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2022年7月号
特集

野村不動産 「オープンな協業」主導しイノベーション目指す

企業の垣根を越えて30社が参加  野村不動産は2021年4月、共同プログラム「Techrum(テクラム)」を開始した。
Techrumは「テクノロジー(Technology)」と「スクラム(Scrum)」を掛け合わせた造語。
同社が荷主や物流事業者、マテハンメーカーなどと組み、ロボットやマテハン設備の性能を検証して最適な組み合わせを見つけ出す。
さらにその情報を共有して、オープンイノベーションを実現することを狙っている。
 野村不動産でテクラムをけん引する都市開発第二事業本部物流事業部の網晃一事業企画課長は「当社が共同活動に乗り出したのは、荷主や物流事業者など多岐にわたるプレーヤーと結びつきがあり、中立的な立ち位置にいる物流施設デベロッパーだから。
当社がプレーヤー間をつなげる触媒となって、自動化・省力化を加速させたい」と言う。
 野村不動産は物流施設開発で、数年前からマルチテナント型とBTS型の中間に位置する「カテゴリーマルチ型」と呼ぶ施設を提案している。
将来のテナント入れ替わりに備えて汎用性を持たせながら、ターゲットとしているテナント企業の業種に特有の物流オペレーションに対応した仕様を、施設の一部もしくは全体に盛り込む。
床荷重を強化するなど自動化設備を活用しやすい設計にも対応している。
 網課長はそうした経験から「施設のハード面に加えてソフト面まで踏み込む必要があると判断した。
それがテクラムの立ち上げにつながった」と経緯を説明する。
 3PL事業者は荷主との契約期間が限られているため、償却に長期間を要する大規模な自動化設備に投資することができない。
また近年、ロボットなど自動化設備のバリエーションが大きく広がったことから、荷主や物流事業者が自分で最適な整備を選ぶことが容易ではなくなっている。
設備の性能や使い勝手を見極めるための検証の場や時間も不足している。
 一方、マテハンメーカーにしても、自動化設備の導入を検討している荷主や物流事業者と接触する機会は、展示会などの場に限られている。
顧客の多様なニーズを正確につかんで製品開発に反映し、それぞれのユーザーに最適なソリューションを提案するのは至難の業だ。
 網課長は「カテゴリーマルチ型をはじめとする物流施設の開発を通じて、そうした課題や問題が見えてきた。
荷主が今からやろうとしている事業に合わせた物流とはどういうものかをしっかり定義せずに、コスト削減ばかり考えて自動化・機械化を検討しても先には進まない。
お互いに話し合える環境を整えて、物流現場の課題抽出から荷主が求めているテクノロジーを明らかにするところまで一緒に取り組み、本番に近い環境でロボットなどの効果を試すことができる場を設けることが重要だと考えた」と説明する。
 テクラムは野村不動産が事務局的な役割を担い、マテハンメーカーなどがパートナーとして参加している。
その数は今年4月時点で30に達している。
NTT東日本や王子ホールディングス、ZMP、オークラ輸送機、寺岡精工、アイオイ・システム、ラピュタロボティクス、日本製紙ユニテック、東芝インフラシステムズなどが名を連ねている。
 荷主も三越伊勢丹グループの三越伊勢丹ビジネス・サポートなどが活動に加わっている。
参加基準は緩やかに設定、縛りを少なくして門戸を広げている。
野村不動産の物流施設に入居している企業以外の参加も歓迎している。
 単に個々の機器やサービスを導入することに主眼を置くのではなく、入荷から出荷までの各工程にわたり、オペレーションの現状に応じてどのような機器を入れるべきか、効果を検証して、最適なソリューションを構築することを想定している。
時間をかけて実証を重ね、確立したソリューションを23年以降、物流現場に広く提供していくことを目指す。
5千平方メートル超の検証施設を用意  ロボットやマテハン機器などの効果検証の場となるのは、千葉県習志野市で野村不動産が開発した物流施設「Landport(ランドポート)習志野」の倉庫スペースの一角に設けた専用拠点「習志野PoC Hub」だ。
活動開始当初は2645平方メートルの規模だったが、今年1月に約2倍の5290平方メートルに拡張した。
 パートナー企業は同施設で取り扱う製品のデモが可能だ。
しかも、技術や製品のショールームとして使うだけでなく、荷物を入れた商品棚などを配置して庫内の様子を再現、ピッキング支援ロボットなどを実際に使ってみることができる。
参加企業間でミーティングしたり、セミナーを開いたりできるコワーキングスペースも備えている。
 テクラムに参加している三越伊勢丹ビジネス・サポートの渡部篤詞ソリューション営業部長兼ソリューション営業部営業担当長は「最初にテクラムのことを聞いた時、こういうやり方があるのか、と目から鱗が落ちる思いだった。
物流現場が抱える課題全体に対する適切な解が出てくるように感じて、ぜひ話を聞きたいと思ったのが参加を決めるきっかけだった」と振り返る。
 百貨店関連などの物流現場で同社がこれまで培ってきた高品質の物流サービスを維持、外販していく上でも自動化・省力化を検討していきたいとの狙いがある。
渡部氏は「テクラムで困りごとを野村不動産さんに相談して、アドバイスをいただいている」と語る。
 仕分け作業を効率化するGAS(ゲート・アソート・システム)などを手掛けるタクテックの山崎整社長は「日本ではテクラムのようにお客さま目線を持ちながら合同でイノベーションを起こそうとするプログラムがなかなか存在しなかった。
競合他社と一緒に活動することになるかもしれないが、お客さまにとっては素晴らしい取り組みだと考えて、ぜひ参加させてほしいとお願いした。
まずはお客さまが課題解決のヒントを得られる場にしていきたい。
テクラムに参加した企業は他社とコラボレーションする機会が多くなるので、新しい領域に踏み出す契機になるだろう」と期待を寄せている。
 網課長は「テクラムは、他社と協力して新しいソリューションを生み出したいと希望している企業にとっては、非常に意義のある座組みだと自負している」と強調する。
野村不動産としても担当者の拡充を検討するなど、息の長い活動にする準備を進めている。

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