2022年3月号
特集
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ダブル連結トラック 長距離幹線輸送に導入する動きが広がる
異なる温度帯車両の連結も可能
ある運送会社の幹部が苦しい胸の内を語る。
「ラストワンマイルの人手不足や過重労働は“宅配クライシス”とマスコミが繰り返し伝えたこともあって、物流業界以外の人にも知られるようになった。
しかし、本当に厳しいのは長距離輸送の方だ。
このまま行くとあと数年で幹線輸送が機能不全になるかもしれない」。
この運送会社は長距離輸送からの撤退を真剣に検討している。
労働条件が厳しいことから若い人に敬遠されて慢性的に人手が足りない。
同幹部は「採用募集しても70代のドライバーや完全な未経験者から応募があるくらい。
それでも応募してくれる人がいるだけまだましだが‥‥」と表情を曇らせる。
今後も労働力減少は続く。
長距離ドライバーの数が増えることは期待しにくい。
その対応策として運送業界では車両1台で2台分の荷物を運ぶことが可能な「ダブル連結トラック」を幹線輸送に投入する動きが広がっている。
国土交通省もダブル連結トラックが走行可能なルートを主要高速道路に設定するなど利用を後押ししている。
福山通運は昨年10月、福山主管支店(広島県福山市)~裾野営業所(静岡県裾野市)間で全長25メートルのダブル連結トラックの運行をスタートした。
同社は17年10月、国内で初めて25メートルダブル連結トラックを運送業務に投入しており、これで6路線目。
昨年9月末時点でダブル連結トラックの運転が可能なけん引免許の保有者を1578人確保しており、将来の路線拡大へ意欲を示している。
日野自動車と、アサヒグループホールディングス、江崎グリコ、日清食品ホールディングス、ブリヂストンなどの大手荷主企業、鴻池運輸、トランコム、ニチレイロジグループ本社、日本梱包運輸倉庫などの物流企業が共同出資するNEXT Logistics Japan(NLJ)も、19年12月から東名阪の間で25メートルダブル連結トラックに業種・業態の垣根を超えた荷物を積み合わせて幹線輸送している。
関東から関西へ向かうダブル連結トラックと、逆に関西から関東へ走っているダブル連結トラックを中間地点の愛知県内のNLJ拠点でドッキングして、ドライバーが交替する。
NLJはトラックそれぞれを単独で走らせた場合に比べ、年間のCO2排出量を約3割削減できたと説明。
ドライバーの宿泊勤務廃止などの成果も挙げている。
昨年3月には国内で初めて、常温と冷凍という異なる温度帯でダブル連結トラックの運行に着手しており、利用範囲の拡大を図っている。
ダブル連結トラックの普及へ向けてインフラの整備も進む。
中日本高速道路(NEXCO中日本)は昨年4月、東京~大阪間の中間エリアに位置する静岡県浜松市の新東名高速道路引佐連絡路の浜松いなさインターチェンジ近隣で、ダブル連結トラック専用駐車場の運営を開始した。
敷地内に30台分の駐車ロットを設置。
ETC2・0を使い、インターネットを通じて30分単位で事前に予約、最長12時間使用できる。
トイレには洗髪や歯磨きが可能な洗面台を男女それぞれに設けるなど、ゆっくり休めるよう配慮している。
高速道路会社は以前からサービスエリア内にダブル連結トラック専用の駐車スペースを設置している。
しかし、一般車両が勝手に使用してしまい、本来のユーザーであるべきダブル連結トラックのドライバーが休息できない事態が起きていた。
そこでNEXCO中日本はインターチェンジ脇に専用施設を別途設けて一般の車両が入れないようにした。
今年1月からは専用駐車場を使う際、ダブル連結トラックが3時間以内に再び高速道路の本線へ戻れば、インターチェンジを降りず続けて走行したとみなして高速料金を徴収する措置を始めた。
NEXCO中日本は「より多くの方に使っていただけるようにしたい」と狙いを説明する。
センコーが日本初の運行方式 センコーは1月、将来のダブル連結トラック運行ニーズ拡大をにらみ、日本初の新たな運行方式を開始する方針を発表した。
大型車2台分を別々に集荷した上で連結、高速道路の長距離幹線区間をドライバーが途中で交替しながら運んだ後、前方車両と後方車両を切り離し、前方車両はそのまま10トンの大型トラックとして活用。
後方車両はセミトレーラーに接続し、計2台に仕立て直して同時にそれぞれの配送先に向かう。
2月初旬、関東~関西間で大手住宅メーカーの旭化成ホームズ、エレベーター・エスカレーター大手のフジテックの両社の貨物輸送を新方式で開始した。
別々に納品先へトラックが向かうことで、2台が連結したままそれぞれの納品先を回るよりも業務を効率化・迅速化できる。
センコーでは新方式によって運転時間を年間約4割削減できると試算している。
CO2排出量も約3割減らせるという。
フジテックの中山忠久執行役員物流本部長は「新型コロナウイルス禍で人々の気持ちが閉じこもりがちになり、物流業界もさまざまな規制に縛られているが、今回のチャレンジで一石を投じて現状の閉そく感を打破し、新しい将来に向け皆さんと一緒になって進んでいきたい」と輸送効率化や環境負荷低減に期待している。
旭化成ホームズの橋徹施工本部物流部長も「ますます環境問題は企業にとって非常に重要でポイントになってくる。
センコーさんとともに、次の時代に適応できる物流を目指していきたい」と言う。
センコーの大越昇取締役専務執行役員は「これまで当社は環境対策として物流施設への太陽光パネル設置やモーダルシフトなどに取り組んできたが、長距離・大型のトラック輸送についてはまだまだ技術開発が進んでいない。
お客さまとも協力して新しい技術を取り入れたい」と強調する。
同社事業政策推進本部の殿村英彦長距離輸送事業推進部長は、2022年度に追加でダブル連結トラック6編成を導入する計画を明らかにした上で「フジテック、旭化成ホームズの両社に加え、他の企業の輸送にも投入していきたい」と語る。
ただし、ダブル連結トラックを実際に手掛ける運送会社の関係者は「当然ながら2台が連結しているので、有資格者であっても運転にはとても気を遣う。
慣れるまでが大変」と明かす。
一般のドライバーからは「ダブル連結トラックはそばを走っているだけで怖い」と威圧感を訴える声も聞かれる。
ドライバーの負荷が増えることのないよう、主要高速道路で休憩施設や専用施設の整備を加速するとともに、ダブル連結トラックの存在意義を運送業界以外にも積極的に伝えていく広報活動も急務となっている。
「ラストワンマイルの人手不足や過重労働は“宅配クライシス”とマスコミが繰り返し伝えたこともあって、物流業界以外の人にも知られるようになった。
しかし、本当に厳しいのは長距離輸送の方だ。
このまま行くとあと数年で幹線輸送が機能不全になるかもしれない」。
この運送会社は長距離輸送からの撤退を真剣に検討している。
労働条件が厳しいことから若い人に敬遠されて慢性的に人手が足りない。
同幹部は「採用募集しても70代のドライバーや完全な未経験者から応募があるくらい。
それでも応募してくれる人がいるだけまだましだが‥‥」と表情を曇らせる。
今後も労働力減少は続く。
長距離ドライバーの数が増えることは期待しにくい。
その対応策として運送業界では車両1台で2台分の荷物を運ぶことが可能な「ダブル連結トラック」を幹線輸送に投入する動きが広がっている。
国土交通省もダブル連結トラックが走行可能なルートを主要高速道路に設定するなど利用を後押ししている。
福山通運は昨年10月、福山主管支店(広島県福山市)~裾野営業所(静岡県裾野市)間で全長25メートルのダブル連結トラックの運行をスタートした。
同社は17年10月、国内で初めて25メートルダブル連結トラックを運送業務に投入しており、これで6路線目。
昨年9月末時点でダブル連結トラックの運転が可能なけん引免許の保有者を1578人確保しており、将来の路線拡大へ意欲を示している。
日野自動車と、アサヒグループホールディングス、江崎グリコ、日清食品ホールディングス、ブリヂストンなどの大手荷主企業、鴻池運輸、トランコム、ニチレイロジグループ本社、日本梱包運輸倉庫などの物流企業が共同出資するNEXT Logistics Japan(NLJ)も、19年12月から東名阪の間で25メートルダブル連結トラックに業種・業態の垣根を超えた荷物を積み合わせて幹線輸送している。
関東から関西へ向かうダブル連結トラックと、逆に関西から関東へ走っているダブル連結トラックを中間地点の愛知県内のNLJ拠点でドッキングして、ドライバーが交替する。
NLJはトラックそれぞれを単独で走らせた場合に比べ、年間のCO2排出量を約3割削減できたと説明。
ドライバーの宿泊勤務廃止などの成果も挙げている。
昨年3月には国内で初めて、常温と冷凍という異なる温度帯でダブル連結トラックの運行に着手しており、利用範囲の拡大を図っている。
ダブル連結トラックの普及へ向けてインフラの整備も進む。
中日本高速道路(NEXCO中日本)は昨年4月、東京~大阪間の中間エリアに位置する静岡県浜松市の新東名高速道路引佐連絡路の浜松いなさインターチェンジ近隣で、ダブル連結トラック専用駐車場の運営を開始した。
敷地内に30台分の駐車ロットを設置。
ETC2・0を使い、インターネットを通じて30分単位で事前に予約、最長12時間使用できる。
トイレには洗髪や歯磨きが可能な洗面台を男女それぞれに設けるなど、ゆっくり休めるよう配慮している。
高速道路会社は以前からサービスエリア内にダブル連結トラック専用の駐車スペースを設置している。
しかし、一般車両が勝手に使用してしまい、本来のユーザーであるべきダブル連結トラックのドライバーが休息できない事態が起きていた。
そこでNEXCO中日本はインターチェンジ脇に専用施設を別途設けて一般の車両が入れないようにした。
今年1月からは専用駐車場を使う際、ダブル連結トラックが3時間以内に再び高速道路の本線へ戻れば、インターチェンジを降りず続けて走行したとみなして高速料金を徴収する措置を始めた。
NEXCO中日本は「より多くの方に使っていただけるようにしたい」と狙いを説明する。
センコーが日本初の運行方式 センコーは1月、将来のダブル連結トラック運行ニーズ拡大をにらみ、日本初の新たな運行方式を開始する方針を発表した。
大型車2台分を別々に集荷した上で連結、高速道路の長距離幹線区間をドライバーが途中で交替しながら運んだ後、前方車両と後方車両を切り離し、前方車両はそのまま10トンの大型トラックとして活用。
後方車両はセミトレーラーに接続し、計2台に仕立て直して同時にそれぞれの配送先に向かう。
2月初旬、関東~関西間で大手住宅メーカーの旭化成ホームズ、エレベーター・エスカレーター大手のフジテックの両社の貨物輸送を新方式で開始した。
別々に納品先へトラックが向かうことで、2台が連結したままそれぞれの納品先を回るよりも業務を効率化・迅速化できる。
センコーでは新方式によって運転時間を年間約4割削減できると試算している。
CO2排出量も約3割減らせるという。
フジテックの中山忠久執行役員物流本部長は「新型コロナウイルス禍で人々の気持ちが閉じこもりがちになり、物流業界もさまざまな規制に縛られているが、今回のチャレンジで一石を投じて現状の閉そく感を打破し、新しい将来に向け皆さんと一緒になって進んでいきたい」と輸送効率化や環境負荷低減に期待している。
旭化成ホームズの橋徹施工本部物流部長も「ますます環境問題は企業にとって非常に重要でポイントになってくる。
センコーさんとともに、次の時代に適応できる物流を目指していきたい」と言う。
センコーの大越昇取締役専務執行役員は「これまで当社は環境対策として物流施設への太陽光パネル設置やモーダルシフトなどに取り組んできたが、長距離・大型のトラック輸送についてはまだまだ技術開発が進んでいない。
お客さまとも協力して新しい技術を取り入れたい」と強調する。
同社事業政策推進本部の殿村英彦長距離輸送事業推進部長は、2022年度に追加でダブル連結トラック6編成を導入する計画を明らかにした上で「フジテック、旭化成ホームズの両社に加え、他の企業の輸送にも投入していきたい」と語る。
ただし、ダブル連結トラックを実際に手掛ける運送会社の関係者は「当然ながら2台が連結しているので、有資格者であっても運転にはとても気を遣う。
慣れるまでが大変」と明かす。
一般のドライバーからは「ダブル連結トラックはそばを走っているだけで怖い」と威圧感を訴える声も聞かれる。
ドライバーの負荷が増えることのないよう、主要高速道路で休憩施設や専用施設の整備を加速するとともに、ダブル連結トラックの存在意義を運送業界以外にも積極的に伝えていく広報活動も急務となっている。
