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2022年3月号
特集

フェリー・RORO船活用の実態と可能性

モーダルシフトと複合一貫輸送  この数年、筆者は「複合一貫輸送」、特にトラックと海運の組み合わせによる国内の長距離輸送に注目した研究・報告などをしている。
「モーダルシフトのことですね」と言われることが多いが、あえて複合一貫輸送とは使い分けている。
 モーダルシフトは、もともと「トラックから海運・鉄道への輸送機関の転換」を指す言葉として使われ始めたが⑴、幹線輸送のみを捉えて用いられていることもよくある。
 一方、複合一貫輸送は、単一事業者との一括契約の下で、発地と着地の間を、複数輸送機関を組み合わせて行う輸送を言う。
特殊な輸送方法というイメージを持たれている場合もあるが、実際には海運を利用する長距離トラックは年間2百万台以上に及んでいる(図1)。
また、筆者の試算では、長距離トラック輸送の荷物(輸送トンベース)約2割が、複合一貫輸送(海運利用)によって運ばれている。
 複合一貫輸送は、長距離トラックドライバーの「時間外労働時間」「拘束時間」「運転時間」を抑制する効果が大きく、「2024年問題」の有効な対策の一つになり得る。
そこで本稿では、長距離トラックの海運活用を検討する材料として、その利用実態と、ドライバーの就業条件を改善する効果、輸送能力を向上する効果、運行管理の柔軟性を確保する効果などを紹介する。
 なお、以下、本稿では、通常のトラック(単車)とトレーラーの双方を「トラック」、また、長距離フェリーとRORO船の双方、またはこれらによる輸送に「海運」という言葉を用いる。
1.長距離トラックの海運利用の実態 長距離トラックの2割以上が海運を利用  都道府県間の貨物流動を輸送機関別に捉えた統計に国土交通省の「貨物地域流動調査」がある。
しかし、この統計の「海運」には、国内の港湾と港湾の間を、RORO船などの「貨物船」によって運ばれる輸送量のみが計上されていて、「旅客船」として運航されるフェリーによる輸送量は含まれていない。
また、トラックによる輸送量は、フェリー利用の有無に関わらず、「自動車」の輸送量として計上されている。
 唯一、複合一貫輸送を包括的に捉えることのできる「全国貨物純流動調査(物流センサス)」(2015年の3日間調査)の都道府県間流動表から、筆者が都道府県庁間の道路距離が500キロメートル超の流動を抽出して、代表輸送機関(最も長い距離を輸送した輸送機関)別にまとめたものが図2である⑶。
 同図が示す通り「トラック荷台に貨物を積載したまま行われる(長距離)輸送」(図中青枠)のうち、フェリーもしくはRORO船を利用する輸送は20・9%を占めている。
また、「一般に“トラック”として統計に計上される(長距離)輸送」(同赤枠)のうち13・7%がフェリーを利用している。
長距離フェリー航路が利用可能な都道府県間の輸送に限れば、その割合は約45%にも及ぶ⑷。
「物流危機」が社会問題化する以前の時点(2015年前後)でも、既に高い割合で、海運を利用した複合一貫輸送が行われていたことが分かる。
航路サービスの拡充進む  トラック輸送が可能な定期航路では、2000年前後を境に、運航頻度・速度の向上が始まった。
15年以降は、大型船就航や航路新設も相次いでいる⑸。
 長距離フェリー(一部区間を除き、全航路が週6曜日以上運航)の就航船は14年末時点で、14航路35隻であったが、そのうち23隻が22年度までに、トラック積載台数を約136~196台に増やした新造船に置き替わる。
21年7月には、横須賀・北九州間を21時間で結ぶ航路も新設された。
 RORO船は、16年に清水・大分間、19年には敦賀・博多間を約20時間で結ぶ航路が新設されたほか、東京・苅田間が、就航船追加と寄港地見直しで週6曜日の運航となり、運航時間も短縮された。
新造船(最多のトラック積載台数190台)も、20余隻が就航している。
 週6曜日以上運航するRORO船定期航路は21年春時点で9航路まで増えた。
そのうち6航路は、出港の翌晩中には、配送先での荷降ろしも可能な20~24時間半のダイヤで運航している(図3)。
コロナ禍に伴う荷動き減などにより、21年夏から一部航路で減便がある一方、中・四国の一部港では、新規寄港や寄港曜日追加も行われている。
トラック利用を考慮した 運航ダイヤと乗・下船作業  長距離トラックが利用できる定期航路の多くは、トラック輸送を重視したダイヤが設定されている。
航路ごとの大宗貨物、航路距離、港湾事情などにより差異はあるが、多くの航路が、集荷したトラックが乗船しやすい、夕刻から深夜に出港し、配送事情を考慮した時刻に入港するダイヤで運航している。
 航路距離が、概ね700キロメートル超の航路の多くは、20時間前後の航海の後、翌晩の早い時間帯には、主要な物流センターで、トラックからの荷卸しができる時刻に入港する。
 また、4~500キロメートル(航海時間11~13時間)の阪神・九州間航路、1千キロメートル超(同30余時間)の東京・九州間航路では、午前中の荷卸しが可能な早朝に入港する。
1千キロメートル級の航路の中には、高速船や就航隻数増により、運航時間を20時間台に抑えている航路もある。
 港湾では、積載できるトラック150台以上と乗用車の下船および乗船を、複数ランプを用いて、わずか3~4時間で終える航路も多い。
下船順序に配慮して乗船位置指示が行われるため、例えば、北海道・九州から茨城港・横須賀港・清水港への航路では、夕刻以降に発地側で荷積みしたトラックが、翌日中に、首都圏側の物流センターで荷降ろしすることも可能となっている。
2.ドライバー同乗のトラックが 海運を活用する意義  トラックのうち機動性に優れ、トラック輸送の中心となっている単車が、ドライバーと共に乗船して、海運を活用する場合の意義を以下に見ていく。
労働時間などの抑制  改善基準は、ドライバーの1週間当たりの「運転時間」を44時間以下に抑えることを求めている。
仮に高速道路をリミッター上限の時速90キロメートルで走行したとしても、集配域の一般道走行を勘案すれば、週当たり3500キロメートル程度の走行が上限となる。
 それでも関東・近畿間の5~600キロメートル程度の輸送であれば、ドライバー1人で週3往復が可能である。
しかし、例えば、関東・中国間や東海北陸・九州間(例えば、東京・広島間、名古屋・鳥栖間が約800キロメートル)の輸送では、条件が良くとも最大週2往復、関東・九州間(東京・福岡間約1100キロメートル)となると、週1往復半が上限となる。
 荷役作業などの効率化による「拘束時間」の抑制や、中継輸送などにより、ドライバーの就業条件改善が図られても、トラックの走行距離そのものの短縮や、自動運転の実用化・普及が進まない限り、ドライバー1人当たりの「運転時間」は抑制できない。
 これに対して、長距離フェリーを利用すると、阪神・九州各港間の航路利用で500キロメートル以上、横須賀・北九州間の航路利用で900キロメートル以上の走行距離を抑制できる。
例えば、東京都大田区・福岡市間の輸送では、片道当たりの「運転時間」を、全区間を道路走行する場合の14時間強から、それぞれ8時間強、2時間強に、大幅に短縮できる(図4)。
ちなみに、拘束時間が最長16時間超となる場合に、運行途中で必要となる休息期間(8時間以上)の取得も、海運利用の場合は不要となる。
このため、航路利用することで、発着地間の所要時間を短くできる場合もある⑹。
 また、貨物船として運航するRORO船にも、最大12人までドライバーが乗船できる航路がある。
運行管理の柔軟性確保  現在の長距離フェリー航路は、いずれも運航時間が11時間以上ある。
このため、ドライバーは改善基準が求める、終業から次の始業までの間に取得が必要な8時間以上の「休息期間」を、乗船中に取ることができる。
 さらに、改善基準は各就業日の始業から24時間ごとの拘束時間を、原則13時間以内とすることも求めているが、運航時間が11時間以上あることから、下船から始まる就業日の「拘束時間」の上限は、実質的に乗船前の就業日の「拘束時間」数の影響を受けない。
 例えば、横須賀・北九州航路を往路で利用する場合であれば、荷降ろしを終えた単車ドライバーが、そのまま帰り荷の集荷に向かい、復路を道路走行(8時間以上の休息期間を途中1回確保)しても、往路出発翌々日3日目中に、復路の荷卸しまで終えることが可能となる。
週2往復しても、1週間当たりの就業時間を約40時間、運転時間を約33時間、車中泊も2泊までに抑えられる。
改善基準の各上限時間などに余裕を持って一定の往復回数を運行できる⑹(図5)。
 ちなみに、就航船の多くは、ドライバーに専用個室を提供している。
海運を利用することで、ドライバーは肉体的にも十分な休養をとって、下船後の運行に就ける。
3.トレーラーの無人航送で 海運を活用する意義  次に、単車に比べ最大積載量も大きく、海運で多く行われているトレーラーの無人航送で、海運を活用する場合の意義などを見ていく。
トレーラーの無人航走の概要  海運利用によるトレーラーの長距離輸送は、乗船側・下船側の双方で、トレーラーを牽引するドライバーが海運を介して車両を中継輸送する形で行われる。
 発地側ドライバーは、荷降ろしを済ませたトレーラーを牽引して発地に向かい、荷積みを行った上で乗船港まで道路走行し、トレーラーをヤードに駐車させる。
ヤード・船内間の乗・下船は、RORO船の場合は船社が手配した港湾運送事業者、フェリーはトラック事業者側のドライバーによって行われる。
航海を終えたトレーラーは、下船港のヤードに降ろされる。
着地側のドライバーは、ヤードからトレーラーを牽引して配送に向かい、荷降ろしを行う。
そして、次の集荷に向かうというサイクルが繰り返されていく(図6)。
 ヤードのトレーラーの搬出入は、入出港時間に関わらず、ドライバー側の事情に合わせて行うことができる。
また、トラックの船内への積み込みは、車種や積み荷の事情に応じて行われる。
下船後の配送を急ぐトレーラーは、入港後30分程度で配送先に向け出発することも可能である。
ドライバー1人当たりの輸送回数向上  無人航送するトレーラーを牽引するドライバーは、船に同乗しないので、港頭地区と荷主間の集荷・配送に専念できる。
港頭地区から概ね200キロメートル圏内までの配送・集荷でも、1就業日以内で行える。
航路の両端側各1人、計2人のドライバーが週6日就業すれば、6往復分の輸送が可能となる。
 道路走行する単車では、ドライバー1人当たり週1往復半、海運利用でも週2往復が限界であった東京・福岡間、あるいはさらに遠距離の輸送でも、週3往復/人が可能となる。
港湾近傍の集配であれば、それ以上の回数を往復できる。
労働時間と就業条件の改善  長距離輸送において、トレーラーの無人航走活用が進めば、単車の例以上に、労働時間の上限に余裕を持ったドライバーの運用が可能になる。
東京・福岡間の輸送を例にとると、道路走行では1往復半で40時間以上を要していた運転時間(図5)が、横須賀・北九州間航路の往復利用では、3往復分の運行でも約7時間、東京・博多航路の利用ではさらに短縮できる。
 何より、いったん出発すれば車中泊を繰り返すことが当たり前であった長距離輸送のドライバーが、毎日自宅から通勤して、輸送に従事することが可能になる。
物流センターなどにおける附帯作業などの負荷軽減や、給与体系の見直しが進めば、ドライバーの就業条件を大幅に改善できる。
4.長距離トラックの海運活用のために  新たに海運の利活用を進めていくための留意事項や関係者への期待を以下に記す。
運行体制への理解・協力  トレーラーの無人航走を始めるには、牽引免許を保有するドライバーや、トラクターヘッドやトレーラーの車両が必要となる。
トレーラーは、船社側保有の車両や、複数のトラック事業者などによる共同利用の仕組みなどを活用できる。
 一方で、出荷側と配送側双方での運行体制確保には配慮が必要となる。
従来、長距離輸送を担う事業者の多くは、相対的に運賃・賃金相場の低い地方圏のドライバーが、相場の高い大都市圏からの帰り荷も輸送することで、経営を成り立たせてきた。
大都市圏側の運行体制の構築、積載量の大きいトレーラーの積載率・実車率を高めるための共同運行など、荷主や利用運送事業者側の理解・協力が重要になる。
海運側のトラック輸送能力の維持・確保  コロナ禍による荷動きの低迷、ドライバーの不足感緩和から、海運のトラック輸送台数は、コロナ禍前を下回っている(図1)。
一方で、九州航路の長距離フェリー航路全体では、トラックの輸送能力は23年初までに18年度比で2割増える。
一見、輸送余力があるように見えるが、コロナ禍前の九州航路の長距離フェリーは、需要の高い週央曜日など、満船状態が続いていたにもかかわらず、九州・山口8県発着の長距離トラック輸送量の3割程度しか運んでいなかった⑶。
トラック輸送余力は、いまだ十分とはいえない。
 また、海運事業者は、コロナ禍に伴う収入減、原油高騰と環境規制(20年からのSOx規制)による燃料代の支出増の二重苦の状態にある。
RORO船の九州航路は充実したものの、週6曜日以上定期運航する4航路12隻中7隻は、船齢20年以上であるにもかかわらず、コロナ禍による将来需要の不透明感や、新船建造費の高騰などから、いまだ代替船の建造計画すら明らかにされていない。
 24年以降の海運のトラック輸送能力維持のためにも、トラックの輸送余力が生じている今の時期にこそ、海運の活用検討・利用を開始して、航路を維持する船社の決断を促していくことも重要である。
海運利用のコスト競争力  これまで海運を利用する場合の輸送コストの検討は、トラック燃料費、道路通行料金、乗船運賃の3費用のみを用いて、片道分のコストを比較して、海運利用は割高だとされることが多かった。
 しかし、改善基準などの遵守が進むことに伴う、片道当たりの所要時間の長期化(すなわちドライバーやトラックの実質的な拘束日数などの増加)、1週間あたりの車両・ドライバーの往復可能回数を勘案すると、海運利用の場合の車両・ドライバーの回転率は、道路走行の場合よりも高くなる。
 実際、筆者が改善基準を満たすために海運利用を始めた九州・近畿間の単車による輸送⑺を例にして、先の3費用に1往復に要する日数を勘案した車両償却費、ドライバー人件費を加えた5費用でコストを比較したところ、海運利用の方が安かった。
今後もドライバーの人手不足、賃金水準の引き上げなどが続くとすれば、コスト面でも海運利用が勝るケースも増えると考えられる。
*  *  *  *  *  以上、見てきたように、長距離トラックの海運利用による複合一貫輸送には、ドライバーの就業条件の改善や輸送能力の強化、運行管理の柔軟性向上などのメリットを期待できる。
また、道路走行に比べて輸送品質も高い。
航海中は振動などが少なく⑻、運航の定時性も高い。
航海中の車両状態も船員の巡回により見守られる。
航路サービスの水準は四半世紀前から大幅に改善しており、海運利用を始めた荷主の評価も高い。
 さらに、複合一貫輸送は、ドライバー以外の船員なども含めた関係就業者全体の労働生産性に優れ⑹、輸送に伴う環境負荷の抑制効果が大きい。
安定的な輸送力確保による企業活動維持に加えて、SDGsの目標「8.働きがいも経済成長も」「13.気候変動に具体的な対策を」にも貢献できる。
2024年問題対策の一つとして、長距離トラックの海運活用が広く検討され、より多く利用されることを期待する。
引用文献 ⑴運輸政策審議会物流部会答申:物流業における労働力問題への対応方策について、1990年12月 ⑵厚生労働省労働基準局:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント、2020年3月 ⑶加藤博敏:複合一貫輸送による長距離貨物輸送の労働生産性の改善、筑波大学博士論文、2019年3月 ⑷加藤博敏・相浦宣徳:長距離ユニットロード輸送における長距離フェリーの担う役割と各輸送機関の特徴、運輸政策研究、Vol.20、pp.49─60、2018年3月 ⑸加藤博敏:長距離トラックの輸送を担うRORO船などの国内貨物船航路の輸送動向と課題、第62回土木計画学研究発表会講演集、Vol.62、№7041、2020年11月 ⑹加藤博敏・根本敏則:海運活用による長距離トラック輸送のドライバー不足解消 ─ドライバーの実拘束時間に着目した労働生産性指標の提案―,日本物流学会誌,Vol.28、pp.117─124.2020年9月. ⑺厚生労働省・国土交通省・全日本トラック協会:取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン事例集、pp.36─37、2018年11月 ⑻新日本海フェリー:海上輸送について、(https://www.snf.jp/distribution_about/ 2022年1月20日閲覧)

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