していきたい」と展望している。
