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2022年11月号
特集

CROOZ SHOPLIST 若手に社長並みの権限を与えて改革加速

行動指針は「スピード。
以上」  CROOZ SHOPLIST(クルーズショップリスト)はECやメディアなどエンターテインメント関連事業を展開しているクルーズの子会社で、国内有数の規模を備えたファッション通販サイト「SHOPLIST.com by CROOZ」を運営している。
レディースやメンズ、子供向けのファッションアイテムのほか、コスメやインテリア雑貨など約1千ブランド、40万点に上る幅広い商品を取り扱っている。
 2012年7月の運営開始以来、手頃な価格帯の商品を多数販売していることなどが人気を呼び、順調に成長。
22年3月期の売上高(取扱高)は1年目の10倍程度に相当する約230億円に達した。
年間の出荷件数は約383万件に及ぶ。
 物流に関しては、商品の配送は大手宅配事業者に委託している一方、物流センターの在庫管理や入出荷作業などは内製化。
CROOZ SHOPLISTのスタッフが中心となって、オペレーションの改善などに日々取り組んでいる。
 同社は重視するビジョンとして「一番お得、ここにしかない、商品の提供」を明示。
ファッション通販の中で差別化を推し進めている。
中長期の目標として、年間の売上高を現状の4倍強に当たる1千億円まで高めるとともに、年間のユニーク購入者数(固有の購入者数)を現状の164万人から3倍の500万人に伸ばしていくことなどを打ち出している。
 目標達成に向け、マーケティングや顧客サポート、物流など各分野で変革を進めるため、20年7月に重要プロジェクト制度を導入した。
業務内容を変革するアイデアと意欲を持った社員を選抜して「オーナー」に任命。
責任と権限を大胆に委譲し、プロジェクトの進行を全面的に任せている。
 誰にプロジェクトへ参加してもらうかなどの人員配置もオーナーが中心になって検討する。
ある一定の金額までは契約を締結するかどうかといった意思決定も上司の承認を不要とし、オーナーに委ねている。
 ベテランから新人まで、全ての社員にオーナーへの門戸が開かれている。
例えば、通販ユーザーの行動をデータ分析した上で、リピーターになってもらえる割合「二回目購入転換率」を改善していくための具体策を検討、実行するプロジェクトのオーナーを務めたのは新卒で入社したばかりの20代の社員だった。
 高級アパレルブランドなどを経てCROOZ SHOPLISTに転じ、物流部門を統括している斉藤慎吾執行役員は「重要プロジェクト制度を導入した背景には、前例にとらわれず、失敗を恐れず、スピードを何よりも優先するクルーズのグループ全体の社風がある。
まさにグループ共有の行動指針に掲げている、大切なのは『スピード。
以上』というような感じだ」と説明する。
 プロジェクトが失敗しても、オーナーが上層部から非難されることはない。
ただし、失敗をいかにカバーしていくかまで考えていなければ問題視される。
「最後までやり切れるのか、自分自身で決断できるのかが厳しく問われる。
それだけに、いかに成功させていくか、ロジカルシンキングが求められるが、逆に成長したい人にとってみれば非常にやりがいのある環境ではないか」と斉藤執行役員。
 CROOZ SHOPLIST内でもECサイトを運営する上で「最も恐れるべきは『維持停滞』。
そうなるくらいなら革新的なことにチャレンジして失敗し、売り上げゼロの方がいい」「できない理由ではなく、できる方法を考える」「変化し進化を生むことが仕事」といった考え方が組織に根付いているという。
ベンダーに準備作業を丸投げしない  物流にもその特徴がいかんなく発揮されている。
その一例がEC商品の入出荷を手掛ける基幹的な物流センター「SHOPLIST LOGISTICS CENTER」(神奈川県相模原市)で着手した業務効率化のプロジェクトだ。
 EC市場は今後も中長期的に拡大していくことが見込まれている。
物流現場の人手不足もさらに深刻化することが懸念されており、CROOZ SHOPLISTとしても先手を打とうと、物流を担当するロジスティクス部が作業の生産性向上の検討に着手した。
 同センターは当時、まだ紙の指示書を使った旧来式のピッキングを続けていた。
不慣れな作業員だとピッキングの対象商品を見つけるのに長い距離を歩くことになるなど、課題を抱えていた。
 プロジェクトのオーナーを中心に業務改革策を議論した結果、デジタル・ピッキング・システム(DPS)を導入して作業方法を切り替えることを決定した。
DPSベンダー数社を比較検討して1社に絞り込み、22年に運用を開始した。
 導入したDPSはスマートフォンを庫内作業スタッフ用の端末として使い、ピッキングの対象商品が収められた棚までの最短・最適なルートを指示する。
取り間違いのないよう、ピッキングする商品の画像も表示する。
画像がない商品に関しては、気付いた人が端末のカメラを使って撮影、システムに登録することで他の従業員や庫内作業の管理担当者と共有する。
 この仕組みならセンターに来たばかりの初心者でもすぐに即戦力として活躍できる。
トライアルの結果、作業の負荷が減り、庫内作業スタッフの定着にもつながると評価できたことから採用を決定した。
 ただし、DPSを導入するに当たり、ベンダーに準備作業を丸投げすることは避けた。
プロジェクトのオーナーを核としてロジスティクス部の若手社員らが積極的に関与した。
 DPSベンダーの担当者は当初、同センターの現場の床面積などの計測実績から生産性改善の目標値として15%程度を提案した。
それに対しCROOZ SHOPLISTの担当者はその2倍となる30%を主張した。
両社が協議した結果、最終的に30%を目標にした。
斉藤執行役員は「高い目標にした方が障壁となる課題をあぶりだせるからという現場の若い人たちの判断だった」と言う。
 また、ベンダー側はDPSとの連携を取るために、WMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)などの既存システムを改修することを想定していた。
しかし、CROOZ SHOPLISTの若手スタッフは「インターフェース互換アプリを作ることで、WMSとWCSを改修しなくても導入できる仕組みを実現できるのではないか」と提案。
ベンダーもこのアイデアに応じて互換アプリを完成させた。
大幅なシステム改修を回避して初期投資を抑えることができた。
 このDPSは通常であれば、現場の棚の配置状況などを計測してベースとなる庫内の地図を作成し、デモを開始するまで2カ月程度かかっていたが、同センターでは1カ月に短縮した。
庫内地図の作成をベンダー任せにせず、CROOZ SHOPLISTのスタッフが一緒にメジャーや歩行計測器を持って距離を測定するなど作業をサポートしたからだ。
 DPSの導入によって、目標としていた生産性30%改善を達成することができた。
その後も歩行距離をさらに短縮するため、作業のスタート位置を変えたり、経路を見直したりとロジスティクス部の若手スタッフがベンダーと二人三脚でDPSの機能と活用方法の改善を続けている。
契約交渉も20代社員が担当  斉藤執行役員は「ベンダーとの契約交渉なども、20代の若手社員が担い、その場で判断していた。
プロジェクトのオーナーには、まさに社長と同等の権限や責任が持たされており、社内起業のような感じだ。
さまざまな業務に当たることで若い人たちが着実に成長できている」と満足そうだ。
 ロジスティクス部では他にも物流コスト削減のプロジェクトを継続してきた結果、最近の輸配送費高騰などコスト上昇傾向が続く中でもEC事業の対売上高物流費比率を14%程度に抑えることに成功している。
 斉藤執行役員は「物流はどうしてもコスト削減に目が行きがちだが、当社は売り上げに寄与する物流とは何か、という視点で取り組んでいる。
物流コストを下げればプロモーションなどにより多くの費用を割けるようになり、EC事業の売り上げを伸ばすことにつなげられる。
一方で物流サービスのレベルを上げることでもお客さまの満足度は高められる」と強調する。
 実は、同センターの立ち上げも、重要プロジェクト制度の導入前ではあったが、斉藤執行役員をはじめ当時の若手メンバーが社長に直接、開設の必要性を訴えて、ゴーサインを勝ち取ったものだった。
数十億円規模のプロジェクトを30台前半の若手社員らが主導したわけである。
 斉藤執行役員は「当社の重要プロジェクト制度などの取り組みを紹介することで、ぜひやる気のある若い人に物流に興味を持ってもらいたい。
多くの人にEC物流の世界へ飛び込んできてほしい」と期待している。

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