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2022年5月号
特集

大塚倉庫 コネクティッド時代のメーカー物流を先導する

モノの流れはメーカーから始まる ──大倉庫がロボットの大量導入をはじめとする物流の自動化に本格的に踏み出しました。
 「ただし、当社にとって自動化は戦術レベルの話にすぎません。
2014年に『ID倉庫/ID運輸』を掲げてデジタル改革に乗り出した当初から、われわれの目指すところは変わっていません。
あらゆるものがネットワークでつながれた『コネクティッドロジスティクス』です」  「われわれは昔から“物流は情報から始まる”と聞かされてきました。
実際、情報がなければ当社の業務は始まらない。
情報がキーなのだから、その情報をどうやってつかむかということが非常に大事になるわけです。
その意味で物流事業は本質的にネットワーク事業だと私は思う」  「そこにインターネットが現れて、続いてスマートフォンが普及した。
今では当社の役員はMeta(旧フェイスブック)のVRゴーグルをつけて自宅にいながら経営会議に参加している。
それだけ世の中はシームレスになった。
こうなると物流が劇的に変わるのは明らかです」 ──どう変わるのですか。
 「これまではみんな自分たちの物流しか見えていなかった。
そのためにメーカーの物流があり、卸の物流があり、小売りの物流があった。
しかし、全てがつながって情報の垣根がなくなるわけですから、世の中全体を俯瞰して最適な方法を導き出せばいい。
例えば当社はメーカーとしてオーダーを受けて卸に商品を納品しているわけですが、同じ日に卸もまた同じ商品を小売りに納品している。
さらに消費者はオンラインで注文してその商品を自宅で受け取っている。
その全体を見て、どこにある在庫をどう運べば最も効率が良いのか、AIを使えば瞬時に導き出すことができるはずです」  「最終消費者にとって一番いい、最適な方法で運ぶために、小売りや卸、メーカーという枠にとらわれずに一緒に考える。
物流がいよいよシェアリングの時代に突入するのだと思います。
そうした時代になればなるほど重要になってくるのが、メーカー物流です。
モノの動きがスタートするところだからです。
メーカー物流の意義や在り方、モノの流し方があらためて問われることになる。
メーカー物流が再び立ち上がる時だと思います」 ──メーカーに具体的に何ができますか。
 「一つはメーカーを束ねる共同物流です。
例えば、医薬品の中でも輸液は現状で既に9割近くを当社が取り扱っています。
最も嵩が張り、重量もあるので、メーカーはもちろん卸にとっても厄介な荷物です。
そのため当社が重宝されている」  「しかし、われわれだけで医薬品全てをカバーできるわけではありません。
そもそもメーカーと卸は拠点の数が違う。
当社は医薬品のDCを全国8カ所に置いています。
一方、医薬品卸のデポは全国約100カ所といわれています。
その108カ所全体で考えて、届け先に最も近い在庫に注文を引き当てる。
それが卸の拠点であれば、われわれからその卸に費用を払って納品してもらう。
逆に当社の拠点のそばに卸が納品するのであれば、当社の在庫を卸に代わって納品する。
そうやって、みんなが持っているアセットを活用すればいい」 ──メーカー同士から、業態の垣根を越えた共同化へシェアリングが広がっていくわけですね。
 「ただし、それには情報連係基盤が必要です。
そこは伝票の電子化に取り組んでいるTSUNAGUTEに期待しています。
現在はメーカーが紙の伝票を発行しているために、物流現場では突合処理が発生している。
伝票に受領印ももらわなければならない。
その伝票を後々まで管理している」  「物流会社はメーカーの伝票を作業に使っていません。
自分だけが使う伝票を別に印刷している。
それが荷主に費用を請求する根拠にもなっている。
そのため現場はどこも紙だらけです。
伝票をデジタル化して受領印も電子化すればみんなが楽になる。
しかも伝票情報を軸にしてメーカーと卸のデータが連係される。
情報基盤が出来上がります」 物流業から作業をなくそう ──物流のペーパーレス化は理屈として正しいことは理解できても、それで具体的に何が変わるのか、実感が湧きません。
 「今日の本社オフィス(東京・晴海)を見ていただければ一目瞭然だと思います。
ほとんど人がいない。
本社だけではありません。
全国の拠点もいわゆる『内勤』はそれぞれ支店長や営業所長などの責任者がいるだけで、事務職はいない。
以前は基本的に荷主ごとに現場に担当者を置いていたので、大規模な拠点になると20人以上の内勤者がいました。
全国では100人を超えていた。
それを2年かけて本社に集約して20人で回すようにした。
拠点の内勤を全廃しました(写真2)」  「本社の20人も今はコロナ禍でテレワークになりました。
今日ここには誰もいません。
ただし、自宅で作業しているわけです。
次はその作業自体を不要にしたい。
『作業をなくそう』がキャッチフレーズです。
それによって内勤者を利益に直接貢献する、付加価値のある仕事に振り分ける。
できれば、全体のオペレーションを常にモニタリングしながら次の改善を考える部隊に変えていきたい」 ──拠点の内勤をやめることができた理由は?  「現場の全員がタブレットを持つようになったからです。
パソコンを使って作業をしているのと同じですから、事務所で再入力する必要がない。
以前は現場の様子も実際に現場まで足を運ばないと分からなかった。
作業員の携帯に電話しても出てやくれません。
それが今は現場で作業をしながら事務所や本社はもちろん、お客さまとも直接コミュニケーションできる。
現場の様子もウェブカメラを通して見てもらえる」  「ここまでデジタル化された物流現場はないだろうと自負しています。
これだけ人のいない物流会社も恐らくない。
『紙をなくせ!』『ファクスは捨てろ!』『鉛筆なんか持つな!』と、反発はあっても徹底的に指示してようやくここまで来ました。
その結果、当社の仕事のやり方は大きく変わりました。
その経験があるから、お客さまにも自信を持ってペーパーレス化を提案できるんです」 ──『作業をなくそう』というのは、事務作業だけでなく現場作業も対象ですか。
 「もちろんです。
現在、当社には全国に約200人のリフトマンがいるのですが、まずはその仕事を全て自動化します。
ロボットに置き換える。
自動ラックなどの保管設備も積極的に導入していく。
そのために人材の再教育、リスキリングを並行して進めています。
長年続けてきたフォークリフトの運転コンテストも昨年で廃止して、今年から新たにプログラミングコンテストを始めました」 ──業績の現状と当面の経営目標は?  「21年12月期の売上高は476億円でした。
今期は486億円を計画していますが、もっと上を目指したい。
中長期では30年に1千億円という目標を掲げています。
ただし、その時には利益も倍増させないといけない。
売上高は大きくなっても利益は増えないというのは最悪です。
そのために自動化が必要なのだと考えています」

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