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2022年11月号
特集

本田技研工業 二輪車用の汎用輸送容器を開発して効率化

複数車種の混載を可能に  二輪車は自立できず、そのままでは輸送中に倒れたり、車体同士が接触して傷がついてしまうため、輸送トラックの荷台の床には、車両を固定するためのレールが敷かれている。
横一列に並んだ二輪車のシートを木の棒で押さえ、その棒をポールでつなぎ、レールにナット締めする。
熟練のスキルが求められる。
ハンドルや車輪の幅は車種ごとに異なるので、レールの幅を各車種に合わせて架装した専用車両を必要とする。
1台ずつ手作業で荷台に積み込む。
目安として、10トン型トラックに二輪車40台を積む場合、1・5〜2時間かかる。
 海上コンテナで輸送する場合にも、車種別に作成したリターナブルケースを使用する。
ケースの床にはタイヤを固定する治具が一体化されており、ケース自体のサイズも車種ごとに違う。
コンテナ内の積載効率を高めるため、一つのコンテナに異なる車種を混載はしない。
ケースを車種別に作成することは、設計の難度が下がるので効率的でもある。
 それがメーカーを問わず二輪車輸送の世界では 〝常識〟となっている。
 しかし二輪車の電動化が進めば、生産拠点や販売する市場が変化する可能性がある。
災害・紛争・政情不安により特定の国で生産・販売している車種が輸送できなくなるリスクもある。
今後は車種別ケースの新規開発にリソースを投じることは得策ではないと判断した。
そこで多数の車種を輸送できグローバルに共通して使用できる、新しいリターナブルケース(以下、新型ケース)を開発した。
 新型ケースは床がフラットで、車両を搭載するための治具などは後付けする。
車種のサイズに合わせて治具の位置を変更できる。
ハンドルやホイールの幅が広い車種同士でも、互い違いに並べて搭載できる。
複数車種の混載が可能で小口輸送のニーズにも対応できる。
海上コンテナとトラック輸送どちらにも使用できる。
トラック輸送の場合でもフォークリフトで搬出入できる。
 排気量別に大中小3タイプ開発する計画で、まずは「小」サイズを開発した。
排気量160cc以下の全車種を混載できる。
アジア域内で輸送する車種の9割近くが160cc以下なので、このカテゴリーを優先した。
 「従来の“常識”を変えたのが、新型ケースのポイントだ」と、本田技研工業の加藤雄大二輪・パワープロダクツ事業本部SCM部物流管理課チーフは胸を張る。
 新型ケースは2020年度に構想・試作を開始した。
物流現場で現物を見ながら自由な議論を繰り返す中、「床の治具を取り払ったら違う車種を載せられるのでは」とのアイデアが生まれ、トライアル&エラーを繰り返した。
 さらに「(木の棒などで)シートを押さえなくても車体を床に固定する方法があるはずだ」との問題提起が、社内の技術者たちの挑戦意欲に火をつけた。
これにより前輪をラッシングベルト(幅広のベルトにバックルを取り付けた器具)で固定して、車体の跳ねを防ぐ手法が考案された。
 コンセプト先行で開発を始め、途中から物流現場の声を反映していった。
例えば車体の転倒を防ぐ方法では、当初は後輪をL字型の金具で挟んでネジ止めする案が出た。
しかし、実際に試すと腰を曲げた作業になり、人体に負荷がかかる。
作業の手間も大きかった。
そこで後部の荷台をラッシングベルトでケースにつなぐ形式に変更した。
 現場が重視したのが、ケースを畳んで返却する際の運用だった。
例えば返却中にラッシングベルトがケースから外れ落ちると、ベルトが足りないケースを探さなければならない。
この作業が手間だとの声が上がった。
そこで当初の設計ではケースの床は平らだったが、床にくぼみを設けてベルトを全て収納できるようにした。
 新型ケースを導入しても、タイヤを縛るなど要となる作業に変更はないことを明確に伝達し、現場に不安や負担感を抱かせないよう努めた。
 新型ケースは日本で設計し、ベトナムで生産している。
世界のどこでも生産しやすいよう、個々の部品をシンプルな設計にした。
資材価格や人件費の変動、災害や紛争などで、生産に適した国が変化した際にも柔軟に対応することが狙いだ。
トラック着岸時間が4分の1に  まずは二輪完成車の主要生産国であるベトナムから導入を始めた。
アジア域内では二輪車はほとんどが地産地消だが、ベトナムからミャンマーやフィリピン、あるいはタイやベトナムから日本に出荷している製品もある。
そこでベトナムを将来的なグローバル展開にも適したスタート地点と見定めた。
 ベトナムの国内輸送には全て海上コンテナを使用している。
40フィートのコンテナ内を2フロアに分け、スロープを設けて二輪車を1台ずつ搬入・固定する。
作業員がコンテナ内に入って、腰を曲げて搬出入する必要があり、身体的負担が大きかった。
 新型ケースは21年10月から利用を始めて、1年経過した現在、約6千ケースを導入済み。
23年3月末までに1万ケースに増やす計画だ。
 導入後、ベトナムの物流現場からは、「トラックの荷台やコンテナ内での、腰に負荷のかかる作業がなくなった」「車体も傷つきにくく、輸送品質の不具合率が大きく低下した」などのフィードバックが得られた。
ベトナムにおける輸送品質の不具合率は、以前は13〜14%あったが、導入後は2〜3%まで低下した。
トラックの着岸時間は4分の1に削減できた。
 今後、新型ケースを国際輸送にも利用するには、国ごとに違う規制やルールに対応しなければならない。
リターナブルケースが当該国の資産になっていないとケースに関税がかかったり、輸出入が認められなかったりする場合がある。
そもそも関連規制が定められておらず現場判断になっている国もある。
現在、各地の実態を調べている。
 日本の国内輸送においても、新型ケースを使えば、一般的な低床の10トン型トラックで二輪車を運べるようになる。
二輪車の需要には季節性があり、日本では新学期や新生活が始まる春に販売が伸びる。
まずは繁忙期の車両確保を容易にするツールとして導入を開始して浸透を図っていく考えだ。

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