2022年7月号
特集
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豊田自動織機 国内外の最適な製品を選択して組み上げる
フォークから自動化に領域拡大
──豊田自動織機は2017年に、オランダのファンダランデ(Vanderlande)とアメリカのバスティアン(Bastian Solutions)を買収して、マテハンの世界市場に名乗りを上げました。
ほぼ同じ時期にドイツのKIONグループやユングハインリッヒなど、フォークリフトの大手メーカーがマテハン企業の買収に動いています。
「当時の欧州では、フォークリフトメーカーが成長を続けていくためには、有人フォークで点から点にモノを運ぶ世界から、物流オートメーションの領域に入っていくべきだという気運が高まっていました。
同じような意見は日本でも上がっていましたが、欧州ではそれがより鮮明でした」 「実は個人的にはそれ以前から感じていたことでした。
当社は00年にスウェーデンのBTインダストリーズ社(現トヨタ マテリアル ハンドリング ヨーロッパ:TMHE)を買収しました。
私は03年に欧州に1度目の赴任をして、当社とBTの販売チャネルを統合する仕事を担当しました」 「当社の中心的な顧客層はフォークの保有台数が数台からせいぜい20台くらいの中小です。
それに対してBTは製品が屋内用の小型フォークなので、当社よりずっとオートメーションに近い世界にいた。
BTのスタッフと一緒に商品の企画をしたり販売したりすることで、当社も従来より幅広く庫内物流を束ねていかなければやっていけない時代が来たことを知りました。
ファンダランデの買収は15年に私が2度目に欧州に赴任していた時期に現地のメンバーと提案した案件で、そのままPMI(買収後の統合)まで手掛けることになりました」 ──米国ではなく欧州発の動きだったのですか。
「私の理解ではアメリカでも同じような動きはありました。
ただし、欧州と違って米国のマテハン業界には、自社製品をほとんど持たないインテグレーターと呼ばれるプレーヤーが各地にいます。
当社が買収したバスティアンも今は自社製品も持つようになりましたが、元はフォークのディーラーとして出発した会社です。
同社のように目先の利くディーラーがお客さまのニーズを嗅ぎつけて、お客さまとタッグを組んで、フォークだけでは解決できない課題を解決するソリューション企業に転換していったのです」 ──フォークリフト市場とマテハン市場はこれから統合されていくことになるのでしょうか。
「そう単純な構造ではないと思います。
われわれはフォークリフト市場を大きく四つの階層に定義しています。
その裾野にいるのは、フォークを単体で利用しているユーザー層です。
当社が昔からずっと大事にしてきたお客さまたちであり、今後も当社の大切な事業基盤です。
その次にフォークとラックだけ、あるいは無人フォーク単体などのシンプルなソリューションを必要とされている層がある。
ここまでは地域密着型のディーラーが強い世界です。
製品としても有人フォークは国や地域によって規制や認証が違うため、グローバルモデルを作りにくい」 「その層を超えるとインテグレーションの領域に入ります。
そして最上階には投資額が100億〜300億円規模のセンターをインテグレーションするユーザー層がある。
その規模になるとフォークの購入に充てられる費用など、せいぜい投資額の100分の1程度です。
しかし、われわれはそこに入っていかないとソリューションを提供することができない」 ──日本ではこれまで、大手マテハンメーカーがインテグレーターの役割も果たしてきました。
「その比較で言うと欧州は日本と米国のちょうど中間くらい。
欧州ではインテグレーターと呼ばれるプレーヤーでも、日本ほどではないけれどいくらかハードを持っている。
米国のインテグレーターはまず自社製品を持ちません」 ──欧米のユーザーはマテハンのハードを購入する費用とは別に、インテグレーションにフィーを支払っているわけですか。
「もちろんです。
バスティアンはそれが収益の柱の一つですし、ファンダランデもかなりの人数のコンサルティング専門部隊を抱えています。
海外の大規模案件ではエンジニアリングまでのフェーズでいったん契約が完結して、その段階でフィーが支払われることが多い」 「日本でもエンジニアリングのフェーズから入って、その案をベースに自分たちで考えてRFPに進むといったお客さまが徐々に現れてはきましたが、多くはまだ、個々の設備の品質・コスト・納期(QCD)を重視される傾向にあります。
実際、モノの動きがシンプルであれば、個々のプロダクトの性能がほぼそのまま生産性に反映されます。
しかし、モノの動きやプロセスが複雑化してくると、トータルのQCDが重要になってきます」 「当社は昔から“エンジニアリング・アンド・メーカー”と称して、先に仕組みを考えるというアプローチでやってきました。
自動倉庫やAGV、無人フォークなどの自社製品も持っていますがそれにはこだわらず、そのお客さまの要件に合う最適なハードを選択してシステムに組み上げる。
そのスタイルがだんだんと日本のお客さまにも浸透して、お声掛けいただけるようになってきています」 日本初のテクノロジーを相次ぎ導入 ──ファンダランデとバスティアンのグループ化は日本のユーザーに何をもたらしますか。
「フォークリフトと比べてインテグレーションは、はるかにグローバル対応が可能なビジネスです。
ただし、海外のインテグレーターが日本でソリューションを展開しようとしても、現実には言葉の壁や仕様の違いなりがある。
お客さまのビジネスやモノの流れを消化するにも時間がかかる。
そのため日本では日本のお客さまを熟知しているわれわれが中心になる。
逆もまたしかりで、日米欧それぞれの商談にお互いが乗り入れて提案やインテグレーションを行っています」 ──具体的なシナジーは? 「例えば先日はファンダランデが開発したシャトル式の保管・ピッキングシステム『ADAPTO(アダプト)』を日本で初めて医療品の通販事業者に納入することが決まりました。
従来のシャトルシステムは棚の各段・各通路にシャトルが1台ずつ必要で、また仕分け・順立てを行う場合には専用のコンベヤーループも必要でした。
それに対してアダプトのシャトルは、前後だけでなく横にも動けるのでコンベヤーループが要らない。
シャトルはそれぞれ独立しているので、1台が故障すれば他のシャトルがバックアップする。
拠点の構造に合わせた柔軟なレイアウトが可能で、取扱量の増加に合わせてシャトルの台数を増やしていける」 「ZOZO様が来年竣工予定の『ZOZOBASEつくば3』にも、やはりファンダランデが開発したハンガーシステム『Pocket Sorter』が日本で初導入されます(写真)。
衣服をハンガーに掛けたまま庫内の上部空間を活かして、保管・仕分け・順立てまでのプロセスを一つの設備で自動化できる。
通常のソーターでは扱えないイヤリングなどの小物や円筒形の商品などの荷物も扱える」 「バスティアンのWCSを日本市場の米系ユーザーに納入した実績もあります。
バスティアンには『オートストア』や『OPEX』をはじめ幅広い設備をインテグレーションしてきた豊富な実績があり、つなぎ方や動かし方を熟知している。
それが彼らのWCSやWESに反映されている。
われわれが日本で大規模なインテグレーションをやるときには彼らの知恵やノウハウを借りることができる。
大きなアドバンテージだと自負しています」
ほぼ同じ時期にドイツのKIONグループやユングハインリッヒなど、フォークリフトの大手メーカーがマテハン企業の買収に動いています。
「当時の欧州では、フォークリフトメーカーが成長を続けていくためには、有人フォークで点から点にモノを運ぶ世界から、物流オートメーションの領域に入っていくべきだという気運が高まっていました。
同じような意見は日本でも上がっていましたが、欧州ではそれがより鮮明でした」 「実は個人的にはそれ以前から感じていたことでした。
当社は00年にスウェーデンのBTインダストリーズ社(現トヨタ マテリアル ハンドリング ヨーロッパ:TMHE)を買収しました。
私は03年に欧州に1度目の赴任をして、当社とBTの販売チャネルを統合する仕事を担当しました」 「当社の中心的な顧客層はフォークの保有台数が数台からせいぜい20台くらいの中小です。
それに対してBTは製品が屋内用の小型フォークなので、当社よりずっとオートメーションに近い世界にいた。
BTのスタッフと一緒に商品の企画をしたり販売したりすることで、当社も従来より幅広く庫内物流を束ねていかなければやっていけない時代が来たことを知りました。
ファンダランデの買収は15年に私が2度目に欧州に赴任していた時期に現地のメンバーと提案した案件で、そのままPMI(買収後の統合)まで手掛けることになりました」 ──米国ではなく欧州発の動きだったのですか。
「私の理解ではアメリカでも同じような動きはありました。
ただし、欧州と違って米国のマテハン業界には、自社製品をほとんど持たないインテグレーターと呼ばれるプレーヤーが各地にいます。
当社が買収したバスティアンも今は自社製品も持つようになりましたが、元はフォークのディーラーとして出発した会社です。
同社のように目先の利くディーラーがお客さまのニーズを嗅ぎつけて、お客さまとタッグを組んで、フォークだけでは解決できない課題を解決するソリューション企業に転換していったのです」 ──フォークリフト市場とマテハン市場はこれから統合されていくことになるのでしょうか。
「そう単純な構造ではないと思います。
われわれはフォークリフト市場を大きく四つの階層に定義しています。
その裾野にいるのは、フォークを単体で利用しているユーザー層です。
当社が昔からずっと大事にしてきたお客さまたちであり、今後も当社の大切な事業基盤です。
その次にフォークとラックだけ、あるいは無人フォーク単体などのシンプルなソリューションを必要とされている層がある。
ここまでは地域密着型のディーラーが強い世界です。
製品としても有人フォークは国や地域によって規制や認証が違うため、グローバルモデルを作りにくい」 「その層を超えるとインテグレーションの領域に入ります。
そして最上階には投資額が100億〜300億円規模のセンターをインテグレーションするユーザー層がある。
その規模になるとフォークの購入に充てられる費用など、せいぜい投資額の100分の1程度です。
しかし、われわれはそこに入っていかないとソリューションを提供することができない」 ──日本ではこれまで、大手マテハンメーカーがインテグレーターの役割も果たしてきました。
「その比較で言うと欧州は日本と米国のちょうど中間くらい。
欧州ではインテグレーターと呼ばれるプレーヤーでも、日本ほどではないけれどいくらかハードを持っている。
米国のインテグレーターはまず自社製品を持ちません」 ──欧米のユーザーはマテハンのハードを購入する費用とは別に、インテグレーションにフィーを支払っているわけですか。
「もちろんです。
バスティアンはそれが収益の柱の一つですし、ファンダランデもかなりの人数のコンサルティング専門部隊を抱えています。
海外の大規模案件ではエンジニアリングまでのフェーズでいったん契約が完結して、その段階でフィーが支払われることが多い」 「日本でもエンジニアリングのフェーズから入って、その案をベースに自分たちで考えてRFPに進むといったお客さまが徐々に現れてはきましたが、多くはまだ、個々の設備の品質・コスト・納期(QCD)を重視される傾向にあります。
実際、モノの動きがシンプルであれば、個々のプロダクトの性能がほぼそのまま生産性に反映されます。
しかし、モノの動きやプロセスが複雑化してくると、トータルのQCDが重要になってきます」 「当社は昔から“エンジニアリング・アンド・メーカー”と称して、先に仕組みを考えるというアプローチでやってきました。
自動倉庫やAGV、無人フォークなどの自社製品も持っていますがそれにはこだわらず、そのお客さまの要件に合う最適なハードを選択してシステムに組み上げる。
そのスタイルがだんだんと日本のお客さまにも浸透して、お声掛けいただけるようになってきています」 日本初のテクノロジーを相次ぎ導入 ──ファンダランデとバスティアンのグループ化は日本のユーザーに何をもたらしますか。
「フォークリフトと比べてインテグレーションは、はるかにグローバル対応が可能なビジネスです。
ただし、海外のインテグレーターが日本でソリューションを展開しようとしても、現実には言葉の壁や仕様の違いなりがある。
お客さまのビジネスやモノの流れを消化するにも時間がかかる。
そのため日本では日本のお客さまを熟知しているわれわれが中心になる。
逆もまたしかりで、日米欧それぞれの商談にお互いが乗り入れて提案やインテグレーションを行っています」 ──具体的なシナジーは? 「例えば先日はファンダランデが開発したシャトル式の保管・ピッキングシステム『ADAPTO(アダプト)』を日本で初めて医療品の通販事業者に納入することが決まりました。
従来のシャトルシステムは棚の各段・各通路にシャトルが1台ずつ必要で、また仕分け・順立てを行う場合には専用のコンベヤーループも必要でした。
それに対してアダプトのシャトルは、前後だけでなく横にも動けるのでコンベヤーループが要らない。
シャトルはそれぞれ独立しているので、1台が故障すれば他のシャトルがバックアップする。
拠点の構造に合わせた柔軟なレイアウトが可能で、取扱量の増加に合わせてシャトルの台数を増やしていける」 「ZOZO様が来年竣工予定の『ZOZOBASEつくば3』にも、やはりファンダランデが開発したハンガーシステム『Pocket Sorter』が日本で初導入されます(写真)。
衣服をハンガーに掛けたまま庫内の上部空間を活かして、保管・仕分け・順立てまでのプロセスを一つの設備で自動化できる。
通常のソーターでは扱えないイヤリングなどの小物や円筒形の商品などの荷物も扱える」 「バスティアンのWCSを日本市場の米系ユーザーに納入した実績もあります。
バスティアンには『オートストア』や『OPEX』をはじめ幅広い設備をインテグレーションしてきた豊富な実績があり、つなぎ方や動かし方を熟知している。
それが彼らのWCSやWESに反映されている。
われわれが日本で大規模なインテグレーションをやるときには彼らの知恵やノウハウを借りることができる。
大きなアドバンテージだと自負しています」
