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2022年5月号
特集

オープンロジ 多様で柔軟なサービスと標準化を両立する

フィジカルインターネットの実装へ ──オープンロジの事業の現状は?  「売上高は非公表ですが、EC事業者の導入実績は1万社を超えました。
物流拠点は今年3月末時点で54カ所。
2年で約3倍になりました。
500拠点を目標にしています。
日本の国土の37万8千平方キロメートルを、拠点から2時間以内に配達できるように区切っていくと、全部で400余りの拠点が必要になります。
それを基準に、フィジカルインターネットの世界を実現できる密度の拠点数として設定しました」 ──フィジカルインターネットの世界をどのように構想していますか。
 「サプライチェーンがしっかりと連携されて、荷物の大きさや集荷作業の所要時間といったレベルのデータまで取れるようになり、それを解析することで、最適な拠点、ルート、車両で、荷物を送り届けることができるようになります。
どの在庫をどの拠点にどれだけ配分すべきかも提案できる。
それを基に発注先に納品の指示を出せば、リードタイムは最短に、トータルコストは最小になります」 ──実現はかなり先のことになりますか。
 「全てを一足飛びに実現はできなくても、段階的には近づいていきます。
在庫拠点に近い届け先からの注文が増えれば増えるほど、配送コストはセーブされる。
仕分けの必要もなくなっていく。
そのために当社は、トランザクションを増やしていく必要があります。
そしてトランザクションを増やしていくために、標準化を作り込み、進化させています」 ──そこで言う標準化とは、どのような意味を持っているのでしょうか。
 「これまで3PLや物流会社は荷主別に最適化を進めてきました。
荷主にとってはそれが良いことでした。
しかし、現場では荷主ごとに使うシステムや業務手順が違うため、作業員やスペースを別に分けなくてはなりません。
倉庫や配送とのつながりまで含めた全体で見た時には最適ではありませんでした。
それが今、物流リソースの不足というかたちで跳ね返ってきているのだと思います」  「それに対してわれわれは先に庫内業務のフローを標準化して、そこに荷主を乗せるという発想でオープンロジをスタートしました。
それによって荷主は物流サービスを、必要な時に必要な量だけSaaSのように利用できるようになる。
現場では業務が荷主別にサイロ化することなく、作業員の能力やスペースをシェアリングできる」  「そのコンセプトで当初は順調に荷主の登録数が増えていったのですが、数年たって一時期、伸び悩んだことがありました。
標準化という言葉を、表面的にしか理解できていなかったことが原因でした。
標準化という言葉が一人歩きしてしまい、それを当社のビジネスに当てはめた時には何を意味するのか、十分に分かっていなかった」 ──物流サービスの標準化といえば、通常は宅配便のようなパッケージ化された商品をイメージします。
 「われわれも当初は『これしかできません』で、サービスを始めました。
完全に画一化されたサービスでした。
しかし、それでは一部のお客さまにしか満足してもらえません。
EC事業者は規模の小さなうちはオープンロジを使うけれど、成長して大きくなるとニーズが変化して複雑化してくるので、内製化や3PLの個別最適に流れてしまう。
しかし、当社がそれを食い止めようとして、個社のニーズに合わせていけば今度は標準化が崩れてしまう。
その狭間ですごく揺れました。
意思決定も揺らいだし、その問題をうまく言語化することもできなかった」  「そこであらためて本質に立ち返って考えると、何を売るか、どこで売るか、どうやって売るかという物流に関わる問題は、常に多様性や柔軟性が求められます。
われわれがそれにしっかりと対応できない限りお客さまは離れていってしまう。
従ってわれわれの目指す“標準化”は、顧客ニーズを考慮しない“画一化”であってはならない。
標準化と多様なニーズへの対応は必ずしも矛盾しないと気付いたんです。
そこからあらためてサービスを進化させることで再び成長軌道に戻ることができました」 画一化したサービスの限界 ──アマゾンの「FBA(Fulfilment by Amazon)」にしても、サービスは完全に画一化されています。
 「そうです。
そもそもデジタルサービスとは画一的なものなのだと思います。
しかし、本当にそれでいいのかという問題です」 ──画一的なプラットフォームからこぼれ落ちるニーズを拾うわけですか。
 「むしろ、逆です。
こぼれ落ちるニーズを拾っているのは、画一化された物流サービスです。
『BtoBの店舗納品には対応できません。
荷主が現場に入って実地棚卸することもできません』ということでは、利用できる企業は限られています。
物流の本筋はこっちにある」 ──標準化と多様なサービスをどう両立させているのですか。
 「荷主が利用するインターフェース、倉庫を運営する物流パートナーが使うインターフェースはしっかり標準化する。
しかし、メニューには柔軟性を持たせる。
一方でオペレーションはパターン化して、荷主が誰なのか意識しないで作業できるようにする」 ──荷主の要望に沿ってパターンを増やしていけば作業効率は落ちるはずです。
 「そうです。
そのバランスが大事なんです。
例えばギフト用のラッピングは、サービスを開始した当初は赤色しか選べなかった。
しかし、荷主のニーズに応えて5種類まで増やした。
そのために現場では常に5種類の資材を用意してもらった。
しかし、調べてみたらそのうち2種類はほとんど使われていない。
そこで3種類に戻した」  「その一方で大型商品のギフトラッピングにも対応するため現場に荷台を整備したり、あるいはオーダーした商品をまとめてギフトラッピングしてほしいとか、この商品だけ、この個数だけギフトラッピングしてほしいという依頼に対応できるようにしたり、標準化という設計の元で対応するバリエーションを増やしてきました」 ──既存の3PLや物流企業との最大の違いはどこにありますか。
 「われわれはテック企業です。
『AWS(Amazon Web Services)』と同様に、分散している倉庫や輸配送などのリソースを仮想サーバーを立てるようにクラウドで提供している。
一方でEC向けのSaaSやWMSとも違う。
われわれは『Whole Product』と言っていますが、システムだけでなく、倉庫オペレーションや現場で使用する物流資材まで含めた全体をプロダクトとして提供しています」  「デジタルサービスと違って物流は『イチかゼロか』ではありません。
『100か10か』であって、標準化にしてもディテールの積み重ねです。
だから複雑だし、だから面白いのだと思います。
庫内作業の自動化も『イチかゼロか』にはならない。
自動化は進んでいくけれど、完全には装置産業化しない。
ロボットの画一的なオペレーションと人手による作業を組み合わせたハイブリッド型を想定しています」

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