2022年1月号
特集
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バローホールディングス 「バロー経済圏」を支える物流基盤を構想
アマゾンとネットスーパーで協業
東海地区を中心に「スーパーマーケットバロー」や「Vドラッグ」など1277店舗(2021年11月30日時点)を展開するバローホールディングスは21年6月、Amazon.co.jpのウェブサイトおよびショッピングアプリ上に「Amazonプライム」会員向けのネットスーパーを開店した。
オンラインで受けた注文をバロー高辻店(名古屋市)の店頭在庫約8千アイテムに引き当て、専門のスタッフがピッキング、アマゾンの配送網で最短2時間で配達する。
サービス対象エリアは名古屋市全域と清須市の一部。
最低購入金額は1回2千円以上。
配送料は390円。
8千円以上の買い物で配送料が無料になる。
高辻店のネット売り上げは非公表だが想定していた以上に好調で、店頭価格より割高な商品でもよく売れているという。
実店舗の売り上げを損なってもいない。
むしろ、アマゾンに出店して以降、従来の商圏の外からの来店客が増えて売り上げが伸びている。
今後は対象店舗を増やし愛知県を中心に配送エリアを広げていく計画だ。
一方、バローのお膝元の岐阜県では「Ainoma(アイノマ)」と名付けた独自のネットスーパー事業を展開している。
注文当日の夕方に荷物を受け取ることができる三つの方法を用意している。
店舗での受け取りは無料。
宅配は配送料が1回当たり450円〜550円(店舗によって異なる)。
そして三つ目が職場での受け取りだ。
勤務先だけでなく、子供が通う保育園や幼稚園、病院・介護施設、スポーツクラブなど、バローと契約を結んでいる法人の施設に専用ラックを設置して、温度管理された状態で商品を納めた「お客様別ボックス」を無料で届ける。
アイノマの販売価格は店舗の折込チラシと同じ。
それでも同社はこのスキームでネットスーパー事業の黒字化に成功した。
21年2月には「事業所向け配送『商品提供システム』」で特許を取得。
開放特許として登録した。
ライセンスの供与や協業を通して社外にも活用を広げていく考えだ。
バローHDはこれまでネットスーパーには慎重な姿勢をとってきた。
同社の小池孝幸取締役流通技術本部長兼システム部長は「黒字化できない以上はやるべきではないという考えだった」という。
個人宅に無料で即配する既存のモデルではどうしても赤字になる。
しかし、数十人分の注文をまとめて運ぶ方法であれば採算に乗るかもしれない。
その仮説を基に当初は事業者向け配送サービスとしてアイノマを設計して、19年7月に事業を開始した。
さらにコロナ禍に入ってフードデリバリーが急速に普及して有料の宅配が認知されるようになってきたことから、店舗近隣の消費者宅への有料の配達やドライブスルー型のカーブサイドピックアップなどに手を広げた。
オンラインで注文したドラッグストアの商品を最寄りのスーパーで受け取る仕組みも作った。
「同じようにホームセンターの商品もスーパーで受け取れるようにしたい。
大口の注文は店舗ではなく物流センターから出荷したり、あるいは店舗に置いていない商品を客注で受けて工場から出荷するなど、さまざまなやり方が考えられる。
決め打ちせずに可能性を確かめていく」と小池本部長はいう。
同社は21年5月、30年に向けた経営ビジョンを発表した。
21年3月期の連結業績は、売上高に当たる営業収益が前期比7・7%増の7301億円、営業利益が同65・3%増の256億円だった。
これを30年3月期に営業収益1兆円、営業利益480億円に引き上げる。
「デスティネーション・カンパニー」構想と「バロー経済圏」構想の二つがその柱となる。
市場全体に対しては「製造小売業」として店舗の商圏外にも独自企画の商品を供給する。
一方、グループ企業が店舗を集中的に出店しているドミナントエリアでは、独自の経済圏を形成して地域インフラとしての役割を果たす。
物流においても、バロー経済圏から外れたエリアではアマゾンをはじめとする外部との協業によって消費者とのアクセスを確保する。
そしてバロー経済圏の域内では、EC事業者やグループ外のフルフィルメントまで請け負う物流プラットフォームとして機能することを目指す。
自社物流で仮説検証を繰り返す バローは1989年に岐阜県多治見市の本社隣接地に初の自社物流センターを開設して以降、自社物流を続けてきた。
2012年には可児市に購入した約50万平米の敷地に、延べ床約9万平米の基幹施設「可児物流センター」を新設した(写真)。
その現場運営を担う物流子会社の中部興産は現在、東海から北陸にかけて22カ所に拠点を展開している。
21年3月期の売上高は前期比7・9%増の177億円。
うち約3割が外販だ。
可児物流センターの稼働を機に外販に進出、バローグループとの相乗効果が見込める荷主に混載や帰り便の利用を提案して外販比率を高めてきた。
バローグループは自分たちを小売業ではなく流通業と定義している。
そのために物流の自社化はもちろん現在は生産工程にも手を伸ばしている。
物流拠点に隣接して加工食品の製造拠点を建設、工場〜センター間をコンベヤで直結して1次輸送を不要にするなど、サプライチェーンの構造にまで踏み込んだ物流合理化を実施している。
中部興産の社長も兼務する小池本部長は「“餅は餅屋”という発想で物流をアウトソーシングしていたら、なかなか実現できない展開だろう。
スピーディな仮説検証も自分たちで現場を運営しているから可能になる。
自社物流のメリットは大きい」という。
流通技術本部は同社が20年4月に新設した組織だ。
バローグループは現在50社以上の事業会社を傘下にしている。
そこにあらためて横串を刺すために、ガバナンスを司る管理本部と、物流・システム・カード・無店舗販売の四つの領域を担当する流通技術本部の2本部制を導入した。
小池本部長は「オーバーストアの状態になった今、これまでのチェーンストア理論はもう通用しない。
お客さまのニーズをあらためて拾い直して、業態をいったん解体し、ゼロベースで組み立てる必要がある。
リアルな“地上戦”とバーチャルな“空中戦”の両方を上手く組み合わせたハイブリッドなモデルを目指す」という。
実店舗と物流拠点、アプリ、カードのポイントなどの他のリソースと同様、アイノマも店舗を越えて地域の消費者とつがなる機能と定義している。
自社リソースだけでなく新聞配達の配送網を使ったり、あるいは移動販売会社と協業したり、仮説検証を続けている。
小池本部長は「地域との共生や協業を通じて自分たちの都合だけではなく、“三方よし”を実現する持続可能なやり方を見つけ出したい。
そのためにさまざまな人たちとの議論や情報交換を深めていく」という。
オンラインで受けた注文をバロー高辻店(名古屋市)の店頭在庫約8千アイテムに引き当て、専門のスタッフがピッキング、アマゾンの配送網で最短2時間で配達する。
サービス対象エリアは名古屋市全域と清須市の一部。
最低購入金額は1回2千円以上。
配送料は390円。
8千円以上の買い物で配送料が無料になる。
高辻店のネット売り上げは非公表だが想定していた以上に好調で、店頭価格より割高な商品でもよく売れているという。
実店舗の売り上げを損なってもいない。
むしろ、アマゾンに出店して以降、従来の商圏の外からの来店客が増えて売り上げが伸びている。
今後は対象店舗を増やし愛知県を中心に配送エリアを広げていく計画だ。
一方、バローのお膝元の岐阜県では「Ainoma(アイノマ)」と名付けた独自のネットスーパー事業を展開している。
注文当日の夕方に荷物を受け取ることができる三つの方法を用意している。
店舗での受け取りは無料。
宅配は配送料が1回当たり450円〜550円(店舗によって異なる)。
そして三つ目が職場での受け取りだ。
勤務先だけでなく、子供が通う保育園や幼稚園、病院・介護施設、スポーツクラブなど、バローと契約を結んでいる法人の施設に専用ラックを設置して、温度管理された状態で商品を納めた「お客様別ボックス」を無料で届ける。
アイノマの販売価格は店舗の折込チラシと同じ。
それでも同社はこのスキームでネットスーパー事業の黒字化に成功した。
21年2月には「事業所向け配送『商品提供システム』」で特許を取得。
開放特許として登録した。
ライセンスの供与や協業を通して社外にも活用を広げていく考えだ。
バローHDはこれまでネットスーパーには慎重な姿勢をとってきた。
同社の小池孝幸取締役流通技術本部長兼システム部長は「黒字化できない以上はやるべきではないという考えだった」という。
個人宅に無料で即配する既存のモデルではどうしても赤字になる。
しかし、数十人分の注文をまとめて運ぶ方法であれば採算に乗るかもしれない。
その仮説を基に当初は事業者向け配送サービスとしてアイノマを設計して、19年7月に事業を開始した。
さらにコロナ禍に入ってフードデリバリーが急速に普及して有料の宅配が認知されるようになってきたことから、店舗近隣の消費者宅への有料の配達やドライブスルー型のカーブサイドピックアップなどに手を広げた。
オンラインで注文したドラッグストアの商品を最寄りのスーパーで受け取る仕組みも作った。
「同じようにホームセンターの商品もスーパーで受け取れるようにしたい。
大口の注文は店舗ではなく物流センターから出荷したり、あるいは店舗に置いていない商品を客注で受けて工場から出荷するなど、さまざまなやり方が考えられる。
決め打ちせずに可能性を確かめていく」と小池本部長はいう。
同社は21年5月、30年に向けた経営ビジョンを発表した。
21年3月期の連結業績は、売上高に当たる営業収益が前期比7・7%増の7301億円、営業利益が同65・3%増の256億円だった。
これを30年3月期に営業収益1兆円、営業利益480億円に引き上げる。
「デスティネーション・カンパニー」構想と「バロー経済圏」構想の二つがその柱となる。
市場全体に対しては「製造小売業」として店舗の商圏外にも独自企画の商品を供給する。
一方、グループ企業が店舗を集中的に出店しているドミナントエリアでは、独自の経済圏を形成して地域インフラとしての役割を果たす。
物流においても、バロー経済圏から外れたエリアではアマゾンをはじめとする外部との協業によって消費者とのアクセスを確保する。
そしてバロー経済圏の域内では、EC事業者やグループ外のフルフィルメントまで請け負う物流プラットフォームとして機能することを目指す。
自社物流で仮説検証を繰り返す バローは1989年に岐阜県多治見市の本社隣接地に初の自社物流センターを開設して以降、自社物流を続けてきた。
2012年には可児市に購入した約50万平米の敷地に、延べ床約9万平米の基幹施設「可児物流センター」を新設した(写真)。
その現場運営を担う物流子会社の中部興産は現在、東海から北陸にかけて22カ所に拠点を展開している。
21年3月期の売上高は前期比7・9%増の177億円。
うち約3割が外販だ。
可児物流センターの稼働を機に外販に進出、バローグループとの相乗効果が見込める荷主に混載や帰り便の利用を提案して外販比率を高めてきた。
バローグループは自分たちを小売業ではなく流通業と定義している。
そのために物流の自社化はもちろん現在は生産工程にも手を伸ばしている。
物流拠点に隣接して加工食品の製造拠点を建設、工場〜センター間をコンベヤで直結して1次輸送を不要にするなど、サプライチェーンの構造にまで踏み込んだ物流合理化を実施している。
中部興産の社長も兼務する小池本部長は「“餅は餅屋”という発想で物流をアウトソーシングしていたら、なかなか実現できない展開だろう。
スピーディな仮説検証も自分たちで現場を運営しているから可能になる。
自社物流のメリットは大きい」という。
流通技術本部は同社が20年4月に新設した組織だ。
バローグループは現在50社以上の事業会社を傘下にしている。
そこにあらためて横串を刺すために、ガバナンスを司る管理本部と、物流・システム・カード・無店舗販売の四つの領域を担当する流通技術本部の2本部制を導入した。
小池本部長は「オーバーストアの状態になった今、これまでのチェーンストア理論はもう通用しない。
お客さまのニーズをあらためて拾い直して、業態をいったん解体し、ゼロベースで組み立てる必要がある。
リアルな“地上戦”とバーチャルな“空中戦”の両方を上手く組み合わせたハイブリッドなモデルを目指す」という。
実店舗と物流拠点、アプリ、カードのポイントなどの他のリソースと同様、アイノマも店舗を越えて地域の消費者とつがなる機能と定義している。
自社リソースだけでなく新聞配達の配送網を使ったり、あるいは移動販売会社と協業したり、仮説検証を続けている。
小池本部長は「地域との共生や協業を通じて自分たちの都合だけではなく、“三方よし”を実現する持続可能なやり方を見つけ出したい。
そのためにさまざまな人たちとの議論や情報交換を深めていく」という。
