2022年7月号
特集
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ダイフク ソリューションを構築するスピードを強みに
コンベヤー VS 棚搬送ロボット
──マテハンのグローバル市場の動きは日本にいるわれわれには見えにくいところがあります。
米国駐在が長く、グローバル本部長も務められてきた信田取締役に今日はそこをお聞きしたい。
「私が米国に駐在したのは1回目が1997年〜2001年、2回目が米ウィンライト(Wynright)を買収した13年〜19年です。
1回目の駐在はBTO(受注生産方式)のDELLモデルが産業界を席巻していた時代で、私のメーンの仕事も当時のデル(現デル・テクノロジーズ)の工場に自動倉庫やコンベヤーを納入することでした」 「しかし、2回目に駐在した13年はまったく環境が変わっていました。
米国内のものづくりは衰退して主役はウォルマートをはじめとする流通業に移っていた。
製品の取り扱いも自動倉庫からコンベヤーに比重が移っていました。
買収したウィンライトも、コンベヤーメーカーでした。
それ以降はご存じの通り、現在までずっとECの急成長が続いている。
その中心にいるのがアマゾン・ドット・コムということになります」 ──製品もコンベヤーから棚搬送ロボットに急速にシフトしています。
この傾向は続きますか。
「AGVをはじめコンベヤー以外にもいろいろな製品が登場しているのは確かです。
しかし、それがコンベヤーを代替していくほどかと聞かれたら私は懐疑的です。
実際、AGVにしてもそこまで広がっているわけではない。
1台単位で動くAGVとラインの上をモノが流れるコンベヤーは特性が違って、それぞれ向き・不向きがある」 ──新興の物流ロボットメーカーが、テスラのように既存のマテハンメーカーを脅かすような事態は考えにくいでしょうか。
「唯一すごいと思うのは、アマゾンロボティクスさんですね。
恐らく年間数万台という規模を生産している。
生産台数・納入台数は断トツです。
AGVのような機械は生産規模でコストが決まります。
そのため自然に寡占化が進んでいく。
しかし、アマゾンロボティクスは外販をしていない。
他のメーカーはどこも似たり寄ったりの台数で価格競争している。
頭一つ抜け出せていない」 ──欧米のマテハン市場を見ていて、もうひとつ気になっているのがインテグレーターの存在です。
日本にはそうしたプレーヤーが見当たらない。
「確かに欧米市場には昔から中小のインテグレーターが数多く存在しています。
マテハンメーカーを何社か渡り歩いた人たちが独立して、倉庫自動化のコンサルティング会社などを立ち上げ、その延長でインテグレーションまで手掛けているケースが多い。
しかし、日本では同業他社を渡り歩くようなキャリアは一般的ではないのでまず見ない」 ──海外のインテグレーターが日本市場に参入してくる可能性は。
「AGVと何かを組み合わせる程度の、中小規模のシステムならともかく、大規模システムでは考えにくい。
メーカーと比べてインテグレーションの手数料を上乗せする必要がある分、価格競争で不利になります。
日本では当社に限らず、大手マテハンメーカーが中核になってソリューションをつくるスタイルが今後も続くでしょう」 ──ダイフクの連結売上高は過去10年で2倍以上に拡大しました。
12年3月期の1980億円が22年3月期には5122億円になった。
成長の理由をどう分析していますか。
「当社が評価をいただいているのはスピードだと考えています。
営業・引き合いから提案、設計、生産、施工、納品までのトータルのスピードです。
ECの急拡大に対応するため、あるいは環境の変化に対応するため、物流ソリューションの導入もスピードが重視されるようになっています。
端的にいえば、競合より早く物流センターを稼働できれば、それだけ多くのオーダーを獲得できますからね」 「その点で当社は、豊富な製品ラインナップを自前でそろえていることが強みになります。
他社から製品を調達する場合には、その会社の納品リードタイムにどうしても制約を受ける。
しかし、自社製品であれば自分たちの努力と工夫でスピードアップできる。
インテグレーションもスムーズです。
大型案件ほどそうした違いは大きくなる。
実際、当社は大型案件を数多く受注できたことが、業績をけん引しました」 ──ダイフクはファーストリテイリングと18年10月に戦略的グローバルパートナーシップを結びました。
ファーストリテイリングが総額約1千億円を投じて、省人化率90%を実現したユニクロの「有明倉庫」を世界展開していくためのパートナーに選ばれた。
これまでマテハン市場には見られなかった動きです。
「それもやはりスピードを重視されたのだと理解しています」 マテハン市場のグローバル競争 ──マテハン市場の拡大は今後も続きそうですか。
「成長は続いてもペースは落ち着いてくると見ています。
ここ数年の急成長は少し極端過ぎた」 ──その結果、マテハン市場では上位集中が進んでいくことになりますか。
「そう考えています。
とりわけECは最終消費者への配送を含めたサプライチェーンの能力が競争力を決定的に左右するようになっています。
そうした能力を発揮できる物流センターを構築するには、マテハン業者にも大型案件を迅速にこなす能力が求められる」 ──マテハン世界最大手のダイフクにとって有利な展開です。
「いやそうとも言えません。
確かに当社は、自動車向け、空港向け、半導体クリーンルーム向けを含めたトータルの売上高では世界シェア1位とされていますが、イントラロジスティクスだけを比較すれば、まだ世界には上がいます。
品揃えを比較しても、米デマティック(Dematic)、独シェーファー(Schaefer)、オランダのファンダランデ(Vanderlande)などは恐らく当社より多い。
イントラロジスティクス事業でも世界トップクラスに入る必要があります」 ──それには欧米の最大手クラスのユーザーを取り込んでいく必要がありそうです。
「Aクラスだけが市場ではありません。
どのマーケットをどう開拓するのが当社にとってベストな戦略なのかはよく見極める必要があります。
もちろん最大手と組めたら成長は速い。
しかし、私の知る限り、ファーストリテイリングのように業界大手が特定の1社だけとパートナーシップを結ぶケースはまれだと思います。
アマゾンでもウォルマートでも、特定の企業への依存を回避したり、価格交渉力を確保したり、いろいろな新技術を導入できるようにしたりと、さまざまな理由から意識的に複数の企業と付き合っています。
しかし、その市場でできれば1位、少なくとも3位以内にはいないと相手にしてもらえない」 ──グループのウィンライトはアマゾンにかなり食い込んでいるのでは? 「もちろん取引はありますが、デマティックや米インテリグレーテッド(Intelligrated)との取引はその比ではありません。
当社にとって米国は主戦場です。
市場規模が大きく成長性もある。
イノベーションの震源地でもある。
ただし、米国には米国を本拠とする大手が2社ある。
そことどう競い合っていくのかは重要なテーマです」
米国駐在が長く、グローバル本部長も務められてきた信田取締役に今日はそこをお聞きしたい。
「私が米国に駐在したのは1回目が1997年〜2001年、2回目が米ウィンライト(Wynright)を買収した13年〜19年です。
1回目の駐在はBTO(受注生産方式)のDELLモデルが産業界を席巻していた時代で、私のメーンの仕事も当時のデル(現デル・テクノロジーズ)の工場に自動倉庫やコンベヤーを納入することでした」 「しかし、2回目に駐在した13年はまったく環境が変わっていました。
米国内のものづくりは衰退して主役はウォルマートをはじめとする流通業に移っていた。
製品の取り扱いも自動倉庫からコンベヤーに比重が移っていました。
買収したウィンライトも、コンベヤーメーカーでした。
それ以降はご存じの通り、現在までずっとECの急成長が続いている。
その中心にいるのがアマゾン・ドット・コムということになります」 ──製品もコンベヤーから棚搬送ロボットに急速にシフトしています。
この傾向は続きますか。
「AGVをはじめコンベヤー以外にもいろいろな製品が登場しているのは確かです。
しかし、それがコンベヤーを代替していくほどかと聞かれたら私は懐疑的です。
実際、AGVにしてもそこまで広がっているわけではない。
1台単位で動くAGVとラインの上をモノが流れるコンベヤーは特性が違って、それぞれ向き・不向きがある」 ──新興の物流ロボットメーカーが、テスラのように既存のマテハンメーカーを脅かすような事態は考えにくいでしょうか。
「唯一すごいと思うのは、アマゾンロボティクスさんですね。
恐らく年間数万台という規模を生産している。
生産台数・納入台数は断トツです。
AGVのような機械は生産規模でコストが決まります。
そのため自然に寡占化が進んでいく。
しかし、アマゾンロボティクスは外販をしていない。
他のメーカーはどこも似たり寄ったりの台数で価格競争している。
頭一つ抜け出せていない」 ──欧米のマテハン市場を見ていて、もうひとつ気になっているのがインテグレーターの存在です。
日本にはそうしたプレーヤーが見当たらない。
「確かに欧米市場には昔から中小のインテグレーターが数多く存在しています。
マテハンメーカーを何社か渡り歩いた人たちが独立して、倉庫自動化のコンサルティング会社などを立ち上げ、その延長でインテグレーションまで手掛けているケースが多い。
しかし、日本では同業他社を渡り歩くようなキャリアは一般的ではないのでまず見ない」 ──海外のインテグレーターが日本市場に参入してくる可能性は。
「AGVと何かを組み合わせる程度の、中小規模のシステムならともかく、大規模システムでは考えにくい。
メーカーと比べてインテグレーションの手数料を上乗せする必要がある分、価格競争で不利になります。
日本では当社に限らず、大手マテハンメーカーが中核になってソリューションをつくるスタイルが今後も続くでしょう」 ──ダイフクの連結売上高は過去10年で2倍以上に拡大しました。
12年3月期の1980億円が22年3月期には5122億円になった。
成長の理由をどう分析していますか。
「当社が評価をいただいているのはスピードだと考えています。
営業・引き合いから提案、設計、生産、施工、納品までのトータルのスピードです。
ECの急拡大に対応するため、あるいは環境の変化に対応するため、物流ソリューションの導入もスピードが重視されるようになっています。
端的にいえば、競合より早く物流センターを稼働できれば、それだけ多くのオーダーを獲得できますからね」 「その点で当社は、豊富な製品ラインナップを自前でそろえていることが強みになります。
他社から製品を調達する場合には、その会社の納品リードタイムにどうしても制約を受ける。
しかし、自社製品であれば自分たちの努力と工夫でスピードアップできる。
インテグレーションもスムーズです。
大型案件ほどそうした違いは大きくなる。
実際、当社は大型案件を数多く受注できたことが、業績をけん引しました」 ──ダイフクはファーストリテイリングと18年10月に戦略的グローバルパートナーシップを結びました。
ファーストリテイリングが総額約1千億円を投じて、省人化率90%を実現したユニクロの「有明倉庫」を世界展開していくためのパートナーに選ばれた。
これまでマテハン市場には見られなかった動きです。
「それもやはりスピードを重視されたのだと理解しています」 マテハン市場のグローバル競争 ──マテハン市場の拡大は今後も続きそうですか。
「成長は続いてもペースは落ち着いてくると見ています。
ここ数年の急成長は少し極端過ぎた」 ──その結果、マテハン市場では上位集中が進んでいくことになりますか。
「そう考えています。
とりわけECは最終消費者への配送を含めたサプライチェーンの能力が競争力を決定的に左右するようになっています。
そうした能力を発揮できる物流センターを構築するには、マテハン業者にも大型案件を迅速にこなす能力が求められる」 ──マテハン世界最大手のダイフクにとって有利な展開です。
「いやそうとも言えません。
確かに当社は、自動車向け、空港向け、半導体クリーンルーム向けを含めたトータルの売上高では世界シェア1位とされていますが、イントラロジスティクスだけを比較すれば、まだ世界には上がいます。
品揃えを比較しても、米デマティック(Dematic)、独シェーファー(Schaefer)、オランダのファンダランデ(Vanderlande)などは恐らく当社より多い。
イントラロジスティクス事業でも世界トップクラスに入る必要があります」 ──それには欧米の最大手クラスのユーザーを取り込んでいく必要がありそうです。
「Aクラスだけが市場ではありません。
どのマーケットをどう開拓するのが当社にとってベストな戦略なのかはよく見極める必要があります。
もちろん最大手と組めたら成長は速い。
しかし、私の知る限り、ファーストリテイリングのように業界大手が特定の1社だけとパートナーシップを結ぶケースはまれだと思います。
アマゾンでもウォルマートでも、特定の企業への依存を回避したり、価格交渉力を確保したり、いろいろな新技術を導入できるようにしたりと、さまざまな理由から意識的に複数の企業と付き合っています。
しかし、その市場でできれば1位、少なくとも3位以内にはいないと相手にしてもらえない」 ──グループのウィンライトはアマゾンにかなり食い込んでいるのでは? 「もちろん取引はありますが、デマティックや米インテリグレーテッド(Intelligrated)との取引はその比ではありません。
当社にとって米国は主戦場です。
市場規模が大きく成長性もある。
イノベーションの震源地でもある。
ただし、米国には米国を本拠とする大手が2社ある。
そことどう競い合っていくのかは重要なテーマです」
