2022年1月号
特集
特集
米アマゾンのリアル店舗展開の最新動向
流通総額でウォルマートを追い抜く
ニューヨーク・タイムズ紙は2021年8月、アマゾンがウォルマートを売上高で初めて追い抜いたと報じた。
流通取引総額という条件付きではあるものの、30年以上にわたって米国流通を牽引してきたウォルマートがネット通販最大手に抜かれたことは歴史的なイベントであった。
アマゾンは、サードパーティが新商品もしくは中古品を出品販売するマーケットプレイスについては、販売手数料を売り上げとして報告しているだけで流通総額は公表していない。
しかし、米調査会社のファクトセット・リサーチ・システムズの推計によると、アマゾンのマーケットプレイスを含めた21年6月までの1年間の流通総額は6100億ドル(約69兆円)だった。
これに対して、ほぼ同時期となる21年7月までのウォルマートの年間売上高は5660億ドル(約64兆円)だった。
アマゾンに440億ドル(約5兆円)の大差をつけられて小売り売上高トップの座を奪われた。
もちろん、アマゾンの流通総額はマーケットプレイスの販売分が大半を占めており、ウォルマートが1990年にそれまで最大手だったシアーズを追い抜いたのとは意味合いは異なる。
しかし、消費者の買い物の仕方がここ数年で大きく変化したことがあらためて浮き彫りになった怡好だ。
パンデミックはネット需要をさらに押し上げた。
自宅待機や隔離生活のために、今では生鮮品までネットで購入して宅配してもらうことが、米国におけるニューノーマルとなっている。
この新しい生活様式が追い風となりアマゾンの2021年8月までの1年間の売上高は2千億ドル(約23兆円)近くに達したとみられている。
興味深いのはアマゾンのリアル店舗展開だ。
ライバルのウォルマートがDXを進めて脱チェーンストアに向け動いているのとは対照的に、アマゾンはリアル店舗に投資を向けている。
そしてコロナ禍に入って以降、アマゾンはそのリアル店舗戦略を大きく様変わりさせている。
アマゾンのリアル店舗のフォーマットは17年に137億ドルで買収したホールフーズ・マーケット以外に、20年6月時点で「アマゾン4スター(Amazon 4-Star)」「アマゾン・ブックス(Amazon Books)」「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」「アマゾン・ゴー・グローサリー(Amazon Go Grocery)」「アマゾン・ポップアップ(Amazon Pop-up)」の5種類があった。
このうち、カスタマーレビューで評価が星4つ以上の商品を中心にそろえたアマゾン4スターは20年11月時点で、12店舗を展開しており、18店舗が「間もなくオープン」と表示されていた。
21年11月現在は33店舗を展開して、さらに9店舗が間もなくオープンする予定となっている。
モールの通路など小スペースでアマゾン製品を展示販売するアマゾン・ポップアップは1年前の6店舗から8店舗に増えた。
ワシントンDCに間もなく9店目がオープンする予定だ。
15年に1号店をオープンした書籍専門店のアマゾン・ブックスは24店舗で1年前と変わらず、閉鎖も新規出店の告知もない。
変化があったのはレジなし決済システム「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out:JWO)」を導入したコンビニエンスストアのアマゾン・ゴーだ。
1年前の25店舗から1店舗増やしながら、今年に入って4店舗を閉鎖した。
現在、計22店舗となっている。
このアマゾン・ゴーが11月、コーヒーチェーン最大手のスターバックスと組んで、新業態店「スターバックス・ピックアップ・ウィズ・アマゾン・ゴー(Starbucks Pickup with Amazon Go)」をオープンした。
場所はマンハッタン・ミッドタウンの59丁目沿い、パーク・アベニューとレキシントン・アベニューの間である。
店の入り口を抜けて左側にスターバックス・ピックアップのカウンターがあり、その横にJWOのゲートがある。
そこでアマゾン・アプリのQRコードをスキャンするとゲートが開く。
生体認証の「アマゾン・ワン」に登録していれば手の平をかざすだけでいい。
ゲートを通るとそこはサラダやサンドイッチ、スナック類が置かれているアマゾン・ゴーのエリアで、左側にはイート・イン・スペースとしてテーブルと椅子が並ぶカフェテリアがある。
他のアマゾン・ゴーは通常、カフェテリアをゲートの外に設置している。
スターバックスと提携した新業態はゲート内にカフェテリアがあるため、コーヒーを飲んでいる途中にお腹が空いてきたら、焼きたてのパンなど陳列されている食品を注文や決済せずにそのまま手にとって食べられるというわけだ。
新業態の2号店は22年にニューヨーク・タイムズビル内にオープンする計画となっている。
またアマゾン・ゴーのJWOの仕組みは他の小売店に外販されており、無人決済技術を導入した店舗が全米各地に続々とオープンしている。
新業態「アマゾン・フレッシュ」 この一年のアマゾンの動きで最も業界人を驚かせたのはレジなし食品スーパーのアマゾンゴー・グローサリーの展開だろう。
20年2月にシアトル市内に1号店がオープンし、9月にはシアトル郊外のレドモンド地区に2号店をオープンした。
同11月には非接触の生体認証デバイスも導入している。
しかし、21年5月、オープンからわずか8カ月で2号店を閉鎖した。
残る1号店も店舗名をアマゾンゴー・グローサリーから「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」に変更した。
アマゾン・フレッシュは、アマゾンが新たに打ち出したオムニチャネル型食品スーパーだ(写真1)。
従来型のフルサービスのレジを備える一方、レジレス決済を可能にするスマートショッピングカート「アマゾン・ダッシュカート(Amazon Dash Cart)」を併用している(写真2)。
ネットスーパー用の宅配機能とカーブサイド・ピックアップ機能も備え、ネット注文品を受け取るロッカーも設置している。
一般的なグロサリーの他、ホールフーズ・マーケットのプライベートブランド「365」を取り扱っている。
生鮮品では精肉・鮮魚、デリの対面販売を行っている。
価格戦略はエブリデーロープライス(EDLP)と週替わりの特価品を組み合わせている。
ただし、ホールフーズで採用しているプライム会員向けのディスカウントは行っていない。
20年9月にロサンゼルス郊外に1号店をオープンし、それから14カ月間で22店舗を展開している。
興味深いのはそのロケーションだ。
多くがトイザらスなどが撤退した跡地なのだが、同じ敷地内や近隣にウォルマートや競合スーパーがあっても構わず出店している。
他のスーパーマーケットとは戦い方が違うという判断だろう。
アマゾン・フレッシュのダッシュカートは、コンピュータービジョンを内蔵した四つのカメラに重量センサー、タッチスクリーンを搭載した世界最先端のハイテクカートだ。
アマゾン・フレッシュのQRコードをダッシュカートのスキャナーで読み込ませることで利用者のアカウントと紐付き、レジなしで買い物ができる。
カートに商品を入れてバーコードを読み込むと軽いチャイム音と共にカートのライトが白く光り、スクリーンに商品名、数量、価格が表示される。
カートが商品を認識できなかった時はビープ音が鳴ってオレンジ色に光り、スクリーンに「認識できませんでした」と表示される。
認識できなかった商品は、スクリーンで商品カテゴリーをタップしてマニュアル入力する。
野菜や果物などの量り売りは、スクリーン上の「商品コードを押す」をタップして商品をカートに入れると自動的に重さを量り、価格を表示する。
商品を棚に戻すためにカートから取り出すと「何を取り出しましたか?」というメッセージと購入リストが表示されるので、そこから戻した商品を選ぶ。
買い物が終了したらダッシュカート専用の通路を通るとスクリーンが緑色に変わり、「完了しました」というメッセージと合計金額が表示される。
なお、ワインやビールなどのアルコール類を購入している場合は、ダッシュカート・レーンでIDの提示が求められる。
決済終了後、メールでeレシートが届く。
超ハイテクカートの実力は? 筆者は実際にアマゾン・フレッシュで買い物をしてみたが、この最先端のAIカートには弱点もあった。
商品の重量が同じで、価格の異なる複数の商品をカートに入れる際、安い方の商品のバーコードを読み込ませることでハッキングができた(もちろん後から訂正して正規の料金を支払ったことは名誉のため申し添えておく)。
さらにアマゾンにとって頭の痛い問題が店内のオペレーションだ。
リアル店舗の売り場と、ネットスーパーの倉庫を兼用していることから、買い物客とピッカーの衝突が起きていた。
とくに週末はピッカーが増えて買い物客の邪魔になる。
生鮮食品などの欠品や品薄も生じてしまう。
商品補充を行えば、売り場はさらに混雑する。
ハイテク設備を搭載したダッシュカートは通常のカートと比べてずっと重い。
押したり引いたりするだけならそれほど重さは感じないが、カートを小回りさせるのは男性であってもかなりきつい。
カートの渋滞に巻き込まれると小回りを余儀なくさせる。
売り場での顧客体験が悪化する瞬間だ。
そのためか21年6月以降に開店したアマゾン・フレッシュの店舗には、ダッシュカートがなく、代わりにJWOが導入されている。
21年11月18日、ロサンゼルス郊外にアマゾン・フレッシュの22店舗目となるセリトス店がオープンした。
その当日に筆者は、手の平認証を使って同店で買い物をした。
エントランスゲートは、フルサービスのレジで従来どおりの買い物を行う「Traditional Shopping」と「Scan to Enter」と掲げられたJWO用の二つに分かれていた。
同店は重量チェッカーを備えたダッシュカートを使わないため基本的に量り売りはしていない。
精肉・デリの対面コーナーでは、販売スタッフが重さを測り、ステッカーをプリントアウトして包装紙に貼り、お客にわたす時にスキャンしていた。
オープンの賑わいでフルサービスのレジには長い行列ができていた。
しかし、筆者はJWOによりレジ待ちをせずストレスなく買い物ができた。
破壊的といっていいほどの買い物体験だ。
アマゾンにとっても人手不足の折、レジ係が不要であることは大きな強みとなる。
しかし、問題もあった。
JWOは天井に設置したカメラの画像解析とAIを組み合わせて、買い物客が商品を手に取りショッピングカートに入れる動きをフォローする。
さらに商品棚の重量センサーも使って、買い物客が手に取った商品の個数まで割り出す。
ところが、筆者の買い物は計算が間違っていた。
バナナ3本をカートに入れたにもかかわらず、バナナ3房と計算されていた。
本来は45セント(3本×15セント)のところを、7ドル課金されていた。
AIがミスをするという、めったにないことに遭遇しただけかもしれないと、後日もう一度、同じ店で買い物した。
結果から言えば、再び間違いがあった。
ネギを2束購入したのに、一束しか計算されていなかった。
前回の買い物でもらった10ドルクーポンを使ったのに、それも反映されていなかった。
自分のアカウントに買い物履歴が載ったのは退店してから2時間以上も経ってからのことだった。
eレシートが送られて来たのは4時間以上も後だった。
おまけに金曜日の午前中という客の少ない時間帯だったが、店頭には欠品が目立ち始めていた。
アマゾンはJWOを導入したハイブリッド型食品スーパーのアマゾン・フレッシュを今後も続々とオープンする計画となっている。
しかし、アマゾンのリアル店舗展開はまだしばらくは試行錯誤が続きそうである。
流通取引総額という条件付きではあるものの、30年以上にわたって米国流通を牽引してきたウォルマートがネット通販最大手に抜かれたことは歴史的なイベントであった。
アマゾンは、サードパーティが新商品もしくは中古品を出品販売するマーケットプレイスについては、販売手数料を売り上げとして報告しているだけで流通総額は公表していない。
しかし、米調査会社のファクトセット・リサーチ・システムズの推計によると、アマゾンのマーケットプレイスを含めた21年6月までの1年間の流通総額は6100億ドル(約69兆円)だった。
これに対して、ほぼ同時期となる21年7月までのウォルマートの年間売上高は5660億ドル(約64兆円)だった。
アマゾンに440億ドル(約5兆円)の大差をつけられて小売り売上高トップの座を奪われた。
もちろん、アマゾンの流通総額はマーケットプレイスの販売分が大半を占めており、ウォルマートが1990年にそれまで最大手だったシアーズを追い抜いたのとは意味合いは異なる。
しかし、消費者の買い物の仕方がここ数年で大きく変化したことがあらためて浮き彫りになった怡好だ。
パンデミックはネット需要をさらに押し上げた。
自宅待機や隔離生活のために、今では生鮮品までネットで購入して宅配してもらうことが、米国におけるニューノーマルとなっている。
この新しい生活様式が追い風となりアマゾンの2021年8月までの1年間の売上高は2千億ドル(約23兆円)近くに達したとみられている。
興味深いのはアマゾンのリアル店舗展開だ。
ライバルのウォルマートがDXを進めて脱チェーンストアに向け動いているのとは対照的に、アマゾンはリアル店舗に投資を向けている。
そしてコロナ禍に入って以降、アマゾンはそのリアル店舗戦略を大きく様変わりさせている。
アマゾンのリアル店舗のフォーマットは17年に137億ドルで買収したホールフーズ・マーケット以外に、20年6月時点で「アマゾン4スター(Amazon 4-Star)」「アマゾン・ブックス(Amazon Books)」「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」「アマゾン・ゴー・グローサリー(Amazon Go Grocery)」「アマゾン・ポップアップ(Amazon Pop-up)」の5種類があった。
このうち、カスタマーレビューで評価が星4つ以上の商品を中心にそろえたアマゾン4スターは20年11月時点で、12店舗を展開しており、18店舗が「間もなくオープン」と表示されていた。
21年11月現在は33店舗を展開して、さらに9店舗が間もなくオープンする予定となっている。
モールの通路など小スペースでアマゾン製品を展示販売するアマゾン・ポップアップは1年前の6店舗から8店舗に増えた。
ワシントンDCに間もなく9店目がオープンする予定だ。
15年に1号店をオープンした書籍専門店のアマゾン・ブックスは24店舗で1年前と変わらず、閉鎖も新規出店の告知もない。
変化があったのはレジなし決済システム「ジャスト・ウォーク・アウト(Just Walk Out:JWO)」を導入したコンビニエンスストアのアマゾン・ゴーだ。
1年前の25店舗から1店舗増やしながら、今年に入って4店舗を閉鎖した。
現在、計22店舗となっている。
このアマゾン・ゴーが11月、コーヒーチェーン最大手のスターバックスと組んで、新業態店「スターバックス・ピックアップ・ウィズ・アマゾン・ゴー(Starbucks Pickup with Amazon Go)」をオープンした。
場所はマンハッタン・ミッドタウンの59丁目沿い、パーク・アベニューとレキシントン・アベニューの間である。
店の入り口を抜けて左側にスターバックス・ピックアップのカウンターがあり、その横にJWOのゲートがある。
そこでアマゾン・アプリのQRコードをスキャンするとゲートが開く。
生体認証の「アマゾン・ワン」に登録していれば手の平をかざすだけでいい。
ゲートを通るとそこはサラダやサンドイッチ、スナック類が置かれているアマゾン・ゴーのエリアで、左側にはイート・イン・スペースとしてテーブルと椅子が並ぶカフェテリアがある。
他のアマゾン・ゴーは通常、カフェテリアをゲートの外に設置している。
スターバックスと提携した新業態はゲート内にカフェテリアがあるため、コーヒーを飲んでいる途中にお腹が空いてきたら、焼きたてのパンなど陳列されている食品を注文や決済せずにそのまま手にとって食べられるというわけだ。
新業態の2号店は22年にニューヨーク・タイムズビル内にオープンする計画となっている。
またアマゾン・ゴーのJWOの仕組みは他の小売店に外販されており、無人決済技術を導入した店舗が全米各地に続々とオープンしている。
新業態「アマゾン・フレッシュ」 この一年のアマゾンの動きで最も業界人を驚かせたのはレジなし食品スーパーのアマゾンゴー・グローサリーの展開だろう。
20年2月にシアトル市内に1号店がオープンし、9月にはシアトル郊外のレドモンド地区に2号店をオープンした。
同11月には非接触の生体認証デバイスも導入している。
しかし、21年5月、オープンからわずか8カ月で2号店を閉鎖した。
残る1号店も店舗名をアマゾンゴー・グローサリーから「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」に変更した。
アマゾン・フレッシュは、アマゾンが新たに打ち出したオムニチャネル型食品スーパーだ(写真1)。
従来型のフルサービスのレジを備える一方、レジレス決済を可能にするスマートショッピングカート「アマゾン・ダッシュカート(Amazon Dash Cart)」を併用している(写真2)。
ネットスーパー用の宅配機能とカーブサイド・ピックアップ機能も備え、ネット注文品を受け取るロッカーも設置している。
一般的なグロサリーの他、ホールフーズ・マーケットのプライベートブランド「365」を取り扱っている。
生鮮品では精肉・鮮魚、デリの対面販売を行っている。
価格戦略はエブリデーロープライス(EDLP)と週替わりの特価品を組み合わせている。
ただし、ホールフーズで採用しているプライム会員向けのディスカウントは行っていない。
20年9月にロサンゼルス郊外に1号店をオープンし、それから14カ月間で22店舗を展開している。
興味深いのはそのロケーションだ。
多くがトイザらスなどが撤退した跡地なのだが、同じ敷地内や近隣にウォルマートや競合スーパーがあっても構わず出店している。
他のスーパーマーケットとは戦い方が違うという判断だろう。
アマゾン・フレッシュのダッシュカートは、コンピュータービジョンを内蔵した四つのカメラに重量センサー、タッチスクリーンを搭載した世界最先端のハイテクカートだ。
アマゾン・フレッシュのQRコードをダッシュカートのスキャナーで読み込ませることで利用者のアカウントと紐付き、レジなしで買い物ができる。
カートに商品を入れてバーコードを読み込むと軽いチャイム音と共にカートのライトが白く光り、スクリーンに商品名、数量、価格が表示される。
カートが商品を認識できなかった時はビープ音が鳴ってオレンジ色に光り、スクリーンに「認識できませんでした」と表示される。
認識できなかった商品は、スクリーンで商品カテゴリーをタップしてマニュアル入力する。
野菜や果物などの量り売りは、スクリーン上の「商品コードを押す」をタップして商品をカートに入れると自動的に重さを量り、価格を表示する。
商品を棚に戻すためにカートから取り出すと「何を取り出しましたか?」というメッセージと購入リストが表示されるので、そこから戻した商品を選ぶ。
買い物が終了したらダッシュカート専用の通路を通るとスクリーンが緑色に変わり、「完了しました」というメッセージと合計金額が表示される。
なお、ワインやビールなどのアルコール類を購入している場合は、ダッシュカート・レーンでIDの提示が求められる。
決済終了後、メールでeレシートが届く。
超ハイテクカートの実力は? 筆者は実際にアマゾン・フレッシュで買い物をしてみたが、この最先端のAIカートには弱点もあった。
商品の重量が同じで、価格の異なる複数の商品をカートに入れる際、安い方の商品のバーコードを読み込ませることでハッキングができた(もちろん後から訂正して正規の料金を支払ったことは名誉のため申し添えておく)。
さらにアマゾンにとって頭の痛い問題が店内のオペレーションだ。
リアル店舗の売り場と、ネットスーパーの倉庫を兼用していることから、買い物客とピッカーの衝突が起きていた。
とくに週末はピッカーが増えて買い物客の邪魔になる。
生鮮食品などの欠品や品薄も生じてしまう。
商品補充を行えば、売り場はさらに混雑する。
ハイテク設備を搭載したダッシュカートは通常のカートと比べてずっと重い。
押したり引いたりするだけならそれほど重さは感じないが、カートを小回りさせるのは男性であってもかなりきつい。
カートの渋滞に巻き込まれると小回りを余儀なくさせる。
売り場での顧客体験が悪化する瞬間だ。
そのためか21年6月以降に開店したアマゾン・フレッシュの店舗には、ダッシュカートがなく、代わりにJWOが導入されている。
21年11月18日、ロサンゼルス郊外にアマゾン・フレッシュの22店舗目となるセリトス店がオープンした。
その当日に筆者は、手の平認証を使って同店で買い物をした。
エントランスゲートは、フルサービスのレジで従来どおりの買い物を行う「Traditional Shopping」と「Scan to Enter」と掲げられたJWO用の二つに分かれていた。
同店は重量チェッカーを備えたダッシュカートを使わないため基本的に量り売りはしていない。
精肉・デリの対面コーナーでは、販売スタッフが重さを測り、ステッカーをプリントアウトして包装紙に貼り、お客にわたす時にスキャンしていた。
オープンの賑わいでフルサービスのレジには長い行列ができていた。
しかし、筆者はJWOによりレジ待ちをせずストレスなく買い物ができた。
破壊的といっていいほどの買い物体験だ。
アマゾンにとっても人手不足の折、レジ係が不要であることは大きな強みとなる。
しかし、問題もあった。
JWOは天井に設置したカメラの画像解析とAIを組み合わせて、買い物客が商品を手に取りショッピングカートに入れる動きをフォローする。
さらに商品棚の重量センサーも使って、買い物客が手に取った商品の個数まで割り出す。
ところが、筆者の買い物は計算が間違っていた。
バナナ3本をカートに入れたにもかかわらず、バナナ3房と計算されていた。
本来は45セント(3本×15セント)のところを、7ドル課金されていた。
AIがミスをするという、めったにないことに遭遇しただけかもしれないと、後日もう一度、同じ店で買い物した。
結果から言えば、再び間違いがあった。
ネギを2束購入したのに、一束しか計算されていなかった。
前回の買い物でもらった10ドルクーポンを使ったのに、それも反映されていなかった。
自分のアカウントに買い物履歴が載ったのは退店してから2時間以上も経ってからのことだった。
eレシートが送られて来たのは4時間以上も後だった。
おまけに金曜日の午前中という客の少ない時間帯だったが、店頭には欠品が目立ち始めていた。
アマゾンはJWOを導入したハイブリッド型食品スーパーのアマゾン・フレッシュを今後も続々とオープンする計画となっている。
しかし、アマゾンのリアル店舗展開はまだしばらくは試行錯誤が続きそうである。
